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14.鳴滝(2)
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空気は生温く護王を包んでいる。気持ちも心も、もうそれほどもたないことを護王は感じ取っている。
ひたすらに診療所に急ぐのは最後のケリをつけるためだ。
洋子を追い詰めたもの全てをこの手で始末するためだ。
「姫さん……待っててな…?」
今度こそ連れていってくれるやろ、と低い声でつぶやいて微かに笑う顔に正気は残っていない。
あれだけの出血を続けて、人間がもつわけがないことを護王は知っている。飽きるほど長い人生の中で、繰り返した人との別れの中で、よく、知っている。
「嘘つき村上」
日高の診療所で洋子の死体が切り刻まれでもしていたら、その欠片全て掻き集める。流れた血も、肉も、何もかも引き寄せ抱き締め口づけて自分のものにする。
そう考えて護王は詰まった笑い声を上げた。
「なんや……俺も……ほんまに姫さんを喰いたかったんか…」
そうだ、喰いたい、喰らい尽くしてしまいたい。
白い喉を、細い手首を、柔らかな腹を、甘い香りを放つ身体を味わったのはいつだったのか。
もっと深く、もっと奥まで。
吐息を、血の鼓動を、耳を侵す掠れた声を、もっともっと深く。
思い出せば身体は熱くなり、沸き立っていく。
細胞全てが欲している。
あの黄金の魂を。
自分の命を限りなく与えてくれる光の存在を。
貪り噛み締め味わい尽くし、ただのひとかけらも余すことなく、我が内に取り込み同化したい。
気持ちが体の外まで広がりはみ出して止められない。
「ほんまに俺は鬼なんやなぁ…」
くくくっ、と嗄れた笑い声が自分の口から漏れても、護王はたじろがなかった。
診療所はずっと昔から大石を挟んで大西家と逆の位置にある。康隆ばかりに気が取られていて、日高が里を出てから、ときどき街から出張してくる医師以外には使われていなかった、そこが盲点だった。
闇の中で診療所には明かりが灯っていた。
玄関の扉は固く閉ざされている気配、診察室はその隣の明かりのついた部屋だったはずだ。
門扉を開け放ち、斜めに庭を過って外側の窓ガラスに片手を突っ込み、割れ砕けたガラスを構うことなくまき散らし、窓枠から剥がすように引きあける。舞い上がったカーテンはもう片方の手で引きちぎった。
「きゃあ…っ!」
けたたましい音に、左の壁に寄せて置かれていたベッドの側で座っていた人間が跳ね上がった。脅えて振り返った顔は綾香、その前に頭に包帯を巻かれて横になっている洋子の姿がある。
「姫さん…」
護王はにぃ、と笑った。
「ここに居たんか」
「ご…護王…っ」
綾香に目もくれずにずいずいと室内に入り込んでいく。ベッドを覗き込み、目を閉じて眠っているような洋子の左頬に顎まで走る傷を見つけて、笑みを消した。
「なんや……この…傷…」
掠れた声が零れる。触れようとして自分の右手が血まみれなのに気づき、ためらって触れぬままに再び降ろし、ゆっくりと綾香を振り返った。
「お前が……やったんか」
部屋の温度をみるみる下げるような声音に、綾香が恐怖に顔を引きつらせてじりじりと右側のドアの方へ後じさりしながらつぶやいた。
「あたし…そんなことする…つもり……ちょっと……脅かすつもりやっただけや…」
「姫さんに…何したんや?」
村上に撃たれた肩から、窓ガラスを破った手からだらだら流れる血が跳ね落ちるまま、今度は無邪気に聞こえるほど明瞭な声で、護王は静かに問いかけた。
「なあ綾香…? …あそこで姫さんに…何したん?」
不純物が一切含まれていない、怒り以外のたった一つも感じ取れないくっきりとした声。
「俺の姫さんから…何を奪ったんや…血か? …肉か? …皮か?」
瞳が猛々しい光をちらつかせる。
「……それとも、これから奪る気ぃか?」
どっちにしても許すつもりなんかあらへんけどな。
声にはせずに護王が口だけでつぶやく。
「違う……違う…護王…あたし…脅かすつもりやったんや…そやけど…あんまり頑張るし……どんだけ脅かしても……ひかへんし…」
ことばの意味を感じ取って綾香が青ざめた。鬼神の前に引出された罪人よろしく目を見開き、忙しく呼吸を繰り返す。
「ひかへんし…? ……何を、したんや、綾香」
「く…くやしかったんや!」
綾香は全身を震わせながら、必死に叫び返した。零れ始めた涙を拭うことさえ思いつかないのだろう、怒りに応じるにはそれを倍加する怒りしかない、そんな気配できりきりと眉を逆立てて言い募る。
「なんで、この人やのん! 花王紋はあたしにもあるやんか! そやのに、一回もあんたはあたしを見てくれへん! あんただけやない、日高も、おとうはんもおかあはんも! 姫さん、姫さん言うて! そやから、言うたったんや、護王は来ぉへん、あんたはここで野垂れ死にや、日高に肉を喰われてしまうんや、言うて!」
びく、と護王は体を震わせて綾香を見返した。
「それを……姫さんに…言うたんか」
辛そうに顔を歪めてうめく。
「そや、言うたったんや! あんたは花王紋があるから喰われるんや、そやけどな、今はもう花王紋はあらへん、もしあんたが護王から手ぇ引くんやったら、あたしが日高にとりなしてやる、あたしが日高に、あんたから花王紋がなくなったって言うてやる、言うて!」
綾香は震えながら続けた。
「あたしかってそこまでするつもりなかったんや! 花王紋なくなったら日高かて食べるとか殺すとか言わへん、そやさかい、護王を諦め、てまで言うたのに、そやのに、うん、言わへんから…っ」
体の両側で手をこぶしに握りしめ、綾香は今にも押し倒されそうな風に逆らっているように立ちながら、護王に向かって必死に叫んだ。
「…なんでや…?」
洋子が自分を諦めろということばに同意しなかったと聞いて、一瞬嬉しそうに笑みかけた護王がふいに納得できないといった表情になってすうっと目を細めた。眉をひそめ、訝しげに問いかける。
「え…っ?」
「なんで花王紋あらへんのに……日高が気づかへん?」
ぴた、と綾香が口をつぐんで、目をさらに大きく見開いた。
「見たらわかるやんか…?……俺が抱いた後で姫さんに花王紋は残らへん、そんなん、日高が見たらすぐわかる、お前が言うの言わへんの関係ないはずやないか?」
護王は続けかけたことばをためらった。やがて、無理に押し出すように、
「日高が姫さんの…花王紋の肉がいるなら……洋子、はいらんかったはずやろ…?」
洋子、の名前を口にした瞬間、護王は苦しげに顔を歪めた。
「もう洋子、には花王紋はあらへん。花王紋がなかったら、洋子、は姫さんの転生記憶もない、姫さん、やない、俺の姫さんでもない」
それだけは口にしたくなかった、そんな顔できつく唇を噛む。
「そや……はなから洋子、には花王紋があっただけ……姫さんの転生も運命も継いでへんのや…そやけど」
傷ついた右手を強く握りしめる。その痛みで正気に返ろうとでもするように。
「……俺が引き止めた…俺が…重ねた……俺が……姫さんを押し付けた…だけや」
強く噛んだ唇に見る見る血が滲んだのをそのままに、護王はつぶやいた。
「ほんまは姫さんちがうのに……姫さんを押し付けて…追い詰めて……何度も傷つけた……それでも側に居てくれて……待てや」
いきなり護王の表情が消えた。綾香が急いで下がるのに、洋子の体にかかっていた布団を剥ぎ、血まみれの服の肩が切り裂かれているばかりか、当てられた包帯が薄紅に染まっているのに息を呑む。
「花王紋を……傷つけたんか……」
「あ、そ、そやかて……そやかて…」
「あれだけ…血ぃ出るまで……?」
緩やかに振り返った護王の殺気に綾香がパニックになったように悲鳴じみた声を上げた。
「あんなとこで……こんな怪我した…ままで…?…」
護王の声が掠れて嗄れる。
「なお…責めたん…か」
「その子が悪いんや! 後から来て、護王を攫って! あたしにもすがらへん、脅しにものらへん、生意気やんか! あんたから忠誠を受け取ったとか言うんや! そやからそれを裏切らへん、て! 何度脅しても! どんだけ脅しても!」
「!」
護王は死刑判決を受けたように竦んだ。眉をしかめて目を閉じる。
「綾…香…」
「もっとはように屈してくれたらよかったんや! そしたら、ここまでせえへんかったんや!」
「……あかんわ」
「そやし…そやし……え…?」
「綾香ぁ……俺ら……あかんのや」
「何……何やの?」
泣きながら、それでも護王が静かな声でつぶやいたのに、綾香は尋ね返した。のろのろとした動作で護王が目を開く。その目は朱紅、虹彩も瞳孔も血のような赤に塗り込められている。噛み切った唇から流れた血に染まった口も紅、鬼の形相そのままに凄まじい笑みを顔に広げた。
「俺らは…生きてたら……あかんのや…」
「ひ……」
洋子のベッドから一歩、護王は綾香の方へ足を踏み出した。
護王の絶望がちりちりと洋子の胸を焼いていく。
ごめんな、姫さん。
俺が長く生き過ぎたんや。
俺が長く生き過ぎたから、あんたをここまで追い込んだ。
そやから、待ってて。
今行くし。
あんたが最後まで俺を信じてくれたように、なぁ、姫さん。
許してぇな。
俺があんたに従うこと。
俺はあんたの護王…あんたを逝かせた代償はこの身で払うし勘弁してな…?
(護王…!)
護王の心が千切れていくのがわかる。自分が押し付けた運命が洋子に悲惨な最後を迎えさせたということ、自分こそが全ての元凶なのだという想いが、僅かに残っていた人の心を飛び散らせていく。
(違う、違う!)
洋子の心も悲鳴を上げる、だが、それさえ護王に伝える術がなく、洋子の心もまた傷みに満ちる。
二人分の絶望の重さに引かれるように落ち続け、やがて、洋子は闇の中の闇、その中で満開に咲き誇る桜の元へ降り立った。
頬を濡らしていた涙を拭き取り、まるで土を踏むような感触の空間をゆっくりと桜に歩み寄る。
洋子がそこに降りたのを待っていたかのように、高空から差し込んでいた光の柱は消えた。
暗闇に戻るかと思ったが、いつか見たように、桜は薄紅がかった白い花弁をわずかに散らせながら、洋子の上に枝を広げている。
さみしい。
辺りの闇を切なく震わせるように気配が伝わってきた。
我は孤独だ。
洋子は桜をじっと見上げた。気配は確かに桜から伝わってくる。
(あなたの、声ですか)
そっと話し掛けてみる。
風が巻き起こり、桜が千も万も花びらを散らせた。
幾多の命が生き死にする中で、我はただ独りでここに生き長らえ、齢千年を越す。
全ての命は我より短く忙しく時を生きており、我はその時間の流れの外に置かれている。
喜びも悲しみも生を彩る美しき綾は我を素通りし、こうして闇に座すのみの命、その孤独を誰ぞわかる。
花が咲けば歌い踊り、散れば詩を吟じ舞う者も次第次第に絶えていく。
命でよければ与えてやろう、我が傷みを同じゅうし、我が嘆きに寄り添うてくれるならば。
闇を震わせるような深い哀しみが伝わってきて、洋子は胸が詰まった。
(これは……)
同じものを知っている。同じ嘆きを知っている。
それは護王のものだ。
時の中でいつもただ独り置き去りにされていく護王の傷みそのものだ。
(護王……もう一人のあなたが、ここにいた…)
洋子の頬に新しい涙が伝わった。
「……ふ…」
「!!」
今まさに綾香を屠ろうとした護王は背後で微かな吐息が動いたのに硬直した。
「姫…さん…?」
顔を青ざめさせながらそろそろと振り返る。
ベッドの上で布団を剥がれたまま横たわっている洋子の胸が、ひどくゆっくりとではあるけれど、そしてまたひどくわずかではあるけれど、上下しているのに気づき、よろめくような足取りでベッドの側に戻る。そっと洋子の顔に伸ばした左手が傍目に見てもわかるほど震えている。
「生きて……?…」
護王の指先に温もりを含んだ吐息が当たる。柔らかに、けれど、確実に。
「そ……そやからっ…」
綾香ががたがた震えながらその護王の背中に声を絞り出した。
「本当なら…とっくに死んでてもおかしくなかったやけど……その人…自分で傷を治しかけてて…」
「あ……ああ……っ」
へた、と護王の体が沈んだ。膝を落としかけ、まるでベッドの洋子にすがりつくようにしてかろうじて体を支える。洋子の体に触れて、それで改めて相手が生きていることを確信したのか、荒い呼吸を吐きながら額を洋子の体に強く押し付けて俯く。
「あ、あたしかて……その人が……死ぬの…いややったし…」
「綾香…」
くぐもった護王の声に綾香が怯みながらも、
「し、知りたい、思たんや…なんで……そこまで頑張るんか……なんで……そこまで頑張れるんや…って…そやし……人工呼吸と胸骨圧迫……あっ、あたしっ……あたしも…看護免許持ってて……それで…」
洋子を抱きかかえるようにしたまま身動きしない護王に、泣き崩れそうな声を必死に励ますように続けた。
「綾香……」
「…なっ…なに…」
またいきなり振り返って襲いかかられるのではないかと警戒した綾香に、震えるような甘い護王の声が届いた。
「…おおきに…」
「あ……」
「……姫さん……助けてくれて……おおきに…」
今にも泣き出しそうな声が、振り返らないままの、けれども小刻みに震えている護王の背中を越えて響いてくる。
「他に何してても……ええ…俺…お前を許す」
「護王…」
ほっとした綾香の顔が次の瞬間見る見る強ばった。
「おおきに?」
は、と苦い笑みを浮かべる。
「他に何してても…許す、やて?」
低い小さなつぶやきが自嘲する。
「なんやそれ……そんなん……あんた……自分の気持ちよりもプライドよりも……その人が大事、やいうことやん……」
「姫……姫さん…」
綾香のつぶやきに、洋子の体に自分の体を押し付け温もりに没頭している護王は気づいていないようだ。
「あんた…ほんまに……」
ぽろぽろと綾香の薄い笑みを浮かべた唇に涙がこぼれ落ちた。
「その人のことしか…考えてへんのやなぁ…?…」
たんっ!
