『よいこのすすめ』

segakiyui

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 花の次は花言葉ですか………。
 深く重い溜め息をついて、おそるおそる正志は尋ねた。
「黄色の薔薇の花言葉って、何?」
「『嫉妬』」
 くふ、と『彼女』は甘い鼻声で笑った。
「嫉妬……?」
「だから、三上さん、『タロン隊長』に渡そうかって言ったんでしょ? あたしの歌を側で聞けるから、僕は嫉妬してしまいますよ、って意味でしょ? それだけ自分もあたしの歌を聞きたかったってことじゃない」
「う……」
 いや、そうとは限らないんじゃ。けど、そうとれるよね、確かに。
 正志は上目遣いに『彼女』を見た。
「花言葉……三上、さん、知ってたと思う?」
「うん」
「はぁ……」
 あー、どこまでもどこまでもどこまでも卒ないっつーか、むかつくっつーか。
「なんだかなー」
「何が」
「いや、なんだかなー、そこまでするっていうのもなにかなー」
「正志くん」
「はい」
 ふいにぴしりと名前を呼ばれて正志は姿勢を正した。下から黄色の花束を抱えてじろっと見上げてくる『彼女』の顔にはっきりと怒りを読み取って、ちょっと怯えてしまう。
「なんだかなーって何」
「何って」
「そこまでするっていうのもなにかなーって何」
「や、だから何って」
「そんなことしてるから振られるんじゃない」
「……今そんなこと関係ないだろ」
「関係あるよ」
 『彼女』はきゅ、と花束を抱えてみせた。
「見てよ、この花束。冬に薔薇、それも黄色選んで、ことば考えて、仕事の合間縫って来てくれて」
「うん……」
「わかる?」
「え?」
「わかんないの?」
「あの……」
 何がわかる? 何がわかんない?
 正志は戸惑ったまま立ちすくむ。
「三上さんはあたしの恋人じゃないんだよ?」
「あ、うん」
「けど、この花束一つにそれだけいっぱい考えて準備してくれた。正志くんがなんだかなーとか、そこまでするのもななにかなーってぶちぶち言ってるより、うんとうんとあたしのことを大事に考えて
くれたの」
「………」
「正志くん、婚約者のこと、そこまで大事に考えたことあったの?」
 ことばが、でてこなかった。
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