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しおりを挟む誰?と聞かれても、自分の名前はひとつしか持っていない。
「陽葵、だけど……。」
「やっぱり陽葵なんだ。」
「当たり前でしょう。あなたこそ誰なの。」
「蓮、だよ。」
「嘘よ。だって蓮は今日死んだもの。」
「うーん……困ったね。」
目の前に居る、どう見ても蓮にしか見えない人物は、困ったように笑顔を作った。
「僕の認識では、陽葵が今日死んだんだよね。」
目の前に居る人物が言っていることがわからない。だって、私はここに居る。どういうこと?混乱して思考が定まらない。
「手を出してみてくれないかな?」
「手?」
そう言われて、素直に両手を出した。
「触れても、いいかな?」
「え、うん。」
彼は、私の手を触って、にぎにぎする。
「ちょ、何なの?」
「いや、実体があるのかな、と思って。あるし、体温もあるね。幽霊じゃないみたいだ。」
そう言われて、初めて、私の手を握っている手にも実態があり体温があることを認識した。
「本当に、蓮、なの?」
「うん。」
蓮が生きている。嬉しい。死んだなんて嘘だったんだ。きっと夢を見てたんだ。
「良かった。生きてたんだね。私、あれが最期なのかと思って、本当に……後悔したの。私、私ね、」
「ストップ。」
「え?」
「うーん……困ったな。」
先ほどと同じセリフをもう一度言ってから、蓮は考え込む仕草をした。
「とりあえずさ、ちょっと移動しよう。ここに居たら怒られちゃうよ。何処に行ったら良いかな。」
「家に帰れば良いんじゃないの?」
「うん。ちょっと、俺も混乱してるけど、陽葵も混乱してるよね。状況の整理をしなくちゃいけないと思うんだ。ちょっと待ってて。」
そう言って、蓮はスマホで電話をし始めた。そして、
「1000円でお願い、……うん。週末だから?どうせ部屋空いてるでしょ?3000円は高いって。中学生に集らないでよ。……うん。うん。もう一声。じゃあ1500円で。オッケ、わかった。すぐ向かうから空けといて。」
電話を切って、
「ボロい安宿だけど、貸してくれるから、そこ行こう。」
「宿!?」
「あ、誤解しないで。とりあえず宿へ行ってから話したかったけど、ここで少しだけ話そうか。さっきも言った通り、陽葵は今日死んで、今、お通夜の真っ最中なんだ。陽葵そっくりの君がウロウロしてたら大騒ぎになる。」
「そっくりって……」
「本人みたいだけど、何にしても現状把握できるまでは、ウロウロしない方がいいと思うんだ。大丈夫。一緒に考えよう。不安なら、誰か呼ぶって言いたいけど、今は思いつかない。ごめん。とりあえず落ち着かないと。」
「家に……」
「ダメだよ。そうだよく見て。僕は、死んだんだよね?」
「え……でも、生きてるじゃない。」
「多分、違う。」
「え?」
「行こう。あ、その服フードついてるね。ちょうど良い。かぶって。顔見せないように。」
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