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しおりを挟む続けて瑠奏は話す。
「やっと整理がついて来た頃に、陽葵の遺体はここにあるのに、そっくりな子が現れたらどう思うと思う?」
「喜ぶだろ?」
と、蓮くん。
「違う。ものすごい怒りが湧く。」
瑠奏の言っていることがわかった私はそう言う。
「え?」
と蓮くん。
「そう。それが普通だと思う。」
と瑠奏。続けて
「陽葵のことが大事であればあるほど、陽葵を侮辱されたような、冒涜されたような気分になると思う。」
「なんでそうなるの?」
蓮くん。
「どれだけそっくりでも別人だからだよ。」
と、私。
「だからそれはきちんと話し合えば、陽葵ちゃんと陽葵が同じだって理解できると思う。」
と蓮くん。
「話し合う機会を作ってくれるかどうかが問題なのよ。」
と、瑠奏。
「私も、陽葵ちゃんに会えて嬉しい。世界のどこかには、生きてる陽葵がいるんだって思えて、少しだけ救われた。でも同時に、今、私が心の隅に押し込んでる気持ちの一部をあえて言うね。どうして、陽葵が死んだのに、陽葵ちゃんが生きているの?どうして、この世界は、陽葵ちゃんが死んで陽葵が生きている選択をしてくれなかったの?」
「瑠奏!なんてことを言うんだ!もう良い。瑠奏は帰れ。」
「待って蓮くん。」
私が蓮くんを止める。
「なんでこんなこと言うことを許すんだ!?」
「瑠奏を信じてるからだよ。瑠奏は私のことが嫌いで言ってるんじゃない。事実を教えてくれて、どうしたら良いかを考えてくれる。あ、瑠奏…ちゃん。」
「呼び捨てで良いよもう。」
「じゃあ私のことも。」
「うん。」
「瑠奏、言ってくれてありがとう。その通りだ。その気持ち、私、すごくわかる。」
「通じて良かった。やっぱり、陽葵はこっちの陽葵と同じだね。私の大親友だよ。」
「私もそう思ってる。それで、じゃあ、どうしたら良いのかな?」
「ひとつは、じっくりタイミングをはかる必要があると思う。時間が必要なんだ。別人だとわかってるけど、そっくりな陽葵に側にいて欲しいって思える瞬間、そこを狙わないと、それ以外のタイミングだと、多分全部失敗する。早すぎると叩き出されるし、遅すぎると陽葵をこっちの陽葵と別人として認識しすぎる。」
「いつくらいが良いかな。」
「人の気持ちはコントロールなんてできないから、絶対とは言えないけど、単純にご両親の気持ちを思いはかるなら、私の予想では、お葬式が終わった後の、落ち着いてゆっくりしてる時。」
「なるほど。そうかも。」
「なんか僕だけ蚊帳の外になってない?」
「蓮はそこら辺の考えが浅いんだよ。人の気持ちは軽くないんだ。受け入れられたら蓮みたいに、どっぷり沼るけど、みんなが同じことができるワケがない。受け入れられなかったから、完全に弾き飛ばしてしまう。」
瑠奏が蓮くんに説教している。あっちの世界のこの2人も、私のいないところでは、こんな関係だったのかな。と、微笑ましく思いながら、続きを促す。
「ひとつは、って言ったよね。他には?」
「うん。それは、陽葵が本当にそれで良いのかってこと。一度決めて、行動を起こしたら、もう後戻りできない。大人の手助けをもらうってことは、私達の算段では、身の保証はできることになる、と思うけど、もしかしたらものすごく甘い考えかもしれない。
2人を引き離したくて言うんじゃないから、誤解しないで聞いてね。パラレルシフトで違う世界から来たのはわかった。
でも似てるって言っても、似てるけど別の世界だよ。少しずつやっぱり違う世界かもしれないし。さっきから何度も言ってるけど、私は違和感なく陽葵を受け入れてる。今話してても、こっちの陽葵と話してるのと変わらない意識で話せる。でも、やっぱり、どこかで、別人だと思ってる節もあるんだ。それは、ご両親からも同じだと思う。どこまで行っても、ものすごく似た他人の位置から脱することはできないかもしれない。その時に、どうしようもなく孤独感を感じるのは陽葵だよ。」
「俺たちがサポートすれば良いだろ。」
「もちろん、陽葵が、本当に心からここに残るって決めたならそれで良い。私も全力でサポートするよ。でも、その場合、陽葵の元の世界の人達は、いきなり陽葵を失うことになるよね。あっちの私は蓮くんが死んで陽葵も行方不明なんて、どんな気持ちなのか想像するのも怖いよ。ご両親だって、いきなり消えた陽葵のことを生きてる限り探すかもしれない。みんなを悲しませるって覚悟はある?」
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