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5.再会の父(1)
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『夏越』の手がついに自分に回ったのか。
一瞬、仁はそう思った。
だが、仮に『夏越』が仁のことを知ったとしても、学校に訪ねて来るのは目立ち過ぎる。 『夏越』の目的が、今ある世界を破壊し、新しい『種』によって『世界の再構築』をすることならば、なおさらだ。
(じゃあ誰だ)
このタイミングのよさ、内田達と連絡が取れなくなったことと無関係とは思えない。
こくん、と喉を鳴らし、仁は緊張して歩き出した。
来賓室は職員室と校長室の間にある。そこまでの距離を、足下をさらう砂の中を逆行するように、進んでも進んでも辿り着けないものに感じた。
戸口まで来ると背後から慌ただしい足音が追って来た。
びくりとして立ち止まり、振り返らずにそのまま数秒、しかし足音は立ち竦んでいる仁の側をすり抜けて職員室に飛び込んでいく。
図書館にいた司書だ。
喚きあう声が響いて、けたたましく職員室のドアが引き開けられ、飛び出して来た数人の教師がうろたえた顔の司書と一緒に廊下を走り出す。
仁は入り乱れた足音が廊下の彼方へ走り去っていくのと同時に肩から力を抜いた。緊張感に胃の辺りが痛むのを深い息を吐き出して紛らせ、来賓室のドアをノックする。
「入りなさい」
「失礼します」
仁はドアを開け、自分を迎えた校長に頭を下げかけ、固まった。
「どうしたのかね?」
「い、いえ」
ごまかして笑っても、視線は校長の前に座っている男に引き寄せられる。
男は仁を見ると、ゆっくりとした動作で立ち上がった。
髪に白いものが目立っていた。想像していたよりうんと老けている。灰色に近い顔色は行方不明になっていた間の苦労のせいだろうか。目が落ち窪み、影を落とすような眉の下でひどく大きく暗く見えた。乾いた唇を少し含んで湿らせ、相手は精一杯という感じの笑みを作ってみせた。
「……やあ……仁」
それは紛れもなく、父親、浅葱豊だった。
「お父さんは、都合で予定より早く病院を出られたそうだ。お母さんはまだ勤務中だからと、こちらへ来られたのだよ」
「家の鍵が……なくってね」
(あんたにどうして僕の家の鍵が必要なんだ)
喉までせり上がったことばを、仁は噛み殺した。穏やかに笑っている相手を睨みつける。
2人の関係がただならぬものになっていると気づいたのだろう、校長は突然激しくノックされたドアに、軽く眉をしかめながらもするりと仁と父親の間から逃れた。
「どうだね、今日はお父さんと一緒に帰ったら。残りの授業の事は担任に話しておくよ……何だね?」
ドアを開けて半身乗り出し廊下からの声に応じた校長は、ふいに慌てた様子になった。せかせかと仁達の側に戻ってくると、依然、無言のままで睨み合っている父子に困ったように瞬きし、仕方ないと言った表情で豊に声をかけた。
「ああ、すみません、何か急な連絡が入ったようで……」
「お手数をおかけしました。後は私が」
「そうですか、まあ、では。浅葱君、そういうことで、もう帰ってもいいからね」
豊が丁寧に下げた頭を、校長は振り返らなかった。急いでドアを閉める、その向こうで「図書室がどうした、だと?」と苛立たし気に問い直す声がした。
「仁……大きくなったな……元気そうだ」
豊は改めて仁に向き直り、微笑んだ。
「お前は大丈夫だ………頑張ってくれると思っていたよ」
苛立たしい酸っぱさを伴った思い出が、仁の胸に鮮烈に蘇った。
小学校でいじめられていたことがある。
後から思うと、きっかけは仁の持っていた筆箱だった。何が周囲に不愉快だったのだろう。父の手作りだったことか、それとも珍しい筆箱だったことか。今ではもうはっきりしない。
誰が始めるともなく、クラスの中で無視され出して、誰とも遊べず誰とも話せない。自分のせいとも言い切れず、そのときはいじめられる理由もわからないまま、学校に行くのも辛く、家に居るのも辛くて、死んでしまえばいいのかも、と思ったこともある。
ある日、学校帰りの仁を父親が校門の陰で待ち受けていた。
驚いて会社はどうしたの、と聞くと、豊は気にするな、と笑ってみせた。「お前が大変なことはわかってる」そう言われて、仁は体が熱くなった。
