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過去にも色々ありました
第80話 [シェルシェーレ過去編]シュバルツの悪魔④
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日も傾き、しばらくするとハンネスさんが帰ってきた。
「ハンネスさん!何か収穫あった?」
「それが…」
ハンネスさんはやや浮かない顔をしながら、ここまでの経緯を説明してくれた。
話をまとめると、警備隊は不審な男たちを1度は捕まえるところまではいったものの、なんと注意しただけで帰してしまったのだという。
しかも、ハンネスさんも男たちが人攫いかその類であることは勘づいていたから警備隊にそのことを言ったのに、全然相手にしてくれなかったらしい。
どうにもおかしい。
人攫いはもちろん、人身売買もこの国では20年前にできた法律で禁止されているはず。なのにその疑いがある人たちを野放しにするのは不自然だ。
それと、もう1つ不自然なのはリナの証言だ。
法律で禁じられた今でも、裏での人身売買は未だに行われている。その中には、家計が立ち行かなくなり親に売られた子どもも少なくない。
でも、そういうことをするのは大抵農村部のすごく貧しい家庭だ。
対してリナの家はシュバルツ侯爵家の屋敷と同じくらいだと言うし、両親のことは"お母様、お父様"と呼ぶし、犬まで飼っている。
それが全て本当だとすれば、リナの家は貴族である可能性が高い。
でも、貴族ならお金で困って子どもを売るなんて考えづらいし、かといって警備が厳重な貴族の屋敷から子どもをさらってくるっていうのも…
「うーん…」
「いかが致しましょうか。」
「…明日、私が警備隊に話聞きに行ってみる。さすがに貴族が行けば何かしら反応するだろうし…」
「承知しました。」
――――――
翌日。私は警備隊が待機している駐屯所まで移動していた。
「なあ、警備隊ってどの辺だっけ??」
そしたら、ルーカスお兄様がついてきた。
「というか、なんでお兄様もついてきてるの?」
「え?楽しそうだから。」
「そんな理由でついてこないでよ…」
「でも、人攫いを探してるみたいだけど、お前むしろさらわれる側の人間じゃん。」
「ハッ!」
そうだ、自分が10歳女児なのを忘れていた。とはいえハンネスさんはいるんだけど…
「な、俺がいた方がいいだろ?」
「うん…」
「で、警備隊どこだ?」
「もう着いたよ。」
「おお!」
私たちは駐屯所までたどり着いた。門番に身分を明かして話をすると、やや渋りながらも中に入れてくれた。
「これはこれは、シュバルツ侯のご令嬢にご子息様。こんなところにどういったご用件ですかな?」
中で迎えてくれたのは、…よく分からないけど警備隊の中では偉そうな人だ。
「昨日の件について、聞きたいことがあります。」
「はて…昨日のこと、ですかな?」
「昨日不審な男達を捕まえて、注意したあとすぐ帰してしまいましたよね?その理由が聞きたいんです。」
「ああ、あれですか。いえね、あれは単純に彼らの潔白が証明されただけのことですよ。」
偉そうな人は自信ありげに言う。
「充分調査する時間もなかったですよね?何故無実だと分かったんですか?」
「…警備隊にはノウハウというものがありますから、それだけの時間でも捜査するには充分な時間なのです。」
偉そうな人は相変わらず淡々と話しているけど、少しイラつき始めた気がする。
「具体的には?」
「え?」
「具体的にはどんなノウハウが?」
「いや、それは…」
「"警備隊や自警団は迷ったらとりあえず牢屋に入れる"って、どっかで聞いたことあるぞ!」
ルーカスお兄様が口を挟む。
「こ、今回は無実であると決定づける証拠が多くて…!」
「ですから、具体的にはどのような証拠なのですか?」
「…あなた方子どもには関係のないことです、お帰りください!」
そういうと偉そうな人は去ってしまった。明らかに動揺してたな…
