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10.花祭(1)
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「ん…ぅ」
ユーノはうなされている。
「…いじょ……ぶ」
夢の中で引き戻されたのは、初めてカザドに襲われた夜。
逃げ場もなく、ただ家族を守るために闘うことを求められた日。
「大丈夫……だから……心配……しない…で…」
喘ぎながら笑う。
精一杯の虚勢はいつも成功した。
誰も気づかない、ユーノの奥深くに抉られた、深い傷の在り処を。
「レアナ姉さま!」
大好きな姉の姿を見つけて、ユーノは満面の笑みで駆け寄り、すぐに気づいた。
レアナの美しい眉のあたりに心配そうな影が漂っている。
「どうしたの、姉さま」
「変な人たちが来てんの」
10歳のセアラが生意気な口調で言い放った。
「だめよ、セアラ」
レアナが柔らかくたしなめる。
「お父さまのお客さまよ」
「変な人は変よ」
14歳のレアナの分別をセアラは聞き入れない。
「……そうだな」
ユーノが物陰から伺った一群の男達は隣国カザドの紋章をつけている。謁見に際して剣を外していないのが不安だったが、セレドの親衛隊は咎めようとしない。
3人は知らなかったが、その頃、日ごとに美しくなるレアナの噂を聞き付けたカザディノが、レアナを『副妃』として迎えたいと言ってよこしていたのだった。
単に使者だけではなく武装した兵も同行させたのを見ても、相手の意図が強圧的なのはわかったが、セレディス4世も、仮にも一国の皇女を『正妃』ならまだしも『副妃』などとはとんでもないとはねつけた。その場では無理を通すなと言い含められていたらしく、使者達は一晩留まることもなくすぐに帰還した。
だが、実はレアナを望むことさえ、セレドに警戒されずに入り込むための手段だったとは、その夜にわかった。
「?」
ふいとユーノは目を覚まして訝った。
闇に妙な気配がある。
7歳から皇宮の作法やダンスよりも熱心にゼランに剣を学んでいたのは偶然ではない。悪意はないとは言え、母親譲りの華やかな容姿を持つ姉妹と繰り返し比べられて、自分が外見では遥かに劣ることを早くから理解していた彼女は、自分の未来に誰かが寄り添うことを早々と諦めつつあった。
「……」
ひたひたと夜の向こうから迫ってくる殺気に瞬きして、ゆっくりと体を起こす。枕元に忍ばせていたのは覚えつつあった短剣、それに手を伸ばしたとたん、
「でええいっ!」「っ」
部屋の隅に潜んでいたらしい影が剣を突き出してきた。かろうじて一太刀目は躱したものの、すぐに繰り出されたニ太刀目がざくりと右腕を削いでいく。
「っっ!」
(母、さまっ)
痛みに声も出せずに心の中で悲鳴を上げたユーノの手から、落ちた短剣がからからと軽い音をたてて床を滑る。痺れた右腕を押さえる間もなく、刺客は次の一手を振り上げてくる。
(殺される?!)
咄嗟に掴んだシーツを相手に投げ付けて視界を遮り、落ちた剣を拾ってそのまま、のしかかってきた相手の胴へシーツ越しに突き入れる。
「ぎゃあっ」
まさか幼い子どもが反撃してくるとは思ってもいなかったのだろう、叫んだ刺客が体を引いて剣を抜こうとするのを、ユーノはなおも突き込んだ。
一度傷を負わせたなら、そこを必ず狙いなさい。一番守りが弱くなっているうえ、深手になれば勝機ができる。
脳裏に過るのはゼランの声だ。
相手とユーノには圧倒的な体格差がある。ましてや、既に右腕を傷つけているユーノは次の攻撃の術がない。
(剣は両腕で使えないとだめ、なんだ)
歯を食い縛りながら、ユーノは思い知る。必死に体ごと刺客にぶつかり続け、押し込み続ける。隙間ができてしまえば最後、手負いの敵は必ずこちらを仕留めにくる。
(離れるな、離れちゃやられる)
刺さった短剣の向こうの感触は、食卓に並ぶ肉を刺した感覚より遥かに鮮烈、ともすれば蠢く体の動きに剣が呑み込まれて跳ね飛ばされそうになる。押し返す力も半端ではなく強い。
生きてるんだ、とぞくぞくしながら思った。
(生きてる命を、突き刺している)
「く、ぁ、あ、あっ」
迸るように叫んだのは流れ落ちてくる涙を堪え切れなくなったからだ。
剣を使うということは、人を殺すということは、これほど全身痛いものなんだ。ゼランに教えてもらった型なんて、ほんの入り口に過ぎないんだ。今こうして相手の胴に突き出し続ける剣を支える手が震える。体もがくがく震える。シーツを濡らしてだらだら染み通ってくる血の生臭さに吐きそうで、それでも力を緩めれば、ユーノが死ぬのは確実で。
(いや、だ)
ぎゅ、と唇を噛んで、なおも全身で突っ込んだ。
「ぐ、ああっ!」
絶叫が耳を圧する。痙攣した刺客が剣を落とし、がつっとユーノの肩を掴む。その10本の指が食い込む感触に、泣きながらユーノは剣を突き上げた。
「がはっ」
ばしゃっ、と被ったシーツに血が降った。同時に男が崩れてきた。肩を掴まれたまま巻き込まれ押し倒されそうになって初めて、剣を引き抜き飛び退る。
いや、ユーノは飛び退ったつもりだったが、実際は後ずさりしてシーツに引っ掛かり、腰から背後に転がっただけ、それでも空いた空間にどぅ、と音をたてて刺客の体が丸太のように倒れてきた。
咄嗟に剣を構えたが、もうピクリとも動かない。
「う…っ、…っは…っは」
喘ぎながら睨み付けた刺客は男だった。黒づくめの服装、紋章はどこにもないが、引きつり白目を剥いた顔には覚えがある。昼間に謁見を申し出た1人だ。
(カザド)
う、わあっ、と皇宮の別棟で声が上がって、はっとした。
(姉さま、セアラ…っ)
跳ね起きて立ち上がろうとするのに、脚が震えて立てない。脚だけではない、自分が今にも溺れかけたようなせわしい息を吐きながら、ぼろぼろ泣き続けているのがわかる。
男はシーツに包まれたまま、どんどん熱気を失っていく。少し覗いた血まみれの指が固く白くなっていくのから目を逸らせなくて、それを見ているだけでも吐きそうで、ユーノは喉を鳴らした。
「う…、ううっ」
自分の体を、強ばって短剣を放せなくなっている右手で抱える。左手で右腕の傷を押さえつけたが、痛みにびくりと震えてしまって、身を竦めてまた泣いた。
冷や汗が額から眉間を通って流れ落ちてくる。きつく唇を噛みしめて、口の中に自分の血を吸い取って、ようやく少し我に返った。
のろのろと這いずって死体から離れ、震えながらガウンを引き寄せ右肩から羽織る。どこに敵が居るかわからない。次に同じ場所を狙われたら、もう気力も体力ももたない。
(痛い……母さま……すごく…痛いよ)
誰も来てくれないのは、別棟の騒ぎで手一杯になっているのだろう。そこにきっと父母も居る。どんどん冷たくなってくる右腕の手当てもしてもらえるはずだ。痛かったろう、一人でよく頑張ったと慰めてもらえるはずだ。
「ひ…っう」
大声を上げて泣きたいのを堪えて、ユーノは部屋をよろめきでた。無限に続くような廊下をのろのろと歩いて、ようやく父母の寝室にたどりつく。
「かあ…さ」
ほっとして顔を上げたとたん、その扉の中から飛び出してきた人影に息を呑んだ。もう右手では痺れて持てなかったから左手に持ち替えていた剣を、かろうじて引き上げて構えると、
「ユーノ様!」
「ぜ…らん…」
親衛隊の隊長は豪快に笑った。
「おお、見事防がれたのですね! さすがはユーノ様!」
「あ……う、ん」
「それでこそユーノ様です! 私は皇をお守りしに参ります、皇妃さま方をお頼みしますぞ!」
「え…」
茫然とするユーノを置き去り、ゼランはあっという間に広間の方へ駆け去った。
(母さま、方…?)
