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しおりを挟む「えっ!?」
思わず私は蓮くんを見た。
「陽葵にはさっきも話したけど。」
と、世界が壊れかけているかもしれないという仮説を話した。
それを聞いて、瑠奏は考えている。
私は、帰ると言った蓮くんの言葉に衝撃を受けて、何も反応できなかった。
「なるほど。もし、この世界が壊れかけているのだとして、もし、壊さずに済む方法があるとしたら、この世界の自己再生か自己治癒か、そういうものに掛けて、質量を同じにする。ってこと?」
「さすが瑠奏は理解が早くて助かる。」
わからない。難しい。この2人、頭良いな。
そんなことより、私と一緒にいたいから、来てくれたんじゃないの?なのに帰るの?
「最初は陽葵や瑠奏も一緒に向こうに行こうって言おうと思ったんだけど、それだと、」
「残された人はみんな消えるね。」
「うん。」
2人は難しい話を継続している。
え?何?どういうこと?
「どっちにしても陽葵を悲しませることになるなら、せめて、いつか笑える未来がある方が良い。」
「そうしても、こっちの世界が壊れない保証はないけど。そしたら、私達全員を殺したかもしれない心の負担を背負っていくの?」
「もしも、そうなら、そんな心の負担を陽葵に負わせたくない。それに、多分、修復する可能性は、かなり高いんじゃないかと思うんだ。現に、人魂の噂が広がった時が一番亀裂が大きかったんだと思う。だんだん小さくなって、それから陽葵があっちに行った時に、また少し大きくなって、それでもだんだん亀裂は小さくなっていた。」
「そこはちょっと共感できないけど、質量を戻すために戻るって言うのは賛成。」
「どこが共感できない?」
「これは、誰も経験したこともないし、計測できたわけでもないから、完全な仮説だけど、マルチバースっていうのは、お互いが干渉することはないはず。でも亀裂は先にあったのよね。これが自然にできるはずはないでしょ。仮説上は。」
グルグルジャングルの亀裂に近づいて、瑠奏は続きを話す。
亀裂は何か、炭酸のパチパチに似た音をたてていることに、今気付いた。
「陽葵が干渉……あっちに行った時に、あっちの質量はこっちより増えたはず。なのに、修復してた。そして蓮くんがこっちに来たら壊れはじめた。蓮くんと陽葵の質量の差が、壊れるギリギリの差だったとして……」
「あ、本当だ。おかしい。最初の亀裂分が足りない。」
「何が!?」
もう耐えられなくて思わず叫んだ。
「どうして帰るの!?ねえ蓮くん。一緒に居てくれるんじゃなかったの!?」
もう、最後かもしれないのに。帰るって言いながら、私を放置して難しい話をしている蓮くんに怒りが湧いた。
蓮くんはすぐに私の側に来て、抱きしめた。
「あんまり、時間がないと思うから。後で瑠奏に説明してもらって。さっき言ったでしょ。僕が陽葵のことを好きだって忘れないでねって。確実なのは、僕が戻らないと、絶対にこの世界は壊れる。」
私は、蓮くんの言葉を大人しく聞いた。
「僕はさ。陽葵に生きてて欲しいんだ。その為に連れて帰りたい。でも、陽葵は、戻ることを選んだからここに居るんだ。陽葵を悲しませたくない。2人で戻ったら、この世界はやっぱり壊れる。みんな死んだら嫌だよね。陽葵が苦しませたくない。自分だけ生き残って罪悪感に苛まれる人生は嫌でしょ。」
たくさん言われて頭がついていかない。
「蓮くん。それはズルいよ。」
瑠奏が何か言ってる。
「それを覚悟して、来てくれるって言うなら、一緒に来て欲しい。そしたら、僕が一生陽葵を守る。陽葵。僕と一緒に、あっちの世界で生きよう?」
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