『よいこのすすめ』

segakiyui

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「ふふーん」
「なに、そのふふーんって」
「今、正志くんさあ、悔しいなあとか思ってない?」
「う」
 いや、悔しいなあっていうより、もうどうしたらいいもんだかの領域ですけど。
 思わず正志が口を噤んで目を逸らせると、
「ねえ?」
「なに」
「三上さんのどこがかっこいいと思う?」
「どこがって」
 今それかよ。
 泣きたい思いで振り返った。
 僕は君の名前さえ教えてもらえないのに。
「えーと、かっこいいよね、顔とか姿とか」
「はぁい?」
「……違うの?」
「違う」
「………えーと、じゃあ……仕草とか……やることとか」
 大体なあ、普通の男はあんだけでっかい黄色の薔薇の花束を抱えるって思った時点で、もう照れちゃって駄目だって。しかもそれをあーだこーだいいながら渡す図なんて想像したら、腸捻転起こしそ
うじゃない?
「違いま~す」
「違うの?」
「違う」
「………どこ」
「考えて」
「…………わかんないよ」
「考えて?」
 『彼女』は小首を傾げてみせる。金髪にビーズがちかちかする。
「………………花束?」
「うん」
「花束買って渡したから?」
「違う」
「違うの?」
「正志くんならどうやって花束渡してくれる?」
「………おめでとうって」
「うん」
「………頑張れよって」
「うん」
 まだ彼女は何かを待っているように首を傾げたままだ。
「………うーん?」
「何の花束くれる?」
「何の花束?」
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