14 / 74
14
しおりを挟む
何の花束って。
正志は黙り込み、考え込み、頭を捻る。
「あんまり花知らないんだよね」
「いいから」
「チューリップとかひまわりとか」
「今冬だよ?」
「あ、えーと………冬?」
冬に咲く花って何だっけ?
正志は『彼女』が抱えている花束に眉をしかめる。
「あのさ、薔薇って冬も咲くの?」
「咲くよ。けど丁寧な世話がいるの……高いしね?」
あ、と気づいた。
「………女の子ってそういうこと、よく知ってる?」
「うん、よく知ってる」
「もらったものの値段に詳しいってこと? 三上が高いものをくれたってすぐわかるから?」
「……ばっかだなあ」
『彼女』が赤い唇でぷくんと膨れた。
「だから振られるんだってば」
「あのねえ」
「さっきからお金のことしか話してないじゃん」
「え?」
「『タロン隊長』のこと、いくらする、って聞いたでしょ?」
「あ……」
「三上さんは、あれをどうしてあたしが持ってきたか、子ども達がどう思うか、ちゃんとわかってくれたよ?」
「う」
確かに。
さすがにちょっと血の気が引いた気がした。
「それに」
「はい」
「あたしがこれだけ嬉しそうに話してる相手を『三上』って呼び捨てはないと思うなあ」
「え」
「あたしの気持ちを考えてくれたんなら、ね?」
「う……」
重ね重ねごもっともです、と思いつつ、でもなあ、僕だってそれなりにいろいろ考えて我慢して押さえたんだぞ、と微妙に膨れっつらになってしまったらしい。
くす、と『彼女』が苦笑して、静かな柔らかい声で付け加えた。
「それにね、黄色い薔薇の花言葉知ってる?」
「花言葉ぁ…」
正志は黙り込み、考え込み、頭を捻る。
「あんまり花知らないんだよね」
「いいから」
「チューリップとかひまわりとか」
「今冬だよ?」
「あ、えーと………冬?」
冬に咲く花って何だっけ?
正志は『彼女』が抱えている花束に眉をしかめる。
「あのさ、薔薇って冬も咲くの?」
「咲くよ。けど丁寧な世話がいるの……高いしね?」
あ、と気づいた。
「………女の子ってそういうこと、よく知ってる?」
「うん、よく知ってる」
「もらったものの値段に詳しいってこと? 三上が高いものをくれたってすぐわかるから?」
「……ばっかだなあ」
『彼女』が赤い唇でぷくんと膨れた。
「だから振られるんだってば」
「あのねえ」
「さっきからお金のことしか話してないじゃん」
「え?」
「『タロン隊長』のこと、いくらする、って聞いたでしょ?」
「あ……」
「三上さんは、あれをどうしてあたしが持ってきたか、子ども達がどう思うか、ちゃんとわかってくれたよ?」
「う」
確かに。
さすがにちょっと血の気が引いた気がした。
「それに」
「はい」
「あたしがこれだけ嬉しそうに話してる相手を『三上』って呼び捨てはないと思うなあ」
「え」
「あたしの気持ちを考えてくれたんなら、ね?」
「う……」
重ね重ねごもっともです、と思いつつ、でもなあ、僕だってそれなりにいろいろ考えて我慢して押さえたんだぞ、と微妙に膨れっつらになってしまったらしい。
くす、と『彼女』が苦笑して、静かな柔らかい声で付け加えた。
「それにね、黄色い薔薇の花言葉知ってる?」
「花言葉ぁ…」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる