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しおりを挟むまた、頭を殴られたような衝撃を受けた。やっぱり、瑠奏は頭いい。
そんなこと、完全に失念してた。なんでか、こっちのお父さんとお母さんが、私の知ってるお父さんとお母さんである気がしてた。違うんだ。わかってたつもりでわかってなかった。どこまで行っても他人なんだってことに、今、気付いた。
「そんなこと今言わなくても良いだろ。」
蓮くんはそう言うけど、
「今考えることだよ。後になってから気付いたら取り返しがつかないじゃない。」
と瑠奏が言う。
「戻りたいとか戻れない、じゃない。戻らない覚悟が必要だと思う。」
その通りだ。後から気付いて、戻りたいと思ってしまったら、元の世界の人達を悲しませた挙句、こっちの人達のことを裏切ることになってしまう。
「本当だ。それ、すっごい大事なことだ。」
私は呟いた。それを聞いてか、蓮くんが
「陽葵ちゃん?僕と居たいって言ってくれたよね?」
と言うのに対して、すかさず瑠奏が言う。
「ダメだよ蓮くん。それはズルい。蓮くんと一緒に居たい、ここ居るって決めても、じゃあ今までの自分が積み重ねてきた絆を捨てる覚悟を持てるかは別問題。別の天秤なの。その2つは選べない。陽葵が決めるしかない。」
そうだ。本当に瑠奏の言うとおりだ。恋は大事。でも、恋のために、大切な人間関係を捨てられるかと言われるとわからない。お父さんやお母さんが、消えた私を思って泣いていると思ったら、あっちの世界の瑠奏が独りぼっちになって泣いていると思ったら、それは、ものすごく怖い。そんな思いをさせたくない。
世界が違うって、こういうことなんだ。
始めて、本当の意味で理解した気がする。
「何も、言わずに居なくなられるって、すごく苦しいことだもんね。」
「うん。ただ忽然と消えたことになる陽葵は、捨てたって言う罪悪感とか、そういうのも背負っていかなきゃならない。どちらにしろ、この状態で生きていくのは難しいから、大人の力は借りないといけないけど、でも、その覚悟があるかないかで、話す方向も変わってくるよね。そして、話してしまったら、もう後戻りはできないと思わないと。選択肢をくれるはず、なんて甘いこと考えてたら、失敗する未来しか見えない。」
「きついよ瑠奏。」
蓮くんは言うけど、
「ううん。言ってくれなきゃわからなかった。」
と、私は理解する。
そして瑠奏は気まずそうに、
「……あんまり時間はないと思うんだ。よく考えておいて。私、瑠奏の着替えとか持ってくる。下着は新品を探してくるけど、私の服で良いよね。蓮くんは荷物持ちして。」
「僕は陽葵の側にいる。」
「だから、この覚悟を決めるのに、蓮くんが居たらできないの。……一緒に居たいのも、心配なのも、蓮くんが不安なのもわかるけど。これは陽葵がひとりで、誰の干渉もない状態で考えることだよ。」
そう言われて、蓮くんは私を見るが、私は頷いてみせた。しぶしぶ、蓮くんは瑠奏について行った。
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