出血のせいか一瞬暗くなった視界を振り払い、ふらふらしながら寝室に入ると、こちらに背中を向けて跪いているミアナ皇妃が居る。
「母…」
よかった、これで痛いの、ましになる。
呼び掛けるとぎくりと背中を強ばらせて、ミアナ皇妃が怯えた顔で振り返り、ユーノは目を見開いた。ミアナの優しく庇った腕の中には、泣きながらしがみついているレアナとセアラが居る。
「ユーノ」
ミアナがぱっと顔を輝かせて名前を呼んでくれ、次にはきっと自分もその腕で抱え込んでくれるのだろう、そう思って微笑みかけたユーノの耳に、すがりつくような声が届いた。
「来てくれたのですね」
「え…?」
「あなたが居てくれれば安心です。お父さまとゼランが戻るまで、側で守って下さいね」
「あ」
何を言われたのかわからなくて、それでも相手の瞳が注がれているのは、血に染まったガウンを引っ掛けて左手に短剣を煌めかせている、その自分の姿で。
(でも、母さま)
「あなたが剣を習っておいてくれてよかった。ゼランもユーノなら大丈夫、そう言い聞かせてくれていました」
日頃ドレスもダンスも嫌いだと言って好まなかったあなただけれど、今こそその素晴らしい腕を見せてください。
少女のように微笑むミアナの目には、安心しか広がっていない。
(でも、私、怪我を)
「母さまぁ!」
セアラが泣きじゃくってミアナの胸に顔を押し付ける。
「怖い…」
レアナが震えてミアナの腕にすがりつく。二人を抱き締めるミアナも、青ざめた顔でユーノを見上げている、まるで保護を求めるように。
「うん……わかった…」
(私だって)
「大丈夫だよ……私、剣は…うまいから」
ぐらりと揺れかけた体を堪えて背中を向ける。
(私だって……母さまの腕に守って…ほし…)
「っ」
零れ落ちそうになった涙をぎゅ、と唇を噛んで目を開いた。
ほのかな明かりが灯る室内とは逆に、ユーノの前には黒々とした闇が広がる。けれど、その闇から逃げるわけにはいかない。後ろには母が、姉が、妹が居る。
(がん…ばろう)
せめてセレディス皇が戻ってくるまで。
(もう…少しだけ……がんばれば……)
きっとゼランも戻ってきて。
右腕の痛みが焼けついてくるように強くなる。めまいがして、吐き気がする。
(たおれちゃ…だめだ)
倒れても、どうにも、ならない。
(もう、少し、だけ)
「っ」
短剣を落としそうになる。ふらついた体を堪えて崩れかけた足を踏み締める。霞む視界を見開いたとたん、廊下の向こうから走り寄ってくる父親とゼランの姿を見つけた。
「あ」
よかった、これでようやく休める。
「ユーノ様!」
「ユーノ!」
「父さま、わ、たし」
ここを怪我して。
言いかけたとたんに、厳しい表情でセレディス皇が言い放つ。
「よし、ここはもういい。ゼランと一緒にあちらを見回ってくれ」
「…え…?」
「見張りが倒されていて人数が足りぬ、頼むぞ」
「さ、ユーノ様、お願いしますぞ!」
「う…ん」
ゼランが追い立てるように声をかけてくる、そのユーノを振り向きもせずにセレディスは部屋に入っていく。父さま、と叫びながら抱きついたらしいセアラをよしよし、と抱き締めるのを視界の端に、ユーノはゆらりと顔を背けた。
「ユーノ様、お早く!」
「わか…た」
(父さまが……悪いんじゃない)
一番弱いものを守るのは当たり前だ。
(母さまが……悪いんじゃない)
ユーノはいつも、剣を習っているのはみんなを守れるようになるため、そう言い張っていた。
(姉さまや……セアラが……)
悪いわけが、ない。
「そちらを! 私はこちらを回ります!」
「…うん…」
再び背中を向けるゼランに、崩れかけた足下をかろうじて保った。揺れた体からガウンが滑り落ちる。ぼたり、と重い音をたてて床に広がったそれが、じわじわと黒い染みを広げていくのをぼんやりと眺めた。
「まわ…らなきゃ……」
壁に手を当て、のろのろと歩き出す。1歩ごとに視界が揺れる。
「私…しか……いない……だし…」
ならば、ユーノは。
突然込み上げてきた激情を堪え切れずに立ち止まる。
ユーノはどこへ行けばいいのだ? 右手を動かせないほどの傷を負い、初めて人を殺してどこか壊れそうなのに、それでもどこでも休めない。
それとも、ユーノは強いから、誰にも守ってもらう必要などない、そういうことなのか?
(でも、私)
ふっと意識が遠のいた。
(私も、限界、なのに)
体がぐずりと得体の知れないぬかるみに落ちそうになって、眉を寄せて右腕を握る。
「っく」
ざく、と再び蘇った痛みに我に返った、次の一瞬、背中に巨大な氷を当てられたような感覚に息を呑む。
殺気。
「わ、うっ!」
いきなり右肩から左の腰へ灼熱の痛みが走った。仰け反ったユーノの体を抉るように食い込んでくる金属が冷たくて熱くて、とてつもなく、痛い。しかも容赦なく深さを増しながら抉られる。
「っっ、っっ、っぁああああっ!!!」
父さまとも母さまとも呼べず、ただ絶叫だけを響き渡らせながらユーノは崩れ落ちる。喉を突き上げる悲鳴は切れ切れに、闇の彼方へ吸い込まれていく。
(う、ぁ、ぁ、ぁああああっ)
それでも、誰も来てくれない。
(あ、あ、あ、あ……っ)
差し伸べた手は、空を切って。
視界が、暗転、する。
(ユーノ!)
だ、れ…。
「ユーノ!!」
「っっ」
大声で呼ばれて揺さぶられ、ユーノは目を開けた。
「どうしたっ、ユーノっ!」
「あ…あ」
まだ半分夢の中に居るようで、体中が汗に濡れている。
(あ、しゃ)
荒い呼吸を繰り返しながら、覗き込む相手を見上げた。心配そうにひそめられた眉の下、見開かれた瞳が薄闇に煌めいている。背後の窓から差し込む月明かりを受けて透明に
輝く紫の光が、幻の楽園のように美しい。
「大丈夫か?」
「…ごめ…ん…」
肩を掴まれていたのを身をよじって避けると、アシャははっとしたように手を引いた。髪をかきあげる仕草にきらきらと金髪が光を跳ねる。見愡れかけて、ユーノは呼吸を整えながら眼を閉じる。
「夢を……見てた…」
背中が今切り裂かれたばかりのようにずきずきする。
(もう、5年も前なのに)
体がまだ震えていた。腑甲斐無さに舌打ちしながら、それでもとっさにすがりつきそうになった手で自分を抱き締める。
あの夜。
ユーノが倒した刺客はカザドの紋章をつけていなかった。謁見した男だとユーノは証言できなかった。傷のために高熱を出して寝込んだのだ。
セレディス4世はカザディノに襲撃を受けたことを訴えたのだが、相手方は知らぬ存ぜぬで押し通し、証拠もないまま事を荒立てるなら、逆にセレドを制圧すると脅してきた。沈黙するしかなかったセレディス4世に、事実、それから1年以上、カザディノは表立って手を出してくることはなく、レアナを望んだことさえ忘れたように振る舞った。
セレディス4世はまず何よりもレアナの安否を気遣った。これ以上問題を大きくして、セレドに攻め込まれ、レアナを無理矢理攫われるぐらいならば、穏やかに事をおさめたほうがよい。そう判断した。
ユーノが回復してみれば、セレドは何ごともなかったように平穏を取り戻していた。あげくに、カザドの刺客などではなく、流れ者が紛れ込んでの騒ぎだったのではないか、そう結論されて、ユーノは何も言えなくなった。
倒した刺客がいつの間にか誰かに運び出されていたのも災いした。
皇宮に賊が侵入したということの方が、隣国カザドがセレドを狙っていると考えるよりは、遥かに人々の心に安心をもたらしたということだ。
ただし、皇宮の親衛隊は人数を増やされ、ユーノも行動を共にすることとなった。
あの夜の記憶は鮮烈な炎になって、何度もユーノの眠りを妨げた。悲鳴を上げて飛び起きる夜を繰り返し、その悲鳴で誰かを起こさなかったかと震えながらまた寝床に蹲る。
思い出したように痛む傷跡に耐える日々は長くは続かなかった。
水面下で、カザドは執拗に襲撃をかけてくるようになったのだ、まるでユーノを弄ぶように。
そして、それを訴えるべき相手はユーノに残されていなかった。誰もが、そんな脅威はあり得ないと、親衛隊隊長のゼランまでそう信じたがっていたから。
安寧が長く続かないのはわかっていたが、ぎりぎりまでしのぎたかった。偽りの平和でも守りたかった。
ラズーンから使者が来て、ユーノが発つしかなかったから、ゼランには詳しく事情を打ち明け、守備を固めるようには頼んできた。
だが、太古生物が復活しているような状態の中、カザドの動きもそれに連動しているように思えて、残してきた家族が不安になった、それが夢の引き金を引いたのだろう。
「何の夢だったんだ」
アシャがベッドの端の腰を降ろして、ユーノは眼を開けた。
「ひどくうなされていた」
「なん…でも……な…っ」
指を伸ばされ、汗に濡れて張り付いた額の髪をかき上げられて、思わず顔が熱くなった。
「汗びっしょりだ」
「小さい頃に見た……魔物(パルーク)の……夢だ」
優しい指先が布でそっと汗を拭ってくれるのに、目を伏せる。
(気持ち…いい)
誰もこんな風に慰めてはくれなかった。うなされたユーノを案じて側に居てくれなかった。
思わず吐息をついて、少しの間、アシャのなすがままにまかせる。
自制がどんどん脆くなる。誰も助けてはくれないのだ、1人で生き抜くしか術はないのだ、そう思い知らされた切なさが胸に迫る。これからも自分が生きるためには、こうして自ら敵を屠り続けるしかない、そういう思いを越えて、アシャに期待しそうになる、守ってくれるのではないか、と。
く、とユーノは唇を噛んだ。
(しっかりしろ)
そんなことは、あるはずがない。
(アシャは、姉さまを)
あのたおやかで美しい人を求めている。
目を開けて頬から首へ滑っていこうとしたアシャの手を押し止めた。軽く握って押し遣りながら、笑いかける。
「ごめん、起こしちゃった」
ちかり、とアシャは瞳を光らせた。
「17にもなって、化け物の夢で騒いでりゃ世話ない、そう思わない?」
「嘘つきめ」
「え…?」
アシャが険しい顔で睨み付けてきて戸惑う。
「何が?」
「心配しないで、と言ったぞ」
「っ」
「魔物(パルーク)が心配してくれていたのか」
「え、えーと」
しまった、とひやりとする。そんな寝言まで口にしていたとは思わなかった。
「ユーノ?」
「あ、だから、つまり、その」
「…ユーノぉ…」
口ごもっていると、急に寝ぼけた声でレスファートが呼んだ。目を擦りながら起き上がり、
「なに、さわいでるの…」
「あ、ごめん、レス」
起こしちゃったね、と急いでそちらに笑いかけたが、頬に当たるアシャの視線がひどく痛い。
(ごまかせ、ないよね)
「ユーノ」
伸びてきた手に身を竦めた矢先、レスファートがベッドを滑り降りた。そのままとことこやってきて、アシャの前に立ち塞がり、するするとユーノのベッドに潜り込んでくる。
「ぼく…ここでねる…」
「うん、そうだ、それがいいよ、レス」
ユーノはほっとしてアシャを振り向いた。
「アシャも寝なよ。明日お祭りだろ。楽しもうよ」
一気にまくしたてると、アシャが伸ばした手を溜め息まじりに降ろした。軽い舌打ちとともに、がしがしと乱暴に金髪をかき乱しながら背中を向ける。
「いじっぱり」
「え?」
「……わかった、今夜はもう寝る、けれど」
肩越しに投げてきた眼は、次は逃がさない、そういう強さで光る。その目をまっすぐ見返して、ユーノはにっこり笑った。
「起こしてくれてありがとう」
「……おやすみ」
「うん、おやすみ」
部屋のもう片隅のベッドに背中を向けて潜り込むアシャに、ユーノもレスファートを抱きかかえて目を閉じる。
それでも、ずっと眠れずに、やがて響き出したアシャの寝息を聞いていた。
「花祭だ!」
「花祭だよぉっ!」
街中が窓という窓を全て開き、そこから色鮮やかな花々をまき散らす人々で沸き返っている。
「す…ごい」
宮中で広大な庭園も見ている、飾られるために持ち込まれる美しい花も知っているはずのレスファートやユーノまで、空中から舞い落ちる花弁に茫然としている。びっくり大きな目を見開いている2人に、アシャは苦笑しながら説明した。
「シェーランの花祭は有名なんだ」
「そうなの?」
「今回のはまだ小規模みたいだが、全盛期にはこのあたり一帯から花を買い集めて、あちこちで花屋台がたった」
「ぼく、こんなにたくさんの花って見たことない」
「ボクもだ」
ユーノが興奮するレスファートに頷き返す。と、真隣を通っていく花を満載した花馬車に乗った娘達がくすくす笑って互いを突きあった。
「?」
ひょいとそちらへ目を向けたアシャに、きゃ、と小さな声が上がって、娘達が頬を染めた。ユーノとレスファートもそちらを振り返ると、きゃああ、とはしゃいだ声が響き渡る。ぎょっとするユーノに、娘達が口々に叫ぶ。
「剣士さま!」
「こちらへどうぞ!」
「私達の花馬車へどうぞ!」
負けじと周囲の馬車から一斉に声が呼ばわった。
「剣士さま!」
「いらっしゃって下さいませ!」
「剣士さま!」
「あ、アシャ」
うろたえた顔でユーノが側に寄ってくる。レスファートは意外に慣れたもので、にこっと笑いながら、後で、と鷹揚に流しているのと対照的だ。
「何なの、一体」
「みんな知ってるんだろう、お前がレガを仕留めたことを」
「み、みんな?」
「朝、ろうかで話してるのもきいたよ?」
「えええ」
ユーノは引きつった顔になって、まいったなあ、と眉を寄せた。周囲に求められ慕われているのは明らかなのに、それで返って不安を感じてしまうらしく、緊張した顔でアシャに身を寄せてくる。
(まったく、こいつは)
仮にも皇族だったのだから堂々としていればいいものを、と思いつつも、めったに頼ってこないユーノが心細そうに擦り寄ってくるのは気持ちがいい。ついつい笑顔で肩に手を回し、気にするな、と話しかけようとしたとたん、がしっと太い腕にユーノが抱えられてむっとした。
「まいるこたあ、ない!」
「イルファ」
もうどこかでごちそうになってきたのか、赤い顔になったイルファが上機嫌でユーノの肩を抱きかかえて豪快に笑う。
「娘達は大喜びだぞ、『生贄』から救ってくれた剣士として、お前を待っている! よりどりみどりだぞ!」
しかしまあ、これだけの娘を隠しておくのも大変だっただろう、と感心しているイルファから、アシャはさりげなくユーノを引き寄せた。
「花祭もここしばらく開けなかったそうだしな」
「そうなの?」
「それに!」
どん、とアシャを突き飛ばすようにして、またイルファがユーノを抱えた。
「今日は俺達のためにわざわざ開いてくれたのだ、楽しまんと悪いだろうが!」
「本当、だ、な!」
ユーノの首を抱えているイルファの腕を押し退けてアシャはユーノを引っ張った。
「ほら、こっちだろ、広場はっ」
「おう、そっち……おい、何だ?」
引き剥がされたイルファが、がしっともう一度ユーノにのしかかりかけ、寸前アシャに受け止められて不愉快そうに目を上げる。
「何で邪魔する?」
「邪魔などしてない」
「邪魔してるだろうが」
「俺が腕を上げたらお前が引っ掛かってきたんだろうが」
「そうかぁ?」
「そうだ」
ユーノが呆気にとられた顔で見上げているのは知っているが、イルファがべたべたユーノに触るのがどうにも苛立たしい。細い体が一気に押さえ込まれそうで、きり、と鋭いものがこめかみを走った気がしたぐらいだ。
「あ、ユーノ、あっちあっち!」
「あ、うん」
その隙にとばかりに、レスファートがユーノの腕を引き、中央にある広場の方へ促すと、その前に急に空間が開けた。
「剣士さまっ」
人込みの中から1人の娘が進み出る。若草色のドレスの腕と腰を焦茶の革紐できゅっと縛った、明るい緑の目の娘だ。こぼれるような笑みを浮かべ、手にしていた白、赤、黄色、紫の鮮やかな冠を差し伸べながら、ユーノの前に跪いた。
「どうぞ、これを」
「え…」
戸惑うユーノに娘が不安そうに顔を上げる。
「お気に召しませんか」
「あ、いや、とっても綺麗だ」
「ではどうぞ」
「あ…はい」
促されて体を屈めたユーノの頭に花冠を載せ、
「心よりお礼申し上げます!」
「っ」
素早くユーノの頬に唇をあてた。
わあっと周囲から笑いと拍手が起きる。驚いた顔になったユーノが、それでもとっさに娘に微笑みかけた。
「ありがとう」
きゃあああ、と上がった悲鳴じみた声にアシャは思わず眉を寄せる。
「あいつ、時々性別を間違えてるよな……」
「きゃっ」
