『よいこのすすめ』

segakiyui

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 何だかなあ、わかるような気がするな、と今日退院する美保ちゃんについて楽しそうに語り出す猛を正志は見つめる。
 猛っていつもまっすぐ一所懸命なんだよね。そりゃ、確かにとんでもなくお子さまで鈍いところもあるけどさ、なんて言うか、大事なところはきちんとしてて。
 たとえば、と思い出したのは夕べのこと。
 三上の口に絆創膏を貼っていて、まるで三上と顔を寄せあっているように猛には見えたのだろう。全然酒の飲めない男が一人で動けなくなるぐらい酔っぱらってしまうほどへたってて、きっと凄く三上に慰めてほしかっただろうに、それでも、あの瞬間咄嗟に猛が取った行動は部屋に閉じこもって、自分は三上に興味がない、と言い張ることだった。
 きっと正志や三上の気持ちを考えて。
 自分はひょっとしたら嫌われてるかもしれない、そういう男に好かれてるなんて思われたら向こうが困る、迷惑だ、そう三上には思って。
 正志はひょっとしたら三上のことが気に入ってたのかもしれないとか思って。
 自分の辛いことなんか二の次で、まず正志や三上のことを考えた。
 後からうんと泣いたかもしれないのに。
 たぶん、うんと落ち込んだだろうに。
「はぁ」
「? どうしたの?」
「いや…」
 それでもたぶん、仕事はきっちりやるんだよ、猛は。どれだけ自分がぐだぐだでしんどくっても、患者のことになると人が変わったみたいに頑張る。
 だからこそ、猛は小児科でも一番信頼されている有能な医師で。
 正志はきょとんとしている猛を見つめる。
「猛、さ」
「なに?」
「三上さんのこと好きだって意識したのはいつ」
「え…」
 何だよ、急に、まーちゃん変なの、そう言いつつ、えーと、と視線を上げて、
「………意識したのは……たぶん……小学生ぐらい」
「はぁ?」
 正志は思わずくらっとした。
「小学生??」
「うん、ほら、俺、ここに入院したことあっただろ?」
「あ、えーと、確か風邪こじらせて」
 そう言えば、肺炎寸前で救急車で運び込まれた時があったはずだ。
「ここだったの?」
「うん。ここの小児科。で、そこに鷹が居たんだよ」
「……はぃい?」
 三上さんが小児科に、と尋ね直すと、こくんと頷く。それから、ちょっとはにかんだ顔で笑って、
「あの頃はもっと細っこくて折れそうなほど可愛かったんだ」
「誰が」
「鷹」
「まさか、その時から三上さん狙ってたの?」
「違うよ、ばか」
 赤くなった猛に、やりかねないんじゃと突っ込んで、正志は猛に軽く殴られた。郵便物もらってってやるよ、と請け負った猛に幾つか封筒を渡した後で、エレベーターが小児科に止まった。
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