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4.DISTANCE(2)
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暗闇の中でずっと座り込んでいたような気がする。
(寒いな)
今は真夏のはずなのだが。
仁は抱えていた膝から顔を上げた。と、唐突に、仁の数倍はありそうな金色のライオンがスフィンクスのように横たわってこちらを見ているのに気づいた。
(君は)
ーボクハ、ナゴシ。
(!)
呼吸が止まった。それから突然、気を失う前の修羅場が蘇ってきた。
夜闇を疾走するバイク、追い込まれて走り続けている最中に割り込んできた、青白く燃え盛る容赦のない殺意の鞭。
逃げて逃げて逃げ続けて。
鞭をかわすたびに周囲のバイクが炎に巻かれる。火柱になり、炎上し、その中で絶叫が、悲鳴が、炎の渦と一緒に天空へ駆け上がっていく。
仁には何もできない。より酷い結末、より救いのない破滅を防ぐために、炎と血飛沫の中を速度を上げて駆け抜ける。
そして、それらを見つめていた冷ややかな視線、空に浮かんだ巨大な月と心の中の金色の獣の目。
ー何ヲ驚イテルンダ、ズット、居タノニ。
相手はおかしそうに笑った。
(だって……だって)
のそりと立ち上がったライオンに、仁は座ったまま後じさりした。体が細かく震え出す。
緩やかに近寄った相手は、ゆっくりと首を伸ばし、味わうように首の根元に鼻先を押しつけてきた。震え続ける仁の体のにおいを嗅ぎ、獣くさい頭を胸元に下げる。そこにあるはずの傷がないのを確認し、不安に背ける仁の顔を覗き込みながら、のしかかる重量感で仁を押し倒す。これみよがしに開いてみせた大きな口に並んだ血に汚れた牙の間から、ぬるりと滑り出した舌が静かに仁の頬と胸元をなめた。
(いや…だ……)
ー御挨拶ダナ。
ライオンは仁の体に脚を乗せた。大きな爪がむき出しになっている。1本1本を食い込ませてくるようにじりじりと重みを加えながら、
ー仲間、ダロウ? ボクヲ呼ンダジャナイカ。
(…やめて…くれ……)
仁は呻いた。身動きできない体が苦しい。もがいて何とか相手の力から逃れようとする。
ーソレトモ。
ライオンはまた微かに苦笑したようだ。
ーコチラノ姿ノ方ガ、馴染ミガイイノカナ、仁ニハ。
ふいにのしかかっていた圧力が消えた。ライオンの姿がするすると収縮していく。やがて白く小さな、抱えてしまえるほどの赤ん坊になった。未発達の体はぬるぬるとした液体に濡れて真珠色に光っている。赤い2つの瞳孔も虹彩もない瞳が間近から覗き込んできながら、に、と明らかに笑った。
ーホウラ、ソックリダロ、アノ月ト。
小さな指が仁の視線を十分に引きつけて、暗闇に浮かぶ真珠色の球をさす。
球の中には少女が1人、水晶玉に閉じ込められた姫君のように微笑みながら両手を差し出している。黒い髪、朱い唇、けれど、その両手も体も真紅の血に染め上げられて、仁の救出を待っている。
(い、や…だ……っ!)
ーセッカク、仲間ト会エタノニ、ソッケナイナ、仁ハ。
『夏越』はだだっ子をたしなめるように溜息をついた。
ーソンナコト言ッテモ、彼女ハ待ッテクレナイヨ。ソレニ。
焦らすようにそっと続けた。
ーモウ君ノ手モ汚レテル。
仁は強ばって動かなくなった体を見回した。不安から、恐怖から動かないのだと思っていたのは間違いで、仁の体もまたしとどに紅の異臭のする液体に塗れていると気づいて呆然とする。
(僕…僕は……僕は……っ!)
