63 / 148
『まいごのルシュカ』(1)
しおりを挟む
「いい加減に片付けなさい」
お母さんに叱られて、ひろしは屋根裏部屋に上がってきた。
ここは倉庫になっている。ひろしが小さかった時のおもちゃや、もう着られなくなった服なんかが、いっぱい箱に残っている。
(半分はお母さんが残してるんだから、お母さんも片付ければいいのに)
ひろしは胸の中で呟きながら、持ってきたゴミ袋を広げた。
おもちゃがごっちゃり入ってる箱の中に手を突っ込んで、要るものと要らないものに分けていく。
(紙飛行機。飛ばなかったから要らない)
(プラモデル。部品を失くしたから、もう作れないや)
(わあ、なんてひどい絵なんだ。何が書いてあるのかわかんないぞ)
(ああ、この箱は覚えてる。初めて作った秘密基地だ。窓を作ろうと思って、穴を開けたら破れてしまった)
(これはどうしようか)
その時だ。
くすん、くすん、と部屋の隅から啜り泣く声が聞こえて、ひろしは飛び上がった。
(なんだ? おばけ?)
学校でみんなと話していたような、気味の悪いものをいっぺんに思い出して、ひろしはじっとそちらを見た。
部屋の隅に、ぼうっと青い光が灯っている。泣き声は、そこから聞こえてくるようだ。
そのまましばらく待っていても、くすんくすんと泣き続けるだけだ。
ひろしはこわごわ声を掛けた。
「誰?」
「ぼく、ルシュカ」
声は答えた。
立ち上がったのは小さな男の子。
真っ青な髪の毛と真っ青な目、真っ青なシャツに真っ青なズボン。靴も靴下も、鮮やかな青色だ。
「ルシュカ?」
「まいごになったの。かえるところがわからないの」
男の子はそういうと、また悲しそうに泣き出した。
「どこにいたか、覚えてないのか?」
ひろしはそっと近寄った。
ルシュカは首を振った。
ひろしの肩よりも小さな男の子。
「しろいところにいたの。でも、わかんない。ぼく、どこへかえればいいの? ねえ、おにいちゃん、どこへかえればいいの」
ルシュカは顔を上げた。
涙で潤んだ大きな青い目が、じっとひろしを見つめた。
「帰りたいの?」
「うん。でも、わかんなくなっちゃった。どうしよう」
ルシュカは前よりも悲しそうに泣き出した。
ひろしは一つ頷いた。
「ちょっと待ってな、友達を連れてくるから」
「ともだち?」
「うん。さとるの方が俺より賢いから。待ってろよ」
「うん」
ルシュカはようやくにっこり笑った。
ひろしは急いで階段を駆け下り、隣のさとるを呼びに家を飛び出した。
「うーん」
ひろしに連れてこられたさとるは、ルシュカを見るなり、腕を組んで唸った。
「日本人、じゃないよな」
「名前もルシュカって言うんだ」
「苗字は?」
「わかんない」
ルシュカは首を振った。
「地球人じゃないのかな」
「宇宙人?」
ひろしとさとるに覗き込まれて、ルシュカは困った顔で首を振った。
「わかんない」
「困ったな。いつからいたの?」
「わかんない」
「わかんないばっかりじゃ、わかんないだろ」
「だって…」
またルシュカが泣き出しそうになって、ひろしは慌てた。
「さとる、そんなこと言ってやるなよ。まだ小さいんだし」
「ちぇっ、そう言うけど、お前だろ、僕を呼んできたの」
「それはそうだけど」
「手がかりなしか、困ったな」
さとるは腕を組んで唸ったが、ふと思いついたように言った。
「ひょっとして、おもちゃ屋に居たとか」
「どうして、おもちゃ屋?」
「だって、こんな青い髪の毛、見たことある? きっとおもちゃ屋に居て、何かの表紙に紛れ込んだんだよ」
「そうか、そうかも知れない」
ひろしはルシュカの手を握って立ち上がった、
「じゃあ、おもちゃ屋へ行って、聞いてみよう」
「わかった」
さとるも立ち上がった。
二人でルシュカを挟むようにして、そっと裏部屋から脱け出した。
お母さんは洗濯物を干している。
今なら、大丈夫。
ひろしとさととルシュカは、町のおもちゃ屋へ行った。
「すみません」
「す・み・ま・せ・ん」
「はあい」
おもちゃ屋の奥から、歳取ったおじいさんが出てきた。
「何が欲しいのかな」
「違うんです」
「ちょっと見て欲しいんんです。この子なんだけど、おじいさん、見覚えありませんか?」
ひろしが2人の後ろに隠れていたルシュカをそっと押し出した。
「ほほう、これは、これは」
おじいさんは一瞬目を大きく開けて、それから細めた。
「なんときれいな髪の毛じゃな。一体どこの子かな」
「知らないんですか。このお店には居ませんでしたか」
「知らないな。うちの子じゃないよ。じゃが」
おじいさんは、ルシュカに優しく微笑んだ。
「行く所がないなら、うちに来るかい?」
ルシュカは黙って首を振った。
「じゃあ、また、いつでもおいで」
「ありがとうございました」
「ありがとー、ございました」
さとるがぺこりと頭を下げて、ひろしも急いで頭を下げた。ルシュカも慌てて真似をする。
3人はおもちゃ屋を出た。
お母さんに叱られて、ひろしは屋根裏部屋に上がってきた。
ここは倉庫になっている。ひろしが小さかった時のおもちゃや、もう着られなくなった服なんかが、いっぱい箱に残っている。
(半分はお母さんが残してるんだから、お母さんも片付ければいいのに)
ひろしは胸の中で呟きながら、持ってきたゴミ袋を広げた。
おもちゃがごっちゃり入ってる箱の中に手を突っ込んで、要るものと要らないものに分けていく。
(紙飛行機。飛ばなかったから要らない)
(プラモデル。部品を失くしたから、もう作れないや)
(わあ、なんてひどい絵なんだ。何が書いてあるのかわかんないぞ)
(ああ、この箱は覚えてる。初めて作った秘密基地だ。窓を作ろうと思って、穴を開けたら破れてしまった)
(これはどうしようか)
その時だ。
くすん、くすん、と部屋の隅から啜り泣く声が聞こえて、ひろしは飛び上がった。
(なんだ? おばけ?)