「あーあ、行っちまった。この後どうする、シェリー?」
「…他の人にも聞いてみよう。幸い駐屯所から追い出された訳ではないし。」
「了解!」
「ハンネスさん!何か収穫あった?」
「それが…」
ハンネスさんはやや浮かない顔をしながら、ここまでの経緯を説明してくれた。
話をまとめると、警備隊は不審な男たちを1度は捕まえるところまではいったものの、なんと注意しただけで帰してしまったのだという。
しかも、ハンネスさんも男たちが人攫いかその類であることは勘づいていたから警備隊にそのことを言ったのに、全然相手にしてくれなかったらしい。
どうにもおかしい。
人攫いはもちろん、人身売買もこの国では20年前にできた法律で禁止されているはず。なのにその疑いがある人たちを野放しにするのは不自然だ。
それと、もう1つ不自然なのはリナの証言だ。
法律で禁じられた今でも、裏での人身売買は未だに行われている。その中には、家計が立ち行かなくなり親に売られた子どもも少なくない。
でも、そういうことをするのは大抵農村部のすごく貧しい家庭だ。
対してリナの家はシュバルツ侯爵家の屋敷と同じくらいだと言うし、両親のことは"お母様、お父様"と呼ぶし、犬まで飼っている。
それが全て本当だとすれば、リナの家は貴族である可能性が高い。
でも、貴族ならお金で困って子どもを売るなんて考えづらいし、かといって警備が厳重な貴族の屋敷から子どもをさらってくるっていうのも…
「うーん…」
「いかが致しましょうか。」
「…明日、私が警備隊に話聞きに行ってみる。さすがに貴族が行けば何かしら反応するだろうし…」
「承知しました。」
――――――
翌日。私は警備隊が待機している駐屯所まで移動していた。
「なあ、警備隊ってどの辺だっけ??」
そしたら、ルーカスお兄様がついてきた。
「というか、なんでお兄様もついてきてるの?」
「え?楽しそうだから。」
「そんな理由でついてこないでよ…」
「でも、人攫いを探してるみたいだけど、お前むしろさらわれる側の人間じゃん。」
「ハッ!」
そうだ、自分が10歳女児なのを忘れていた。とはいえハンネスさんはいるんだけど…
「な、俺がいた方がいいだろ?」
「うん…」
「で、警備隊どこだ?」
「もう着いたよ。」
「おお!」
私たちは駐屯所までたどり着いた。門番に身分を明かして話をすると、やや渋りながらも中に入れてくれた。
「これはこれは、シュバルツ侯のご令嬢にご子息様。こんなところにどういったご用件ですかな?」
中で迎えてくれたのは、…よく分からないけど警備隊の中では偉そうな人だ。
「昨日の件について、聞きたいことがあります。」
「はて…昨日のこと、ですかな?」
「昨日不審な男達を捕まえて、注意したあとすぐ帰してしまいましたよね?その理由が聞きたいんです。」
「ああ、あれですか。いえね、あれは単純に彼らの潔白が証明されただけのことですよ。」
偉そうな人は自信ありげに言う。
「充分調査する時間もなかったですよね?何故無実だと分かったんですか?」
「…警備隊にはノウハウというものがありますから、それだけの時間でも捜査するには充分な時間なのです。」
偉そうな人は相変わらず淡々と話しているけど、少しイラつき始めた気がする。
「具体的には?」
「え?」
「具体的にはどんなノウハウが?」
「いや、それは…」
「"警備隊や自警団は迷ったらとりあえず牢屋に入れる"って、どっかで聞いたことあるぞ!」
ルーカスお兄様が口を挟む。
「こ、今回は無実であると決定づける証拠が多くて…!」
「ですから、具体的にはどのような証拠なのですか?」
「…あなた方子どもには関係のないことです、お帰りください!」
そういうと偉そうな人は去ってしまった。明らかに動揺してたな…
「あーあ、行っちまった。この後どうする、シェリー?」
「…他の人にも聞いてみよう。幸い駐屯所から追い出された訳ではないし。」
「了解!」
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