ー忘レテナンカイナイヨネ。ボクヲ殺シタ……秀人ヲ殺シタ……救エルハズノ命ヲ見殺シニシタ。
『夏越』は楽しそうだった。
ーチカラハ何ノタメニアル? 誰カト生キルタメダト言ッテナカッタカイ? デモ、ソレハ祈リダ、現実ジャナイ。
(ごめん……)
仁は呻いた。血まみれの両手を握り締める。体が熱くなり、震えが止まらない。
ー現実ハコウダヨ。
もう1度、『印怒羅』との疾走が目の前で、今度は他者の視点で繰り返された。ヘルメットが透けて見える。得体の知れない男を相手に走る『印怒羅』の恐怖と怒りが伝わってくる。そして、仁は。
薄く笑っていた。
燃え盛る炎の中を潜りぬけながら、紅潮した頬と輝くような瞳が楽しんでいると教える。繰り返される殺意の鞭を巧みに間一髪でかわす興奮、自分の力の限界を試す喜びに体中の細胞を沸き立たせている。
仁の疾走に翻弄されて、1台、また1台と『印怒羅』が炎に焼かれて姿を消していく。絶命間近の悲鳴と命乞いをする叫びは仁の耳に届いている。
だが、仁は止まらない。止まらないまま死神を引き連れて夜の闇を走り抜けていく、極上のゲームをとことんまで味わい尽くすような陶酔に酔いしれて。
本当にそうだったのだろうか、と一瞬迷いが動いた。自分は彼らを助けたいと思っていたのではなかったのか。自分の力不足に苛立ち、何とかしたいと傷つきながら走っていたのではなかったか、と。
ーソウダヨ、君ハ傷ツイテタ……但シ、自分ノチカラノ無サニ傷ツイタンダ、失ワレル命ニ対シテジャナイ。
違う、と思いたかった。だが、目の前で繰り返される光景の仁は、明らかにそれを楽しんでいる。
(ごめ…助け…れなかった…ごめん……)
涙が零れ落ちた。拭うことさえできない朱に染まった掌を見る見るまだらに汚していく。
ー謝ラナクテイイノニ……・強者トシテハ当然ダヨ、弱イ者ガ堕チテイクノハ当タリ前ダ。至上ノ高ミサエ目指セバイインダ。
『夏越』はふうわりと仁の側に近寄った。耳もとで静かにそっとささやきかける。
ー仁、モウ行コウ、ココニ君ノ居場所ハナイヨ。
そうなのか、と仁の胸の中で小さな声が呟いた。自分はここにはいらないのか、と。
でも、とより小さな声が囁いた。
でも。
内田が。
居てくれるって。
仁が望む未来まで、付き合ってくれるって。
それはきっと負担になる、取り返しのつかないほど内田の人生を歪めてしまうだろう。
だから、胸の傷も消した。内田が仁の何に対しても責任など負わなくていいように。負担がきつくて耐えられなかったなら、すぐに離れていけるように。
でも、内田がそれを知ったら、きっと怒るだろう。勝手なことをしたとなじるに違いない。
(ごめ…ん……)
自分はきっと、とてつもなく愚かなのだろう。
そんな仁の心を見透かしたように、
ーマタ、内田ヲ傷ツケルノカイ?
『夏越』がうんざりしたように声を強めた。びく、と仁は体を強ばらせた。
ー君ノ側ニイルカギリ、彼ハズタズタニサレルヨ、彼女ニ。ワカッテルダロ?
(内田……)
くらくらと高温の鍋で煮られているような頭の中に、内田の足を長い間覆っていたギブスの白が閃いた。幾度か見た病院での光景が重なり合う。
カンファレンス・ルームでの城崎と内田のやりとり。対等な物言いとテンポの合った会話。相性がいい、お互いになじりあっているのによくわかりあってる空気。
診察に訪れたときの待ち合い室での看護師達の声。「あの内田って子、何度も来てるわね」「医者志望らしいわよ、城崎先生に進路のことを聞いてたから」。
内田が医者に? そんなことを聞いたのは初めてだ。レーサーかバイクショップをやりたいと言ってたのに。なぜ急に進路を変えたのだろう。
ついつい尋ねてしまった仁に、看護師達は内緒よ、と口止めしながら、「何でも大切な友達ができたから、力になりたいらしいわよ、先生にからかわれて怒ってたけど」。
大切な友達ができた……城崎のことだろうか。
『夏越』での怪我を治療したのは城崎だ、仁は巻き込み傷つけただけ。
(そう…か……そう…だな)
仁を支えてくれると言った。この不安定な能力が落着くまで側に居てくれると言っていた。
もし、制御がきかなくなってしまっても、2人で世界を征服すればいいと笑っていた、あの夕方の街の中。
けれど、それは同時に内田を危険に晒すに違いない。何度も死なせかけるに違いない。彼女にだけではなく、仁にもきっと殺されかけると言う意味なのに。そうだ、あのときはきっと、内田はまだそれに気づいてなかっただけなのだろう。
(そう…なんだな……)
ー大丈夫ダヨ、内田ノ花壇ヲ、今度ハ城崎ガ守ルサ。
『夏越』が軽く言い放って、喉を締めつけられたような気持ちになった。
ー仁、君ハ、内田ノ花壇ヲ守ルタメニ居タンダロ? ソウダヨネ?
(うん…そうだ…そうだっけ……)
ー側ニイルト言ッタノハ、内田ノ好意デ義務ジャナイ。
(ああ……そうだ)
ー内田ガ自分ヲ危険ニ晒サナクテモ、モウ彼ハ1人ジャナイヨ。城崎ガイル。彼ガ内田ヲ支エルヨ。仁ガ側ニイナクテイイ。
(そう…だね)
喉を締めつけたたがが外れた。加熱していた頭が見る見る醒めていく。
ー内田ハ、仲間ヲ見ツケタヨ。
(うん……)
ーソレハ仁ジャナカッタ。ソウイウコトダロ?