「ひ!」
突然何か紙を激しく叩いたような乾いた音が響き渡った。綾香がびくっと仰け反り声を上げる。その肩にいきなり真紅が零れた。操り人形の最後の糸が切れたように床に沈む。
「ご…おぅ…」
たんっ! たんっ!
「はっ…っあっ!!」
僅かな間隔をあけて続けざまに同じ音が響き、最初の音を耳にして跳ね上がるように体を起こした護王の背中に鮮血が散った。衝撃に流されかけ、それでも体を翻らせて布団を引き上げ、洋子を背後に庇った護王が、顔を歪めながら部屋の戸口に立っている日高幸一郎を睨みつける。
「南部十四年式…」
幸一郎が右手に構えている銃の名を吐くと、相手が冷えた目で笑った。
「さすがによく知っているな、陸軍時代の……親父の形見だよ」
幸一郎は筒先をまっすぐに護王の顔に向けた。
「さあ、花王紋を返してもらおうか」
「姫さんには…もう…花王紋なんてあらへんで…」
背中を貫いた二発の弾丸に息を荒げながら、護王は両手を広げて洋子の体を幸一郎の照準から隠した。
「三日目の儀式は…とっくに済ませた……俺は…せっかちなんや」
「はは……若いな……お前は」
幸一郎は楽しそうに笑った。
その顔は明らかに歳を重ね始めていた。一番始めに綾が見たときより、確実に二十年は老けている。
だがしかし、なお一層目立っているのは、瞳や動作や声音ににじんだ重苦しくて怠いもの、生きることへの疲労感のようなものだった。
「わしは…どうしたのだろうな……このところ、急速に疲れを覚えるようになってきたよ。康隆などはまだそう衰えていく気配もないのにな」
「そら…あたりまえや」
護王は嘲笑を返した。
「花王紋が何にせよ、康隆が姫さん喰ったのは五十になるかならんか…お前は六十越えてたやろ。たとえ同じように歳を取るのが緩くなったにせよ、お前の方がはよ老いるのは道理やろうが」
「そうだ……老いる……老いるのだよ」
幸一郎は物憂げに引き金にかけた指に力を込めた。
「そこをどけ」
「いやや」
「わしが必要なのはその女だ」
「…護王の名にかけて……今度は渡すかい」
にや、と護王が凄んで笑う。
たすっ!
「つぅ!」
左の耳たぶを打ち飛ばされて護王は顔を歪めた。頬を掠めて走った弾に削られた場所からもだらだらと出血が始まり、見る間に顔から首にかけて朱色の流れが幾筋も伝う。
「肉体の時を完全に止めてしまうわけにはいかない…成長を止めた肉体は死亡までの年数が限られてくるからな…だから、お前のように緩やかに歳を重ねていくのが一番不死に近い……しかし、なぜだ? お前は歳を重ねながらも『老いて』いかないじゃないか」
「は…? 何言うてんのや…!」
だんっむ!
同じ銃だろうに一際強い音を発した銃弾が護王の腹に打ち込まれた。
「ぐぅっ…」
呻いた護王の額から脂汗が吹き出る。よろめいた体がベッドにあたって、危うく倒れかけたのを堪えて踏み止まる。それでも必死に両手を広げて背後の洋子を庇いながら、何とか体を立て直した。
「そうだ…老いる、何かしら、わからぬところが。体は老化を止めてるはずなのにな」
「んぅ…っ」
痛みに唸りながら護王はなおも相手を睨みつけた
「何がお前と違う…? そう、可能性は一つだ。お前のように、花王紋はあるにせよないにせよ、花王紋を持った女を繰り返し喰べ続ければいいのだ」
幸一郎がべろりと長い舌を出した。銃を構えたままぬるぬると唇を舐めていく。その顔には皺が深くなりあちこちにシミができ皮膚が乾き始めている。髪の毛も艶をなくしてばらばらと乱れ、首にもたるみが目立つ。
だが、外見には不似合いにぎらついた幸一郎の表情はどこか、息も絶え絶えの獲物を目の前にした肉食獣の顔に似ていた。その前で、護王は抵抗する術一つないまま、意識を失った洋子を庇い、痛みと肩や腹から流れ出す血に喘ぎながらかろうじて立っている……。
その光景が互いの胸の中で、野性の獣が別の獣の肉を貪り食らうという場面に重なりあい繋がっていくのを、護王は、いやおそらくは幸一郎も感じ取ったのだろう、
「……いや……そうか……お前、でもいいんだな」
幸一郎が低く嗄れた声でつぶやいた。
「なん…やて…?」
無意識に体が揺らめき倒れそうになるのを堪えると、腹に激痛が走る。体がどんどん冷えていくせいか、震えが止まらない。思ったより早く体力が奪われていくのに舌打ちして護王は問い返した。
「いや…ひょっとして……お前なのか? 本当に不死なのは……護王…お前の方なのか?」
再び濡れてだらりとしまりのない舌が物欲しげに幸一郎の唇を滑っていく。
「あの夜お前が殴られ切られ、左腕を千切っても生き残ったのは……花王紋を喰ったせいだと思っていた。他の人間が死んだのは、ただ花王紋の喰い方が足りないせいだとばかり思っていた…だが…違ったのか……違ったんだな……これだけ弾丸を食らっても立っていられる……お前が不死の源だったんだな」
護王はちら、と背後の洋子に目をやった。
洋子は護王の血の雫を受けながら、まだ目覚めることなく昏々と眠っている。その穏やかで安らかな寝息に、護王の顔が切なく歪んだ。
部屋の隅では呻き声を殺しながらのろのろと這いずって逃げる綾香の姿がある。幸一郎の撃った傷はそれほど深くなかったらしい。このまま、護王が幸一郎をひきつけておけば、綾香は助けを求めて逃げ切れるだろう。そして、一度洋子を助けた綾香がもう一度洋子を殺しにかかるとは思えない。
「万が一…そうでも…」
暗い笑いを護王は浮かべた。
「今度はもう一緒や……ずっと…一緒や……なら…ええやんか」
微かな声でつぶやく。
「どっちにしろ…もう……俺は…一人にならへん…」
「何だと?」
幸一郎が苛立ったように引き金を引いた。
だんっっ!
