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誰がこんな寝屋を設えたのだろう。
黒ビロードで覆われたベッドを黒レースと黒繻子で作られた天蓋が包んでいる。ベッドスプレッドを剥ぐのももどかしげに、クリスが両手に抱えて引き攫うように連れてきたマリアを放り投げる。
「あ…っ」
跳ね返るところを押え込まれる。両肩をベッドに押しつけ、見上げる間もなく唇を封じられる。小さな声は呑み込まれて啜られる。
なんてキス。
開かれた口に押し入った舌はマリアの存在を探し回る。
ここ? それともここ? ああそこなんだね、わかった。
「っ」
一瞬毒を含まされたように体が勝手に跳ね上がった。寒気が顎を奔り、見開いた視界に輝く二つの瞳を捉える。
闇の中に燃える青白い光。
細められる、獲物の反応に満足して。
逃げようと頭を引いたらなお押し入られる。代わりに突き出してしまった両胸を熱い掌で包まれ、脚を割られて膝を突き当てられた。指先が摘む二つの頂き、膝が擦り上げる固さを増す焦点。
「…っっ……っ」
同時に与えられた快感に感覚が沸騰する。仰け反った口をなお塞がれて、声はクリスの喉に届く。心得たように頂点でクリスが口を離した。
「ああああっ」
明け透けな悲鳴。ベッドにしがみついた両腕を上げることもままならず、弄られながら揉みしだかれる胸にぐずりと体がとろける。
いつのまに。
クリスの指は直接マリアに触れていた。掌で受け止めつつ指先で弄ばれて、掠れた声が上がる。
「い…やぁ…っ」
「嘘はいけない、奥様」
熱で潤んだ声に煽られる。
「こんなに柔らかく、崩れてくる」
「あっ」
舐められたのだと気づいたとたん、体が激しく震えた。止まらない。がくがくと揺れながら、両方を代わる代わる舌先で遊ばれる。やがて、片方に吸いつかれて含まれ、跳ねた瞬間にジーンズを脱がされた。下着は残されたが、開かされた脚の間にはクリスの指が滑り込んでいる。
「ここは好き?」
「あ…ぁっ」
「どんな方法が好み? きつく?」
「あうっ」
「それとも弱く?」
「は…っ」
強く摘まみ上げられ指先で嬲られ、とたんに離され触れるか触れないかで撫でられる。胸に唇を触れながら囁かれ、強く弱く揉み続けられ、体が切なくあちらこちらで波打っていく。
「こういうのは好きなのかな、奥様」
「あ…だめ…っ」
脚を押し広げられて開いた空間に、すり寄せられた温かみが尖っていた部分を擦った。入りそうになりながら消え失せる絶対の距離を保ちながら、何度も何度も何度も何度も。
「あ、あ、あっ」
いけそうでいけない。
もう少しなのに、ぎりぎりで辿りつけない。
「ねえ奥様」
耳元に優しい声が響く。
「名前を呼んで」
「くり…」
「もっとはっきり」
「くり…す…」
「じゃあご褒美」
「っ、」
抱きつこうとした両手を押えつけられた。強く押し付けられた温もりが、思いもかけないところを掠めて、視界が発火した。悲鳴を上げて背骨を逸らせる。逃げなくてはいけないのに、体はその一点をクリスに押し当て、全てを呑み込もうとするように蠢く。
内側に通路が開いた。
巨大なエネルギーを背骨に沿って駆け上がらせ、細胞に非常事態を教える警報を鳴らし、声は叫ぶ。
「だ、め、え…っっ」
閉じた視界に虹色の華が咲く。歯を食いしばるほどの衝撃なんて感じたことがない。額から汗が落ちる。涙がにじむ。
「マリア…っ」
引きずられるように首に顔を押し付けたクリスが呻いた。両手首を捉えた力がそのまま握り潰すほど強くなり、唐突に緩む。
「っ、…は、っ…ぁ」
荒い呼吸を繰り返しながら、クリスはマリアの斜め横に倒れ込んだ。
そのまま二人、しばらく呼吸さえ満足にできず、どれぐらいたったのか。
「ふ…く、しゃんっ」