側に居たレスファートをイルファがぐいと肩車する。ユーノは娘に手を引かれ、広場の中央、花で飾られた舞台へ導かれていく。アシャもゆっくり押されながら、2人の後をついて歩く。
「剣士さま!」
「細っこい娘っこみたいなお人だが、そりゃあ剣は凄まじいもんだとよ!」
「怪物を一薙ぎで倒したそうじゃねえか!」
「剣士さま!」
「人は見かけによらないってか!」
騒ぐ娘達、興奮して口々に噂する人々の中を進んで、やがて4人は舞台に立った1人の老人の前に並んだ。
「私はこのあたりを治める長でございます」
老人は深々と一礼した。白髪を後ろで束ね、穏やかな瞳を皺に埋もれさせた温和な気配の男だ。
「このたびは誠にありがとうございました。あなた様方のお働きで、娘達も、娘達の親も、もう泣かずにすみます。開けなかった花祭も、こうして無事開くことができました」
老人の声に広場の騒ぎが静まった。
「山賊(コール)には多くの者が泣かされて参りました。娘の身代わりになった母親もおります。幾度となく山に乗り込んだ者もおりましたが、みな死体となって放り出され、兄や父親の遺骸の前で正気を失った娘もおります。しかし…」
一瞬ことばを詰まらせ、
「これからは……もうそういうこともありますまい」
亡くなった家族を思い出したのだろう、微かに啜り泣く声がした。
「それもみな、あなた様方のおかげ……心より、心より御礼申し上げます」
一瞬目をつむった老人は顔を振り上げ、強いて明るい口調になって背後に用意した席を示した。
「さあ、どんどんおもてなしせんか! すぐに発たれてしまう方々だぞ!」
「剣士さま!」「こちらへ!」「こちらへ剣士さま!」
はしゃぎながら舞台に駆け上がってきた女達に、アシャ達はあっという間に祝宴の中に放り込まれた。
「どうぞ、こちらを!」
「いえ、私のから!」
「あら狡いわ、あなたさっきも」
「剣士さま、どうぞ!」
女達が次々と料理と酒を運んでくる。素朴な木の酒杯が空になれば、酒壺を抱えた娘達が先を争って注ぎ、酒杯が満たされれば、舞台に上がってきた男達が早く空けろとせっつきに来る。レスファートには色鮮やかな果物と砂糖菓子が盛られた器が差し出され、イルファがレスファートに呑ませようとした酒杯をあおり、顔をしかめたユーノに、別の娘がしなだれかかるように注いで盃を空けろとねだっている。
「あ、あの、ごめん、ボク、もうそろそろ」
「あら、まだ大丈夫でしょう?」
「いえ、あの」
ユーノは微妙な顔で必死に断っているが、娘に押し切られて仕方なしにもう1杯空け、アシャの視線に気付くと苦笑いしてみせた。
その顔には夕べの苦しそうな表情はどこにも見られない。
(どんな夢を…見ていた)
ゆっくり酒杯を傾けながら、アシャは眼を細めた。
夕べはほとんど眠れなかった。眠りに落ち込みそうになると、闇を突いてまたユーノの悲鳴が響くような気がして、何度も体を震わせて目を開いた。
この『アシャ』が。
(ただの悲鳴で)
『…う……っぁ、あ、あ、あっ』
掠れた切れ切れの声に目覚めれば、ベッドでユーノが体を突っ張らせて仰け反っていた。薄く開いた目に涙を滲ませ、シーツを握り締めて声を上げ続ける。びっしょり汗に塗れた体を強ばらせているのに、ただごとではないと慌てて起こせば、今にも気を失いそうな真っ青な顔で見上げてきた。
『夢を……見てた…』
『小さい頃に見た……魔物(パルーク)の……夢だ』
『17にもなって、化け物の夢で騒いでりゃ世話ない、そう思わない?』
気丈に微笑む黒い瞳は潤んだまま、まだ唇には色が戻らないのに強がってみせた。
レスファートさえ起きてこなければ、じっくり問いつめるつもりだった、一体何があったのか、と。
(あいつが、あそこまでうなされる夢)
魔物や怪物の夢で怯える娘がレガを倒せるはずがない。ましてや、カザドの襲撃を引き付けて、無謀な旅に単身旅立とうとするはずがない。だが。
(『銀の王族』なんだぞ)
『銀の王族』はできる限り安全で幸福な人生を約束されているはずだ。万が一、危うい状況が襲えば、すぐさまラズーンからの干渉が入り、有害因子は削除される。『銀の王族』はラズーンの、いやこの世界の基盤を為すもの、世界を支える要の存在だからだ。
なのに、ユーノは『銀の王族』であるにも関わらず、幾度となく生命の危険に脅かされている。ここまで、『銀の王族』が放置されているのをアシャは見たことがない。
(なぜだ?)
それだけラズーンの支配力が落ちている、そう言えなくもないが、ユーノを除くセレド皇族は問題なく過ごしている。
(他に何か意味があるのか?)
ユーノが『銀の王族』としてコントロールされなかったことに何かの理由が?
(ひょっとして)
『星』の予定した遥かに大きな『揺れ』の一つが、ユーノ・セレディスという存在だった、としたら。
(まさか)
思いついてことに思わず目を見開いて、アシャは娘達に囲まれているユーノを見つめた。
相も変わらず肩で跳ねた髪、首から手足の先まで包む衣服はユーノの性別を曖昧にしている。時折掠める厳しい表情に男性性の方を強く感じるのだろうか、娘の中には明らかにうっとりした目で彼女を見ている者もいる。
(そうだとすれば)
アシャはじっとユーノを眺めた。細い手足、細い肩、細い腰、筋肉が張り詰めているから目立たないだけで、骨格もかなり華奢な部類だ。
(あいつだけが辛い運命を担うことになる……)
ふいにユーノが振り向いて、アシャの視線に照れたように笑った。少しは酒が入っているのだろう、紅潮した頬にいつもの鋭さがない。微笑んで細められた瞳は今は曇っていなくて楽しそうだ、そう感じたとたん、アシャは酒杯を傾ける動きを止めた。
(違う)
ユーノは今、舞台の下で踊っている人々を見下ろしている。先ほどから始まった踊りの輪は、今や恋人や夫婦が組になってくるくる回る楽しげなものになっており、ますます広がり賑わっている。誰もが訪れた平安に喜び、消えた恐怖に弾けるように笑っている、その中で、ユーノの瞳だけが虚ろな優しい光を宿している。
決して手に入らないものを見るような、決して望んではいけないものに出くわしたような表情、やがて、その視線が1ケ所に留まって、アシャも促されるように視線を向けた。
(あれか?)
広場の中央あたりで踊っているのは、ユーノに花冠を捧げた若草色のドレスの娘、恋人なのだろうか、背の高い男に抱えられながら、ドレスを翻して蝶のように舞っている。娘が体を翻す度に、髪やドレスにつけた花びらが散りながら閃く、絵のように美しい光景だ。
(まさか、ユーノ)
あの男に興味があるのか。
「む」
思わず相手の男と自分を急いで引き比べてしまった。
確かに今は多少身なりは汚いが、それ相応に装えばアシャだって見劣りしない、背の高さも肩幅も細身には見えてもちゃんと並の男ぐらいはある、それはユーノだって知っているはず、楽器を与えてくれれば詩歌だって吟じてみせるし、何よりユーノの怪我に適切な治療を施してきたのは他ならぬ俺で、とそこまで一気に考えて、自分の思考がとんでもない方向に突っ走ったのに気付いた。
(何を…考えている…)
「ちっ」
舌打ちして溜め息をつくと、ユーノはますますじっとそちらを凝視している。
その切ない表情にずきりとした。
(そんなに、何を見ている)
どうやら娘は恋人と口論し始めたようだ。やがて、ぱんっ、と高い音が響いて男が娘に頬を叩かれる。恋人を放っていこうとした娘が引き止めかけた男の腕に逆らおうとし、その足にぶつかった女の子が転がった。泣き声を上げる子どもに慌ててしゃがみ込む娘、喧嘩していたのもどこへやら、一緒に屈んで子どもを慰める男、そこへ女の子の母親らしい女性がやってきて、2人を声を荒げて怒鳴りつけ、泣き泣きすがりつく子どもを抱きかかえて連れ去る。その母親にぶつかりかけたのは、まだ歳若い夫婦、よちよち歩きの男の子を大事そうに抱いている妻を、夫が騒動から庇いながら通り過ぎる。その隣には別の家族、娘にせがまれたのか、ダンスの相手をおっとり始めるちょっと腹の出た父親と、嬉しそうにその2人を見守る母親と息子。
ふ、と微かにユーノが溜め息をついて俯いた。顔に笑顔を張りつけたまま、娘達に軽く笑って立ち上がり席を離れ、こちらへやってくる。