「ぅあっ」
護王の太股から血煙が立つ。流石に体を支え切れずに、がく、とベッドに座り込んだ。歯を食いしばりながら幸一郎を見上げ、精一杯皮肉な笑みを浮かべて嘲笑う。額から汗が流れ落ちた。
「そうやとして……ほな…どうすんねん」
「知れたこと…今度こそ」
幸一郎は濁った目を細めてけだものの顔で笑った。
「お前を冷凍保存でもして、骨の髄まで食ろうてやるわい」
「は……は、ははっ」
護王は苦しい息の下から笑った。
「何がおかしい」
「お前…あほか」
笑い続けながら、護王はベッドから体を起こした。力を入れたせいで、ばたばたっ、と派手な音をたてて鮮血が散るのを気にすることもなく、突き放すようにベッドを押して、よろよろと壁際に移動する。追い掛けて狙いをつけたまま、幸一郎が護王に向き直った。
それを見てとった護王が満足そうに微笑む。
「あほやから……あほや…言うとんのや…」
壁にもたれたまま、なおも嘲笑した。
「殺すんやったら殺せや……喰うんやったら…好きように…ステーキでも生でも喰うたらええがな」
堪え切れぬようにくっくっくっ、と喉の奥で笑う。
「何が言いたい」
「日高ぁ……お前なぁ……そこまでして生きて……何がしたいねん」
護王は眉をしかめて腹を押さえた。痛みが強くて意識が薄れていきそうになるのを何とかとどめる。綾香が誰に何を伝えるにせよ、時間がまだうんと必要なはずだ。
「姫さんの……肉喰ろうて……俺の肉……喰ろうて…はっ…っ…は…息子殺して……孫も…死なせてしもて……は…っ…老いさらばえた体……ひきずって…っ…なあ……何がしたいねん…」
だむっ!!
「あ!!」
乱れた呼吸を紡ぐことば、断ち切るように胸元に銃弾を打ち込まれ、護王は背後の壁に激しくぶつかった。口から血を吐いて壁に叩きつけられたまま、ずるずると崩れ落ちる。生々しい音をたてて新しい血が零れ落ち始める。座り込んだ護王の体の下、床を血が覆って見る見る広がっていく。血溜まりに埋まりこむように、護王の体から生気が失せていく。
だが、しばらくの沈黙の後、ぐったりと首を落としていた護王が、のろのろと胸の傷を探り、途切れ途切れににつぶやいた。
「まだ……死なん…か……は…っ…ぁ…」
荒い呼吸を繰り返しながら、血まみれの首を仰け反らせてゆっくりと壁にもたれる。
「は…っ…難儀な…こっちゃで…」
整わない息に朦朧としながら苦く笑った。
「はよ……終わらせてぇな…はっ…半端なこと…っ…しよって…から…っ…」
その額に、近づいてきた幸一郎がぴたりと銃口をつけた。
「生意気なことを言うな」
手足を投げ出したまま壁にもたれて喘いでいる護王の前にしゃがみ込み、朱色に染まった顔を睨みつけて、幸一郎が唸った。その顔は明らかに動揺していた。銃弾を撃ち込んでも撃ち込んでもしゃべり続ける護王、そのはかりしれない能力に興味をそそられると同時に恐怖も感じている、そういう表情だ。
幸一郎の顔に気づいたのだろう。
「悪いけどな…っ…俺のほうが……お前より年寄りやねん……っ」
短い呼吸を繰り返しながら、護王は薄笑いした。一瞬気力をためるように口を噤み、人を苛立たせるような笑みはそのままに話し始める。
「…お前かて……わかってるはずや…は……体の老化は…止まっても…心は…っ…そうは…いかへん…はっ……」
く、く、と小さく笑う護王の唇がまたつるつると新しい血を零す。だが、尽きようとする蝋燭が明るく燃え始めるように、呼吸の荒さがややおさまった。
「…お前が変わらへんでも……まわりは……変わる……世界は…止まらへん………変わっていくんや…それに心はついてかれへん……そやから……老いる……心だけ……老いる…」
額に銃口を押し付けられたまま、護王は淡々とした顔で幸一郎を見た。
「…変わる世界で……お前だけが……変わらへん……お前を必要とする人も……ものも…どんどん……死んで…消えていく……お前はいつか…誰にも……どこにも……必要とされへんようになる……お前は……世界から弾き出されるんや…」
朱紅の瞳から唐突に涙が零れた。悲しいから、つらいから、というのではなく、どこかまるで別の世界から零れた甘露、そんな柔らかな気配で護王の頬を滑り落ちていく。憐れみを込めた声が響いた。
「それが…どれほどつらいか……わかるか…? 永遠に……生きる言う意味が……お前…ほんまに……わかってるんか……?…」
訝しい顔で黙り込む幸一郎に一瞬目を閉じ、
「……わから…へんやろ……わかったら……こんなこと…望まへん…」
独り言のようにつぶやいた。それから、声に出さずに唇を動かす。
ヒメサン。
眉を寄せ、そのまま泣き出しそうな幼い表情になる。だが、一瞬後目を開き、目の前で凍りついたように護王を睨みつけている幸一郎に一転して冷徹な笑みを見せた。
「……わからへんのか…?……お前は……お前がいらんようになる世界でも……お前を求めてくれる人間を……みんな殺してしもたんやで…?…子どもも……孫も……仲間も……誰もおらへん世界……誰もお前なんていらん世界で……」
にいいっ、と唇を吊り上げた笑みは魔性のもの、禍々しさだけをたたえて吐き捨てる。
「未来永劫……生きとれや」
「くっ…!」
額に強く押し付けられた銃に護王は静かに目を閉じた。銃にかかった幸一郎の指が力を込めて白く変わる。
そのとき。
「……護王」
小さな声がベッドの上から護王を呼んだ。
ひたすらに診療所に急ぐのは最後のケリをつけるためだ。
洋子を追い詰めたもの全てをこの手で始末するためだ。
「姫さん……待っててな…?」
今度こそ連れていってくれるやろ、と低い声でつぶやいて微かに笑う顔に正気は残っていない。
あれだけの出血を続けて、人間がもつわけがないことを護王は知っている。飽きるほど長い人生の中で、繰り返した人との別れの中で、よく、知っている。
「嘘つき村上」
日高の診療所で洋子の死体が切り刻まれでもしていたら、その欠片全て掻き集める。流れた血も、肉も、何もかも引き寄せ抱き締め口づけて自分のものにする。
そう考えて護王は詰まった笑い声を上げた。
「なんや……俺も……ほんまに姫さんを喰いたかったんか…」
そうだ、喰いたい、喰らい尽くしてしまいたい。
白い喉を、細い手首を、柔らかな腹を、甘い香りを放つ身体を味わったのはいつだったのか。
もっと深く、もっと奥まで。
吐息を、血の鼓動を、耳を侵す掠れた声を、もっともっと深く。
思い出せば身体は熱くなり、沸き立っていく。
細胞全てが欲している。
あの黄金の魂を。
自分の命を限りなく与えてくれる光の存在を。
貪り噛み締め味わい尽くし、ただのひとかけらも余すことなく、我が内に取り込み同化したい。
気持ちが体の外まで広がりはみ出して止められない。
「ほんまに俺は鬼なんやなぁ…」
くくくっ、と嗄れた笑い声が自分の口から漏れても、護王はたじろがなかった。
診療所はずっと昔から大石を挟んで大西家と逆の位置にある。康隆ばかりに気が取られていて、日高が里を出てから、ときどき街から出張してくる医師以外には使われていなかった、そこが盲点だった。
闇の中で診療所には明かりが灯っていた。
玄関の扉は固く閉ざされている気配、診察室はその隣の明かりのついた部屋だったはずだ。
門扉を開け放ち、斜めに庭を過って外側の窓ガラスに片手を突っ込み、割れ砕けたガラスを構うことなくまき散らし、窓枠から剥がすように引きあける。舞い上がったカーテンはもう片方の手で引きちぎった。
「きゃあ…っ!」
けたたましい音に、左の壁に寄せて置かれていたベッドの側で座っていた人間が跳ね上がった。脅えて振り返った顔は綾香、その前に頭に包帯を巻かれて横になっている洋子の姿がある。
「姫さん…」
護王はにぃ、と笑った。
「ここに居たんか」
「ご…護王…っ」
綾香に目もくれずにずいずいと室内に入り込んでいく。ベッドを覗き込み、目を閉じて眠っているような洋子の左頬に顎まで走る傷を見つけて、笑みを消した。
「なんや……この…傷…」
掠れた声が零れる。触れようとして自分の右手が血まみれなのに気づき、ためらって触れぬままに再び降ろし、ゆっくりと綾香を振り返った。
「お前が……やったんか」
部屋の温度をみるみる下げるような声音に、綾香が恐怖に顔を引きつらせてじりじりと右側のドアの方へ後じさりしながらつぶやいた。
「あたし…そんなことする…つもり……ちょっと……脅かすつもりやっただけや…」
「姫さんに…何したんや?」
村上に撃たれた肩から、窓ガラスを破った手からだらだら流れる血が跳ね落ちるまま、今度は無邪気に聞こえるほど明瞭な声で、護王は静かに問いかけた。
「なあ綾香…? …あそこで姫さんに…何したん?」
不純物が一切含まれていない、怒り以外のたった一つも感じ取れないくっきりとした声。
「俺の姫さんから…何を奪ったんや…血か? …肉か? …皮か?」
瞳が猛々しい光をちらつかせる。
「……それとも、これから奪る気ぃか?」
どっちにしても許すつもりなんかあらへんけどな。
声にはせずに護王が口だけでつぶやく。
「違う……違う…護王…あたし…脅かすつもりやったんや…そやけど…あんまり頑張るし……どんだけ脅かしても……ひかへんし…」
ことばの意味を感じ取って綾香が青ざめた。鬼神の前に引出された罪人よろしく目を見開き、忙しく呼吸を繰り返す。
「ひかへんし…? ……何を、したんや、綾香」
「く…くやしかったんや!」
綾香は全身を震わせながら、必死に叫び返した。零れ始めた涙を拭うことさえ思いつかないのだろう、怒りに応じるにはそれを倍加する怒りしかない、そんな気配できりきりと眉を逆立てて言い募る。
「なんで、この人やのん! 花王紋はあたしにもあるやんか! そやのに、一回もあんたはあたしを見てくれへん! あんただけやない、日高も、おとうはんもおかあはんも! 姫さん、姫さん言うて! そやから、言うたったんや、護王は来ぉへん、あんたはここで野垂れ死にや、日高に肉を喰われてしまうんや、言うて!」
びく、と護王は体を震わせて綾香を見返した。
「それを……姫さんに…言うたんか」
辛そうに顔を歪めてうめく。
「そや、言うたったんや! あんたは花王紋があるから喰われるんや、そやけどな、今はもう花王紋はあらへん、もしあんたが護王から手ぇ引くんやったら、あたしが日高にとりなしてやる、あたしが日高に、あんたから花王紋がなくなったって言うてやる、言うて!」
綾香は震えながら続けた。
「あたしかってそこまでするつもりなかったんや! 花王紋なくなったら日高かて食べるとか殺すとか言わへん、そやさかい、護王を諦め、てまで言うたのに、そやのに、うん、言わへんから…っ」
体の両側で手をこぶしに握りしめ、綾香は今にも押し倒されそうな風に逆らっているように立ちながら、護王に向かって必死に叫んだ。
「…なんでや…?」
洋子が自分を諦めろということばに同意しなかったと聞いて、一瞬嬉しそうに笑みかけた護王がふいに納得できないといった表情になってすうっと目を細めた。眉をひそめ、訝しげに問いかける。
「え…っ?」
「なんで花王紋あらへんのに……日高が気づかへん?」
ぴた、と綾香が口をつぐんで、目をさらに大きく見開いた。
「見たらわかるやんか…?……俺が抱いた後で姫さんに花王紋は残らへん、そんなん、日高が見たらすぐわかる、お前が言うの言わへんの関係ないはずやないか?」
護王は続けかけたことばをためらった。やがて、無理に押し出すように、
「日高が姫さんの…花王紋の肉がいるなら……洋子、はいらんかったはずやろ…?」
洋子、の名前を口にした瞬間、護王は苦しげに顔を歪めた。
「もう洋子、には花王紋はあらへん。花王紋がなかったら、洋子、は姫さんの転生記憶もない、姫さん、やない、俺の姫さんでもない」
それだけは口にしたくなかった、そんな顔できつく唇を噛む。
「そや……はなから洋子、には花王紋があっただけ……姫さんの転生も運命も継いでへんのや…そやけど」
傷ついた右手を強く握りしめる。その痛みで正気に返ろうとでもするように。
「……俺が引き止めた…俺が…重ねた……俺が……姫さんを押し付けた…だけや」
強く噛んだ唇に見る見る血が滲んだのをそのままに、護王はつぶやいた。
「ほんまは姫さんちがうのに……姫さんを押し付けて…追い詰めて……何度も傷つけた……それでも側に居てくれて……待てや」
いきなり護王の表情が消えた。綾香が急いで下がるのに、洋子の体にかかっていた布団を剥ぎ、血まみれの服の肩が切り裂かれているばかりか、当てられた包帯が薄紅に染まっているのに息を呑む。
「花王紋を……傷つけたんか……」
「あ、そ、そやかて……そやかて…」
