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人が死ぬのを見たのは何度もある。
テレビや何かの報道で、というのではなく、実際にこの目で見て、死体の冷たさそっけなさも触っているからよくわかる。
それはもちろん、私が看護師をしていたということからもあるが、何だかまわりに人死にが多くて、そしてまた、私の回りにはそういうときに死体に触りたがらない人が多かったので、勢いあれやこれや始末なり世話なりをすることが多くなってしまったということ。
それでも一番初めに見たのは曾祖母の死体だったかなあ、といつものように朝食のパンをかじりながら、臨終のさまをありありと思い出す。
夜中に急に呼ばれたのだ。もうだめかもしれないから、お別れをいいに来なさいと言われて、すぐに跳ね起きたのは私もきっと『そう』思っていたからだ。
数日前に母親と『きちんとした』喪服を見に行った。それまでは高校生だし、何かあれば制服で事足りていたのだけど、この際、ちゃんとしておこうということになったのだ。
この際、というのが笑えるなあと思っていた。この際というのは先々のことを考えてということだろうに、そしてその中には父母の死も含まれているはずなのに、どうやらそういうことは母の頭にはなく、先々死ぬのは他の誰かであるらしい、そういう雰囲気があったので。
そう言えば、曾祖母の葬式を想定していて、家でのお通夜に必要な食器を確認していたあたりでも、まあその時に急にばたばたするのもねとか、あれやこれらで不手際があったりするのももおばあちゃんがかわいそうだからとか、あれこれ目一杯段取りのよすぎる手順に弁解しながらも、いざ曾祖母が死んでみると、一番パニックになりお棺の曾祖母に近づけなくて泣いていたのが母なので、人ってのは妙なもんだと関心したっけ。
死ぬとわかっていたのに、そしてまた、その準備までちゃんちゃんと進めてきていたのに、それがやってくると、しかもとても静かに穏やかにやってきたというのに、騒ぎ立ててそれまで自分がしつらえ考慮したあれこれを全部ふいにしかねないなんて、どうにもやっぱり矛盾している。それが人というものかしらと首をかしげて考えていた。
私は実は事情があって曾祖母に育てられたようなもので、小さいときには曾祖母のおっぱいを触りながら大きくなってきたようなのだけど、それでもというか、だからこそというか、曾祖母が調子を崩していよいよ危ないとわかったあたりが一番しんどかった気がする。
むしろ、その後、ゆるやかに坂をなだれていくような曾祖母の命を、喪服だの、繰り返し来る医者の白衣だの、そろえられ磨かれた通夜用の食器や料理の手配などを動けなくなりそうな体と心のつえや目隠しに使いながら、指の間からちらちらと見るようにして、曾祖母の死を納得してきたような気がするのだけど。
それとも母は、ああいう用意を別のつもりでやっていたのだろうか。近づいてくる曾祖母の死を、ああ、そうだ、確かにそうだと思いながら進めていたのではなくて、そんなことはない、こんなことは無用になる、けれどとにかく、目の前のことから目を逸らせる仕事がいる、そんな気持ちでやっていたのだろうか。
そうして、そんな母の何となくの逃げ腰を、事情がわからないながらも気配だけは敏感に察する人々が、曾祖母のためには、家族として十分にしていないと責める元にしたのだろうか。同じ人がどうして父は責めなかったのか、そのあたりがなかなか引っ掛かるところだけど。
とにかく、夜中に呼ばれたときは、一応お別れを口にしたものの、本当に急変したのは朝方だった。死にそうだけど死にきれない、そんな曾祖母の布団の側で家族が詰めて夜伽をする、その中で、あふうと無意識にあくびを噛む私と弟を父母がいったん寝間に引き取らせたのだ。