冷えていく頭と一緒に、体も芯から底から冷えていく。自分の身内から細胞が1つずつ壊れ崩れ落ちていくような気がする。なのに、皮だけはちゃんと残っていて、普段通りに振る舞える。何かがどうしようもなく拾えもしないぐらいに砕けたのに、それが何だかどうしてもわからない。
ーソレニ。
『夏越』は楽しむように上空を振仰いだ。
ーホラ、彼女ガマタ狩リニ出カケタ……今度ハまいやダ。
(え…?)
仁ははっとして空を見上げた。確かに真珠色の球は消えている。と、呼応するように切れ切れの鋭い悲鳴が届いてきた。覚えのある悲しみに満ちたその波長。
(マイヤ!)
ーだりゅーモ怒ッテル。仁ニイツマデモ関ワルカラダッテ。アレデ、終ワリニシテオケバヨカッタノニッテ。
(ごめん…マイヤ)
目眩がし始めた体を堪えた。視界が揺らめく。冷えた体に涙だけが異様に熱く頬を焦がしながら落ちていく。
もっと早く、わかっておくべきだった。もっと早く、始末しておくべきだった。『夏越』の言う通り、あの最後のときに内田に甘えたのが間違いだった。
仁こそが凶兆、仁こそが破滅の鏡。
迫ってきた狩人は写しに過ぎなかったのに、自分の影を相手にどうするつもりだったのか。屠ったところで、消え去るときにはきっと仁も同時なのだ。この世のどこにも居る場所なんてなかったのだ、始めから、ずっとずっと始めから。
ー生マレナケレバヨカッタンダ。ソンナコト、ワカッテイタ、ハズナノニ。
そのことばは仁が呟いたのか、『夏越』が囁いたのか。
混乱を見定めたように『夏越』の声が優しくことばを続けた。
ー紺野サンモ襲ワレタ、仁ニハ知ラサレテナイケド……ダッテサ、『敵』ニ教エルモノジャナイモノネ。
紺野さん? ああ、そうだ、城崎先生が大事に思ってるひとだ。
城崎はまだ気づいてないけど、仁にはわかる、城崎の深い傷を慈しむように癒せるのはきっとあの人だけだろう。
その紺野が襲われた。城崎はきっとうろたえているだろう、自分の気持ちに初めて気づいて。自分の気持ちを持て余して。
ー大切ナ人ガ標的ニナルヨ、仁。命ニ代エテモ守リタイト思ウヨウナ人ガ。
『夏越』のことばが胸に落ちるまで、少し時間がかかった。
ーワカルヨネ、次ハ誰ダカ。
(……内田!)
鋼の杭が胸に刺さる。
ーチカラガ欲シクナイカ、仁。狩人ヲ屠ルチカラサエアレバ守レル……ケレド、ソレハ人間、ナノカナ。
「!」
体中を強ばらせて仁は目を覚ました。
(夢……?)
一瞬、自分がどこにいるのかわからなくて瞬きする。無意識に胸元にやった手が外れているシャツのボタンに触れ、同時に枕元近くに放り出されたラッキーストライクに気がついた。
(ここ、内田の)
最後に空中に跳ね上がったのは覚えている。天空に真珠の球を見たのも。その中で微笑む、もう1人の自分の姿も。だが、その後落ちていきながら気を失ってしまった。
(僕は、ここへ飛んだのか)
自分の甘さが嫌になる。
シャツのボタンを外したのは内田だろうか。ならば気づいたはずだ、仁の傷がなくなっていることに。冷たいものが背筋を這い降りた。どうしてなんだ、と尋ねられるだろう。いったい、何をしたんだ、と。
尋ねる内田に、どう説明すればいいのかわからない。
(力を身につけたんだ、と?)
どうしてそんな力が欲しかったんだ、と問われるだろう。今でさえ、気を抜けばテレポーテーションする先さえ定められない、そんなあやふやな能力を何を考えて増やそうと言うのか、と。それは『夏越』とどう違うんだ、と。
(違う? いや、違わない…僕は『夏越』と変わらない…そんなこと、最初からわかってる…わかってたはずだろ、内田)
それとも……本当は、わかっていなかったのだろうか、内田も。
わかっていないからこそ、あんな約束ができたのだろうか。
仁が側にいると否応なく巻き込まれるから、それぐらいなら始めから居た方がいいと思って、あやふやなテレポーテーションにも付き合ってくれていたのだろうか。
ぴりぴりしながらシャツのボタンを止め直し、重い体をベッドから引きずり出すのに苦労していると、居間の方から話し声が聞こえてきているのに気がついた。
(電話?)
「ああ、わかった、あんたも無茶すんなよ、城崎」
内田の声が深い同情と思い遣りを込めて響いた。病棟で城崎とやりあうときには聞いたことのない大人びた声だ。温かな、元気づけるような。
(城崎……先生?)
仁は揺らめく足を踏みしめながら立ち上がり、そっと戸口に手をかけて居間を覗き込んだ。
『わかってる。命には別状ないが、確認はしておきたいからな。それから、仁を見つけても』
「ああ、わかってるって、仁には何にも話さねえよ」
(話せるかよ)
内田は胸の中で城崎の鈍感さに毒づいた。
関係のない『印怒羅』を巻き込んだ時点であれだけ苦しんでいる仁が、狩人の狙いが仁に関わる人間、しかも仁が守ろうとしている人間だなどとわかったら、何をするかは明らかだ。姿を消して、それこそ最悪、自分1人で相手の懐に飛び込んでしまいかねない。
『それに、しばらく病院にも来させるな。理由は何とでもいってくれ』
「あんたが痔で唸ってるとか?」
『ふざけるな。ダリューがぴりぴりしてるんだ』
城崎は忌々しげに唸った。
「ダリューが?」
内田の脳裏にカンファレンス・ルームで仁の話が出た時に顔を背けたダリューのことが蘇った。
(あいつはマイヤに惚れてるからな)
マイヤの怪我が仁の近くにいたせいだなどと思いたくはないだろうが、思ってしまうだろう、ダリューにはそういう不器用さがある。
「わかった、仁をそっちには近付けさせねえ。マイヤの手術が終わったらまた連絡くれ。紺野さんは落着いたのか?」
『ああ、そっちは大丈夫だ。仁のことを心配してる』
「ああ、そうだろうな」
うなされて朦朧としながら泣いていた仁、何とかあいつを楽にしてやらないと、そう考えながら何気なく振り返った内田は凍りついた。
「仁……」
いつ起きてきたのだろう。
境の扉に手をかけて、仁が立ち竦んでいる。乱れた髪も、危うげにけだるそうに立つ姿も、今にもぐずぐずと崩れそうな気配、それでも見開いた瞳が痛々しいほどまっすぐ内田を見つめている。いや、内田と、手にしている受話器とを。
『内田? おい、仁って……そこにいるのか? いつから?』
「こっちが聞きてえよ」
応えた自分の声がしわがれているのを感じた。
(どこから聞いてた……? どこまで聞いた……?)
ひんやりとした冷たい汗が流れてくる。
仁の顔は真っ白だ。血の気を失った唇が薄く開いて震えているのに、一言も声を出さない。ぐしゃぐしゃになった髪の下、瞳がどんどん暗くなる。さっき見開いた目よりも暗く、虚ろに光を失っていく。揺れながら上がった片方の手が、何かに縋るようにシャツの胸元を握り込む。そのシャツのボタンがきちんとかけ直されているのに、内田は水を浴びせられたような気になった。
(俺が気づいたって……知ってる)
『う・ち・だ』
仁の口がゆっくり動いた。だが、声になっていない。
(声が、出ない?)
内田だけではなくて、仁自身も困惑したような顔になって、喉に手を当てた。光の戻らない瞳が茫洋としている。道を見失ったような不安定な表情が仁の顔を覆っている。だが、それはあまりにもこの場面に不似合いな平板さだ。
(やばい……こいつ)
内田は唾を呑み込んだ。
(どこか、おかしい)
干涸びた喉からかろうじて声を絞り、喚き続けている受話器に応じる。
「切るぜ……城崎」
『おい! 内田!』
より激しく喚き始めた受話器を置く。
空気が痛い。きりきりと満ちて、内田を、仁を、切り裂いてでもいくようだ。
「仁?」
声で仁を刺激しないように、内田はそっと呼びかけた。不思議そうに自分の喉を探っていた相手が我に返ったようにこちらを見上げる。
「……」
無言のまま、仁は内田を見返し目を細めた。そのままぼんやりと微笑み、虚ろなアルカイックスマイルになった。するりと喉から手が滑り落ちる。緩むように泣き出しそうな幼い顔になって口を動かした。
『サ・ヨ・ナ・ラ』
「仁!」
内田はぞっとした。仁の姿が急速に揺らめき出し、そこだけ陽炎が立っているように空気が乱れる。
(1人でテレポーテーションする気だ!)
「待て、おい!!」
『ゴ・メ・ン』
ようやく深まった人なつこそうな笑みが仁の口元に広がった。だが、その笑みも見る見る薄まり仁の姿と一緒に消えていく。
「仁!! だめだ、行くな!!」
飛びかかった内田の手は空を掴んだ。それこそ幽霊のように仁の気配をすり抜けて、内田はそのまま寝室に転がり込んだ。必死にバランスを取って振り返る。
ちちち、と窓の外で鳥が鳴いた。
仁の姿は消え去っていた。
(寒いな)
今は真夏のはずなのだが。
仁は抱えていた膝から顔を上げた。と、唐突に、仁の数倍はありそうな金色のライオンがスフィンクスのように横たわってこちらを見ているのに気づいた。
(君は)
ーボクハ、ナゴシ。
(!)