「ユーノ?」
「これあげるよ、アシャ」
後ろを通り抜けながら渡されたのは花冠、舞台から降りていこうとするのに振り返った。
「どうした?」
「ちょっと酔った。酔い、冷ましてくる」
それに、こういうのも苦手だしね。
にこりと笑って見上げてきた顔が、今にも泣きそうに見えた。
「ユーノ…」
「アシャは立っちゃだめだよ、一気にいなくなると座が白けるから」
追おうとしたアシャは機先を制されて鼻白む。顔を背けているくせに、こちらの動きに聡いのがうっとうしくて吐き捨てる。
「かまわん、イルファとレスがいる」
「だぁめ。じゃ…すぐ、戻るから」
(ユーノ)
人込みにまぎれるように去る背中が陽炎のように儚く見えた。
ユーノはうなされている。
「…いじょ……ぶ」
夢の中で引き戻されたのは、初めてカザドに襲われた夜。
逃げ場もなく、ただ家族を守るために闘うことを求められた日。
「大丈夫……だから……心配……しない…で…」
喘ぎながら笑う。
精一杯の虚勢はいつも成功した。
誰も気づかない、ユーノの奥深くに抉られた、深い傷の在り処を。
「レアナ姉さま!」
大好きな姉の姿を見つけて、ユーノは満面の笑みで駆け寄り、すぐに気づいた。
レアナの美しい眉のあたりに心配そうな影が漂っている。
「どうしたの、姉さま」
「変な人たちが来てんの」
10歳のセアラが生意気な口調で言い放った。
「だめよ、セアラ」
レアナが柔らかくたしなめる。
「お父さまのお客さまよ」
「変な人は変よ」
14歳のレアナの分別をセアラは聞き入れない。
「……そうだな」
ユーノが物陰から伺った一群の男達は隣国カザドの紋章をつけている。謁見に際して剣を外していないのが不安だったが、セレドの親衛隊は咎めようとしない。
3人は知らなかったが、その頃、日ごとに美しくなるレアナの噂を聞き付けたカザディノが、レアナを『副妃』として迎えたいと言ってよこしていたのだった。
単に使者だけではなく武装した兵も同行させたのを見ても、相手の意図が強圧的なのはわかったが、セレディス4世も、仮にも一国の皇女を『正妃』ならまだしも『副妃』などとはとんでもないとはねつけた。その場では無理を通すなと言い含められていたらしく、使者達は一晩留まることもなくすぐに帰還した。
だが、実はレアナを望むことさえ、セレドに警戒されずに入り込むための手段だったとは、その夜にわかった。
「?」
ふいとユーノは目を覚まして訝った。
闇に妙な気配がある。
7歳から皇宮の作法やダンスよりも熱心にゼランに剣を学んでいたのは偶然ではない。悪意はないとは言え、母親譲りの華やかな容姿を持つ姉妹と繰り返し比べられて、自分が外見では遥かに劣ることを早くから理解していた彼女は、自分の未来に誰かが寄り添うことを早々と諦めつつあった。
「……」
ひたひたと夜の向こうから迫ってくる殺気に瞬きして、ゆっくりと体を起こす。枕元に忍ばせていたのは覚えつつあった短剣、それに手を伸ばしたとたん、
「でええいっ!」「っ」
部屋の隅に潜んでいたらしい影が剣を突き出してきた。かろうじて一太刀目は躱したものの、すぐに繰り出されたニ太刀目がざくりと右腕を削いでいく。
「っっ!」
(母、さまっ)
痛みに声も出せずに心の中で悲鳴を上げたユーノの手から、落ちた短剣がからからと軽い音をたてて床を滑る。痺れた右腕を押さえる間もなく、刺客は次の一手を振り上げてくる。
(殺される?!)
咄嗟に掴んだシーツを相手に投げ付けて視界を遮り、落ちた剣を拾ってそのまま、のしかかってきた相手の胴へシーツ越しに突き入れる。
「ぎゃあっ」
まさか幼い子どもが反撃してくるとは思ってもいなかったのだろう、叫んだ刺客が体を引いて剣を抜こうとするのを、ユーノはなおも突き込んだ。
一度傷を負わせたなら、そこを必ず狙いなさい。一番守りが弱くなっているうえ、深手になれば勝機ができる。
脳裏に過るのはゼランの声だ。
相手とユーノには圧倒的な体格差がある。ましてや、既に右腕を傷つけているユーノは次の攻撃の術がない。
(剣は両腕で使えないとだめ、なんだ)
歯を食い縛りながら、ユーノは思い知る。必死に体ごと刺客にぶつかり続け、押し込み続ける。隙間ができてしまえば最後、手負いの敵は必ずこちらを仕留めにくる。
(離れるな、離れちゃやられる)
刺さった短剣の向こうの感触は、食卓に並ぶ肉を刺した感覚より遥かに鮮烈、ともすれば蠢く体の動きに剣が呑み込まれて跳ね飛ばされそうになる。押し返す力も半端ではなく強い。
生きてるんだ、とぞくぞくしながら思った。
(生きてる命を、突き刺している)
「く、ぁ、あ、あっ」
迸るように叫んだのは流れ落ちてくる涙を堪え切れなくなったからだ。
剣を使うということは、人を殺すということは、これほど全身痛いものなんだ。ゼランに教えてもらった型なんて、ほんの入り口に過ぎないんだ。今こうして相手の胴に突き出し続ける剣を支える手が震える。体もがくがく震える。シーツを濡らしてだらだら染み通ってくる血の生臭さに吐きそうで、それでも力を緩めれば、ユーノが死ぬのは確実で。
(いや、だ)
ぎゅ、と唇を噛んで、なおも全身で突っ込んだ。
「ぐ、ああっ!」
絶叫が耳を圧する。痙攣した刺客が剣を落とし、がつっとユーノの肩を掴む。その10本の指が食い込む感触に、泣きながらユーノは剣を突き上げた。
「がはっ」
ばしゃっ、と被ったシーツに血が降った。同時に男が崩れてきた。肩を掴まれたまま巻き込まれ押し倒されそうになって初めて、剣を引き抜き飛び退る。
いや、ユーノは飛び退ったつもりだったが、実際は後ずさりしてシーツに引っ掛かり、腰から背後に転がっただけ、それでも空いた空間にどぅ、と音をたてて刺客の体が丸太のように倒れてきた。
咄嗟に剣を構えたが、もうピクリとも動かない。
「う…っ、…っは…っは」
喘ぎながら睨み付けた刺客は男だった。黒づくめの服装、紋章はどこにもないが、引きつり白目を剥いた顔には覚えがある。昼間に謁見を申し出た1人だ。
(カザド)
う、わあっ、と皇宮の別棟で声が上がって、はっとした。
(姉さま、セアラ…っ)
跳ね起きて立ち上がろうとするのに、脚が震えて立てない。脚だけではない、自分が今にも溺れかけたようなせわしい息を吐きながら、ぼろぼろ泣き続けているのがわかる。
男はシーツに包まれたまま、どんどん熱気を失っていく。少し覗いた血まみれの指が固く白くなっていくのから目を逸らせなくて、それを見ているだけでも吐きそうで、ユーノは喉を鳴らした。
「う…、ううっ」
自分の体を、強ばって短剣を放せなくなっている右手で抱える。左手で右腕の傷を押さえつけたが、痛みにびくりと震えてしまって、身を竦めてまた泣いた。
冷や汗が額から眉間を通って流れ落ちてくる。きつく唇を噛みしめて、口の中に自分の血を吸い取って、ようやく少し我に返った。
のろのろと這いずって死体から離れ、震えながらガウンを引き寄せ右肩から羽織る。どこに敵が居るかわからない。次に同じ場所を狙われたら、もう気力も体力ももたない。
(痛い……母さま……すごく…痛いよ)
誰も来てくれないのは、別棟の騒ぎで手一杯になっているのだろう。そこにきっと父母も居る。どんどん冷たくなってくる右腕の手当てもしてもらえるはずだ。痛かったろう、一人でよく頑張ったと慰めてもらえるはずだ。
「ひ…っう」
大声を上げて泣きたいのを堪えて、ユーノは部屋をよろめきでた。無限に続くような廊下をのろのろと歩いて、ようやく父母の寝室にたどりつく。
「かあ…さ」
ほっとして顔を上げたとたん、その扉の中から飛び出してきた人影に息を呑んだ。もう右手では痺れて持てなかったから左手に持ち替えていた剣を、かろうじて引き上げて構えると、
「ユーノ様!」
「ぜ…らん…」
親衛隊の隊長は豪快に笑った。
「おお、見事防がれたのですね! さすがはユーノ様!」
「あ……う、ん」
「それでこそユーノ様です! 私は皇をお守りしに参ります、皇妃さま方をお頼みしますぞ!」
「え…」
茫然とするユーノを置き去り、ゼランはあっという間に広間の方へ駆け去った。
(母さま、方…?)
