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『闇天女』
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「京さま」
「はい」
呼ばれて振り返ると、かむろの青雀が困った顔をして見上げている。
「また来られました」
「また?」
「京さまはお会いにならぬと申し上げましたのに」
「一目なりとねだられます」
「京さまは隠れ里一のお方」
「田舎侍などにお会いにならぬと」
「何度申し上げても、ただ一目と」
「差し上げたいものがあるからと」
「お預かりいたしますと申し上げても否と」
かむろの赤雀も口を揃えた。
おかっぱの二人がそっくり同じ困り顔で首を振るのは愛らしいもの、京介は微笑む。
「上げておやり」
「けれどまた」
「この間のような方のような振る舞いをされて京さまの身にもしもがありましたら」
「怒られます」
「叱られます」
「大事ない」
隠れ里一の遊女と誇ったところで、所詮は飾りもの、人の欲望に身を晒して生き抜くをよしとした、男女の性を越えた人形にすぎない。
「受け取ろうぞえ」
その田舎侍の差し出すものを。
婉然と笑みを深めて立ち上がれば、青雀と赤雀が不安そうに後に従う。
「この間のぶしつけな男は不愉快であった、無理矢理酷い目に合わせて」
「その後の下品な女もまた不愉快であった、欲を煽って貶めて」
背後で囁き交わす二人に虚しい想いに気持ちが塞ぐ。
そうじゃ、我は人のおもちゃ、『闇天女』と呼ばれる夜のあだ花。
「失礼いたします」
座敷で待っていると涼やかな声が耳に届いて、おやと思う。
「お初にお目にかかる、伊吹、とお見知り置きください」
「いぶき」
青雀赤雀の開いたふすまを抜けて、目の前に座った相手は細腰に刀を帯びていない。それにどう見ても、これは。
「主はおなごでありんしょう?」
「はい」
微笑む顔は穏やかだ。
「わっちと何を」
「知れたこと」
くすりと笑われて、腰のあたりがぞくりとした。
「しかしまずこれを」
取り出されたものに息を呑む。
それは小振りながら色鮮やかな細工を施された一振りの懐剣。
「主!」
隠れ里で刃は御法度、腰のものさえ置いてこられたのになぜ。
慌てて身を乗り出したとたん、すいと距離を詰められて思わず目を見開いて相手を見つめ返す。
「これがあなたには必要でしょう?」
静かな問いに黒い瞳が細められてくらりとする。
「わっちに…」
「その体を守るため」
触れられた肩から痺れが走る。
「この心を支えるため」
抱き締められて吐息を紡ぐ、目を閉じて何を望むかわかってほしいと願ってしまう。
「魂の底を」
「ああ…」
傷つけぬため。
そう囁かれて、同時に忍び入った指先に触れられた部分が潤むのがわかった。
「切り、裂いて…」
つぶやいた声が自分のものとは思えないほど甘えている。
「奥まで、全部」
「見せてみて」
密やかな声に促されて、帯を解く。
「奥まで、全部」
「……ああ」
からりと懐剣が畳に零れ落ちる、それに指を伸ばして両手で触れる、胸元に抱き寄せている間に、願う場所まで深く深く熱を感じて、小さく啼いた。
「京さま」
「京さま」
呼びかけられて目を開ける。
「鴉が鳴きました」
「明け方の光がもう」
ふすまの向こうから、いつものように青雀赤雀の急き立てる声が響く。
「本日はお輿入れの日」
「もうじきにお着きになられるはず」
身請け話がいつの間にまとまったのやら、そんなことはどうでもよい、そう自分を騙していたのだと今更ながらに気づく。
「はい」
体を起こせば、隣に居たと思った温もりは既になく。
「やはり幻」
苦い笑いにそれでも泣き出しそうになったのは、あまりにも満たされてあまりにも豊かであまりにも甘い一夜だったせい。
「わっちはどこまで未練がましいのでありんしょう…」
もし、あの侍がもう一度来るなら、この身を筵に包まれてどぶんと投げられるまで逃げてもよい、今度はそう思っている。
けれど目を上げて、枕元に見いだしたものにはっとした。
「これは、なんと」
ならばひょっとして。
慌てて探って引き寄せて、刃を確かめてみれば、刃こぼれもしない美しさにきらきら光るそれは確かに手のうちにあり。
「いぶき、さま」
これで我が身を守れとかや。
どろんどろんと身の内に不穏な太鼓の音が鳴り響くままに、身支度をする。
「『闇太夫』!」
「『闇太夫』!」
これを最後と見送る隠れ里の郭中の声が響く。
「見ておけ、これでもう戻らりゃせんぞ!」
「花じゃ、酒じゃ、にぎわってお送りせんとや!」
最上のしつらえ、最上の化粧、目元の紅も口元の紅も、これ以上なく鮮やかに,華やかに施して。