学校でみんなと話していたような、気味の悪いものをいっぺんに思い出して、ひろしはじっとそちらを見た。
部屋の隅に、ぼうっと青い光が灯っている。泣き声は、そこから聞こえてくるようだ。
そのまましばらく待っていても、くすんくすんと泣き続けるだけだ。
ひろしはこわごわ声を掛けた。
「誰?」
「ぼく、ルシュカ」
声は答えた。
立ち上がったのは小さな男の子。
真っ青な髪の毛と真っ青な目、真っ青なシャツに真っ青なズボン。靴も靴下も、鮮やかな青色だ。
「ルシュカ?」
「まいごになったの。かえるところがわからないの」
男の子はそういうと、また悲しそうに泣き出した。
「どこにいたか、覚えてないのか?」
ひろしはそっと近寄った。
ルシュカは首を振った。
ひろしの肩よりも小さな男の子。
「しろいところにいたの。でも、わかんない。ぼく、どこへかえればいいの? ねえ、おにいちゃん、どこへかえればいいの」
ルシュカは顔を上げた。
涙で潤んだ大きな青い目が、じっとひろしを見つめた。
「帰りたいの?」
「うん。でも、わかんなくなっちゃった。どうしよう」
ルシュカは前よりも悲しそうに泣き出した。
ひろしは一つ頷いた。
「ちょっと待ってな、友達を連れてくるから」
「ともだち?」
「うん。さとるの方が俺より賢いから。待ってろよ」
「うん」
ルシュカはようやくにっこり笑った。
ひろしは急いで階段を駆け下り、隣のさとるを呼びに家を飛び出した。
「うーん」
ひろしに連れてこられたさとるは、ルシュカを見るなり、腕を組んで唸った。
「日本人、じゃないよな」
「名前もルシュカって言うんだ」
「苗字は?」
「わかんない」
ルシュカは首を振った。
「地球人じゃないのかな」
「宇宙人?」
ひろしとさとるに覗き込まれて、ルシュカは困った顔で首を振った。
「わかんない」
「困ったな。いつからいたの?」
「わかんない」
「わかんないばっかりじゃ、わかんないだろ」
「だって…」
またルシュカが泣き出しそうになって、ひろしは慌てた。
「さとる、そんなこと言ってやるなよ。まだ小さいんだし」
「ちぇっ、そう言うけど、お前だろ、僕を呼んできたの」
「それはそうだけど」
「手がかりなしか、困ったな」
さとるは腕を組んで唸ったが、ふと思いついたように言った。
「ひょっとして、おもちゃ屋に居たとか」
「どうして、おもちゃ屋?」
「だって、こんな青い髪の毛、見たことある? きっとおもちゃ屋に居て、何かの表紙に紛れ込んだんだよ」
「そうか、そうかも知れない」
ひろしはルシュカの手を握って立ち上がった、
「じゃあ、おもちゃ屋へ行って、聞いてみよう」
「わかった」
さとるも立ち上がった。
二人でルシュカを挟むようにして、そっと裏部屋から脱け出した。
お母さんは洗濯物を干している。
今なら、大丈夫。
ひろしとさととルシュカは、町のおもちゃ屋へ行った。
「すみません」
「す・み・ま・せ・ん」
「はあい」
おもちゃ屋の奥から、歳取ったおじいさんが出てきた。
「何が欲しいのかな」
「違うんです」
「ちょっと見て欲しいんんです。この子なんだけど、おじいさん、見覚えありませんか?」
ひろしが2人の後ろに隠れていたルシュカをそっと押し出した。
「ほほう、これは、これは」
おじいさんは一瞬目を大きく開けて、それから細めた。
「なんときれいな髪の毛じゃな。一体どこの子かな」
「知らないんですか。このお店には居ませんでしたか」
「知らないな。うちの子じゃないよ。じゃが」
おじいさんは、ルシュカに優しく微笑んだ。
「行く所がないなら、うちに来るかい?」
ルシュカは黙って首を振った。
「じゃあ、また、いつでもおいで」
「ありがとうございました」
「ありがとー、ございました」
さとるがぺこりと頭を下げて、ひろしも急いで頭を下げた。ルシュカも慌てて真似をする。
3人はおもちゃ屋を出た。
0
あなたにおすすめの小説
「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」
(イェイソン・マヌエル・ジーン)
ファンタジー
魔物の討伐中に見つかった黄金の瞳の少年、アイト・グレイモント。
王宮で育てられながらも、本当の冒険を求める彼は7歳で旅に出る。
風の魔法を操り、師匠と幼なじみの少女リリアと共に世界を巡る中、古代の遺跡で隠された力に触れ——。
あなたの片想いを聞いてしまった夜
柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」
公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。
政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。
しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。
「好きな人がいる。……片想いなんだ」
名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる