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『僕を探して』(2)
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駅のホームで携帯が鳴った。
「美並?」
嬉しくてすぐに出ると、緊迫した声が響く。
『さっきはごめんなさい、京介』
「もう一人の僕は?」
『偽物でした。ぬいぐるみのクマになったんで、捕獲して、今京介を探しに出てます』
「ぬいぐるみのクマ…」
さすが夢だよね、大胆なことになってるよ、と一人ごちた。
「今どこ?」
『駅のホーム』
「すれ違っちゃうかもだね、何なら部屋に居てよ」
『ああ、そうですね、でも…』
騒がしい音が響いて、ああ、とか、おお、とか声が入り交じってどきりとする。
「美並?」
『すいません、電車乗っちゃいました。そこで待って…』
つーつーつー。
「あ~…」
ラッシュの時間帯じゃないけれど、夢の中なら何でもありだから、そういうことで押し流されて乗っちゃったんだよね、きっと。ならば、僕はここで待ってる方が得策で。
そう思った矢先。
「京介!」
「えっ…」
怒声で呼ばれて振り返ると、ホームの端からマフラーを閃かせて駆け寄ってくるのは大輔。
「う、わ」
やめてよ、なんだよこの展開。
ぞっとして慌てて逆方向へ走り出すが、うまく脚が上がらない。スピードが出ないのも夢の約束、泳ぐように身を翻したとたんに回り込まれて肩を掴まれる。
「捕まえたぞ!」
「い、やだ、大輔…っ」
「待ってろ、今ここでひんむいて」
「くそっ!」
ものすごい力で引き寄せられ、抱き寄せられて押し倒されそうになって、とっさに抵抗しかけて思い出すのは源内のことば。
そのまま身を任せて、勢いと流れを利用して逃げる。
「ふ、っ」
「おっ」
引き寄せる腕の力に滑り込み、相手が思わず強く引き過ぎたのをいいことに、するりと体を交わして脇からすり抜けた。
「京介!」
「いつまでも昔と同じだと思うなよ!」
大輔の背中に体を当てて前へ転がす。たたらを踏んだ相手がホームの端へのめっていって、
「わあ!」
おおおおわああああああ。ぎしゃぎしゃぎしゃぎしゃ。
転がり落ちたところへ電車が突っ込んできて、凍りついて振り向く京介の目の前で吹き上がったのは。
「え…っ?」
真っ青な水。
「あ、れ…」
冷たい飛沫に慌てて後じさりすると、そこは高い崖の上だった。打ち寄せる波、砕ける白い波頭の彼方に、大輔らしい人影はあっという間に彼方の沖へ流れされていく。
「さすが……夢……っていうか」
待ってよ。
「ここ……どこ……?」
思わず開いた携帯は圏外表示。もちろん伊吹にも繋がらない。
「……伊吹さぁん……」
なんだか、すごいことになっちゃったよ。
「……僕を……ちゃんと見つけてくれる……?」
心細くつぶやいたとたん、つんつんとスラックスを引っ張られて振り向いた。
「きょうすけ?」
「……伊吹、さん?」
黒いワンピースを着た幼い少女が見上げていた。
「美並?」
嬉しくてすぐに出ると、緊迫した声が響く。
『さっきはごめんなさい、京介』
「もう一人の僕は?」
『偽物でした。ぬいぐるみのクマになったんで、捕獲して、今京介を探しに出てます』
「ぬいぐるみのクマ…」
さすが夢だよね、大胆なことになってるよ、と一人ごちた。
「今どこ?」
『駅のホーム』
「すれ違っちゃうかもだね、何なら部屋に居てよ」
『ああ、そうですね、でも…』
騒がしい音が響いて、ああ、とか、おお、とか声が入り交じってどきりとする。
「美並?」
『すいません、電車乗っちゃいました。そこで待って…』
つーつーつー。
「あ~…」
ラッシュの時間帯じゃないけれど、夢の中なら何でもありだから、そういうことで押し流されて乗っちゃったんだよね、きっと。ならば、僕はここで待ってる方が得策で。
そう思った矢先。
「京介!」
「えっ…」
怒声で呼ばれて振り返ると、ホームの端からマフラーを閃かせて駆け寄ってくるのは大輔。
「う、わ」
やめてよ、なんだよこの展開。
ぞっとして慌てて逆方向へ走り出すが、うまく脚が上がらない。スピードが出ないのも夢の約束、泳ぐように身を翻したとたんに回り込まれて肩を掴まれる。
「捕まえたぞ!」
「い、やだ、大輔…っ」
「待ってろ、今ここでひんむいて」
「くそっ!」
ものすごい力で引き寄せられ、抱き寄せられて押し倒されそうになって、とっさに抵抗しかけて思い出すのは源内のことば。
そのまま身を任せて、勢いと流れを利用して逃げる。
「ふ、っ」
「おっ」
引き寄せる腕の力に滑り込み、相手が思わず強く引き過ぎたのをいいことに、するりと体を交わして脇からすり抜けた。
「京介!」
「いつまでも昔と同じだと思うなよ!」
大輔の背中に体を当てて前へ転がす。たたらを踏んだ相手がホームの端へのめっていって、
「わあ!」
おおおおわああああああ。ぎしゃぎしゃぎしゃぎしゃ。
転がり落ちたところへ電車が突っ込んできて、凍りついて振り向く京介の目の前で吹き上がったのは。
「え…っ?」
真っ青な水。
「あ、れ…」
冷たい飛沫に慌てて後じさりすると、そこは高い崖の上だった。打ち寄せる波、砕ける白い波頭の彼方に、大輔らしい人影はあっという間に彼方の沖へ流れされていく。
「さすが……夢……っていうか」
待ってよ。
「ここ……どこ……?」
思わず開いた携帯は圏外表示。もちろん伊吹にも繋がらない。
「……伊吹さぁん……」
なんだか、すごいことになっちゃったよ。
「……僕を……ちゃんと見つけてくれる……?」
心細くつぶやいたとたん、つんつんとスラックスを引っ張られて振り向いた。
「きょうすけ?」
「……伊吹、さん?」
黒いワンピースを着た幼い少女が見上げていた。
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