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ちょっと待ったぁ、一体誰がそんなことを『彼女』に教えたんだっ。
泣きそうな気分で固まった正志の視界の端で動いた何かを振り返ると、慌てて詰め所に引っ込む田中主任の姿を見えた。
「んなろ……」
「睨まないの、対応悪いの、正志くんの方なんだしさ」
「ま、まさぁっ?」
くすくす笑いながら『彼女』が言って、ぎょっとして声が裏返ってしまった。
正志くん?
正志くん?
正志くん、だって?
僕の名前、知ってる!
硬直する正志に『彼女』がちょっと怯んだ顔になる。
「あ、だめかな」
「え、ええ?」
「名前で呼んじゃうの?」
「あ、いや、うん、えーとその」
「やっぱり高岳くんってところから始めるべき?」
「あ、いいや、全然、全然おっけー!」
「そ、よかった」
「で、でもっ、それなら、それならさっ」
「ん?」
「君、の名前も」
「ああ、うん、でも」
にこっと相手は笑った。
「後で舞台で紹介するから、そこでいいでしょ?」
「え?」
ちょっと待って。
正志はまた固まる。どきどきと最大速度で走っていた心臓が落とし穴に転がり落ちたように止まりそうになって引きつった。
ちょっと待ってよ。
それって僕の方はプライベートじゃおつき合いなしってことなのか?
……うわぁ……。
何だかあっさり軽く手玉に取られて、うんとみっともないところばかり見られた気がして、正志は一気に暗くなった。
こんなことなら早退届け出して駆けつけたのもばらされているかもしれない。何か馬鹿馬鹿しくって情けないよな。恨んでやる、絶対恨んでやる。
胸の中でぶつぶつ言いながら俯くと、ちょいといきなり首筋突かれてまた仰け反る。
「なっ、なにっ」
「だってさー、むかつくんだもん、こんなものつけてきちゃって」
「こんなものっ?」
「この絆創膏の下ってキスマークでしょ?」
「え、あ、いやっ、これはっ」
「この間婚約者に振られたところだっていうのに、もうこんなものつけてくれるような人がいるんだ?」
「違う、違う違うって、これは女じゃなくて男っ! 猛っ、従兄弟がつけたのっ…て…………うわ」
必死に手を振って叫んで、さて詳しく話そうとした矢先、なぜか詰め所から出てきた三上が一瞬目を見開いてこっちを見た。淡い色の瞳をゆっくりと細めて顎を上げる顔は零下573度。
神様、僕は何かしましたか?
正志は思わず天を仰いだ。
泣きそうな気分で固まった正志の視界の端で動いた何かを振り返ると、慌てて詰め所に引っ込む田中主任の姿を見えた。
「んなろ……」
「睨まないの、対応悪いの、正志くんの方なんだしさ」
「ま、まさぁっ?」
くすくす笑いながら『彼女』が言って、ぎょっとして声が裏返ってしまった。
正志くん?
正志くん?
正志くん、だって?
僕の名前、知ってる!
硬直する正志に『彼女』がちょっと怯んだ顔になる。
「あ、だめかな」
「え、ええ?」
「名前で呼んじゃうの?」
「あ、いや、うん、えーとその」
「やっぱり高岳くんってところから始めるべき?」
「あ、いいや、全然、全然おっけー!」
「そ、よかった」
「で、でもっ、それなら、それならさっ」
「ん?」
「君、の名前も」
「ああ、うん、でも」
にこっと相手は笑った。
「後で舞台で紹介するから、そこでいいでしょ?」
「え?」
ちょっと待って。
正志はまた固まる。どきどきと最大速度で走っていた心臓が落とし穴に転がり落ちたように止まりそうになって引きつった。
ちょっと待ってよ。
それって僕の方はプライベートじゃおつき合いなしってことなのか?
……うわぁ……。
何だかあっさり軽く手玉に取られて、うんとみっともないところばかり見られた気がして、正志は一気に暗くなった。
こんなことなら早退届け出して駆けつけたのもばらされているかもしれない。何か馬鹿馬鹿しくって情けないよな。恨んでやる、絶対恨んでやる。
胸の中でぶつぶつ言いながら俯くと、ちょいといきなり首筋突かれてまた仰け反る。
「なっ、なにっ」
「だってさー、むかつくんだもん、こんなものつけてきちゃって」
「こんなものっ?」
「この絆創膏の下ってキスマークでしょ?」
「え、あ、いやっ、これはっ」
「この間婚約者に振られたところだっていうのに、もうこんなものつけてくれるような人がいるんだ?」
「違う、違う違うって、これは女じゃなくて男っ! 猛っ、従兄弟がつけたのっ…て…………うわ」
必死に手を振って叫んで、さて詳しく話そうとした矢先、なぜか詰め所から出てきた三上が一瞬目を見開いてこっちを見た。淡い色の瞳をゆっくりと細めて顎を上げる顔は零下573度。
神様、僕は何かしましたか?
正志は思わず天を仰いだ。
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