「そんな時に、知らん顔して会社で働いているわけにもいかないだろう。母さんに話したくないのもわかってる。だから、お前と話そうと思ってね。話してくれ、父さんに。一緒にどうしたらいいのか、考えてみよう」
それから何度も、仁は父親と話し合った。何が原因なのか、どうしたらいいのか、どう感じているのか。それから、仁のしたい事、夢や望み、怖がったり不安がったりしているいろんなことについても。
学校や友達に何を働きかけたわけでもなかったし、いじめがすぐにあっさりなくなったわけでもなかったが、自分の後ろにはいつも父が居て、身動き取れなくなれば庇い、怯めば支え、進もうとするときには押し出してくれる、とわかっていた。だから自分は1人ではないのだ、自分は自分の道を歩けばいいのだ、と仁は信じることができた。
新しい学年になり、クラスが変わって、それでも味をしめていた旧友達が再び同じいじめを始めようとしたとき、仁は堂々と問いかけることさえできた。
なぜ、そんなことをするのか、誰にも納得させられるような説明ができるのか、そんなことをして本当に心の底から楽しいと思ってるのか、と。
いい加減飽きていた連中もいたのだろう。いじめはもう始まらなかった。
そのことを仁が父親に話した時、豊はにこにこ笑ってうなずき、ぽつりと言った。
「そうだ、お前は大丈夫だ」
それから、いろんなことで仁が傷つき落ち込むたびに、じっくり話を聞いてくれた後に豊は必ずそのことばを繰り返した。「大変だったな。だが、うん、お前は大丈夫だ」。
それを聞くたびに、仁もそう信じられた。自分は大丈夫だ、と。
豊が失踪してしまうまでは。
「仁……」
何も答えようとしない仁に豊は不審そうな声になった。そこで初めて、息子が昔の息子ではなくなっていると気づいたらしい。不安そうに眉をしかめ、仁を凝視したまま口をつぐんだ。
「……鞄を取ってくる」
仁はようようつぶやいた。ほっとしたように笑う相手が腹立たしい。
(くそっ)
飛び出すように来賓室を出て、午後から早退することを申し出ようとしたが、職員室には誰もいなかった。遠くから救急車のサイレンが響き、次第次第に数を増し、こちらへ近づいて来るようだ。
(誰か怪我をした?)
あたりまえだ、あんなふうに図書室の棚が次々倒れて、椅子や机が跳ね飛んでいたなら。
仁はぞくりと体を竦めた。
震える体をごまかすように、仁は体を翻して教室へ戻った。
教室も騒がしかった。授業が潰れそうだと喜ぶ者、図書室へ何が起こったのか見に行こうとする者、オカルト雑誌を広げて解説にかかる者、我関せずと違う話題で盛り上がる者。
けれど、その中でひっそりと鞄に教科書を詰めて出ていった仁が原因だなどと思うものは、誰1人としていないはずだ。
仁は数時間で人生の半分ほども疲れていた。
「すまなかったな」
豊は自分の側で黙々と歩く息子を気遣うように繰り返した。
「すまなかった」
校門を出た所で救急車とすれ違った。仁はとっさに目を伏せた。赤くきらめく回転灯も白く無機質な車体も、仁を責めてくるようでそちらを見られなかった。
「苦労をかけたと思う」
豊がぽつり、とつぶやいた。
「すぐに帰れる、つもりだったんだ」
(昔からそうだ)
言い辛いことや大切なことを話す時、豊はことばを少なく区切った。
そうすることで、ことばとことばの間の沈黙が、口に出さなかった部分をうまく補ってくれるとでも考えているように。
「お父さんも、帰りたかったよ」
(じゃあ、なぜ帰って来なかったんだよ)
仁は胸の内でつぶやいた。
もう、10やそこらの子どもではない。
たとえ父親が何を言おうと、それなりに冷静に対処できると思っていた。豊がいなくなってからの仁の生活は、何も問題が起こっていないように平静に振る舞う緊張で満ちている。その日々を生き抜いて来た自分の精神力に、仁は多少の自負を持っていた。
だが、こうして目の前で、昔のままの懐かしい口調で話し掛けられると、心は抑えきれない傷みに揺れた。
(人間は1人で生きてるんじゃない、力や才能で人間の価値が決まるわけじゃないって言ってたのはあんただ)
仁は胸の中のうめき声を聞いた。
(なのに、あんたは、僕に母さんを任せて、1人で消えた)
振り返れば、豊は、必要以上に『人間は』ということばを口にしていたように思う。そう、まるで、人間じゃない『何か』を知っているみたいに。
(まさか、父さんは、ずっと僕達を騙していたのか?)