マリアは唐突にくしゃみした。体を震わせると、
「マリア」
慌てたようにブランケットを引き上げたクリスが温かな胸に抱え込んでベッドに潜ってくれた。
「冷えたね」
「動けなかったもの」
「俺もだ」
見上げると照れくさそうに唇を曲げたクリスが、思い直したように微笑んで額にキスをくれる。
「寒い?」
「ううん。でも」
「でも?」
「気持ち悪い」
「そうだね、俺も」
ことばを続けかけたクリスが眠たそうに目を瞬く。
「シャワー、浴びた方がいいな」
「そうよ、浴びた方がいいわ」
答えながらマリアもくっつきそうになる瞼を必死に抉じ開けようとする。
「じゃあもう少ししてから」
「ちょっとだけ休んでからね」
頷き合って、ちょっとだけ目を閉じる。
「クリス…」
「ん…?」
「眠っちゃ…だめ…よ」
「君こ…そ…眠そう…だけど…」
柔らかく甘い囁き声。
「知って…る……?」
「…ん…?」
「まだ…昼間……な…の…」
「そう…だね……こんな時間……に眠っちゃ……また…」
夜中の晩ご飯になってしまう。
ダイエットによくないわ。
昼は寝て夜は起きるって吸血鬼みたいじゃない。
それこそ、不死の上に吸血鬼って、似合い過ぎてて笑えるわ。
「クリス…」
「ん…」
「もっと…こっち…」
「ん…」
ごそごそとクリスが近寄ってくれて、胸や体だけではなくて、脚も絡めて包んでくれて。小さな子どもを抱えるみたいに頭に顎を載せられて。
広がる安堵に吐息する。
なぜかしら。
全く違う存在なのに、どうしてこう、何もかもぴったりとおさまるのかしら。
きっとそれはね。
静かな声が夢の中で聞こえてくる。
内緒よ。
細くて白い指が幼い桃色の唇に当てられる。
パパとママはそうなるように作られたから。
誰?
指が唇から離れて真っ青な空を指す。
誰なの?
くすくす。
クリスの笑い声にそっくりな響きにマリアは微笑む。
そう、あなたはパパ似なのね。よかった。
黒ビロードで覆われたベッドを黒レースと黒繻子で作られた天蓋が包んでいる。ベッドスプレッドを剥ぐのももどかしげに、クリスが両手に抱えて引き攫うように連れてきたマリアを放り投げる。
「あ…っ」
跳ね返るところを押え込まれる。両肩をベッドに押しつけ、見上げる間もなく唇を封じられる。小さな声は呑み込まれて啜られる。
なんてキス。
開かれた口に押し入った舌はマリアの存在を探し回る。
ここ? それともここ? ああそこなんだね、わかった。
「っ」
一瞬毒を含まされたように体が勝手に跳ね上がった。寒気が顎を奔り、見開いた視界に輝く二つの瞳を捉える。
闇の中に燃える青白い光。
細められる、獲物の反応に満足して。
逃げようと頭を引いたらなお押し入られる。代わりに突き出してしまった両胸を熱い掌で包まれ、脚を割られて膝を突き当てられた。指先が摘む二つの頂き、膝が擦り上げる固さを増す焦点。
「…っっ……っ」
同時に与えられた快感に感覚が沸騰する。仰け反った口をなお塞がれて、声はクリスの喉に届く。心得たように頂点でクリスが口を離した。
「ああああっ」
明け透けな悲鳴。ベッドにしがみついた両腕を上げることもままならず、弄られながら揉みしだかれる胸にぐずりと体がとろける。
いつのまに。
クリスの指は直接マリアに触れていた。掌で受け止めつつ指先で弄ばれて、掠れた声が上がる。
「い…やぁ…っ」
「嘘はいけない、奥様」
熱で潤んだ声に煽られる。
「こんなに柔らかく、崩れてくる」
「あっ」
舐められたのだと気づいたとたん、体が激しく震えた。止まらない。がくがくと揺れながら、両方を代わる代わる舌先で遊ばれる。やがて、片方に吸いつかれて含まれ、跳ねた瞬間にジーンズを脱がされた。下着は残されたが、開かされた脚の間にはクリスの指が滑り込んでいる。
「ここは好き?」
「あ…ぁっ」
「どんな方法が好み? きつく?」
「あうっ」
「それとも弱く?」
「は…っ」
強く摘まみ上げられ指先で嬲られ、とたんに離され触れるか触れないかで撫でられる。胸に唇を触れながら囁かれ、強く弱く揉み続けられ、体が切なくあちらこちらで波打っていく。
「こういうのは好きなのかな、奥様」
「あ…だめ…っ」
脚を押し広げられて開いた空間に、すり寄せられた温かみが尖っていた部分を擦った。入りそうになりながら消え失せる絶対の距離を保ちながら、何度も何度も何度も何度も。
「あ、あ、あっ」
いけそうでいけない。
もう少しなのに、ぎりぎりで辿りつけない。
「ねえ奥様」
耳元に優しい声が響く。
「名前を呼んで」
「くり…」
「もっとはっきり」
「くり…す…」
「じゃあご褒美」
「っ、」
抱きつこうとした両手を押えつけられた。強く押し付けられた温もりが、思いもかけないところを掠めて、視界が発火した。悲鳴を上げて背骨を逸らせる。逃げなくてはいけないのに、体はその一点をクリスに押し当て、全てを呑み込もうとするように蠢く。
内側に通路が開いた。
巨大なエネルギーを背骨に沿って駆け上がらせ、細胞に非常事態を教える警報を鳴らし、声は叫ぶ。
「だ、め、え…っっ」
閉じた視界に虹色の華が咲く。歯を食いしばるほどの衝撃なんて感じたことがない。額から汗が落ちる。涙がにじむ。
「マリア…っ」
引きずられるように首に顔を押し付けたクリスが呻いた。両手首を捉えた力がそのまま握り潰すほど強くなり、唐突に緩む。
「っ、…は、っ…ぁ」
荒い呼吸を繰り返しながら、クリスはマリアの斜め横に倒れ込んだ。
そのまま二人、しばらく呼吸さえ満足にできず、どれぐらいたったのか。
「ふ…く、しゃんっ」
マリアは唐突にくしゃみした。体を震わせると、
「マリア」
慌てたようにブランケットを引き上げたクリスが温かな胸に抱え込んでベッドに潜ってくれた。
「冷えたね」
「動けなかったもの」
「俺もだ」
見上げると照れくさそうに唇を曲げたクリスが、思い直したように微笑んで額にキスをくれる。
「寒い?」
「ううん。でも」
「でも?」
「気持ち悪い」
「そうだね、俺も」
ことばを続けかけたクリスが眠たそうに目を瞬く。
「シャワー、浴びた方がいいな」
「そうよ、浴びた方がいいわ」
答えながらマリアもくっつきそうになる瞼を必死に抉じ開けようとする。
「じゃあもう少ししてから」
「ちょっとだけ休んでからね」
頷き合って、ちょっとだけ目を閉じる。
「クリス…」
「ん…?」
「眠っちゃ…だめ…よ」
「君こ…そ…眠そう…だけど…」
柔らかく甘い囁き声。
「知って…る……?」
「…ん…?」
「まだ…昼間……な…の…」
「そう…だね……こんな時間……に眠っちゃ……また…」
夜中の晩ご飯になってしまう。
ダイエットによくないわ。
昼は寝て夜は起きるって吸血鬼みたいじゃない。
それこそ、不死の上に吸血鬼って、似合い過ぎてて笑えるわ。
「クリス…」
「ん…」
「もっと…こっち…」
「ん…」
ごそごそとクリスが近寄ってくれて、胸や体だけではなくて、脚も絡めて包んでくれて。小さな子どもを抱えるみたいに頭に顎を載せられて。
広がる安堵に吐息する。
なぜかしら。
全く違う存在なのに、どうしてこう、何もかもぴったりとおさまるのかしら。
きっとそれはね。
静かな声が夢の中で聞こえてくる。
内緒よ。
細くて白い指が幼い桃色の唇に当てられる。
パパとママはそうなるように作られたから。
誰?
指が唇から離れて真っ青な空を指す。
誰なの?
くすくす。
クリスの笑い声にそっくりな響きにマリアは微笑む。
そう、あなたはパパ似なのね。よかった。
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