「あれだけ…血ぃ出るまで……?」
緩やかに振り返った護王の殺気に綾香がパニックになったように悲鳴じみた声を上げた。
「あんなとこで……こんな怪我した…ままで…?…」
護王の声が掠れて嗄れる。
「なお…責めたん…か」
「その子が悪いんや! 後から来て、護王を攫って! あたしにもすがらへん、脅しにものらへん、生意気やんか! あんたから忠誠を受け取ったとか言うんや! そやからそれを裏切らへん、て! 何度脅しても! どんだけ脅しても!」
「!」
護王は死刑判決を受けたように竦んだ。眉をしかめて目を閉じる。
「綾…香…」
「もっとはように屈してくれたらよかったんや! そしたら、ここまでせえへんかったんや!」
「……あかんわ」
「そやし…そやし……え…?」
「綾香ぁ……俺ら……あかんのや」
「何……何やの?」
泣きながら、それでも護王が静かな声でつぶやいたのに、綾香は尋ね返した。のろのろとした動作で護王が目を開く。その目は朱紅、虹彩も瞳孔も血のような赤に塗り込められている。噛み切った唇から流れた血に染まった口も紅、鬼の形相そのままに凄まじい笑みを顔に広げた。
「俺らは…生きてたら……あかんのや…」
「ひ……」
洋子のベッドから一歩、護王は綾香の方へ足を踏み出した。
護王の絶望がちりちりと洋子の胸を焼いていく。
ごめんな、姫さん。
俺が長く生き過ぎたんや。
俺が長く生き過ぎたから、あんたをここまで追い込んだ。
そやから、待ってて。
今行くし。
あんたが最後まで俺を信じてくれたように、なぁ、姫さん。
許してぇな。
俺があんたに従うこと。
俺はあんたの護王…あんたを逝かせた代償はこの身で払うし勘弁してな…?
(護王…!)
護王の心が千切れていくのがわかる。自分が押し付けた運命が洋子に悲惨な最後を迎えさせたということ、自分こそが全ての元凶なのだという想いが、僅かに残っていた人の心を飛び散らせていく。
(違う、違う!)
洋子の心も悲鳴を上げる、だが、それさえ護王に伝える術がなく、洋子の心もまた傷みに満ちる。
二人分の絶望の重さに引かれるように落ち続け、やがて、洋子は闇の中の闇、その中で満開に咲き誇る桜の元へ降り立った。
頬を濡らしていた涙を拭き取り、まるで土を踏むような感触の空間をゆっくりと桜に歩み寄る。
洋子がそこに降りたのを待っていたかのように、高空から差し込んでいた光の柱は消えた。
暗闇に戻るかと思ったが、いつか見たように、桜は薄紅がかった白い花弁をわずかに散らせながら、洋子の上に枝を広げている。
さみしい。
辺りの闇を切なく震わせるように気配が伝わってきた。
我は孤独だ。
洋子は桜をじっと見上げた。気配は確かに桜から伝わってくる。
(あなたの、声ですか)
そっと話し掛けてみる。
風が巻き起こり、桜が千も万も花びらを散らせた。
幾多の命が生き死にする中で、我はただ独りでここに生き長らえ、齢千年を越す。
全ての命は我より短く忙しく時を生きており、我はその時間の流れの外に置かれている。
喜びも悲しみも生を彩る美しき綾は我を素通りし、こうして闇に座すのみの命、その孤独を誰ぞわかる。
花が咲けば歌い踊り、散れば詩を吟じ舞う者も次第次第に絶えていく。
命でよければ与えてやろう、我が傷みを同じゅうし、我が嘆きに寄り添うてくれるならば。
闇を震わせるような深い哀しみが伝わってきて、洋子は胸が詰まった。
(これは……)
同じものを知っている。同じ嘆きを知っている。
それは護王のものだ。
時の中でいつもただ独り置き去りにされていく護王の傷みそのものだ。
(護王……もう一人のあなたが、ここにいた…)
洋子の頬に新しい涙が伝わった。
「……ふ…」
「!!」
今まさに綾香を屠ろうとした護王は背後で微かな吐息が動いたのに硬直した。
「姫…さん…?」
顔を青ざめさせながらそろそろと振り返る。
ベッドの上で布団を剥がれたまま横たわっている洋子の胸が、ひどくゆっくりとではあるけれど、そしてまたひどくわずかではあるけれど、上下しているのに気づき、よろめくような足取りでベッドの側に戻る。そっと洋子の顔に伸ばした左手が傍目に見てもわかるほど震えている。
「生きて……?…」
護王の指先に温もりを含んだ吐息が当たる。柔らかに、けれど、確実に。
「そ……そやからっ…」
綾香ががたがた震えながらその護王の背中に声を絞り出した。
「本当なら…とっくに死んでてもおかしくなかったやけど……その人…自分で傷を治しかけてて…」
「あ……ああ……っ」
へた、と護王の体が沈んだ。膝を落としかけ、まるでベッドの洋子にすがりつくようにしてかろうじて体を支える。洋子の体に触れて、それで改めて相手が生きていることを確信したのか、荒い呼吸を吐きながら額を洋子の体に強く押し付けて俯く。
「あ、あたしかて……その人が……死ぬの…いややったし…」
「綾香…」
くぐもった護王の声に綾香が怯みながらも、
「し、知りたい、思たんや…なんで……そこまで頑張るんか……なんで……そこまで頑張れるんや…って…そやし……人工呼吸と胸骨圧迫……あっ、あたしっ……あたしも…看護免許持ってて……それで…」
洋子を抱きかかえるようにしたまま身動きしない護王に、泣き崩れそうな声を必死に励ますように続けた。
「綾香……」
「…なっ…なに…」
またいきなり振り返って襲いかかられるのではないかと警戒した綾香に、震えるような甘い護王の声が届いた。
「…おおきに…」
「あ……」
「……姫さん……助けてくれて……おおきに…」
今にも泣き出しそうな声が、振り返らないままの、けれども小刻みに震えている護王の背中を越えて響いてくる。
「他に何してても……ええ…俺…お前を許す」
「護王…」
ほっとした綾香の顔が次の瞬間見る見る強ばった。
「おおきに?」
は、と苦い笑みを浮かべる。
「他に何してても…許す、やて?」
低い小さなつぶやきが自嘲する。
「なんやそれ……そんなん……あんた……自分の気持ちよりもプライドよりも……その人が大事、やいうことやん……」
「姫……姫さん…」
綾香のつぶやきに、洋子の体に自分の体を押し付け温もりに没頭している護王は気づいていないようだ。
「あんた…ほんまに……」
ぽろぽろと綾香の薄い笑みを浮かべた唇に涙がこぼれ落ちた。
「その人のことしか…考えてへんのやなぁ…?…」
たんっ!