明け方再び起こされて、布団の側ににじり寄った時に、曾祖母はもうぽつん、ぽつん、といった感じの呼吸をしていた。おそらくはあの後呼ばれた医師が、じっとそれを見つめている。ふ、ふ、ふ、と吐ききれないように呼吸が乱れて、く、くうう、と曾祖母は息を引いた。小さなこぶしがきつく握られ、ぴいんと体に力が張って、そしてふいにそれらが止まる。吸った息が戻ってこない。
医師がそっと側により、脈を取り、瞳孔を見て呼吸を観察し、静かにこちらを向いて告げた「ご臨終です」。
わっ、わああああっ、と母が号泣した。父が目を真っ赤にしてうつむいた。そして私はぼんやりと、ああ、そうか、すげえ、ほんとに息を引き取るんだ、と考えた。
息を引く、ではないし、息を止めるではなくて、息を引き取る。
引いて、もう返してこないのだ。
現実に自分がやってみれば、そのしんどさがよくわかる。息を吸ったままではいられない。息を吐いたままの方が、まだ我慢もきくような。けれど、死者は息を吸ってそのまま引き取っていってしまう。
それは、それが与える苦しさを、その体はもう感じないということなのだ。だから、テレビや映画や芝居で、死ぬ人が息を吐きながら、思いのたけを生者にぶちまけて死んでいくのは嘘だ。ああすると、確かに生きているものは楽になる。楽になるから、その楽さが姿や表情から伝わるから、そしてそれは、みなの望む死の姿に近い気配を漂わせるから、ああして息を吐ききって、役者は死を表現するのだ。
けれど、そらごらん、実際に死者は息を引き取る。くうと喉を鳴らして未練がましく世の空気を一すくい、あの世へさらっていくのだねえ。
もぐもぐ、ごくん。
パンを飲み込み、コーヒーで片付け、両手を合わせてごちそうさま。これも曾祖母から教えられたことだろう。
お礼を言うのは作り手にではなくて、こうして食べた命に対して。だから人がいようがいよまいが、ごちそうさま、と手を合わせるのは、それはもう当然なことで。食べて食べられて、そうして命は循環している。けれど、人間は一般的に日本では食べられてないねえ、火葬されて灰になるけど。それでもそうか、バクテリアとかのご飯になってはいるのかねえ。
テレビや何かの報道で、というのではなく、実際にこの目で見て、死体の冷たさそっけなさも触っているからよくわかる。
それはもちろん、私が看護師をしていたということからもあるが、何だかまわりに人死にが多くて、そしてまた、私の回りにはそういうときに死体に触りたがらない人が多かったので、勢いあれやこれや始末なり世話なりをすることが多くなってしまったということ。
それでも一番初めに見たのは曾祖母の死体だったかなあ、といつものように朝食のパンをかじりながら、臨終のさまをありありと思い出す。
夜中に急に呼ばれたのだ。もうだめかもしれないから、お別れをいいに来なさいと言われて、すぐに跳ね起きたのは私もきっと『そう』思っていたからだ。
数日前に母親と『きちんとした』喪服を見に行った。それまでは高校生だし、何かあれば制服で事足りていたのだけど、この際、ちゃんとしておこうということになったのだ。
この際、というのが笑えるなあと思っていた。この際というのは先々のことを考えてということだろうに、そしてその中には父母の死も含まれているはずなのに、どうやらそういうことは母の頭にはなく、先々死ぬのは他の誰かであるらしい、そういう雰囲気があったので。
そう言えば、曾祖母の葬式を想定していて、家でのお通夜に必要な食器を確認していたあたりでも、まあその時に急にばたばたするのもねとか、あれやこれらで不手際があったりするのももおばあちゃんがかわいそうだからとか、あれこれ目一杯段取りのよすぎる手順に弁解しながらも、いざ曾祖母が死んでみると、一番パニックになりお棺の曾祖母に近づけなくて泣いていたのが母なので、人ってのは妙なもんだと関心したっけ。
死ぬとわかっていたのに、そしてまた、その準備までちゃんちゃんと進めてきていたのに、それがやってくると、しかもとても静かに穏やかにやってきたというのに、騒ぎ立ててそれまで自分がしつらえ考慮したあれこれを全部ふいにしかねないなんて、どうにもやっぱり矛盾している。それが人というものかしらと首をかしげて考えていた。
私は実は事情があって曾祖母に育てられたようなもので、小さいときには曾祖母のおっぱいを触りながら大きくなってきたようなのだけど、それでもというか、だからこそというか、曾祖母が調子を崩していよいよ危ないとわかったあたりが一番しんどかった気がする。
むしろ、その後、ゆるやかに坂をなだれていくような曾祖母の命を、喪服だの、繰り返し来る医者の白衣だの、そろえられ磨かれた通夜用の食器や料理の手配などを動けなくなりそうな体と心のつえや目隠しに使いながら、指の間からちらちらと見るようにして、曾祖母の死を納得してきたような気がするのだけど。
それとも母は、ああいう用意を別のつもりでやっていたのだろうか。近づいてくる曾祖母の死を、ああ、そうだ、確かにそうだと思いながら進めていたのではなくて、そんなことはない、こんなことは無用になる、けれどとにかく、目の前のことから目を逸らせる仕事がいる、そんな気持ちでやっていたのだろうか。
そうして、そんな母の何となくの逃げ腰を、事情がわからないながらも気配だけは敏感に察する人々が、曾祖母のためには、家族として十分にしていないと責める元にしたのだろうか。同じ人がどうして父は責めなかったのか、そのあたりがなかなか引っ掛かるところだけど。
とにかく、夜中に呼ばれたときは、一応お別れを口にしたものの、本当に急変したのは朝方だった。死にそうだけど死にきれない、そんな曾祖母の布団の側で家族が詰めて夜伽をする、その中で、あふうと無意識にあくびを噛む私と弟を父母がいったん寝間に引き取らせたのだ。
明け方再び起こされて、布団の側ににじり寄った時に、曾祖母はもうぽつん、ぽつん、といった感じの呼吸をしていた。おそらくはあの後呼ばれた医師が、じっとそれを見つめている。ふ、ふ、ふ、と吐ききれないように呼吸が乱れて、く、くうう、と曾祖母は息を引いた。小さなこぶしがきつく握られ、ぴいんと体に力が張って、そしてふいにそれらが止まる。吸った息が戻ってこない。
医師がそっと側により、脈を取り、瞳孔を見て呼吸を観察し、静かにこちらを向いて告げた「ご臨終です」。
わっ、わああああっ、と母が号泣した。父が目を真っ赤にしてうつむいた。そして私はぼんやりと、ああ、そうか、すげえ、ほんとに息を引き取るんだ、と考えた。
息を引く、ではないし、息を止めるではなくて、息を引き取る。
引いて、もう返してこないのだ。
現実に自分がやってみれば、そのしんどさがよくわかる。息を吸ったままではいられない。息を吐いたままの方が、まだ我慢もきくような。けれど、死者は息を吸ってそのまま引き取っていってしまう。
それは、それが与える苦しさを、その体はもう感じないということなのだ。だから、テレビや映画や芝居で、死ぬ人が息を吐きながら、思いのたけを生者にぶちまけて死んでいくのは嘘だ。ああすると、確かに生きているものは楽になる。楽になるから、その楽さが姿や表情から伝わるから、そしてそれは、みなの望む死の姿に近い気配を漂わせるから、ああして息を吐ききって、役者は死を表現するのだ。
けれど、そらごらん、実際に死者は息を引き取る。くうと喉を鳴らして未練がましく世の空気を一すくい、あの世へさらっていくのだねえ。
もぐもぐ、ごくん。
パンを飲み込み、コーヒーで片付け、両手を合わせてごちそうさま。これも曾祖母から教えられたことだろう。
お礼を言うのは作り手にではなくて、こうして食べた命に対して。だから人がいようがいよまいが、ごちそうさま、と手を合わせるのは、それはもう当然なことで。食べて食べられて、そうして命は循環している。けれど、人間は一般的に日本では食べられてないねえ、火葬されて灰になるけど。それでもそうか、バクテリアとかのご飯になってはいるのかねえ。
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