そう思った瞬間、仁は目の奥に何か閃光のようなものがひらめくのを感じた。
(何?)
豊だ。
豊が透明なガラスケースに並べられた幾つものシャーレの上に屈み込んでいる。
どこかの研究室のように見える実験用具に囲まれて、すぐ側で白衣を着た数人の男女が同じように豊の前のシャーレを覗き込んでいる。
シャーレの中には何かの細胞のようなものが入っているようだ。
それに豊は話し掛けている、ようにも見える。
チカ、と光が煌めいて、画面を真っ白に覆い、すぐに別の映像が見えた。
大人が両手を広げたぐらいの水槽だ。かなり大きい。暗い部屋の中に置かれていて、真珠色に輝く妙な液体が一杯に入っている。
その中に、白いものがゆっくりと浮き沈みしている。
いや、何かがその中に居て、動いているようだ。くるりと振り返ったような気配、水槽の中央に突然真っ赤な二つの色が灯る。その色がきょときょとと動いた。まるで、今ここにいる仁を画像の中から探しているように。
(赤い……目……?)
チカ。また、画面が変わった。
何からせん階段のようなものが二つ絡みあっている。
蛇にも見える。2匹の蛇がお互いの間に細い橋、細かな粒子で作られた繊細な橋を渡しながら絡みあい、一定の距離を保ったままで巻き上がっている。
豊の声が響いた気がした。
『目覚めよ』
そう聴こえた。
応じるように、そのらせんの橋の1ケ所が一瞬切れ、また繋がったように思えた。その前と後ではらせんが微妙に変わっている。
(どこが?)
ーイマハマダワカラナイ。
誰かがつぶやく。
ーモット後ダ。
(もっと後?)
チカ。
のっぺりとした印象の男がしゃべっている。ことばは聞こえない。名前はマタケ。少しずつ、動いている口から声が聞こえてくる、ことばになってくる……「あなたの力が必要だ、浅葱豊さん」「私の、力?」。
豊のためらうような、けれどどこか、密やかな喜びに満ちたような声。
その印象が鋭く仁の胸を刺す。
(あんたは、喜んだのか、力を認められたと知って)
チカ。
『夏越』。
「!」
仁は突然立ち止まった。
閃いた印象に重なって感じたことばが信じられず、瞬きする。
「父……さん?」
仁は固まってしまった首を無理に動かして、隣の父親を振仰いだ。
「何だね?」
何を言っても反応せず、黙り続けていた息子が答えてくれた、と綻びかけた豊の唇が、続いた仁のことばに一瞬にして白くなった。
「『夏越』……って、どうして知ってるの?」
「じ……ん……?」
そこは商店街を貫いている道だった。いつも狭くて、車の往来もままならない。夕方は混み合って、特に歩行者は道の端に追いやられる。夕飯の用意を整える買い物客や、学校帰りらしくふざけあう小学生達、立ち止まった仁と豊をうっとうしがりながら、それでも通り過ぎる風景の一つとして、人々は二人の周囲を流れていく。
賑やかで温かな人込みの中、親子は凍りついたようにお互いを見つめあっていた。
「何……だって?」
豊が掠れた声で問い返す。訝しげな、そのくせ、仁が何を言おうとしているのかを察したような、ひきつった顔で。
その父親の後ろに、さっき水槽の中で見た、真っ赤な2つの赤い瞳が見えた。
薄笑いをしている冷ややかな色だ。残忍で容赦のない神のような目。それが、豊の背後に、彼を守るように支配するように浮かんでいる。
(これが、『夏越』だ)
仁の体を震えが走り抜けた。
圧倒的な力の感覚。その力を十二分に周囲に知らしめずにはいられない欲望。さっきの父親の声の中にも微かに灯っていたもの。その辿り着く先は、己の存在こそ全てに優先するのだとする意識だ。
力こそ正義、力こそ存在理由、力こそ世の法則を決めるもの。
そして、その力は、自らを守る為だけに存在してしかるべき。
己に背く者は消滅させてあたりまえとする冷えた思考。目の前を遮る者は、たとえ赤ん坊でも踏みつぶす。
仁の体を細かな震えが襲い始めた。
それはかつての豊にはなかったはずのものだった。かつての豊なら、力は自分を守る為ではなく、人と生きる為にあるのだと話したはずだ。
(それとも、父さんの中にも、実はあった? 自分の力を、どんな方向であろうと存分に使いたいと思う気持ちが? それが『夏越』を呼び寄せた?)