「ひ!」
突然何か紙を激しく叩いたような乾いた音が響き渡った。綾香がびくっと仰け反り声を上げる。その肩にいきなり真紅が零れた。操り人形の最後の糸が切れたように床に沈む。
「ご…おぅ…」
たんっ! たんっ!
「はっ…っあっ!!」
僅かな間隔をあけて続けざまに同じ音が響き、最初の音を耳にして跳ね上がるように体を起こした護王の背中に鮮血が散った。衝撃に流されかけ、それでも体を翻らせて布団を引き上げ、洋子を背後に庇った護王が、顔を歪めながら部屋の戸口に立っている日高幸一郎を睨みつける。
「南部十四年式…」
幸一郎が右手に構えている銃の名を吐くと、相手が冷えた目で笑った。
「さすがによく知っているな、陸軍時代の……親父の形見だよ」
幸一郎は筒先をまっすぐに護王の顔に向けた。
「さあ、花王紋を返してもらおうか」
「姫さんには…もう…花王紋なんてあらへんで…」
背中を貫いた二発の弾丸に息を荒げながら、護王は両手を広げて洋子の体を幸一郎の照準から隠した。
「三日目の儀式は…とっくに済ませた……俺は…せっかちなんや」
「はは……若いな……お前は」
幸一郎は楽しそうに笑った。
その顔は明らかに歳を重ね始めていた。一番始めに綾が見たときより、確実に二十年は老けている。
だがしかし、なお一層目立っているのは、瞳や動作や声音ににじんだ重苦しくて怠いもの、生きることへの疲労感のようなものだった。
「わしは…どうしたのだろうな……このところ、急速に疲れを覚えるようになってきたよ。康隆などはまだそう衰えていく気配もないのにな」
「そら…あたりまえや」
護王は嘲笑を返した。
「花王紋が何にせよ、康隆が姫さん喰ったのは五十になるかならんか…お前は六十越えてたやろ。たとえ同じように歳を取るのが緩くなったにせよ、お前の方がはよ老いるのは道理やろうが」
「そうだ……老いる……老いるのだよ」
幸一郎は物憂げに引き金にかけた指に力を込めた。
「そこをどけ」
「いやや」
「わしが必要なのはその女だ」
「…護王の名にかけて……今度は渡すかい」
にや、と護王が凄んで笑う。
たすっ!
「つぅ!」
左の耳たぶを打ち飛ばされて護王は顔を歪めた。頬を掠めて走った弾に削られた場所からもだらだらと出血が始まり、見る間に顔から首にかけて朱色の流れが幾筋も伝う。
「肉体の時を完全に止めてしまうわけにはいかない…成長を止めた肉体は死亡までの年数が限られてくるからな…だから、お前のように緩やかに歳を重ねていくのが一番不死に近い……しかし、なぜだ? お前は歳を重ねながらも『老いて』いかないじゃないか」
「は…? 何言うてんのや…!」
だんっむ!
同じ銃だろうに一際強い音を発した銃弾が護王の腹に打ち込まれた。
「ぐぅっ…」
呻いた護王の額から脂汗が吹き出る。よろめいた体がベッドにあたって、危うく倒れかけたのを堪えて踏み止まる。それでも必死に両手を広げて背後の洋子を庇いながら、何とか体を立て直した。
「そうだ…老いる、何かしら、わからぬところが。体は老化を止めてるはずなのにな」
「んぅ…っ」
痛みに唸りながら護王はなおも相手を睨みつけた
「何がお前と違う…? そう、可能性は一つだ。お前のように、花王紋はあるにせよないにせよ、花王紋を持った女を繰り返し喰べ続ければいいのだ」
幸一郎がべろりと長い舌を出した。銃を構えたままぬるぬると唇を舐めていく。その顔には皺が深くなりあちこちにシミができ皮膚が乾き始めている。髪の毛も艶をなくしてばらばらと乱れ、首にもたるみが目立つ。
だが、外見には不似合いにぎらついた幸一郎の表情はどこか、息も絶え絶えの獲物を目の前にした肉食獣の顔に似ていた。その前で、護王は抵抗する術一つないまま、意識を失った洋子を庇い、痛みと肩や腹から流れ出す血に喘ぎながらかろうじて立っている……。
その光景が互いの胸の中で、野性の獣が別の獣の肉を貪り食らうという場面に重なりあい繋がっていくのを、護王は、いやおそらくは幸一郎も感じ取ったのだろう、
「……いや……そうか……お前、でもいいんだな」
幸一郎が低く嗄れた声でつぶやいた。
「なん…やて…?」
無意識に体が揺らめき倒れそうになるのを堪えると、腹に激痛が走る。体がどんどん冷えていくせいか、震えが止まらない。思ったより早く体力が奪われていくのに舌打ちして護王は問い返した。
「いや…ひょっとして……お前なのか? 本当に不死なのは……護王…お前の方なのか?」
再び濡れてだらりとしまりのない舌が物欲しげに幸一郎の唇を滑っていく。
「あの夜お前が殴られ切られ、左腕を千切っても生き残ったのは……花王紋を喰ったせいだと思っていた。他の人間が死んだのは、ただ花王紋の喰い方が足りないせいだとばかり思っていた…だが…違ったのか……違ったんだな……これだけ弾丸を食らっても立っていられる……お前が不死の源だったんだな」
護王はちら、と背後の洋子に目をやった。
洋子は護王の血の雫を受けながら、まだ目覚めることなく昏々と眠っている。その穏やかで安らかな寝息に、護王の顔が切なく歪んだ。
部屋の隅では呻き声を殺しながらのろのろと這いずって逃げる綾香の姿がある。幸一郎の撃った傷はそれほど深くなかったらしい。このまま、護王が幸一郎をひきつけておけば、綾香は助けを求めて逃げ切れるだろう。そして、一度洋子を助けた綾香がもう一度洋子を殺しにかかるとは思えない。
「万が一…そうでも…」
暗い笑いを護王は浮かべた。
「今度はもう一緒や……ずっと…一緒や……なら…ええやんか」
微かな声でつぶやく。
「どっちにしろ…もう……俺は…一人にならへん…」
「何だと?」
幸一郎が苛立ったように引き金を引いた。
だんっっ!
