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『金色のバリャー』(2)
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しばらくして、僕はお母さんと一緒に寝られなくなった。
お母さんのお腹が大きくなって、バリャーはもっと大きくなって、僕とお母さんを包んでいたバリャーは、とうとう失くなってしまったからだ。
僕は眠るたびに、やってくる怪物や怖いものと戦った。
そうしているうちに、お母さんは病院で赤ちゃんを産んだ。
僕は、お父さんと赤ちゃんを見に行って、赤ちゃんとお母さんを、大きくて明るいバリャーが包んでいるのに、いつもさみしい気持ちになった。お母さんは消えなかったけど、お母さんのバリャーは赤ちゃんのものになってしまった。
赤ちゃんは「けいこ」と名前がつけられた。
「けいこ」が、病院から、お母さんと一緒にうちへ帰って来て、僕はますます寂しくなった。
お母さんは一日中「けいこ」のおむつを替えたり、お乳をやったり、一緒に寝たりして、僕と遊んでくれない。
僕はその間一人で、昼寝をしたり、テレビを見たり、公園に行ったりした。
けんじくんは、
「大人ってのも、まあ大変なんだ」
と慰めてくれた。
お母さんはほんの少し、時々だけど、「けいこ」を僕に預けて、うちの前にあるポストに手紙を出しに行く。その時は「けいこ」は大抵眠っていて、僕は「けいこ」の隣に寝転んで、「けいこ」を包んでいるバリャーを見ている。
「あきら、お願いね」
今日もそう言って、お母さんが外へ出かけた後、僕は「けいこ」を眺めていた。
きれいなきらきらしたバリャー。
僕にはもうない、お母さんのバリャー。
あんまりきれいだったので、僕が泣きそうになった時、「けいこ」が急に目を覚ました。
「けいこ」は顔を真っ赤にして、手も足も縮めて、わんわん泣いてる。
お母さんは帰って来ない。
僕はおろおろして、部屋の中をぐるぐる歩いた。
「けいこ」はどんどん泣き続けている。体に力をいっぱい溜めて、ぎゃんぎゃん泣いている。
僕は「けいこ」の側に寝転がった。
「けいこ」も、僕みたいに、怪物やなんかと戦ってるんだろうか。
そう思って「けいこ」を見回すと、さっきまで「けいこ」を包んでいたバリャーが、いつの間にか消えてしまっていた。
やっぱりそうだ。
「けいこ」は戦ってるんだ。
僕はそっと手を伸ばした。
いつかお母さんがしてくれたように、「けいこ」の体をそっとそっと叩いた。小さく何度も何度も叩いた。
「けいこ」はわあわあ泣いて、それから僕の手に気がついたように、「えーん」と言った。
僕はゆっくり「けいこ」を撫でた。
何度も何度も撫で続けた。
「けいこ」は、えふ、えふ、えふ、こほんと言って、目を開けた。僕に手を伸ばして「あー」と言った。
「けいこ」は僕を見ていなかった。
僕は「けいこ」が見ているものを探して振り向いた。
「あらあら、あきら、ありがとう。お兄ちゃんになったのねえ」
玄関から、お母さんの声がした。
けれども僕は振り向かなかった。
僕はただ、僕と「けいこ」を包んでいる、素晴らしくきれいで大きなバリャーを見つめていた。
終わり
お母さんのお腹が大きくなって、バリャーはもっと大きくなって、僕とお母さんを包んでいたバリャーは、とうとう失くなってしまったからだ。
僕は眠るたびに、やってくる怪物や怖いものと戦った。
そうしているうちに、お母さんは病院で赤ちゃんを産んだ。
僕は、お父さんと赤ちゃんを見に行って、赤ちゃんとお母さんを、大きくて明るいバリャーが包んでいるのに、いつもさみしい気持ちになった。お母さんは消えなかったけど、お母さんのバリャーは赤ちゃんのものになってしまった。
赤ちゃんは「けいこ」と名前がつけられた。
「けいこ」が、病院から、お母さんと一緒にうちへ帰って来て、僕はますます寂しくなった。
お母さんは一日中「けいこ」のおむつを替えたり、お乳をやったり、一緒に寝たりして、僕と遊んでくれない。
僕はその間一人で、昼寝をしたり、テレビを見たり、公園に行ったりした。
けんじくんは、
「大人ってのも、まあ大変なんだ」
と慰めてくれた。
お母さんはほんの少し、時々だけど、「けいこ」を僕に預けて、うちの前にあるポストに手紙を出しに行く。その時は「けいこ」は大抵眠っていて、僕は「けいこ」の隣に寝転んで、「けいこ」を包んでいるバリャーを見ている。
「あきら、お願いね」
今日もそう言って、お母さんが外へ出かけた後、僕は「けいこ」を眺めていた。
きれいなきらきらしたバリャー。
僕にはもうない、お母さんのバリャー。
あんまりきれいだったので、僕が泣きそうになった時、「けいこ」が急に目を覚ました。
「けいこ」は顔を真っ赤にして、手も足も縮めて、わんわん泣いてる。
お母さんは帰って来ない。
僕はおろおろして、部屋の中をぐるぐる歩いた。
「けいこ」はどんどん泣き続けている。体に力をいっぱい溜めて、ぎゃんぎゃん泣いている。
僕は「けいこ」の側に寝転がった。
「けいこ」も、僕みたいに、怪物やなんかと戦ってるんだろうか。
そう思って「けいこ」を見回すと、さっきまで「けいこ」を包んでいたバリャーが、いつの間にか消えてしまっていた。
やっぱりそうだ。
「けいこ」は戦ってるんだ。
僕はそっと手を伸ばした。
いつかお母さんがしてくれたように、「けいこ」の体をそっとそっと叩いた。小さく何度も何度も叩いた。
「けいこ」はわあわあ泣いて、それから僕の手に気がついたように、「えーん」と言った。
僕はゆっくり「けいこ」を撫でた。
何度も何度も撫で続けた。
「けいこ」は、えふ、えふ、えふ、こほんと言って、目を開けた。僕に手を伸ばして「あー」と言った。
「けいこ」は僕を見ていなかった。
僕は「けいこ」が見ているものを探して振り向いた。
「あらあら、あきら、ありがとう。お兄ちゃんになったのねえ」
玄関から、お母さんの声がした。
けれども僕は振り向かなかった。
僕はただ、僕と「けいこ」を包んでいる、素晴らしくきれいで大きなバリャーを見つめていた。
終わり
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