僕がどこにいても、君をいちばん愛してる

彩柚月

文字の大きさ
17 / 31

17

しおりを挟む

 目覚めたら、もう日は高くなっていた。時計を見ると、もう10時だった。今の時間を知っても、何時頃に寝たのかわからないので、結局どのくらい寝たのかはわからないけれど、少し頭はスッキリしていた。

 蓮は居なかった。蓮が使った布団は丁寧に畳まれている。もしかしたら、昨日のことは全て夢だったのかと思えてしまうほどに現実味がない。

 LIN……

 LINが鳴った。見ると蓮からだった。これも何か不思議な感じだ。こっちの私が持っていたスマホは、どうなっているのだろう。何故私に蓮が連絡してこれるのか。

 どうせ私の頭では考えてもわからない。考えるのをやめて、LINアプリを開いた。

 (起きてるかな?)と文字が入っている。
 (今起きたよ。)と返す。

 (瑠奏を迎えに向かっている。そのままそこへ連れて行っても平気?)
 (うん。着替えておくね。)
 (わかった。お腹空いてるでしょ。何か買っていくから。)
 (ありがとう。待ってる。)

 待ってる、なんて、何か恋人みたい。今から瑠奏と気の重い話をするというのに、不謹慎にも、ウキウキして幸せな気分になった。蓮と私は両想い。そういえば、キスもしたんだった。ニヤける顔をどうにか抑えようとするも、勝手に緩んでしまう表情筋。

 「まあ、今は誰も居ないからいっか。」
 独り言を言って、着替える。そういえば、この服、もう2日目だ。明日の服はどうしよう。なんて、こんなことを考える余裕があるなら、私はきっと大丈夫だ。

 布団を畳んでテーブルを出した。座布団が二つしかない。少し考えて、瑠奏には座布団を使ってもらわないと、と、あっち側に2枚敷いた。そんなことをしていたら、扉をノックする音と、蓮の声が聞こえた。
 「大丈夫?入っていい?」
 
 私は一度だけ大きく深呼吸をして、
 「良いよ。」
 と、答えた。

 蓮が入ってきて、その後ろから、瑠奏が入ってくる。たった1日しか経っていないのに、ずいぶん久しぶりに見るような気がする、私の大切な大親友の顔がそこにあった。

 

 瑠奏は、こぼれ落ちそうなくらい目を見開いて、口も開けている。全部開いてるみたいに見える。
 
 私の時にそうしたように、蓮が瑠奏に言う。
 「落ち着いて、叫ばないでね。とりあえず座って落ち着いて。」
 私もそれに倣う。
 「こっちに来て座布団使って。瑠奏……ちゃん。」
 
 「はぁぁああ??」
 盛大に叫んだ瑠奏……ちゃん。

 「どういうこと!?生きてたの??」

 ——ま、そうなるよね。

 なんとか宥めて、事と次第を説明する。
 私はどうやらパラレルワールドから来てしまったこと、私の世界では蓮の方が死んでいること。帰り方がわかるまでどうしようと思っていたけど、蓮と心が通じたことをキッカケに、このまま帰れないなら、こっちの陽葵として生きていきたいと思っていることを話した。

 「そんなバカなこと起こるはずがないって言いたいけど、私、昨日、陽葵の死に顔見ちゃったし、あなたは陽葵にしか見えないし、双子?とかで、私をからかってるワケじゃ……ううん。陽葵は一人っ子のはず。従兄妹とか?」

 瑠奏はかなり混乱しているようだ。そりゃするよね。それでも、瑠奏にはわかって欲しい。

 「本当に、別の世界から来ちゃったみたいなんだ。親友の瑠奏には信じてほしい。」
 「親友って、私は陽葵の親友なのであって、あなたの親友では……」
 「あ、そうだね。でも私も陽葵なんだよ瑠奏ちゃん。蓮くんと瑠奏ちゃんがわかってくれないと、私、ここで独りぼっちになっちゃう。お願い助けて。」

 瑠奏は不安そうに蓮くんの方を見た。
 それを受けて、蓮くんは私の隣に来て、
 「陽葵ちゃんは、陽葵とは別人だけど、でも、世界は違っても、陽葵と同じ人だと思うんだ。話せば話すほど、そう思う。あっちの僕も、ここに居る僕も、陽葵が好きなんだ。だから、僕は陽葵ちゃんを助けるよ。」

 「陽葵と陽葵ちゃんは別人で同じ人?なんか混乱する……。え?好き?」
 
 「うん。僕は陽葵が好きだったんだ。同じくらい陽葵ちゃんが好きだよ。」
 「ごめん。瑠奏、ちゃん。私も、蓮が好きで、蓮くんのことを同じように好きだと思うの。」

 「……。」

 瑠奏は黙って、俯いている。
 今、いろんなことを考えているのだと思う。私達はじっと瑠奏の頭の整理が終わるのを待った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

20年、へそくり30万円が3000万円になったら、夫が毎月「今いくら?」と聞いてくる

ベテランママ。
経済・企業
2005年、ライブドアショックのちょい前から投資生活を始め、最初は投資資産30万円。で、現在はへそくり総額3000万円に。3000万円を超えた!とついうれしくて夫に報告したら、それから毎月「今いくら?」と人のへそくりを聞くようになりました。ちょっとウザイ。

悪女の死んだ国

神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。 悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか......... 2話完結 1/14に2話の内容を増やしました

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

処理中です...