呼吸が止まった。それから突然、気を失う前の修羅場が蘇ってきた。
夜闇を疾走するバイク、追い込まれて走り続けている最中に割り込んできた、青白く燃え盛る容赦のない殺意の鞭。
逃げて逃げて逃げ続けて。
鞭をかわすたびに周囲のバイクが炎に巻かれる。火柱になり、炎上し、その中で絶叫が、悲鳴が、炎の渦と一緒に天空へ駆け上がっていく。
仁には何もできない。より酷い結末、より救いのない破滅を防ぐために、炎と血飛沫の中を速度を上げて駆け抜ける。
そして、それらを見つめていた冷ややかな視線、空に浮かんだ巨大な月と心の中の金色の獣の目。
ー何ヲ驚イテルンダ、ズット、居タノニ。
相手はおかしそうに笑った。
(だって……だって)
のそりと立ち上がったライオンに、仁は座ったまま後じさりした。体が細かく震え出す。
緩やかに近寄った相手は、ゆっくりと首を伸ばし、味わうように首の根元に鼻先を押しつけてきた。震え続ける仁の体のにおいを嗅ぎ、獣くさい頭を胸元に下げる。そこにあるはずの傷がないのを確認し、不安に背ける仁の顔を覗き込みながら、のしかかる重量感で仁を押し倒す。これみよがしに開いてみせた大きな口に並んだ血に汚れた牙の間から、ぬるりと滑り出した舌が静かに仁の頬と胸元をなめた。
(いや…だ……)
ー御挨拶ダナ。
ライオンは仁の体に脚を乗せた。大きな爪がむき出しになっている。1本1本を食い込ませてくるようにじりじりと重みを加えながら、
ー仲間、ダロウ? ボクヲ呼ンダジャナイカ。
(…やめて…くれ……)
仁は呻いた。身動きできない体が苦しい。もがいて何とか相手の力から逃れようとする。
ーソレトモ。
ライオンはまた微かに苦笑したようだ。
ーコチラノ姿ノ方ガ、馴染ミガイイノカナ、仁ニハ。
ふいにのしかかっていた圧力が消えた。ライオンの姿がするすると収縮していく。やがて白く小さな、抱えてしまえるほどの赤ん坊になった。未発達の体はぬるぬるとした液体に濡れて真珠色に光っている。赤い2つの瞳孔も虹彩もない瞳が間近から覗き込んできながら、に、と明らかに笑った。
ーホウラ、ソックリダロ、アノ月ト。
小さな指が仁の視線を十分に引きつけて、暗闇に浮かぶ真珠色の球をさす。
球の中には少女が1人、水晶玉に閉じ込められた姫君のように微笑みながら両手を差し出している。黒い髪、朱い唇、けれど、その両手も体も真紅の血に染め上げられて、仁の救出を待っている。
(い、や…だ……っ!)
ーセッカク、仲間ト会エタノニ、ソッケナイナ、仁ハ。
『夏越』はだだっ子をたしなめるように溜息をついた。
ーソンナコト言ッテモ、彼女ハ待ッテクレナイヨ。ソレニ。
焦らすようにそっと続けた。
ーモウ君ノ手モ汚レテル。
仁は強ばって動かなくなった体を見回した。不安から、恐怖から動かないのだと思っていたのは間違いで、仁の体もまたしとどに紅の異臭のする液体に塗れていると気づいて呆然とする。
(僕…僕は……僕は……っ!)