出血のせいか一瞬暗くなった視界を振り払い、ふらふらしながら寝室に入ると、こちらに背中を向けて跪いているミアナ皇妃が居る。
「母…」
よかった、これで痛いの、ましになる。
呼び掛けるとぎくりと背中を強ばらせて、ミアナ皇妃が怯えた顔で振り返り、ユーノは目を見開いた。ミアナの優しく庇った腕の中には、泣きながらしがみついているレアナとセアラが居る。
「ユーノ」
ミアナがぱっと顔を輝かせて名前を呼んでくれ、次にはきっと自分もその腕で抱え込んでくれるのだろう、そう思って微笑みかけたユーノの耳に、すがりつくような声が届いた。
「来てくれたのですね」
「え…?」
「あなたが居てくれれば安心です。お父さまとゼランが戻るまで、側で守って下さいね」
「あ」
何を言われたのかわからなくて、それでも相手の瞳が注がれているのは、血に染まったガウンを引っ掛けて左手に短剣を煌めかせている、その自分の姿で。
(でも、母さま)
「あなたが剣を習っておいてくれてよかった。ゼランもユーノなら大丈夫、そう言い聞かせてくれていました」
日頃ドレスもダンスも嫌いだと言って好まなかったあなただけれど、今こそその素晴らしい腕を見せてください。
少女のように微笑むミアナの目には、安心しか広がっていない。
(でも、私、怪我を)
「母さまぁ!」
セアラが泣きじゃくってミアナの胸に顔を押し付ける。
「怖い…」
レアナが震えてミアナの腕にすがりつく。二人を抱き締めるミアナも、青ざめた顔でユーノを見上げている、まるで保護を求めるように。
「うん……わかった…」
(私だって)
「大丈夫だよ……私、剣は…うまいから」
ぐらりと揺れかけた体を堪えて背中を向ける。
(私だって……母さまの腕に守って…ほし…)
「っ」
零れ落ちそうになった涙をぎゅ、と唇を噛んで目を開いた。
ほのかな明かりが灯る室内とは逆に、ユーノの前には黒々とした闇が広がる。けれど、その闇から逃げるわけにはいかない。後ろには母が、姉が、妹が居る。
(がん…ばろう)
せめてセレディス皇が戻ってくるまで。
(もう…少しだけ……がんばれば……)
きっとゼランも戻ってきて。
右腕の痛みが焼けついてくるように強くなる。めまいがして、吐き気がする。
(たおれちゃ…だめだ)
倒れても、どうにも、ならない。
(もう、少し、だけ)
「っ」
短剣を落としそうになる。ふらついた体を堪えて崩れかけた足を踏み締める。霞む視界を見開いたとたん、廊下の向こうから走り寄ってくる父親とゼランの姿を見つけた。
「あ」
よかった、これでようやく休める。
「ユーノ様!」
「ユーノ!」
「父さま、わ、たし」
ここを怪我して。
言いかけたとたんに、厳しい表情でセレディス皇が言い放つ。
「よし、ここはもういい。ゼランと一緒にあちらを見回ってくれ」
「…え…?」
「見張りが倒されていて人数が足りぬ、頼むぞ」
「さ、ユーノ様、お願いしますぞ!」
「う…ん」
ゼランが追い立てるように声をかけてくる、そのユーノを振り向きもせずにセレディスは部屋に入っていく。父さま、と叫びながら抱きついたらしいセアラをよしよし、と抱き締めるのを視界の端に、ユーノはゆらりと顔を背けた。
「ユーノ様、お早く!」
「わか…た」
(父さまが……悪いんじゃない)
一番弱いものを守るのは当たり前だ。
(母さまが……悪いんじゃない)
ユーノはいつも、剣を習っているのはみんなを守れるようになるため、そう言い張っていた。
(姉さまや……セアラが……)
悪いわけが、ない。
「そちらを! 私はこちらを回ります!」
「…うん…」
再び背中を向けるゼランに、崩れかけた足下をかろうじて保った。揺れた体からガウンが滑り落ちる。ぼたり、と重い音をたてて床に広がったそれが、じわじわと黒い染みを広げていくのをぼんやりと眺めた。
「まわ…らなきゃ……」
壁に手を当て、のろのろと歩き出す。1歩ごとに視界が揺れる。
「私…しか……いない……だし…」
ならば、ユーノは。
突然込み上げてきた激情を堪え切れずに立ち止まる。
ユーノはどこへ行けばいいのだ? 右手を動かせないほどの傷を負い、初めて人を殺してどこか壊れそうなのに、それでもどこでも休めない。
それとも、ユーノは強いから、誰にも守ってもらう必要などない、そういうことなのか?
(でも、私)
ふっと意識が遠のいた。
(私も、限界、なのに)
体がぐずりと得体の知れないぬかるみに落ちそうになって、眉を寄せて右腕を握る。
「っく」
ざく、と再び蘇った痛みに我に返った、次の一瞬、背中に巨大な氷を当てられたような感覚に息を呑む。
殺気。
「わ、うっ!」
いきなり右肩から左の腰へ灼熱の痛みが走った。仰け反ったユーノの体を抉るように食い込んでくる金属が冷たくて熱くて、とてつもなく、痛い。しかも容赦なく深さを増しながら抉られる。
「っっ、っっ、っぁああああっ!!!」
父さまとも母さまとも呼べず、ただ絶叫だけを響き渡らせながらユーノは崩れ落ちる。喉を突き上げる悲鳴は切れ切れに、闇の彼方へ吸い込まれていく。
(う、ぁ、ぁ、ぁああああっ)
それでも、誰も来てくれない。
(あ、あ、あ、あ……っ)
差し伸べた手は、空を切って。
視界が、暗転、する。
(ユーノ!)
だ、れ…。
「ユーノ!!」
「っっ」
大声で呼ばれて揺さぶられ、ユーノは目を開けた。
「どうしたっ、ユーノっ!」
「あ…あ」
まだ半分夢の中に居るようで、体中が汗に濡れている。
(あ、しゃ)
荒い呼吸を繰り返しながら、覗き込む相手を見上げた。心配そうにひそめられた眉の下、見開かれた瞳が薄闇に煌めいている。背後の窓から差し込む月明かりを受けて透明に
輝く紫の光が、幻の楽園のように美しい。
「大丈夫か?」
「…ごめ…ん…」
肩を掴まれていたのを身をよじって避けると、アシャははっとしたように手を引いた。髪をかきあげる仕草にきらきらと金髪が光を跳ねる。見愡れかけて、ユーノは呼吸を整えながら眼を閉じる。
「夢を……見てた…」
背中が今切り裂かれたばかりのようにずきずきする。
(もう、5年も前なのに)
体がまだ震えていた。腑甲斐無さに舌打ちしながら、それでもとっさにすがりつきそうになった手で自分を抱き締める。
あの夜。
ユーノが倒した刺客はカザドの紋章をつけていなかった。謁見した男だとユーノは証言できなかった。傷のために高熱を出して寝込んだのだ。
セレディス4世はカザディノに襲撃を受けたことを訴えたのだが、相手方は知らぬ存ぜぬで押し通し、証拠もないまま事を荒立てるなら、逆にセレドを制圧すると脅してきた。沈黙するしかなかったセレディス4世に、事実、それから1年以上、カザディノは表立って手を出してくることはなく、レアナを望んだことさえ忘れたように振る舞った。
セレディス4世はまず何よりもレアナの安否を気遣った。これ以上問題を大きくして、セレドに攻め込まれ、レアナを無理矢理攫われるぐらいならば、穏やかに事をおさめたほうがよい。そう判断した。
ユーノが回復してみれば、セレドは何ごともなかったように平穏を取り戻していた。あげくに、カザドの刺客などではなく、流れ者が紛れ込んでの騒ぎだったのではないか、そう結論されて、ユーノは何も言えなくなった。
倒した刺客がいつの間にか誰かに運び出されていたのも災いした。
皇宮に賊が侵入したということの方が、隣国カザドがセレドを狙っていると考えるよりは、遥かに人々の心に安心をもたらしたということだ。
ただし、皇宮の親衛隊は人数を増やされ、ユーノも行動を共にすることとなった。
あの夜の記憶は鮮烈な炎になって、何度もユーノの眠りを妨げた。悲鳴を上げて飛び起きる夜を繰り返し、その悲鳴で誰かを起こさなかったかと震えながらまた寝床に蹲る。
思い出したように痛む傷跡に耐える日々は長くは続かなかった。
水面下で、カザドは執拗に襲撃をかけてくるようになったのだ、まるでユーノを弄ぶように。
そして、それを訴えるべき相手はユーノに残されていなかった。誰もが、そんな脅威はあり得ないと、親衛隊隊長のゼランまでそう信じたがっていたから。
安寧が長く続かないのはわかっていたが、ぎりぎりまでしのぎたかった。偽りの平和でも守りたかった。
ラズーンから使者が来て、ユーノが発つしかなかったから、ゼランには詳しく事情を打ち明け、守備を固めるようには頼んできた。
だが、太古生物が復活しているような状態の中、カザドの動きもそれに連動しているように思えて、残してきた家族が不安になった、それが夢の引き金を引いたのだろう。