「ぅあっ」
護王の太股から血煙が立つ。流石に体を支え切れずに、がく、とベッドに座り込んだ。歯を食いしばりながら幸一郎を見上げ、精一杯皮肉な笑みを浮かべて嘲笑う。額から汗が流れ落ちた。
「そうやとして……ほな…どうすんねん」
「知れたこと…今度こそ」
幸一郎は濁った目を細めてけだものの顔で笑った。
「お前を冷凍保存でもして、骨の髄まで食ろうてやるわい」
「は……は、ははっ」
護王は苦しい息の下から笑った。
「何がおかしい」
「お前…あほか」
笑い続けながら、護王はベッドから体を起こした。力を入れたせいで、ばたばたっ、と派手な音をたてて鮮血が散るのを気にすることもなく、突き放すようにベッドを押して、よろよろと壁際に移動する。追い掛けて狙いをつけたまま、幸一郎が護王に向き直った。
それを見てとった護王が満足そうに微笑む。
「あほやから……あほや…言うとんのや…」
壁にもたれたまま、なおも嘲笑した。
「殺すんやったら殺せや……喰うんやったら…好きように…ステーキでも生でも喰うたらええがな」
堪え切れぬようにくっくっくっ、と喉の奥で笑う。
「何が言いたい」
「日高ぁ……お前なぁ……そこまでして生きて……何がしたいねん」
護王は眉をしかめて腹を押さえた。痛みが強くて意識が薄れていきそうになるのを何とかとどめる。綾香が誰に何を伝えるにせよ、時間がまだうんと必要なはずだ。
「姫さんの……肉喰ろうて……俺の肉……喰ろうて…はっ…っ…は…息子殺して……孫も…死なせてしもて……は…っ…老いさらばえた体……ひきずって…っ…なあ……何がしたいねん…」
だむっ!!
「あ!!」
乱れた呼吸を紡ぐことば、断ち切るように胸元に銃弾を打ち込まれ、護王は背後の壁に激しくぶつかった。口から血を吐いて壁に叩きつけられたまま、ずるずると崩れ落ちる。生々しい音をたてて新しい血が零れ落ち始める。座り込んだ護王の体の下、床を血が覆って見る見る広がっていく。血溜まりに埋まりこむように、護王の体から生気が失せていく。
だが、しばらくの沈黙の後、ぐったりと首を落としていた護王が、のろのろと胸の傷を探り、途切れ途切れににつぶやいた。
「まだ……死なん…か……は…っ…ぁ…」
荒い呼吸を繰り返しながら、血まみれの首を仰け反らせてゆっくりと壁にもたれる。
「は…っ…難儀な…こっちゃで…」
整わない息に朦朧としながら苦く笑った。
「はよ……終わらせてぇな…はっ…半端なこと…っ…しよって…から…っ…」
その額に、近づいてきた幸一郎がぴたりと銃口をつけた。
「生意気なことを言うな」
手足を投げ出したまま壁にもたれて喘いでいる護王の前にしゃがみ込み、朱色に染まった顔を睨みつけて、幸一郎が唸った。その顔は明らかに動揺していた。銃弾を撃ち込んでも撃ち込んでもしゃべり続ける護王、そのはかりしれない能力に興味をそそられると同時に恐怖も感じている、そういう表情だ。
幸一郎の顔に気づいたのだろう。
「悪いけどな…っ…俺のほうが……お前より年寄りやねん……っ」
短い呼吸を繰り返しながら、護王は薄笑いした。一瞬気力をためるように口を噤み、人を苛立たせるような笑みはそのままに話し始める。
「…お前かて……わかってるはずや…は……体の老化は…止まっても…心は…っ…そうは…いかへん…はっ……」
く、く、と小さく笑う護王の唇がまたつるつると新しい血を零す。だが、尽きようとする蝋燭が明るく燃え始めるように、呼吸の荒さがややおさまった。
「…お前が変わらへんでも……まわりは……変わる……世界は…止まらへん………変わっていくんや…それに心はついてかれへん……そやから……老いる……心だけ……老いる…」
額に銃口を押し付けられたまま、護王は淡々とした顔で幸一郎を見た。
「…変わる世界で……お前だけが……変わらへん……お前を必要とする人も……ものも…どんどん……死んで…消えていく……お前はいつか…誰にも……どこにも……必要とされへんようになる……お前は……世界から弾き出されるんや…」
朱紅の瞳から唐突に涙が零れた。悲しいから、つらいから、というのではなく、どこかまるで別の世界から零れた甘露、そんな柔らかな気配で護王の頬を滑り落ちていく。憐れみを込めた声が響いた。
「それが…どれほどつらいか……わかるか…? 永遠に……生きる言う意味が……お前…ほんまに……わかってるんか……?…」
訝しい顔で黙り込む幸一郎に一瞬目を閉じ、
「……わから…へんやろ……わかったら……こんなこと…望まへん…」
独り言のようにつぶやいた。それから、声に出さずに唇を動かす。
ヒメサン。
眉を寄せ、そのまま泣き出しそうな幼い表情になる。だが、一瞬後目を開き、目の前で凍りついたように護王を睨みつけている幸一郎に一転して冷徹な笑みを見せた。
「……わからへんのか…?……お前は……お前がいらんようになる世界でも……お前を求めてくれる人間を……みんな殺してしもたんやで…?…子どもも……孫も……仲間も……誰もおらへん世界……誰もお前なんていらん世界で……」
にいいっ、と唇を吊り上げた笑みは魔性のもの、禍々しさだけをたたえて吐き捨てる。
「未来永劫……生きとれや」
「くっ…!」
額に強く押し付けられた銃に護王は静かに目を閉じた。銃にかかった幸一郎の指が力を込めて白く変わる。
そのとき。
「……護王」
小さな声がベッドの上から護王を呼んだ。
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