「道を開けい!」
「道を開けい!」
雄々しく強い叫び声が前方から響いてくるのを、胸を轟かせて見守りつつ、ゆっくりゆっくりと歩を進める。八の字回しの足下は確か、夕べの熱がまだ体に残っている、そのほてりを抱えたままで、この先を引き受けるというご仁に向かう。
胸には懐剣。
刃の宿る先をどの体とする。
「京さま」
「京さま」
「お顔が青うございます」
「お袖が震えておられます」
「青雀」
「はい」
「赤雀」
「はい」
「ようく見ておきなんし」
遊女にも誇りがありんす。ましてや『闇太夫』の名前を支えた誇りを、確かにしかと目に刻むように。
「京さま」
「京さま」
青雀と赤雀が思わず紅色の袂で片目ずつを押さえる。
「お別れしとうない」
「無体をお考えなさいますな」
「雑魚ども、離れろ!」
先ぶりの下っ端が露払いを勤めつつのしてくるのに立ち止まる。男どもに囲まれて、肝心の相手の姿はまだ見えない。それをきっと仁王立ちで迎えれば。
「あ、あ…」
ぬばたまの闇を身にまとい、瞳に冷ややかな意志をたたえて、夕べの幻がそこに立って微笑んだ。
「預けたものは持っていますか」
「はい、こちら、に」
手が震えて懐から取り出すのがおぼつかない。それでもよろめくように前へ進んでしまう、我が身の不安定さが恨めしい。もっと華やかに、もっと艶やかに、この相手を芯から底から惚れさせて迎えたかったと臍を噛む。
「主さまのものでありんす」
深々と礼を取れば、周囲がざわめく、あの『闇天女』が膝を折ったと。
だがそれを一喝して、相手は京介の手を取った。
「今宵より我がものとする、異を唱える者あらば、この場で申せ!」
静まり返ったのは当然、居並ぶ配下の圧力よりもなお、全てを敵に回してもこの手に抱いた誇りを守る、その明らかな意志を込めた懐剣の輝きと同じ瞳で、周囲を見据えたその力量。
「では、隠れ里の花一輪」
今風が攫っていくのを見よ。
微笑む伊吹に手を取られ、京介は今、長らく封じられていた隠れ里を後にした。
後のことは、青雀と赤雀が語る。
「伊吹さまは京さまを守られ」
「京さまは伊吹さまを支えられ」
「国は安泰」
「天地平穏」
「幸福あまねく降り注ぎまして」
「万世満幅の宴となり」
「我らがこうして」
「喜びの一節を語るに至ります」
「お聞きになりました皆々様にも」
「さらなる御友愛とご幸福を祈りまして」
「よぉお、お手を拝借!」
ぱん!
「はい」
呼ばれて振り返ると、かむろの青雀が困った顔をして見上げている。
「また来られました」
「また?」
「京さまはお会いにならぬと申し上げましたのに」
「一目なりとねだられます」
「京さまは隠れ里一のお方」
「田舎侍などにお会いにならぬと」
「何度申し上げても、ただ一目と」
「差し上げたいものがあるからと」
「お預かりいたしますと申し上げても否と」
かむろの赤雀も口を揃えた。
おかっぱの二人がそっくり同じ困り顔で首を振るのは愛らしいもの、京介は微笑む。
「上げておやり」
「けれどまた」
「この間のような方のような振る舞いをされて京さまの身にもしもがありましたら」
「怒られます」
「叱られます」
「大事ない」
隠れ里一の遊女と誇ったところで、所詮は飾りもの、人の欲望に身を晒して生き抜くをよしとした、男女の性を越えた人形にすぎない。
「受け取ろうぞえ」
その田舎侍の差し出すものを。
婉然と笑みを深めて立ち上がれば、青雀と赤雀が不安そうに後に従う。
「この間のぶしつけな男は不愉快であった、無理矢理酷い目に合わせて」
「その後の下品な女もまた不愉快であった、欲を煽って貶めて」
背後で囁き交わす二人に虚しい想いに気持ちが塞ぐ。
そうじゃ、我は人のおもちゃ、『闇天女』と呼ばれる夜のあだ花。
「失礼いたします」
座敷で待っていると涼やかな声が耳に届いて、おやと思う。
「お初にお目にかかる、伊吹、とお見知り置きください」
「いぶき」
青雀赤雀の開いたふすまを抜けて、目の前に座った相手は細腰に刀を帯びていない。それにどう見ても、これは。
「主はおなごでありんしょう?」
「はい」
微笑む顔は穏やかだ。
「わっちと何を」
「知れたこと」
くすりと笑われて、腰のあたりがぞくりとした。
「しかしまずこれを」
取り出されたものに息を呑む。
それは小振りながら色鮮やかな細工を施された一振りの懐剣。
「主!」
隠れ里で刃は御法度、腰のものさえ置いてこられたのになぜ。
慌てて身を乗り出したとたん、すいと距離を詰められて思わず目を見開いて相手を見つめ返す。
「これがあなたには必要でしょう?」
静かな問いに黒い瞳が細められてくらりとする。
「わっちに…」
「その体を守るため」
触れられた肩から痺れが走る。
