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しおりを挟む「僕も行く。一緒に行こう。」
「何を言って……!行ったらもう帰れないかもしれないんだよ。蓮くんの家族はこっちに居るのに!」
「そうだよ。お父さんとお母さんに何て言うの!?」
私と瑠奏は必死に蓮くんに訴る。でも蓮くんの顔は穏やかで、決意を固めた表情をしていた。
「瑠奏、ごめん。僕が行ったら秘密を1人で抱えることになっちゃうね。でも、僕は陽葵の側に居るって決めたんだ。陽葵を助けられなかったこの世界より、助けることができた世界に行きたい。親には、陽葵が居なくなって悲しくて家出したって言っといて。大好きだよ、とか付け足しといてくれたら嬉しい。」
そんなことを瑠奏に言う蓮くん。
「蓮くん、違う!蓮くんが好きなのは私じゃなくてこっちの陽葵で、私とはどうしても別人なんだよ!」
「そんなことはわかってるよ。多分、陽葵ちゃんよりずっとわかってる。でも僕は、こっちの陽葵とはずっと仲違いしてたから、君と話した時間の方が多分長い。僕が好きなのは君だよ。陽葵ちゃん。」
瑠奏も納得したようで別れの言葉を言う。
「わかった。良いよ。行ってらっしゃい。蓮くんも元気でね。2人で仲良くしてるって、信じてこっちで私は生きていくから、裏切らないでよね。」
「任せといて!ありがとう!」
蓮くんは、そう言って、私の手を握ったまま、亀裂に触れた。
グラッと頭の中が回転した感覚がして、
世界が千切れる音を聞いた気がした。
(ああ、これ覚えがある。確かあの時もこんな音を聞いた。)
意識の端っこでそんなことを考えた。
気がつくと、2人でグルグルジャングルの球体の中に何事もなく立っていた。
「凄い音がしたな。」
「私がそっちへいく時にもあの音は聞こえたの。何かが千切れるみたいな、断裂するみたいな音だよね。それより本当に来ちゃって良いの?」
「もう来ちゃったし。」
「今ならまだ戻れ……あれ?」
振り向いて亀裂を見るとずいぶん長いことに気付く。
「こっちの亀裂は長いね。私の頭から……足首くらいまである。」
「日付がおかしい。」
「ん?」
蓮くんが言うので、私もスマホを出して画面を見る。
「あれ。金曜日だね。」
「1日……2日?得した気分?」
2人で目を合わせて考えるが、考えてもわかるものでもない。
蓮くんのことを聞いて、悲しくて遊び場にやってきた、そのくらいの時間に戻っている。
「ってことは、今日は蓮くんのお通夜の日?」
「僕にとっては陽葵のお通夜の日。」
とりあえず、落ち着ける場所を探さなくてはと、やっぱり、古い民家のような宿に向かった。
疲れたおじさんは、蓮くんを見てギョッとしたようだ。この人も蓮が死んだことを知っているのだろう。それでも、何も言わずに、部屋に通してくれた。
チラッと見渡した玄関には、珠が無造作に飾ってある。こういう細かいところは、あっちとは違うんだな。と思いながら、あっちの宿にあった台と組合わせたらちょうど良いんじゃないかとも思った。
「おい、嬢ちゃん。その珠に触るなよ。爆発するからな。」
「えっ!?なんでそんな危ないものを玄関に置いとくんですか?」
「あーまあ、それがないと、俺はここに居られないんだよ。」
ともかく、指定された部屋は、やはり2階の通り側で、大人しくその部屋に入った。
しばらくして、瑠奏からLINが鳴った。
「……もしもし。」
(陽葵?準備できたから、そっちへ向かうね。)
「うん。わかった。あ、でも、ごめん。私、ちょっと放心しちゃってて、まだ準備できてないんだ。30分後くらいにしてもらって良いかな?」
(うん。私、陽葵に話したいことがあるんだ。)
「うん。私も。じゃあ30分後にね。」
ついさっきまで話していた、あっちの瑠奏と同じ声なのに、なんだか、ものすごく久しぶりに聞いたような気がする、大切な親友の声。
「じゃあ、私、蓮のお通夜に行ってくるね。」
私の服は、瑠奏に借りた服だから、急いで戻って制服に着替えなくちゃいけない。
「僕も行こうかな。」
「え?大騒ぎになっちゃう。」
「大丈夫。遠くから見るだけ。僕、陽葵のお通夜の後から、ずっとこのままだから制服だし、帽子をかぶっておけば気付かれないと思う。」
そういえば、連名くんはずっと制服のままだった。
「うん。くれぐれも見つからないようにね。後でここに戻ってくるから。」
急いで家に帰って、着替えて瑠奏を待った。
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