ー忘レテナンカイナイヨネ。ボクヲ殺シタ……秀人ヲ殺シタ……救エルハズノ命ヲ見殺シニシタ。
『夏越』は楽しそうだった。
ーチカラハ何ノタメニアル? 誰カト生キルタメダト言ッテナカッタカイ? デモ、ソレハ祈リダ、現実ジャナイ。
(ごめん……)
仁は呻いた。血まみれの両手を握り締める。体が熱くなり、震えが止まらない。
ー現実ハコウダヨ。
もう1度、『印怒羅』との疾走が目の前で、今度は他者の視点で繰り返された。ヘルメットが透けて見える。得体の知れない男を相手に走る『印怒羅』の恐怖と怒りが伝わってくる。そして、仁は。
薄く笑っていた。
燃え盛る炎の中を潜りぬけながら、紅潮した頬と輝くような瞳が楽しんでいると教える。繰り返される殺意の鞭を巧みに間一髪でかわす興奮、自分の力の限界を試す喜びに体中の細胞を沸き立たせている。
仁の疾走に翻弄されて、1台、また1台と『印怒羅』が炎に焼かれて姿を消していく。絶命間近の悲鳴と命乞いをする叫びは仁の耳に届いている。
だが、仁は止まらない。止まらないまま死神を引き連れて夜の闇を走り抜けていく、極上のゲームをとことんまで味わい尽くすような陶酔に酔いしれて。
本当にそうだったのだろうか、と一瞬迷いが動いた。自分は彼らを助けたいと思っていたのではなかったのか。自分の力不足に苛立ち、何とかしたいと傷つきながら走っていたのではなかったか、と。
ーソウダヨ、君ハ傷ツイテタ……但シ、自分ノチカラノ無サニ傷ツイタンダ、失ワレル命ニ対シテジャナイ。
違う、と思いたかった。だが、目の前で繰り返される光景の仁は、明らかにそれを楽しんでいる。
(ごめ…助け…れなかった…ごめん……)
涙が零れ落ちた。拭うことさえできない朱に染まった掌を見る見るまだらに汚していく。
ー謝ラナクテイイノニ……・強者トシテハ当然ダヨ、弱イ者ガ堕チテイクノハ当タリ前ダ。至上ノ高ミサエ目指セバイインダ。
『夏越』はふうわりと仁の側に近寄った。耳もとで静かにそっとささやきかける。
ー仁、モウ行コウ、ココニ君ノ居場所ハナイヨ。
そうなのか、と仁の胸の中で小さな声が呟いた。自分はここにはいらないのか、と。
でも、とより小さな声が囁いた。
でも。
内田が。
居てくれるって。
仁が望む未来まで、付き合ってくれるって。
それはきっと負担になる、取り返しのつかないほど内田の人生を歪めてしまうだろう。
だから、胸の傷も消した。内田が仁の何に対しても責任など負わなくていいように。負担がきつくて耐えられなかったなら、すぐに離れていけるように。
でも、内田がそれを知ったら、きっと怒るだろう。勝手なことをしたとなじるに違いない。
(ごめ…ん……)
自分はきっと、とてつもなく愚かなのだろう。
そんな仁の心を見透かしたように、
ーマタ、内田ヲ傷ツケルノカイ?
『夏越』がうんざりしたように声を強めた。びく、と仁は体を強ばらせた。
ー君ノ側ニイルカギリ、彼ハズタズタニサレルヨ、彼女ニ。ワカッテルダロ?
(内田……)
くらくらと高温の鍋で煮られているような頭の中に、内田の足を長い間覆っていたギブスの白が閃いた。幾度か見た病院での光景が重なり合う。
カンファレンス・ルームでの城崎と内田のやりとり。対等な物言いとテンポの合った会話。相性がいい、お互いになじりあっているのによくわかりあってる空気。
診察に訪れたときの待ち合い室での看護師達の声。「あの内田って子、何度も来てるわね」「医者志望らしいわよ、城崎先生に進路のことを聞いてたから」。
内田が医者に? そんなことを聞いたのは初めてだ。レーサーかバイクショップをやりたいと言ってたのに。なぜ急に進路を変えたのだろう。
ついつい尋ねてしまった仁に、看護師達は内緒よ、と口止めしながら、「何でも大切な友達ができたから、力になりたいらしいわよ、先生にからかわれて怒ってたけど」。
大切な友達ができた……城崎のことだろうか。
『夏越』での怪我を治療したのは城崎だ、仁は巻き込み傷つけただけ。
(そう…か……そう…だな)
仁を支えてくれると言った。この不安定な能力が落着くまで側に居てくれると言っていた。
もし、制御がきかなくなってしまっても、2人で世界を征服すればいいと笑っていた、あの夕方の街の中。
けれど、それは同時に内田を危険に晒すに違いない。何度も死なせかけるに違いない。彼女にだけではなく、仁にもきっと殺されかけると言う意味なのに。そうだ、あのときはきっと、内田はまだそれに気づいてなかっただけなのだろう。
(そう…なんだな……)
ー大丈夫ダヨ、内田ノ花壇ヲ、今度ハ城崎ガ守ルサ。
『夏越』が軽く言い放って、喉を締めつけられたような気持ちになった。
ー仁、君ハ、内田ノ花壇ヲ守ルタメニ居タンダロ? ソウダヨネ?
(うん…そうだ…そうだっけ……)
ー側ニイルト言ッタノハ、内田ノ好意デ義務ジャナイ。
(ああ……そうだ)
ー内田ガ自分ヲ危険ニ晒サナクテモ、モウ彼ハ1人ジャナイヨ。城崎ガイル。彼ガ内田ヲ支エルヨ。仁ガ側ニイナクテイイ。
(そう…だね)
喉を締めつけたたがが外れた。加熱していた頭が見る見る醒めていく。
ー内田ハ、仲間ヲ見ツケタヨ。
(うん……)
ーソレハ仁ジャナカッタ。ソウイウコトダロ?