仁の脳裏に図書室をめちゃくちゃにしていく『力』が過った。
仁はただ、内田の居場所を調べたかっただけなのだ。
だが、『力』は図書室を『調べ回り』、見つからないとなると、癇癪を起こした小さな子どものように、部屋の中をなぎ倒しながら暴れ狂った。
『力』が解放されるに従って仁を苦しめる頭痛はなくなり、『力』の暴走は仁にとっては『安らぎ』を与えたのではなかったか?
(僕も同じ? マイヤと同じ? 誰も傷つけたくないと思っていたんじゃなくて、自分の力を使う場所を探してただけ? それがたまたま『図書室』だっただけ? 『夏越』の下でなく、人殺しではなかっただけ? じゃあ、父さんは? 父さんは何をした?)
目覚めよ。
豊はそう呼び掛けていた。何に向かって?
誰に向かって?
混乱し入り混じる思考に仁は口走った。
「父さんは『夏越』の所にいたの?」
「なに……?」
なお青くなった豊の顔色に、仁の不吉な予感が弾けた。
突然変異のように出現した『夏越』。超能力者、と言うにもあまりにも遥かに巨大な能力を生まれたときから備えていたのはなぜなのか? 何が、彼を、生み出したのか?
仁はかたかたと自分の歯が鳴るのを感じた。
マイヤが泣いていた、生きる場所が見つからないと。さとるが怯えていた、仁が『夏越』に似ていると。
(なぜ、似ている?)
そこに続く思考を断ち切り、 不安に震える体を抱いて後ずさりしながら仁は叫んだ。
「父さんは『夏越』の所で、いったい、何をしていたんだよ……!」
「仁…仁!」
豊はいきなり強く仁の手を掴んだ。急いで周囲を見回し引きずるように側の小道へ入り込んでいく。
その先には小さな公園があった。申し訳程度に置かれた地味な緑の滑り台、子どもが5人いれば一杯になりそうな砂場、錆びた鉄棒。
いつもなら遊んでいる幼い子ども達も、もう家に帰ってしまったのか、誰もいない。周囲の金網に添って植えられた木は随分茂って街から公園を隔離でもしているようだ。
激しい勢いで仁を公園に連れてくると、豊は真っ青な顔で咳き込むように尋ねた。
「どうして、お前が『夏越』様のことを知ってる? 誰から聞いた?」
「放せよ!」
仁は豊の手を振りほどいた。
「じゃあ、やっぱりそうなんだ、『夏越』のところにいたんだ……!」
叫びかけて、仁はふいに気がついた。
豊は、『夏越』様、と呼んだのだ、マイヤ達みたいに、『夏越』の仲間のように。
(仲間、のように?)
マイヤのことばが仁の耳の奥で谺した。
『夏越』は超能力者を集めている。人類の『種』としての進化を示すもの、として。新しい世界を作る為に。超能力者による、新しい社会を作り直す為に。
豊は『夏越』の仲間と同じように『夏越』を『夏越』様、と呼ぶ。
そして、豊の息子である仁は、なぜか急に超能力に目覚めてしまった。
(『種』とは何? 何で媒介されていく?)
仁の心の中で冷徹な審判者が断罪への理論を組み立てていく。
(DNA……遺伝……血の、繋がり、だ。僕とお父さんのように)
「父さんも………超能力者なの……?」
仁は乾き切った喉から無理矢理ことばを押し出した、間違っていてくれと祈りながら。
「父さんも、って…………だが、お前は……」
父親が寸前に呑み込んだことばを、仁ははっきりと聞き取ることが出来た。
『だが、お前は、普通の子どもだったじゃないか』
泣き出しそうな仁の顔に、豊は突然全てを悟ったようだった。次第に強ばり灰色になっていく顔で、仁を見つめながら、幾度かあやふやに首を振る。
「まさか……」
掠れた声が漏れた。
「まさか、仁………」
自分の不安を押し殺そうとするように、おどおどと肩に置こうとする豊の手を、仁は避けた。
「父さん」
呼び掛けた自分の声がパニックを押さえかねて涙声になっているのを、仁は感じた。
(父さんが超能力者? 父さんは『夏越』の仲間?)
