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『星のひめ』
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私の名前は『星のひめ』。
星の形をしたものが大好きで、髪飾りも星の形、靴にも星の飾りがあるし、ドレスときたら星でいっぱい。
だって星はきらきらしてるし、立派で誇らしそうで、何もかもが光ってるから。
そんな星は私に似合う。
私にしか似合わない。
だから、昨日、通りがかった街で、小さな女の子が持っていた星の形の鞄を取り上げた。
その子が泣いても取り上げた。
私の住んでる城の中の、一番下の家来の娘が、誕生日にと焼いたケーキも取り上げた。なんたって、それはとてもきれいな星型だったから。
娘はとてもがっかりしたと言うけど、不似合いなものを望むから。
星は私の印。
誰より美しく、気高い私を示す印。
だから、国中におふれを出した。
『星の印はひめの印。これより以後、何人たりとも使うことはならない』
街の飾りから星が消えた。
娘達の服から星が消えた。
子どもらの絵本からも星が消えた。
ずいぶんと満足したけれど、なんてことだろう、隣の国に、星の形の庭がある。
私は隣の国に、すぐに庭を壊すように使いをやった。もし言うことを聞かないようなら、私の国の軍隊を大勢送りつけて、星の庭とも滅ぼしてしまうがいかが、と言ってやった。
すると、隣の国から、1人の魔法使いがやって来た。
「麗しき、星のひめ。我が国の星の庭のことですが、許して下さるわけにはいきませんか」
「許せません」
「あの庭は王様の唯一の宝物です。ずっと昔、幼い姫を亡くされて、その姫が遊ばれていた庭だから。あの庭は、王にとっての、まさしく希望の星の庭」
「ならば尚更許せません。希望の星とは私のこと。私以外に星を持つなど、絶対に許せません」
「ひめは、多くの星をお持ちでしょう。なのに、まだ星をお望みですか」
「ええ。私の星が何より美しいとわかるまでは」
魔法使いは少し考え、ふいに私の手を取った。引っ込める間もなく、低い声でこう言った。
「では、ひめ、お見せ致しましょう。ひめがどれほど美しい星をお持ちなのか」
魔法使いが何か呪文を唱えると、あたりが眩しく輝いた。あまりの光に瞬きして、それでも眩くて、魔法使いの手を振りほどき、両手で顔を覆って俯いた。
「ひめ。さあ、顔をあげて御覧なさい」
「おお」
私は思わずそう言った。
なんと言うことだろう。城の中全てに星がある。私の手にも体にも、側にいる魔法使いも星で満ちている。
「こちらへ、ひめ」
魔法使いは、私を城の外へと導いた。中庭の明るい日差しの中、なお輝くいくつもの星が、木々に草に、花々に、鳥に蝶に毛虫にさえ満ちている。
「見てごらんなさい、ひめ」
魔法使いは泉の水を掬い上げた。水にも星は満ちていた。その水を、魔法使いはゆっくり飲んだ。きらりきらりと光りながら、星の水は魔法使いの体に入り、魔法使いはより明るい星々に満ちた。
私もそっと泉の水を掬った。
両手の中で水は輝きたゆたっている。その水を、ゆっくりゆっくり飲み干した。
しゃり、しゃり、しゃらん、と胸の奥で星が鳴った。魔法使いと同じように、私の体も星で一杯だった。
「さて麗しい、星のひめ。ほら、ここに、こんなに美しい星が零れておりますよ」
魔法使いが私の頬を撫で、ふうわりと手を開いて見せた。
そこには薄い桜色に光る、小さな星のかけらがあった。
終わり
星の形をしたものが大好きで、髪飾りも星の形、靴にも星の飾りがあるし、ドレスときたら星でいっぱい。
だって星はきらきらしてるし、立派で誇らしそうで、何もかもが光ってるから。
そんな星は私に似合う。
私にしか似合わない。
だから、昨日、通りがかった街で、小さな女の子が持っていた星の形の鞄を取り上げた。
その子が泣いても取り上げた。
私の住んでる城の中の、一番下の家来の娘が、誕生日にと焼いたケーキも取り上げた。なんたって、それはとてもきれいな星型だったから。
娘はとてもがっかりしたと言うけど、不似合いなものを望むから。
星は私の印。
誰より美しく、気高い私を示す印。
だから、国中におふれを出した。
『星の印はひめの印。これより以後、何人たりとも使うことはならない』
街の飾りから星が消えた。
娘達の服から星が消えた。
子どもらの絵本からも星が消えた。
ずいぶんと満足したけれど、なんてことだろう、隣の国に、星の形の庭がある。
私は隣の国に、すぐに庭を壊すように使いをやった。もし言うことを聞かないようなら、私の国の軍隊を大勢送りつけて、星の庭とも滅ぼしてしまうがいかが、と言ってやった。
すると、隣の国から、1人の魔法使いがやって来た。
「麗しき、星のひめ。我が国の星の庭のことですが、許して下さるわけにはいきませんか」
「許せません」
「あの庭は王様の唯一の宝物です。ずっと昔、幼い姫を亡くされて、その姫が遊ばれていた庭だから。あの庭は、王にとっての、まさしく希望の星の庭」
「ならば尚更許せません。希望の星とは私のこと。私以外に星を持つなど、絶対に許せません」
「ひめは、多くの星をお持ちでしょう。なのに、まだ星をお望みですか」
「ええ。私の星が何より美しいとわかるまでは」
魔法使いは少し考え、ふいに私の手を取った。引っ込める間もなく、低い声でこう言った。
「では、ひめ、お見せ致しましょう。ひめがどれほど美しい星をお持ちなのか」
魔法使いが何か呪文を唱えると、あたりが眩しく輝いた。あまりの光に瞬きして、それでも眩くて、魔法使いの手を振りほどき、両手で顔を覆って俯いた。
「ひめ。さあ、顔をあげて御覧なさい」
「おお」
私は思わずそう言った。
なんと言うことだろう。城の中全てに星がある。私の手にも体にも、側にいる魔法使いも星で満ちている。
「こちらへ、ひめ」
魔法使いは、私を城の外へと導いた。中庭の明るい日差しの中、なお輝くいくつもの星が、木々に草に、花々に、鳥に蝶に毛虫にさえ満ちている。
「見てごらんなさい、ひめ」
魔法使いは泉の水を掬い上げた。水にも星は満ちていた。その水を、魔法使いはゆっくり飲んだ。きらりきらりと光りながら、星の水は魔法使いの体に入り、魔法使いはより明るい星々に満ちた。
私もそっと泉の水を掬った。
両手の中で水は輝きたゆたっている。その水を、ゆっくりゆっくり飲み干した。
しゃり、しゃり、しゃらん、と胸の奥で星が鳴った。魔法使いと同じように、私の体も星で一杯だった。
「さて麗しい、星のひめ。ほら、ここに、こんなに美しい星が零れておりますよ」
魔法使いが私の頬を撫で、ふうわりと手を開いて見せた。
そこには薄い桜色に光る、小さな星のかけらがあった。
終わり
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