冷えていく頭と一緒に、体も芯から底から冷えていく。自分の身内から細胞が1つずつ壊れ崩れ落ちていくような気がする。なのに、皮だけはちゃんと残っていて、普段通りに振る舞える。何かがどうしようもなく拾えもしないぐらいに砕けたのに、それが何だかどうしてもわからない。
ーソレニ。
『夏越』は楽しむように上空を振仰いだ。
ーホラ、彼女ガマタ狩リニ出カケタ……今度ハまいやダ。
(え…?)
仁ははっとして空を見上げた。確かに真珠色の球は消えている。と、呼応するように切れ切れの鋭い悲鳴が届いてきた。覚えのある悲しみに満ちたその波長。
(マイヤ!)
ーだりゅーモ怒ッテル。仁ニイツマデモ関ワルカラダッテ。アレデ、終ワリニシテオケバヨカッタノニッテ。
(ごめん…マイヤ)
目眩がし始めた体を堪えた。視界が揺らめく。冷えた体に涙だけが異様に熱く頬を焦がしながら落ちていく。
もっと早く、わかっておくべきだった。もっと早く、始末しておくべきだった。『夏越』の言う通り、あの最後のときに内田に甘えたのが間違いだった。
仁こそが凶兆、仁こそが破滅の鏡。
迫ってきた狩人は写しに過ぎなかったのに、自分の影を相手にどうするつもりだったのか。屠ったところで、消え去るときにはきっと仁も同時なのだ。この世のどこにも居る場所なんてなかったのだ、始めから、ずっとずっと始めから。
ー生マレナケレバヨカッタンダ。ソンナコト、ワカッテイタ、ハズナノニ。
そのことばは仁が呟いたのか、『夏越』が囁いたのか。
混乱を見定めたように『夏越』の声が優しくことばを続けた。
ー紺野サンモ襲ワレタ、仁ニハ知ラサレテナイケド……ダッテサ、『敵』ニ教エルモノジャナイモノネ。
紺野さん? ああ、そうだ、城崎先生が大事に思ってるひとだ。
城崎はまだ気づいてないけど、仁にはわかる、城崎の深い傷を慈しむように癒せるのはきっとあの人だけだろう。
その紺野が襲われた。城崎はきっとうろたえているだろう、自分の気持ちに初めて気づいて。自分の気持ちを持て余して。
ー大切ナ人ガ標的ニナルヨ、仁。命ニ代エテモ守リタイト思ウヨウナ人ガ。
『夏越』のことばが胸に落ちるまで、少し時間がかかった。
ーワカルヨネ、次ハ誰ダカ。
(……内田!)
鋼の杭が胸に刺さる。
ーチカラガ欲シクナイカ、仁。狩人ヲ屠ルチカラサエアレバ守レル……ケレド、ソレハ人間、ナノカナ。
「!」
体中を強ばらせて仁は目を覚ました。
(夢……?)
一瞬、自分がどこにいるのかわからなくて瞬きする。無意識に胸元にやった手が外れているシャツのボタンに触れ、同時に枕元近くに放り出されたラッキーストライクに気がついた。
(ここ、内田の)
最後に空中に跳ね上がったのは覚えている。天空に真珠の球を見たのも。その中で微笑む、もう1人の自分の姿も。だが、その後落ちていきながら気を失ってしまった。
(僕は、ここへ飛んだのか)
自分の甘さが嫌になる。
シャツのボタンを外したのは内田だろうか。ならば気づいたはずだ、仁の傷がなくなっていることに。冷たいものが背筋を這い降りた。どうしてなんだ、と尋ねられるだろう。いったい、何をしたんだ、と。
尋ねる内田に、どう説明すればいいのかわからない。
(力を身につけたんだ、と?)
どうしてそんな力が欲しかったんだ、と問われるだろう。今でさえ、気を抜けばテレポーテーションする先さえ定められない、そんなあやふやな能力を何を考えて増やそうと言うのか、と。それは『夏越』とどう違うんだ、と。
(違う? いや、違わない…僕は『夏越』と変わらない…そんなこと、最初からわかってる…わかってたはずだろ、内田)
それとも……本当は、わかっていなかったのだろうか、内田も。
わかっていないからこそ、あんな約束ができたのだろうか。
仁が側にいると否応なく巻き込まれるから、それぐらいなら始めから居た方がいいと思って、あやふやなテレポーテーションにも付き合ってくれていたのだろうか。
ぴりぴりしながらシャツのボタンを止め直し、重い体をベッドから引きずり出すのに苦労していると、居間の方から話し声が聞こえてきているのに気がついた。
(電話?)