脳裏を、泣き出したマイヤの顔、怯え切ったさとるの顔が過っていく。
「父さん……『夏越』って何だよ? どこにいるんだ? 父さんは……父さんは『夏越』の所で、いったい何をしてたんだよ?」
一瞬、仁はそう思った。
だが、仮に『夏越』が仁のことを知ったとしても、学校に訪ねて来るのは目立ち過ぎる。 『夏越』の目的が、今ある世界を破壊し、新しい『種』によって『世界の再構築』をすることならば、なおさらだ。
(じゃあ誰だ)
このタイミングのよさ、内田達と連絡が取れなくなったことと無関係とは思えない。
こくん、と喉を鳴らし、仁は緊張して歩き出した。
来賓室は職員室と校長室の間にある。そこまでの距離を、足下をさらう砂の中を逆行するように、進んでも進んでも辿り着けないものに感じた。
戸口まで来ると背後から慌ただしい足音が追って来た。
びくりとして立ち止まり、振り返らずにそのまま数秒、しかし足音は立ち竦んでいる仁の側をすり抜けて職員室に飛び込んでいく。
図書館にいた司書だ。
喚きあう声が響いて、けたたましく職員室のドアが引き開けられ、飛び出して来た数人の教師がうろたえた顔の司書と一緒に廊下を走り出す。
仁は入り乱れた足音が廊下の彼方へ走り去っていくのと同時に肩から力を抜いた。緊張感に胃の辺りが痛むのを深い息を吐き出して紛らせ、来賓室のドアをノックする。
「入りなさい」
「失礼します」
仁はドアを開け、自分を迎えた校長に頭を下げかけ、固まった。
「どうしたのかね?」
「い、いえ」
ごまかして笑っても、視線は校長の前に座っている男に引き寄せられる。
男は仁を見ると、ゆっくりとした動作で立ち上がった。
髪に白いものが目立っていた。想像していたよりうんと老けている。灰色に近い顔色は行方不明になっていた間の苦労のせいだろうか。目が落ち窪み、影を落とすような眉の下でひどく大きく暗く見えた。乾いた唇を少し含んで湿らせ、相手は精一杯という感じの笑みを作ってみせた。
「……やあ……仁」
それは紛れもなく、父親、浅葱豊だった。
「お父さんは、都合で予定より早く病院を出られたそうだ。お母さんはまだ勤務中だからと、こちらへ来られたのだよ」
「家の鍵が……なくってね」
(あんたにどうして僕の家の鍵が必要なんだ)
喉までせり上がったことばを、仁は噛み殺した。穏やかに笑っている相手を睨みつける。
2人の関係がただならぬものになっていると気づいたのだろう、校長は突然激しくノックされたドアに、軽く眉をしかめながらもするりと仁と父親の間から逃れた。
「どうだね、今日はお父さんと一緒に帰ったら。残りの授業の事は担任に話しておくよ……何だね?」
ドアを開けて半身乗り出し廊下からの声に応じた校長は、ふいに慌てた様子になった。せかせかと仁達の側に戻ってくると、依然、無言のままで睨み合っている父子に困ったように瞬きし、仕方ないと言った表情で豊に声をかけた。
「ああ、すみません、何か急な連絡が入ったようで……」
「お手数をおかけしました。後は私が」
「そうですか、まあ、では。浅葱君、そういうことで、もう帰ってもいいからね」
豊が丁寧に下げた頭を、校長は振り返らなかった。急いでドアを閉める、その向こうで「図書室がどうした、だと?」と苛立たし気に問い直す声がした。
「仁……大きくなったな……元気そうだ」
豊は改めて仁に向き直り、微笑んだ。
「お前は大丈夫だ………頑張ってくれると思っていたよ」
苛立たしい酸っぱさを伴った思い出が、仁の胸に鮮烈に蘇った。
小学校でいじめられていたことがある。
後から思うと、きっかけは仁の持っていた筆箱だった。何が周囲に不愉快だったのだろう。父の手作りだったことか、それとも珍しい筆箱だったことか。今ではもうはっきりしない。
誰が始めるともなく、クラスの中で無視され出して、誰とも遊べず誰とも話せない。自分のせいとも言い切れず、そのときはいじめられる理由もわからないまま、学校に行くのも辛く、家に居るのも辛くて、死んでしまえばいいのかも、と思ったこともある。
ある日、学校帰りの仁を父親が校門の陰で待ち受けていた。
驚いて会社はどうしたの、と聞くと、豊は気にするな、と笑ってみせた。「お前が大変なことはわかってる」そう言われて、仁は体が熱くなった。
