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しおりを挟むこの世界にはみんな居る。蓮も生きている。ここに死んだ陽葵の代わりに私が入れば、完璧な世界になるんじゃないかと、漠然と思っていた。
でも、そうじゃない。
こっちの世界が完璧になるということは、元の世界が壊れるということだ。
この世界で生きていれば、いずれ馴染んでいくことはできるだろう。でも、こっちの陽葵の家族や友人からしたら、どこまで行っても私は異邦人だ。それでも、私が少し変わった、くらいの感覚で受け入れてくれるかもしれない。その時、私からは彼等がどう見えるんだろう。一生、私の知っている人とは違う人だと思いながら生きていくんだろうか。
元の世界の家族は、いきなり居なくなった私のことを、どう思うんだろう。突然子供を亡くした親のインタビューを見たことがある。あの悲痛感を、自分の親に味わわせることになるんだろうか。
せめて、私が生きていることを伝えることができれば、少しは違うんじゃないかと思ってから、違う。そうじゃない。と思い直した。生きていると知ったら、どうして戻ってこないのかと、かえって苦しめることになるかもしれない。自分達を捨てたのかと、その気持ちは憎しみになるかもしれない。そんな思いをさせるくらいなら、知らないままで居てもらった方が良いんだ。だから、ここに残ると言うことは、それも含めて、一切の全てを捨てて、元の世界へ未練を、自分の心な中だけで抱えていく覚悟が要ると、瑠奏は言ったのだ。
「覚悟……。持てるかな。」
そう呟いたとき、蓮くんの声がした。
「陽葵ちゃんは帰りたいの?」
振り向くと、蓮くんだけが、紙袋を持って、そこに居た。
「早かったね。」
「うん。後は下着だから、先に服を持ってけって言われて。それに、何か食べられるものを作って持ってくるって瑠奏が。」
「あ、そういえば、また何も食べてないね。」
「一応、簡単に摘めるものは買ってあるんだけど。」
と、言って蓮が差し出してきたのは、オールおつまみだった。喉が渇くだろう食べ物ばかり。こういうところが、男の子の感性なのかもしれない。
お茶を淹れて、それらを摘む。
「瑠奏の言ったことが沁みたよ。」
私はぽつぽつと話す。
「帰りたい。と思うよ。みんなを心配させて悲しませるのは嫌だ。」
「……うん。」
「蓮くんと離れたくないのは本当。でも帰りたいのも本当。今は帰り方がわからないから蓮くんと一緒に居たいって気持ちに傾いてるけど、もしも帰る方法が見つかったら、それでも残るって言える自信がない。」
「僕が居ても?」
「わからない。ごめん。本当にわからない。」
それに、蓮くんが好きなのは、私じゃない。私に限りなく似た、こっちの陽葵だと言うことに、頭でしかわかっていなかったことが、今、やっと心で理解できた。
「なるほど。僕も漠然と、陽葵のご両親はこっちにも居るから同じだと思っていたけど、違うんだね。僕と家族、どっちが大事?って迫っていることになるのか。」
「難しいね。すごく。」
そう言ってたら、瑠奏がお味噌汁とおにぎりを作って持ってきてくれた。
すごく美味しかった。
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