僕がどこにいても、君をいちばん愛してる

彩柚月

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 とりあえず、お風呂入って着替えなよ、という瑠奏の助言にしたがって、お風呂に入る。

 その間も考えるが、思考がループしているみたいでグルグルする、いくら考えても答えは出ない。

 そこで、ふと思った。そもそも、私がこの世界に入り込んだきっかけって、何なんだろう。いつこっちの世界に来たんだろう。思い出していたら、ひとつだけ、思い当たるものがあった。



 お風呂から出て、そのことを2人に話してみる。

 「青い線?」
 「うん。空間がひび割れて裂けてるみたいなのが浮いてたの。」
 「それを触ったら中に入った感じがして、気がついたらこっちに居たってこと?」
 瑠奏が食い気味に聞いてくる。
 「多分……?」
 「それが入口かもしれないね。」
 「確認したいな。」
 

 「入口かどうかはともかく、選択肢は多い方が良いな。行ってみよう。」
 と蓮くんが言うと、瑠奏も
 「そうね。こんなこともあろうかと、帽子とマフラーを準備してあるわよ。」
 と言った。

 「この暑いのにマフラー?」
 と、思わず私が顔を顰めてしまったのは仕方ないことだと思う。
 「私、ケープ的なオシャレなものを持ってないのよ。顔が隠れれば良いでしょ。我慢して。」
 と、強行されたちぐはぐファッションで、お寺の遊び場へ行った。



 時刻はもう夕方。
 陽が落ちかけている。
 ずいぶん1日が短い感じがするけど、昼過ぎまで寝ていたのだから当然と言えば当然だった。

 青い亀裂のような線を見たのはグルグルジャングルの球体の中。
 外から見てみたが、それらしいものは見えない。

 蓮くんが聞いてくる。
 「本当にここ?」
 「うん。あの時は外から見えてたんだけど。」
 私がそう言うと、瑠奏が
 「その時だけ現れてて、今はもうなくなったってことなのかな。」
 と言う。

 蓮が球体の中に入って
 「何もないね」
 と言う。

 「そんな……じゃあ、やっぱり、2度と帰れないってことなのかな。」

 あの時、不用意にそんな物に触れなければ良かった。と、絶望感に襲われた。少し前まで、蓮くんと離れたくないから、ここに残ろうと思ったはずなのに、帰れないと思うと、それがとんでもなく恐ろしいことに思えた。
 
 気がつけば陽は落ちて、辺りは暗くなりはじめていた。
 
 蓮が球体から出てきて、
 「ないってことが確認できただけでも進展だと思って、とりあえず宿に帰ろう。」
 と、言ったその時、

 「あ」
 と、瑠奏がグルグルジャングルの方を見て声を出した。

 「え?」
 つられて私もそっちを見る。蓮くんも後ろを振り返った。

 球体の中に、青い線がユラユラ揺れている。

 すぐさま、蓮がその線に近づいて触ろうとするので、
 「待って!触っちゃダメ!」
 と、制した。

 2人は私を見て説明を待っている。

 「私、あの時、ほんのちょっと触っただけなんだ。これが噂の人魂かなって。あ、人魂の噂、こっちにもある?」
 「ああ、夜になると青い人魂が出るって噂があるね。」
 と瑠奏が答える。

 「つまり、これが人魂の正体?」
 と蓮くんも納得したようだった。

 「うん。それで、私も同じことを考えて、これは何なだろうって、ほんの指先で触れただけなんだけど、その時にグラッて頭が回ったみたいな感じがして、前を見たら蓮くんが居たの。だから、もしかしたら触ったら移動しちゃうのかも。」

 「……なるほど。」
 それを聞いて蓮くんも手を引っ込めた。

 「つまり、これが世界の亀裂なのね。」
 瑠奏も近寄って、しかし中へ入る勇気はないようで、球体の外から興味深そうに観察している。

 「でも何か……。」
 私は気付いたことを口にする。
 「私が見た時より小さくなってる気がする。うん。ずいぶん小さい。あの時はもっと、私の足首から頭くらいまで長さがあった。」
 今は肩から腰までの長さくらい。

 「小さくなってるってことは、閉じかけてるんじゃないか?」
 蓮が言った言葉にハッとする。
 瑠奏が考察を述べる。
 「そうかも。人魂の噂がたった始めの頃はもっと大きかったのかもしれないね。だから通りからも見えて噂になったんだ。今は遊び場に入らないと気付かないくらいの大きさなって、だんだん小さく、閉じている……。ねえ。このペースで小さくなるなら、明日には閉じるんじゃない?」

 3人は、目を見合わせた。


 
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