「そんな時に、知らん顔して会社で働いているわけにもいかないだろう。母さんに話したくないのもわかってる。だから、お前と話そうと思ってね。話してくれ、父さんに。一緒にどうしたらいいのか、考えてみよう」
それから何度も、仁は父親と話し合った。何が原因なのか、どうしたらいいのか、どう感じているのか。それから、仁のしたい事、夢や望み、怖がったり不安がったりしているいろんなことについても。
学校や友達に何を働きかけたわけでもなかったし、いじめがすぐにあっさりなくなったわけでもなかったが、自分の後ろにはいつも父が居て、身動き取れなくなれば庇い、怯めば支え、進もうとするときには押し出してくれる、とわかっていた。だから自分は1人ではないのだ、自分は自分の道を歩けばいいのだ、と仁は信じることができた。
新しい学年になり、クラスが変わって、それでも味をしめていた旧友達が再び同じいじめを始めようとしたとき、仁は堂々と問いかけることさえできた。
なぜ、そんなことをするのか、誰にも納得させられるような説明ができるのか、そんなことをして本当に心の底から楽しいと思ってるのか、と。
いい加減飽きていた連中もいたのだろう。いじめはもう始まらなかった。
そのことを仁が父親に話した時、豊はにこにこ笑ってうなずき、ぽつりと言った。
「そうだ、お前は大丈夫だ」
それから、いろんなことで仁が傷つき落ち込むたびに、じっくり話を聞いてくれた後に豊は必ずそのことばを繰り返した。「大変だったな。だが、うん、お前は大丈夫だ」。
それを聞くたびに、仁もそう信じられた。自分は大丈夫だ、と。
豊が失踪してしまうまでは。
「仁……」
何も答えようとしない仁に豊は不審そうな声になった。そこで初めて、息子が昔の息子ではなくなっていると気づいたらしい。不安そうに眉をしかめ、仁を凝視したまま口をつぐんだ。
「……鞄を取ってくる」
仁はようようつぶやいた。ほっとしたように笑う相手が腹立たしい。
(くそっ)
飛び出すように来賓室を出て、午後から早退することを申し出ようとしたが、職員室には誰もいなかった。遠くから救急車のサイレンが響き、次第次第に数を増し、こちらへ近づいて来るようだ。
(誰か怪我をした?)
あたりまえだ、あんなふうに図書室の棚が次々倒れて、椅子や机が跳ね飛んでいたなら。
仁はぞくりと体を竦めた。
震える体をごまかすように、仁は体を翻して教室へ戻った。
教室も騒がしかった。授業が潰れそうだと喜ぶ者、図書室へ何が起こったのか見に行こうとする者、オカルト雑誌を広げて解説にかかる者、我関せずと違う話題で盛り上がる者。
けれど、その中でひっそりと鞄に教科書を詰めて出ていった仁が原因だなどと思うものは、誰1人としていないはずだ。
仁は数時間で人生の半分ほども疲れていた。
「すまなかったな」
豊は自分の側で黙々と歩く息子を気遣うように繰り返した。
「すまなかった」
校門を出た所で救急車とすれ違った。仁はとっさに目を伏せた。赤くきらめく回転灯も白く無機質な車体も、仁を責めてくるようでそちらを見られなかった。
「苦労をかけたと思う」
豊がぽつり、とつぶやいた。
「すぐに帰れる、つもりだったんだ」
(昔からそうだ)
言い辛いことや大切なことを話す時、豊はことばを少なく区切った。
そうすることで、ことばとことばの間の沈黙が、口に出さなかった部分をうまく補ってくれるとでも考えているように。
「お父さんも、帰りたかったよ」
(じゃあ、なぜ帰って来なかったんだよ)
仁は胸の内でつぶやいた。
もう、10やそこらの子どもではない。
たとえ父親が何を言おうと、それなりに冷静に対処できると思っていた。豊がいなくなってからの仁の生活は、何も問題が起こっていないように平静に振る舞う緊張で満ちている。その日々を生き抜いて来た自分の精神力に、仁は多少の自負を持っていた。
だが、こうして目の前で、昔のままの懐かしい口調で話し掛けられると、心は抑えきれない傷みに揺れた。
(人間は1人で生きてるんじゃない、力や才能で人間の価値が決まるわけじゃないって言ってたのはあんただ)
仁は胸の中のうめき声を聞いた。
(なのに、あんたは、僕に母さんを任せて、1人で消えた)
振り返れば、豊は、必要以上に『人間は』ということばを口にしていたように思う。そう、まるで、人間じゃない『何か』を知っているみたいに。
(まさか、父さんは、ずっと僕達を騙していたのか?)
