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5.二日目、二時限
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ひどいことを言う。
みなさん、そういう顔ですね。
では、次は私について話しましょう。
私は『立ち塞がる壁』です。
ただでさえ『壁』は視界を遮りうっとうしいものですが、それが意志を持って『立ち塞がって』いるのです。
みなさんに優しくないことは明白です。
ところでみなさんは、教師、というものをどう考えていますか?
はい………手前のあなた。
知らないことを教える人。
なるほど、ちゃんと手を上げて、はっきり発言する。
これまでの学校で礼儀を学んできたのですね。
しかし、ことばは十分に学べていません。精進しましょう。
え?
……………仕方ない、今日は『バケツ』日ですね。つき合いましょう。
私はいい教師だと思いますよ。
『知らない』こととは何ですか?
あなたは何を知っていて何を知らないのですか?
それを説明できる人が『知らない』ということばを正しく使っているのです。
しかもあなたのことばには主語がありません。
主語がないということは、魔法を使う上で危険です。
ことばの上だけで主語がないのならいいのですが、ことばは本質を語るもの、あなたの中身も主語がない可能性があります。
主語がないことばを操るということは発信者が不明ということ、責任の所在が不明であるということにつながります。
このことについては、いずれまた触れるかもしれません。
では、『知らない』ということに戻りましょう。
あなたが『知らない』ことを教える人。
教えるということを『知らない』まま教える人。
何も『知らない』けど教える人。
どれも『知らない』ことを教えてくれます。
一番始めの人に教わると知識の不足を補充することができます。
二番目の人に教わるとそれぞれの生きている世界の違いを認識することができます。
三番目の人に教わると内面世界を自覚する困難さを学べます。
あなたの『知らない』ことは、どこに入っていますか。
…………なるほど、一番目ですか。
では、あなたの教師は本やネットや図書館で十分で、人間である必要性はありません。
今から自習室に行ってきて下さい。
…………………泣かれても困りますが。
はい、『当然』『頑固』『無限大』くん。
は? からかっているでしょう、と?
わかりましたか、ふふふ。
で、なんですか、『無限大』くん。
あなたは何番目なんですか、と?
私は何番目でもありません。
私は主として二つの仕事をしているだけです。
一つはあなたがたの視界を遮ること。あなたがたの進路に仁王立ちして向き合い動きません。
『壁』ですから。
もう一つはあなたがたの進もうとする場所からの呼び声を伝えること。それがどれほど豊かで美しく魅力的でわくわくするような世界であるかを視覚でないものを用いてほのめかします。
………ええ。
矛盾していますね。
………なぜ?
さあ………なぜでしょう。
この講座が終了する時には数人は理解できるでしょう。
そうあってほしいものです。
『バケツ』くん?
睨みつけてもレーザー光線は出てこないようですが。
あなたに対しては秘密の三つ目の仕事をしましょうね。
………諦めなさい。
この講座を受講してもあなたには意味がありません。
おや。
ぶーぶーぶー。
あなたがたは豚になるのが好きですね。ソーセージよりハムがいいですか。
実は、教師の最大最重要な仕事というのは、生徒の取捨選択なのです。
生徒が何を学ぶ必要があり、何を学ぶ必要がないかを見極めるということです。
言い換えれば、どの生徒に自分の講議が必要であり、どの生徒には不要であるか、理解しているということです。
しかも、私は『立ち塞がる壁』なんですよ?
通しても無駄な者は追い返すのです。
みなさん、そういう顔ですね。
では、次は私について話しましょう。
私は『立ち塞がる壁』です。
ただでさえ『壁』は視界を遮りうっとうしいものですが、それが意志を持って『立ち塞がって』いるのです。
みなさんに優しくないことは明白です。
ところでみなさんは、教師、というものをどう考えていますか?
はい………手前のあなた。
知らないことを教える人。
なるほど、ちゃんと手を上げて、はっきり発言する。
これまでの学校で礼儀を学んできたのですね。
しかし、ことばは十分に学べていません。精進しましょう。
え?
……………仕方ない、今日は『バケツ』日ですね。つき合いましょう。
私はいい教師だと思いますよ。
『知らない』こととは何ですか?
あなたは何を知っていて何を知らないのですか?
それを説明できる人が『知らない』ということばを正しく使っているのです。
しかもあなたのことばには主語がありません。
主語がないということは、魔法を使う上で危険です。
ことばの上だけで主語がないのならいいのですが、ことばは本質を語るもの、あなたの中身も主語がない可能性があります。
主語がないことばを操るということは発信者が不明ということ、責任の所在が不明であるということにつながります。
このことについては、いずれまた触れるかもしれません。
では、『知らない』ということに戻りましょう。
あなたが『知らない』ことを教える人。
教えるということを『知らない』まま教える人。
何も『知らない』けど教える人。
どれも『知らない』ことを教えてくれます。
一番始めの人に教わると知識の不足を補充することができます。
二番目の人に教わるとそれぞれの生きている世界の違いを認識することができます。
三番目の人に教わると内面世界を自覚する困難さを学べます。
あなたの『知らない』ことは、どこに入っていますか。
…………なるほど、一番目ですか。
では、あなたの教師は本やネットや図書館で十分で、人間である必要性はありません。
今から自習室に行ってきて下さい。
…………………泣かれても困りますが。
はい、『当然』『頑固』『無限大』くん。
は? からかっているでしょう、と?
わかりましたか、ふふふ。
で、なんですか、『無限大』くん。
あなたは何番目なんですか、と?
私は何番目でもありません。
私は主として二つの仕事をしているだけです。
一つはあなたがたの視界を遮ること。あなたがたの進路に仁王立ちして向き合い動きません。
『壁』ですから。
もう一つはあなたがたの進もうとする場所からの呼び声を伝えること。それがどれほど豊かで美しく魅力的でわくわくするような世界であるかを視覚でないものを用いてほのめかします。
………ええ。
矛盾していますね。
………なぜ?
さあ………なぜでしょう。
この講座が終了する時には数人は理解できるでしょう。
そうあってほしいものです。
『バケツ』くん?
睨みつけてもレーザー光線は出てこないようですが。
あなたに対しては秘密の三つ目の仕事をしましょうね。
………諦めなさい。
この講座を受講してもあなたには意味がありません。
おや。
ぶーぶーぶー。
あなたがたは豚になるのが好きですね。ソーセージよりハムがいいですか。
実は、教師の最大最重要な仕事というのは、生徒の取捨選択なのです。
生徒が何を学ぶ必要があり、何を学ぶ必要がないかを見極めるということです。
言い換えれば、どの生徒に自分の講議が必要であり、どの生徒には不要であるか、理解しているということです。
しかも、私は『立ち塞がる壁』なんですよ?
通しても無駄な者は追い返すのです。
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