「この心を支えるため」
抱き締められて吐息を紡ぐ、目を閉じて何を望むかわかってほしいと願ってしまう。
「魂の底を」
「ああ…」
傷つけぬため。
そう囁かれて、同時に忍び入った指先に触れられた部分が潤むのがわかった。
「切り、裂いて…」
つぶやいた声が自分のものとは思えないほど甘えている。
「奥まで、全部」
「見せてみて」
密やかな声に促されて、帯を解く。
「奥まで、全部」
「……ああ」
からりと懐剣が畳に零れ落ちる、それに指を伸ばして両手で触れる、胸元に抱き寄せている間に、願う場所まで深く深く熱を感じて、小さく啼いた。
「京さま」
「京さま」
呼びかけられて目を開ける。
「鴉が鳴きました」
「明け方の光がもう」
ふすまの向こうから、いつものように青雀赤雀の急き立てる声が響く。
「本日はお輿入れの日」
「もうじきにお着きになられるはず」
身請け話がいつの間にまとまったのやら、そんなことはどうでもよい、そう自分を騙していたのだと今更ながらに気づく。
「はい」
体を起こせば、隣に居たと思った温もりは既になく。
「やはり幻」
苦い笑いにそれでも泣き出しそうになったのは、あまりにも満たされてあまりにも豊かであまりにも甘い一夜だったせい。
「わっちはどこまで未練がましいのでありんしょう…」
もし、あの侍がもう一度来るなら、この身を筵に包まれてどぶんと投げられるまで逃げてもよい、今度はそう思っている。
けれど目を上げて、枕元に見いだしたものにはっとした。
「これは、なんと」
ならばひょっとして。
慌てて探って引き寄せて、刃を確かめてみれば、刃こぼれもしない美しさにきらきら光るそれは確かに手のうちにあり。
「いぶき、さま」
これで我が身を守れとかや。
どろんどろんと身の内に不穏な太鼓の音が鳴り響くままに、身支度をする。
「『闇太夫』!」
「『闇太夫』!」
これを最後と見送る隠れ里の郭中の声が響く。
「見ておけ、これでもう戻らりゃせんぞ!」
「花じゃ、酒じゃ、にぎわってお送りせんとや!」
最上のしつらえ、最上の化粧、目元の紅も口元の紅も、これ以上なく鮮やかに,華やかに施して。
「道を開けい!」
「道を開けい!」
雄々しく強い叫び声が前方から響いてくるのを、胸を轟かせて見守りつつ、ゆっくりゆっくりと歩を進める。八の字回しの足下は確か、夕べの熱がまだ体に残っている、そのほてりを抱えたままで、この先を引き受けるというご仁に向かう。
胸には懐剣。
刃の宿る先をどの体とする。
「京さま」
「京さま」
「お顔が青うございます」
「お袖が震えておられます」
「青雀」
「はい」
「赤雀」
「はい」
「ようく見ておきなんし」
遊女にも誇りがありんす。ましてや『闇太夫』の名前を支えた誇りを、確かにしかと目に刻むように。
「京さま」
「京さま」
青雀と赤雀が思わず紅色の袂で片目ずつを押さえる。
「お別れしとうない」
「無体をお考えなさいますな」
「雑魚ども、離れろ!」
先ぶりの下っ端が露払いを勤めつつのしてくるのに立ち止まる。男どもに囲まれて、肝心の相手の姿はまだ見えない。それをきっと仁王立ちで迎えれば。
「あ、あ…」
ぬばたまの闇を身にまとい、瞳に冷ややかな意志をたたえて、夕べの幻がそこに立って微笑んだ。
「預けたものは持っていますか」
「はい、こちら、に」
手が震えて懐から取り出すのがおぼつかない。それでもよろめくように前へ進んでしまう、我が身の不安定さが恨めしい。もっと華やかに、もっと艶やかに、この相手を芯から底から惚れさせて迎えたかったと臍を噛む。
「主さまのものでありんす」
深々と礼を取れば、周囲がざわめく、あの『闇天女』が膝を折ったと。
だがそれを一喝して、相手は京介の手を取った。
「今宵より我がものとする、異を唱える者あらば、この場で申せ!」
静まり返ったのは当然、居並ぶ配下の圧力よりもなお、全てを敵に回してもこの手に抱いた誇りを守る、その明らかな意志を込めた懐剣の輝きと同じ瞳で、周囲を見据えたその力量。
「では、隠れ里の花一輪」
今風が攫っていくのを見よ。
微笑む伊吹に手を取られ、京介は今、長らく封じられていた隠れ里を後にした。
後のことは、青雀と赤雀が語る。
「伊吹さまは京さまを守られ」
「京さまは伊吹さまを支えられ」
「国は安泰」
「天地平穏」
「幸福あまねく降り注ぎまして」
「万世満幅の宴となり」
「我らがこうして」
「喜びの一節を語るに至ります」
「お聞きになりました皆々様にも」
「さらなる御友愛とご幸福を祈りまして」
「よぉお、お手を拝借!」
ぱん!
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