そう思った瞬間、仁は目の奥に何か閃光のようなものがひらめくのを感じた。
(何?)
豊だ。
豊が透明なガラスケースに並べられた幾つものシャーレの上に屈み込んでいる。
どこかの研究室のように見える実験用具に囲まれて、すぐ側で白衣を着た数人の男女が同じように豊の前のシャーレを覗き込んでいる。
シャーレの中には何かの細胞のようなものが入っているようだ。
それに豊は話し掛けている、ようにも見える。
チカ、と光が煌めいて、画面を真っ白に覆い、すぐに別の映像が見えた。
大人が両手を広げたぐらいの水槽だ。かなり大きい。暗い部屋の中に置かれていて、真珠色に輝く妙な液体が一杯に入っている。
その中に、白いものがゆっくりと浮き沈みしている。
いや、何かがその中に居て、動いているようだ。くるりと振り返ったような気配、水槽の中央に突然真っ赤な二つの色が灯る。その色がきょときょとと動いた。まるで、今ここにいる仁を画像の中から探しているように。
(赤い……目……?)
チカ。また、画面が変わった。
何からせん階段のようなものが二つ絡みあっている。
蛇にも見える。2匹の蛇がお互いの間に細い橋、細かな粒子で作られた繊細な橋を渡しながら絡みあい、一定の距離を保ったままで巻き上がっている。
豊の声が響いた気がした。
『目覚めよ』
そう聴こえた。
応じるように、そのらせんの橋の1ケ所が一瞬切れ、また繋がったように思えた。その前と後ではらせんが微妙に変わっている。
(どこが?)
ーイマハマダワカラナイ。
誰かがつぶやく。
ーモット後ダ。
(もっと後?)
チカ。
のっぺりとした印象の男がしゃべっている。ことばは聞こえない。名前はマタケ。少しずつ、動いている口から声が聞こえてくる、ことばになってくる……「あなたの力が必要だ、浅葱豊さん」「私の、力?」。
豊のためらうような、けれどどこか、密やかな喜びに満ちたような声。
その印象が鋭く仁の胸を刺す。
(あんたは、喜んだのか、力を認められたと知って)
チカ。
『夏越』。
「!」
仁は突然立ち止まった。
閃いた印象に重なって感じたことばが信じられず、瞬きする。
「父……さん?」
仁は固まってしまった首を無理に動かして、隣の父親を振仰いだ。
「何だね?」
何を言っても反応せず、黙り続けていた息子が答えてくれた、と綻びかけた豊の唇が、続いた仁のことばに一瞬にして白くなった。
「『夏越』……って、どうして知ってるの?」
「じ……ん……?」
そこは商店街を貫いている道だった。いつも狭くて、車の往来もままならない。夕方は混み合って、特に歩行者は道の端に追いやられる。夕飯の用意を整える買い物客や、学校帰りらしくふざけあう小学生達、立ち止まった仁と豊をうっとうしがりながら、それでも通り過ぎる風景の一つとして、人々は二人の周囲を流れていく。
賑やかで温かな人込みの中、親子は凍りついたようにお互いを見つめあっていた。
「何……だって?」
豊が掠れた声で問い返す。訝しげな、そのくせ、仁が何を言おうとしているのかを察したような、ひきつった顔で。
その父親の後ろに、さっき水槽の中で見た、真っ赤な2つの赤い瞳が見えた。
薄笑いをしている冷ややかな色だ。残忍で容赦のない神のような目。それが、豊の背後に、彼を守るように支配するように浮かんでいる。
(これが、『夏越』だ)
仁の体を震えが走り抜けた。
圧倒的な力の感覚。その力を十二分に周囲に知らしめずにはいられない欲望。さっきの父親の声の中にも微かに灯っていたもの。その辿り着く先は、己の存在こそ全てに優先するのだとする意識だ。
力こそ正義、力こそ存在理由、力こそ世の法則を決めるもの。
そして、その力は、自らを守る為だけに存在してしかるべき。
己に背く者は消滅させてあたりまえとする冷えた思考。目の前を遮る者は、たとえ赤ん坊でも踏みつぶす。
仁の体を細かな震えが襲い始めた。
それはかつての豊にはなかったはずのものだった。かつての豊なら、力は自分を守る為ではなく、人と生きる為にあるのだと話したはずだ。
(それとも、父さんの中にも、実はあった? 自分の力を、どんな方向であろうと存分に使いたいと思う気持ちが? それが『夏越』を呼び寄せた?)