「ああ、わかった、あんたも無茶すんなよ、城崎」
内田の声が深い同情と思い遣りを込めて響いた。病棟で城崎とやりあうときには聞いたことのない大人びた声だ。温かな、元気づけるような。
(城崎……先生?)
仁は揺らめく足を踏みしめながら立ち上がり、そっと戸口に手をかけて居間を覗き込んだ。
『わかってる。命には別状ないが、確認はしておきたいからな。それから、仁を見つけても』
「ああ、わかってるって、仁には何にも話さねえよ」
(話せるかよ)
内田は胸の中で城崎の鈍感さに毒づいた。
関係のない『印怒羅』を巻き込んだ時点であれだけ苦しんでいる仁が、狩人の狙いが仁に関わる人間、しかも仁が守ろうとしている人間だなどとわかったら、何をするかは明らかだ。姿を消して、それこそ最悪、自分1人で相手の懐に飛び込んでしまいかねない。
『それに、しばらく病院にも来させるな。理由は何とでもいってくれ』
「あんたが痔で唸ってるとか?」
『ふざけるな。ダリューがぴりぴりしてるんだ』
城崎は忌々しげに唸った。
「ダリューが?」
内田の脳裏にカンファレンス・ルームで仁の話が出た時に顔を背けたダリューのことが蘇った。
(あいつはマイヤに惚れてるからな)
マイヤの怪我が仁の近くにいたせいだなどと思いたくはないだろうが、思ってしまうだろう、ダリューにはそういう不器用さがある。
「わかった、仁をそっちには近付けさせねえ。マイヤの手術が終わったらまた連絡くれ。紺野さんは落着いたのか?」
『ああ、そっちは大丈夫だ。仁のことを心配してる』
「ああ、そうだろうな」
うなされて朦朧としながら泣いていた仁、何とかあいつを楽にしてやらないと、そう考えながら何気なく振り返った内田は凍りついた。
「仁……」
いつ起きてきたのだろう。
境の扉に手をかけて、仁が立ち竦んでいる。乱れた髪も、危うげにけだるそうに立つ姿も、今にもぐずぐずと崩れそうな気配、それでも見開いた瞳が痛々しいほどまっすぐ内田を見つめている。いや、内田と、手にしている受話器とを。
『内田? おい、仁って……そこにいるのか? いつから?』
「こっちが聞きてえよ」
応えた自分の声がしわがれているのを感じた。
(どこから聞いてた……? どこまで聞いた……?)
ひんやりとした冷たい汗が流れてくる。
仁の顔は真っ白だ。血の気を失った唇が薄く開いて震えているのに、一言も声を出さない。ぐしゃぐしゃになった髪の下、瞳がどんどん暗くなる。さっき見開いた目よりも暗く、虚ろに光を失っていく。揺れながら上がった片方の手が、何かに縋るようにシャツの胸元を握り込む。そのシャツのボタンがきちんとかけ直されているのに、内田は水を浴びせられたような気になった。
(俺が気づいたって……知ってる)
『う・ち・だ』
仁の口がゆっくり動いた。だが、声になっていない。
(声が、出ない?)
内田だけではなくて、仁自身も困惑したような顔になって、喉に手を当てた。光の戻らない瞳が茫洋としている。道を見失ったような不安定な表情が仁の顔を覆っている。だが、それはあまりにもこの場面に不似合いな平板さだ。
(やばい……こいつ)
内田は唾を呑み込んだ。
(どこか、おかしい)
干涸びた喉からかろうじて声を絞り、喚き続けている受話器に応じる。
「切るぜ……城崎」
『おい! 内田!』
より激しく喚き始めた受話器を置く。
空気が痛い。きりきりと満ちて、内田を、仁を、切り裂いてでもいくようだ。
「仁?」
声で仁を刺激しないように、内田はそっと呼びかけた。不思議そうに自分の喉を探っていた相手が我に返ったようにこちらを見上げる。
「……」
無言のまま、仁は内田を見返し目を細めた。そのままぼんやりと微笑み、虚ろなアルカイックスマイルになった。するりと喉から手が滑り落ちる。緩むように泣き出しそうな幼い顔になって口を動かした。
『サ・ヨ・ナ・ラ』
「仁!」
内田はぞっとした。仁の姿が急速に揺らめき出し、そこだけ陽炎が立っているように空気が乱れる。
(1人でテレポーテーションする気だ!)
「待て、おい!!」
『ゴ・メ・ン』
ようやく深まった人なつこそうな笑みが仁の口元に広がった。だが、その笑みも見る見る薄まり仁の姿と一緒に消えていく。
「仁!! だめだ、行くな!!」
飛びかかった内田の手は空を掴んだ。それこそ幽霊のように仁の気配をすり抜けて、内田はそのまま寝室に転がり込んだ。必死にバランスを取って振り返る。
ちちち、と窓の外で鳥が鳴いた。
仁の姿は消え去っていた。
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