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『100人の赤ん坊と100人のお母さん』
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ある国に、お母さんを信じていない王様がおりました。
小さい頃にお母さんと離れ、一人で暮らしてきたせいかも知れません。
王様は「お母さん」と呼ばれる女と、ミルクを飲むような赤ん坊が大嫌いでした。
そこである日、次のようなお触れを出しました。
『5歳以下の子どもを持った母親は、
この国よりすぐに出て行き、
2度と戻ってきてはならない』
違反した者は死刑にすると言うのです。
さあ国中は大騒ぎです。
1人の勇敢な女が王様に会いに行って、こう言いました。
「あんまりひどい法律です。王様にもお母様はいらっしゃるでしょうに」
「わしには母親なぞいないのだ」
「母親がいなくて生まれてくる子どもはおりません」
「わしは1人で大きくなったのだ」
「人は、親なくして育つものではありません」
「では、女、わしと一つ、賭けをしよう」
王様は1つの条件を出しました。
5歳以下の子どもを持つ100人の母親とその子どもを広場に集め、全ての母と子がお互いに間違えずに相手を選べば女の勝ち、1人でも選べなければ王様の勝ち。
ただし、その100人の中には口もきけない、生まれたばかりの子どもも入れると言うのです。
「どうじゃな、賭けに勝てば、お触れはやめよう。それに、そなたも出るのじゃぞ」
「わかりました」
女は静かに頷きました。
いよいよ、王様との賭けの日がやってきました。
広場は、心配そうな母親と、訳もわからず1人にされて泣き喚く子どもで一杯です。
周りには国中の人々、少し高い所に王様が座っています。
「それ!」
声と同時に、母と子は呼び合い探し合って、見る見るうちに抱き合っていきます。97組、98組、99組まで抱き合いました。広場の中に残されたのは、火の付いたように泣いている1人の赤ん坊と、あの勇敢な女だけです。
女はゆっくり赤ん坊の側に寄り、愛を込めて赤ん坊を抱き上げました。
その途端、王様は大きな声で言いました。
「そーら、間違った!!」
実は、王様は、子どもの中に1人の捨て子を混ぜたのです。女の子どもと同じような年頃の、同じ性別の子どもを混ぜて、女を試したのでした。
ところが、女は少しも慌てず、その赤ん坊に乳を含ませながら言いました。
「知っております」
「なんと!」
王様はびっくりして尋ねました。
「賭けに負けてしまったのだぞ。どうして、その子を抱き上げたのだ」
「見知らぬ所へ連れて来られ、怯えて乳を求めて泣いている子を、どうして抱き上げずにいられましょうか」
答えた女の頬に涙が一筋伝わるのを見て、王様ははっとしました。
「そうか……わしも、そうして誰かに抱き上げてもらったのか」
王様は低い声で言いました。
お触れはすぐに取りやめになりました。
その後、母と子の溢れる街の中を、時折楽しそうに散歩する、王様の姿が見られるようになりました。
小さい頃にお母さんと離れ、一人で暮らしてきたせいかも知れません。
王様は「お母さん」と呼ばれる女と、ミルクを飲むような赤ん坊が大嫌いでした。
そこである日、次のようなお触れを出しました。
『5歳以下の子どもを持った母親は、
この国よりすぐに出て行き、
2度と戻ってきてはならない』
違反した者は死刑にすると言うのです。
さあ国中は大騒ぎです。
1人の勇敢な女が王様に会いに行って、こう言いました。
「あんまりひどい法律です。王様にもお母様はいらっしゃるでしょうに」
「わしには母親なぞいないのだ」
「母親がいなくて生まれてくる子どもはおりません」
「わしは1人で大きくなったのだ」
「人は、親なくして育つものではありません」
「では、女、わしと一つ、賭けをしよう」
王様は1つの条件を出しました。
5歳以下の子どもを持つ100人の母親とその子どもを広場に集め、全ての母と子がお互いに間違えずに相手を選べば女の勝ち、1人でも選べなければ王様の勝ち。
ただし、その100人の中には口もきけない、生まれたばかりの子どもも入れると言うのです。
「どうじゃな、賭けに勝てば、お触れはやめよう。それに、そなたも出るのじゃぞ」
「わかりました」
女は静かに頷きました。
いよいよ、王様との賭けの日がやってきました。
広場は、心配そうな母親と、訳もわからず1人にされて泣き喚く子どもで一杯です。
周りには国中の人々、少し高い所に王様が座っています。
「それ!」
声と同時に、母と子は呼び合い探し合って、見る見るうちに抱き合っていきます。97組、98組、99組まで抱き合いました。広場の中に残されたのは、火の付いたように泣いている1人の赤ん坊と、あの勇敢な女だけです。
女はゆっくり赤ん坊の側に寄り、愛を込めて赤ん坊を抱き上げました。
その途端、王様は大きな声で言いました。
「そーら、間違った!!」
実は、王様は、子どもの中に1人の捨て子を混ぜたのです。女の子どもと同じような年頃の、同じ性別の子どもを混ぜて、女を試したのでした。
ところが、女は少しも慌てず、その赤ん坊に乳を含ませながら言いました。
「知っております」
「なんと!」
王様はびっくりして尋ねました。
「賭けに負けてしまったのだぞ。どうして、その子を抱き上げたのだ」
「見知らぬ所へ連れて来られ、怯えて乳を求めて泣いている子を、どうして抱き上げずにいられましょうか」
答えた女の頬に涙が一筋伝わるのを見て、王様ははっとしました。
「そうか……わしも、そうして誰かに抱き上げてもらったのか」
王様は低い声で言いました。
お触れはすぐに取りやめになりました。
その後、母と子の溢れる街の中を、時折楽しそうに散歩する、王様の姿が見られるようになりました。
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