仁の脳裏に図書室をめちゃくちゃにしていく『力』が過った。
仁はただ、内田の居場所を調べたかっただけなのだ。
だが、『力』は図書室を『調べ回り』、見つからないとなると、癇癪を起こした小さな子どものように、部屋の中をなぎ倒しながら暴れ狂った。
『力』が解放されるに従って仁を苦しめる頭痛はなくなり、『力』の暴走は仁にとっては『安らぎ』を与えたのではなかったか?
(僕も同じ? マイヤと同じ? 誰も傷つけたくないと思っていたんじゃなくて、自分の力を使う場所を探してただけ? それがたまたま『図書室』だっただけ? 『夏越』の下でなく、人殺しではなかっただけ? じゃあ、父さんは? 父さんは何をした?)
目覚めよ。
豊はそう呼び掛けていた。何に向かって?
誰に向かって?
混乱し入り混じる思考に仁は口走った。
「父さんは『夏越』の所にいたの?」
「なに……?」
なお青くなった豊の顔色に、仁の不吉な予感が弾けた。
突然変異のように出現した『夏越』。超能力者、と言うにもあまりにも遥かに巨大な能力を生まれたときから備えていたのはなぜなのか? 何が、彼を、生み出したのか?
仁はかたかたと自分の歯が鳴るのを感じた。
マイヤが泣いていた、生きる場所が見つからないと。さとるが怯えていた、仁が『夏越』に似ていると。
(なぜ、似ている?)
そこに続く思考を断ち切り、 不安に震える体を抱いて後ずさりしながら仁は叫んだ。
「父さんは『夏越』の所で、いったい、何をしていたんだよ……!」
「仁…仁!」
豊はいきなり強く仁の手を掴んだ。急いで周囲を見回し引きずるように側の小道へ入り込んでいく。
その先には小さな公園があった。申し訳程度に置かれた地味な緑の滑り台、子どもが5人いれば一杯になりそうな砂場、錆びた鉄棒。
いつもなら遊んでいる幼い子ども達も、もう家に帰ってしまったのか、誰もいない。周囲の金網に添って植えられた木は随分茂って街から公園を隔離でもしているようだ。
激しい勢いで仁を公園に連れてくると、豊は真っ青な顔で咳き込むように尋ねた。
「どうして、お前が『夏越』様のことを知ってる? 誰から聞いた?」
「放せよ!」
仁は豊の手を振りほどいた。
「じゃあ、やっぱりそうなんだ、『夏越』のところにいたんだ……!」
叫びかけて、仁はふいに気がついた。
豊は、『夏越』様、と呼んだのだ、マイヤ達みたいに、『夏越』の仲間のように。
(仲間、のように?)
マイヤのことばが仁の耳の奥で谺した。
『夏越』は超能力者を集めている。人類の『種』としての進化を示すもの、として。新しい世界を作る為に。超能力者による、新しい社会を作り直す為に。
豊は『夏越』の仲間と同じように『夏越』を『夏越』様、と呼ぶ。
そして、豊の息子である仁は、なぜか急に超能力に目覚めてしまった。
(『種』とは何? 何で媒介されていく?)
仁の心の中で冷徹な審判者が断罪への理論を組み立てていく。
(DNA……遺伝……血の、繋がり、だ。僕とお父さんのように)
「父さんも………超能力者なの……?」
仁は乾き切った喉から無理矢理ことばを押し出した、間違っていてくれと祈りながら。
「父さんも、って…………だが、お前は……」
父親が寸前に呑み込んだことばを、仁ははっきりと聞き取ることが出来た。
『だが、お前は、普通の子どもだったじゃないか』
泣き出しそうな仁の顔に、豊は突然全てを悟ったようだった。次第に強ばり灰色になっていく顔で、仁を見つめながら、幾度かあやふやに首を振る。
「まさか……」
掠れた声が漏れた。
「まさか、仁………」
自分の不安を押し殺そうとするように、おどおどと肩に置こうとする豊の手を、仁は避けた。
「父さん」
呼び掛けた自分の声がパニックを押さえかねて涙声になっているのを、仁は感じた。
(父さんが超能力者? 父さんは『夏越』の仲間?)
脳裏を、泣き出したマイヤの顔、怯え切ったさとるの顔が過っていく。
「父さん……『夏越』って何だよ? どこにいるんだ? 父さんは……父さんは『夏越』の所で、いったい何をしてたんだよ?」
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