「何の夢だったんだ」
アシャがベッドの端の腰を降ろして、ユーノは眼を開けた。
「ひどくうなされていた」
「なん…でも……な…っ」
指を伸ばされ、汗に濡れて張り付いた額の髪をかき上げられて、思わず顔が熱くなった。
「汗びっしょりだ」
「小さい頃に見た……魔物(パルーク)の……夢だ」
優しい指先が布でそっと汗を拭ってくれるのに、目を伏せる。
(気持ち…いい)
誰もこんな風に慰めてはくれなかった。うなされたユーノを案じて側に居てくれなかった。
思わず吐息をついて、少しの間、アシャのなすがままにまかせる。
自制がどんどん脆くなる。誰も助けてはくれないのだ、1人で生き抜くしか術はないのだ、そう思い知らされた切なさが胸に迫る。これからも自分が生きるためには、こうして自ら敵を屠り続けるしかない、そういう思いを越えて、アシャに期待しそうになる、守ってくれるのではないか、と。
く、とユーノは唇を噛んだ。
(しっかりしろ)
そんなことは、あるはずがない。
(アシャは、姉さまを)
あのたおやかで美しい人を求めている。
目を開けて頬から首へ滑っていこうとしたアシャの手を押し止めた。軽く握って押し遣りながら、笑いかける。
「ごめん、起こしちゃった」
ちかり、とアシャは瞳を光らせた。
「17にもなって、化け物の夢で騒いでりゃ世話ない、そう思わない?」
「嘘つきめ」
「え…?」
アシャが険しい顔で睨み付けてきて戸惑う。
「何が?」
「心配しないで、と言ったぞ」
「っ」
「魔物(パルーク)が心配してくれていたのか」
「え、えーと」
しまった、とひやりとする。そんな寝言まで口にしていたとは思わなかった。
「ユーノ?」
「あ、だから、つまり、その」
「…ユーノぉ…」
口ごもっていると、急に寝ぼけた声でレスファートが呼んだ。目を擦りながら起き上がり、
「なに、さわいでるの…」
「あ、ごめん、レス」
起こしちゃったね、と急いでそちらに笑いかけたが、頬に当たるアシャの視線がひどく痛い。
(ごまかせ、ないよね)
「ユーノ」
伸びてきた手に身を竦めた矢先、レスファートがベッドを滑り降りた。そのままとことこやってきて、アシャの前に立ち塞がり、するするとユーノのベッドに潜り込んでくる。
「ぼく…ここでねる…」
「うん、そうだ、それがいいよ、レス」
ユーノはほっとしてアシャを振り向いた。
「アシャも寝なよ。明日お祭りだろ。楽しもうよ」
一気にまくしたてると、アシャが伸ばした手を溜め息まじりに降ろした。軽い舌打ちとともに、がしがしと乱暴に金髪をかき乱しながら背中を向ける。
「いじっぱり」
「え?」
「……わかった、今夜はもう寝る、けれど」
肩越しに投げてきた眼は、次は逃がさない、そういう強さで光る。その目をまっすぐ見返して、ユーノはにっこり笑った。
「起こしてくれてありがとう」
「……おやすみ」
「うん、おやすみ」
部屋のもう片隅のベッドに背中を向けて潜り込むアシャに、ユーノもレスファートを抱きかかえて目を閉じる。
それでも、ずっと眠れずに、やがて響き出したアシャの寝息を聞いていた。
「花祭だ!」
「花祭だよぉっ!」
街中が窓という窓を全て開き、そこから色鮮やかな花々をまき散らす人々で沸き返っている。
「す…ごい」
宮中で広大な庭園も見ている、飾られるために持ち込まれる美しい花も知っているはずのレスファートやユーノまで、空中から舞い落ちる花弁に茫然としている。びっくり大きな目を見開いている2人に、アシャは苦笑しながら説明した。
「シェーランの花祭は有名なんだ」
「そうなの?」
「今回のはまだ小規模みたいだが、全盛期にはこのあたり一帯から花を買い集めて、あちこちで花屋台がたった」
「ぼく、こんなにたくさんの花って見たことない」
「ボクもだ」
ユーノが興奮するレスファートに頷き返す。と、真隣を通っていく花を満載した花馬車に乗った娘達がくすくす笑って互いを突きあった。
「?」
ひょいとそちらへ目を向けたアシャに、きゃ、と小さな声が上がって、娘達が頬を染めた。ユーノとレスファートもそちらを振り返ると、きゃああ、とはしゃいだ声が響き渡る。ぎょっとするユーノに、娘達が口々に叫ぶ。
「剣士さま!」
「こちらへどうぞ!」
「私達の花馬車へどうぞ!」
負けじと周囲の馬車から一斉に声が呼ばわった。
「剣士さま!」
「いらっしゃって下さいませ!」
「剣士さま!」
「あ、アシャ」
うろたえた顔でユーノが側に寄ってくる。レスファートは意外に慣れたもので、にこっと笑いながら、後で、と鷹揚に流しているのと対照的だ。
「何なの、一体」
「みんな知ってるんだろう、お前がレガを仕留めたことを」
「み、みんな?」
「朝、ろうかで話してるのもきいたよ?」
「えええ」
ユーノは引きつった顔になって、まいったなあ、と眉を寄せた。周囲に求められ慕われているのは明らかなのに、それで返って不安を感じてしまうらしく、緊張した顔でアシャに身を寄せてくる。
(まったく、こいつは)
仮にも皇族だったのだから堂々としていればいいものを、と思いつつも、めったに頼ってこないユーノが心細そうに擦り寄ってくるのは気持ちがいい。ついつい笑顔で肩に手を回し、気にするな、と話しかけようとしたとたん、がしっと太い腕にユーノが抱えられてむっとした。
「まいるこたあ、ない!」
「イルファ」
もうどこかでごちそうになってきたのか、赤い顔になったイルファが上機嫌でユーノの肩を抱きかかえて豪快に笑う。
「娘達は大喜びだぞ、『生贄』から救ってくれた剣士として、お前を待っている! よりどりみどりだぞ!」
しかしまあ、これだけの娘を隠しておくのも大変だっただろう、と感心しているイルファから、アシャはさりげなくユーノを引き寄せた。
「花祭もここしばらく開けなかったそうだしな」
「そうなの?」
「それに!」
どん、とアシャを突き飛ばすようにして、またイルファがユーノを抱えた。
「今日は俺達のためにわざわざ開いてくれたのだ、楽しまんと悪いだろうが!」
「本当、だ、な!」
ユーノの首を抱えているイルファの腕を押し退けてアシャはユーノを引っ張った。
「ほら、こっちだろ、広場はっ」
「おう、そっち……おい、何だ?」
引き剥がされたイルファが、がしっともう一度ユーノにのしかかりかけ、寸前アシャに受け止められて不愉快そうに目を上げる。
「何で邪魔する?」
「邪魔などしてない」
「邪魔してるだろうが」
「俺が腕を上げたらお前が引っ掛かってきたんだろうが」
「そうかぁ?」
「そうだ」
ユーノが呆気にとられた顔で見上げているのは知っているが、イルファがべたべたユーノに触るのがどうにも苛立たしい。細い体が一気に押さえ込まれそうで、きり、と鋭いものがこめかみを走った気がしたぐらいだ。
「あ、ユーノ、あっちあっち!」
「あ、うん」
その隙にとばかりに、レスファートがユーノの腕を引き、中央にある広場の方へ促すと、その前に急に空間が開けた。
「剣士さまっ」
人込みの中から1人の娘が進み出る。若草色のドレスの腕と腰を焦茶の革紐できゅっと縛った、明るい緑の目の娘だ。こぼれるような笑みを浮かべ、手にしていた白、赤、黄色、紫の鮮やかな冠を差し伸べながら、ユーノの前に跪いた。
「どうぞ、これを」
「え…」
戸惑うユーノに娘が不安そうに顔を上げる。
「お気に召しませんか」
「あ、いや、とっても綺麗だ」
「ではどうぞ」
「あ…はい」
促されて体を屈めたユーノの頭に花冠を載せ、
「心よりお礼申し上げます!」
「っ」
素早くユーノの頬に唇をあてた。
わあっと周囲から笑いと拍手が起きる。驚いた顔になったユーノが、それでもとっさに娘に微笑みかけた。
「ありがとう」
きゃあああ、と上がった悲鳴じみた声にアシャは思わず眉を寄せる。
「あいつ、時々性別を間違えてるよな……」
「きゃっ」
側に居たレスファートをイルファがぐいと肩車する。ユーノは娘に手を引かれ、広場の中央、花で飾られた舞台へ導かれていく。アシャもゆっくり押されながら、2人の後をついて歩く。
「剣士さま!」
「細っこい娘っこみたいなお人だが、そりゃあ剣は凄まじいもんだとよ!」
「怪物を一薙ぎで倒したそうじゃねえか!」
「剣士さま!」
「人は見かけによらないってか!」
騒ぐ娘達、興奮して口々に噂する人々の中を進んで、やがて4人は舞台に立った1人の老人の前に並んだ。
「私はこのあたりを治める長でございます」
老人は深々と一礼した。白髪を後ろで束ね、穏やかな瞳を皺に埋もれさせた温和な気配の男だ。
「このたびは誠にありがとうございました。あなた様方のお働きで、娘達も、娘達の親も、もう泣かずにすみます。開けなかった花祭も、こうして無事開くことができました」
老人の声に広場の騒ぎが静まった。
「山賊(コール)には多くの者が泣かされて参りました。娘の身代わりになった母親もおります。幾度となく山に乗り込んだ者もおりましたが、みな死体となって放り出され、兄や父親の遺骸の前で正気を失った娘もおります。しかし…」
一瞬ことばを詰まらせ、
「これからは……もうそういうこともありますまい」
亡くなった家族を思い出したのだろう、微かに啜り泣く声がした。
「それもみな、あなた様方のおかげ……心より、心より御礼申し上げます」
一瞬目をつむった老人は顔を振り上げ、強いて明るい口調になって背後に用意した席を示した。
「さあ、どんどんおもてなしせんか! すぐに発たれてしまう方々だぞ!」
「剣士さま!」「こちらへ!」「こちらへ剣士さま!」
はしゃぎながら舞台に駆け上がってきた女達に、アシャ達はあっという間に祝宴の中に放り込まれた。
「どうぞ、こちらを!」
「いえ、私のから!」
「あら狡いわ、あなたさっきも」
「剣士さま、どうぞ!」
女達が次々と料理と酒を運んでくる。素朴な木の酒杯が空になれば、酒壺を抱えた娘達が先を争って注ぎ、酒杯が満たされれば、舞台に上がってきた男達が早く空けろとせっつきに来る。レスファートには色鮮やかな果物と砂糖菓子が盛られた器が差し出され、イルファがレスファートに呑ませようとした酒杯をあおり、顔をしかめたユーノに、別の娘がしなだれかかるように注いで盃を空けろとねだっている。
「あ、あの、ごめん、ボク、もうそろそろ」
「あら、まだ大丈夫でしょう?」
「いえ、あの」
ユーノは微妙な顔で必死に断っているが、娘に押し切られて仕方なしにもう1杯空け、アシャの視線に気付くと苦笑いしてみせた。
その顔には夕べの苦しそうな表情はどこにも見られない。
(どんな夢を…見ていた)
ゆっくり酒杯を傾けながら、アシャは眼を細めた。
夕べはほとんど眠れなかった。眠りに落ち込みそうになると、闇を突いてまたユーノの悲鳴が響くような気がして、何度も体を震わせて目を開いた。
この『アシャ』が。
(ただの悲鳴で)
『…う……っぁ、あ、あ、あっ』
掠れた切れ切れの声に目覚めれば、ベッドでユーノが体を突っ張らせて仰け反っていた。薄く開いた目に涙を滲ませ、シーツを握り締めて声を上げ続ける。びっしょり汗に塗れた体を強ばらせているのに、ただごとではないと慌てて起こせば、今にも気を失いそうな真っ青な顔で見上げてきた。
『夢を……見てた…』
『小さい頃に見た……魔物(パルーク)の……夢だ』
『17にもなって、化け物の夢で騒いでりゃ世話ない、そう思わない?』
気丈に微笑む黒い瞳は潤んだまま、まだ唇には色が戻らないのに強がってみせた。
レスファートさえ起きてこなければ、じっくり問いつめるつもりだった、一体何があったのか、と。
(あいつが、あそこまでうなされる夢)
魔物や怪物の夢で怯える娘がレガを倒せるはずがない。ましてや、カザドの襲撃を引き付けて、無謀な旅に単身旅立とうとするはずがない。だが。
(『銀の王族』なんだぞ)
『銀の王族』はできる限り安全で幸福な人生を約束されているはずだ。万が一、危うい状況が襲えば、すぐさまラズーンからの干渉が入り、有害因子は削除される。『銀の王族』はラズーンの、いやこの世界の基盤を為すもの、世界を支える要の存在だからだ。
なのに、ユーノは『銀の王族』であるにも関わらず、幾度となく生命の危険に脅かされている。ここまで、『銀の王族』が放置されているのをアシャは見たことがない。
(なぜだ?)
それだけラズーンの支配力が落ちている、そう言えなくもないが、ユーノを除くセレド皇族は問題なく過ごしている。
(他に何か意味があるのか?)
ユーノが『銀の王族』としてコントロールされなかったことに何かの理由が?
(ひょっとして)
『星』の予定した遥かに大きな『揺れ』の一つが、ユーノ・セレディスという存在だった、としたら。
(まさか)
思いついてことに思わず目を見開いて、アシャは娘達に囲まれているユーノを見つめた。
相も変わらず肩で跳ねた髪、首から手足の先まで包む衣服はユーノの性別を曖昧にしている。時折掠める厳しい表情に男性性の方を強く感じるのだろうか、娘の中には明らかにうっとりした目で彼女を見ている者もいる。
(そうだとすれば)
アシャはじっとユーノを眺めた。細い手足、細い肩、細い腰、筋肉が張り詰めているから目立たないだけで、骨格もかなり華奢な部類だ。
(あいつだけが辛い運命を担うことになる……)
ふいにユーノが振り向いて、アシャの視線に照れたように笑った。少しは酒が入っているのだろう、紅潮した頬にいつもの鋭さがない。微笑んで細められた瞳は今は曇っていなくて楽しそうだ、そう感じたとたん、アシャは酒杯を傾ける動きを止めた。
(違う)
ユーノは今、舞台の下で踊っている人々を見下ろしている。先ほどから始まった踊りの輪は、今や恋人や夫婦が組になってくるくる回る楽しげなものになっており、ますます広がり賑わっている。誰もが訪れた平安に喜び、消えた恐怖に弾けるように笑っている、その中で、ユーノの瞳だけが虚ろな優しい光を宿している。
決して手に入らないものを見るような、決して望んではいけないものに出くわしたような表情、やがて、その視線が1ケ所に留まって、アシャも促されるように視線を向けた。
(あれか?)
広場の中央あたりで踊っているのは、ユーノに花冠を捧げた若草色のドレスの娘、恋人なのだろうか、背の高い男に抱えられながら、ドレスを翻して蝶のように舞っている。娘が体を翻す度に、髪やドレスにつけた花びらが散りながら閃く、絵のように美しい光景だ。
(まさか、ユーノ)
あの男に興味があるのか。
「む」
思わず相手の男と自分を急いで引き比べてしまった。
確かに今は多少身なりは汚いが、それ相応に装えばアシャだって見劣りしない、背の高さも肩幅も細身には見えてもちゃんと並の男ぐらいはある、それはユーノだって知っているはず、楽器を与えてくれれば詩歌だって吟じてみせるし、何よりユーノの怪我に適切な治療を施してきたのは他ならぬ俺で、とそこまで一気に考えて、自分の思考がとんでもない方向に突っ走ったのに気付いた。
(何を…考えている…)
「ちっ」
舌打ちして溜め息をつくと、ユーノはますますじっとそちらを凝視している。
その切ない表情にずきりとした。
(そんなに、何を見ている)
どうやら娘は恋人と口論し始めたようだ。やがて、ぱんっ、と高い音が響いて男が娘に頬を叩かれる。恋人を放っていこうとした娘が引き止めかけた男の腕に逆らおうとし、その足にぶつかった女の子が転がった。泣き声を上げる子どもに慌ててしゃがみ込む娘、喧嘩していたのもどこへやら、一緒に屈んで子どもを慰める男、そこへ女の子の母親らしい女性がやってきて、2人を声を荒げて怒鳴りつけ、泣き泣きすがりつく子どもを抱きかかえて連れ去る。その母親にぶつかりかけたのは、まだ歳若い夫婦、よちよち歩きの男の子を大事そうに抱いている妻を、夫が騒動から庇いながら通り過ぎる。その隣には別の家族、娘にせがまれたのか、ダンスの相手をおっとり始めるちょっと腹の出た父親と、嬉しそうにその2人を見守る母親と息子。
ふ、と微かにユーノが溜め息をついて俯いた。顔に笑顔を張りつけたまま、娘達に軽く笑って立ち上がり席を離れ、こちらへやってくる。
「ユーノ?」
「これあげるよ、アシャ」
後ろを通り抜けながら渡されたのは花冠、舞台から降りていこうとするのに振り返った。
「どうした?」
「ちょっと酔った。酔い、冷ましてくる」
それに、こういうのも苦手だしね。
にこりと笑って見上げてきた顔が、今にも泣きそうに見えた。
「ユーノ…」
「アシャは立っちゃだめだよ、一気にいなくなると座が白けるから」
追おうとしたアシャは機先を制されて鼻白む。顔を背けているくせに、こちらの動きに聡いのがうっとうしくて吐き捨てる。
「かまわん、イルファとレスがいる」
「だぁめ。じゃ…すぐ、戻るから」
(ユーノ)
人込みにまぎれるように去る背中が陽炎のように儚く見えた。
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