彼岸の光景

segakiyui

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 ピンポーン。
 間抜けたベルが唐突になった。
 そうそう、忘れていた。今日は温水器の点検の日、この前のときはぼんやりしていて、用事を入れて出掛けてしまったので、再度点検に来たのだ。
 あわてて玄関を開けて、のっそりと顔を出した相手は無骨そうな男の人で、しまったまずかったかなと一瞬ひやりとした。
 両隣は留守がちで、お向かいといっても斜めになり、しかも扉はお互い閉め切っているのだから、万が一何かがあっても、たとえ、この場でこの人に殺されて家の中へひきずりこまれたとしても、きっとたぶん子どもが帰ってくる夕方か、そのままとりあえずカバンも置かずに遊びにいってしまえば、夫が帰る夜まで私の死体はこの部屋に放置されてるのだろうな。
 そんな物騒なことを考えてるのは私だけか、相手の男性は私を見るとにこりと笑って、腕に巻いた会社名の腕章を示し、点検にきました、どうも、と頭を下げた。何度もすみませんとこちらも頭を下げながら、なんだか自分の妄想が気恥ずかしいけど、それでもまったくないとは言えない。
 点検にかかる相手の背中を見つめながら、思いはさっきと違ったもう一度、死ぬなと思ったときに飛ぶ。

 それは真っ昼間のことだった。何かの食べ合わせが悪かったのか、昼前にいきなり下し始めた。下すだけではない強烈な吐き気も襲ってきて、転がるようにトイレに駆け込み、上から下から吐き上げ下し、とっさに抱えたバケツにぽろぽろ涙を落としながら、さて、どのぐらいそこにいたものか。
 腹痛は絶え間なく襲っていた。あんまり痛いので壁を支えに、やがてはドアの枠をつかんで耐えたけど、こらえきれなくて「いた、いた、いたたたた!」と叫んでいた。痛みがきつすぎて、それで余計に吐き気が込み上げ、頭痛がし始め、めまいが視界を揺らせて、それでまた、頭痛がし、気分が悪くなって吐き、吐いて腹が痛くなってうめいた。
 何がまずかった、これはどういう症状だ、いやひょっとしてこれはもう救急車にお世話になった方がいいレベル、けれど、トイレから動ける気力が残っていない。足は小刻みに震え出すし、喉はからからだし、目はかすむし、それでも腹も頭も痛いし苦しいし。このまま死ぬかもと思い出したのは一、二時間もたったぐらいだろうか。そう思ったせいなのか、それともぼちぼち本当にまずい限界に来ていたのか、呼吸ができないと言う気分になり始めた。息が吸えない。息が吐けない。胸が焼けるように苦しい。喉が詰まっているわけではないのに、とりあえず空気が出入りしてくれない。
 ひはひはひはひはとせわしく何とか呼吸をするだけに集中し始めたせいか、頭痛も腹痛も、この息苦しさに比べれば、ああ、まあ、とんでもなく痛いんだなと思える程度、さっきまでは全身痛かったのに、今では頭のどこが痛い、腹のどこがどう痛いまで感じ取れるようになった。
 酸素不足の脳は妄想を発達させるのか、それとも秘められた力が発揮されるのか。
 ぜいぜい言いながらも、頭の一部が冷め出して、それはもう実のところは、単にそこに血が回ってなかったためなのかもしれないけれど、あれやこれやと妙にいろんなことを考えていた。
 ここで私が死ぬでしょう。そうすると、まあ、発見は遅れるよねえ。何せ周囲は落ち着いて平和な日常で、マンションは防音されててドアもきちんと閉まっていて、おまけに不審者対処で鍵がかかってドアチェーンまでかかっているし。電話がかかってもここから動けない私は出られないけど、別にそんなの普段から、買い物に行ったり図書館行ったりで、電話に出ないのはよくある話、ましてや真っ昼間なんだもん、まさかまさかで死んでるなんて、しかも独居老人なら孤独死ということも考えてもらえても、普通に暮らしている主婦がマンションの一室のトイレで悶死してたって、そんなのどうやって気づけばいいことやら。 
 ここで私が死ぬのは、そしてトイレでかなり情けない格好で転がってるのはもう仕方ないとして、事実、それを私は感じ取れないし、あ、そういえば、落語でそういうのあったよねえ。父親が三人の息子に自分が死んだらどう扱ってくれるかと聞いて、一番下の自慢の賢い息子がゴミ袋に積めて生ゴミの日に出すとか、屋根にほうり上げて鳥葬にするとか、死体を入れるのを漬物の桶で間に合わせるとか話すのに、父親すっかりひるんでしまう。痛くないかとかにおいがするとかごねるのを、息子ってば、にっこり笑って諭すのだ。「お父さん、あなたはもう痛みをお感じにはなりません」「お父さん、あなたはもう臭気をお感じにはなりません」。 
 わはははは。
 でも、私の死体を発見するの、子どもが一番はやめてほしいけど、避けられないんだろうなあ。何せ私はもう死んでるし、夫が帰るのは遅いし、あ、でもまず玄関から入れないか。子どもは外でどうしたんだろうなあと待っていて、いいや、とりあえず友達のところへ行ってようって出掛けてしまうパターンでいいか。そしてそのまま、あんまり遅いぞどうなってるんだ、とお友達のお母さんが電話をくれるけど、出られないんだよなあ、私は。それでうんと遅くなってから、夫が帰ってきて、なんだ、どうしたんだ、家の中が真っ暗だぞと玄関の電気をつける、私の名前と子どもの名前を呼ぶ、答えがない。死んでるからなあ。入ってくる、トイレの電気がついているぞ。とのぞきこむ。
 うわ。いや、声もでないか。意外とどうしたんだ、そんなところで、なんて声をかけてしまったりして。でも走ってこれないよなあ、ドラマみたいには。一瞬立ち竦む、まあそれが人情だよなあ。
 それで、少したってから、おもむろに名前を呼んで近づいて。あわてたからって投げ出してる手とか足とか髪とか踏まれるのはやだなあ、死んでるけど。
 問題はいっそその後かもしれないなあ。解剖されるよね、一応変死だから。原因は何だったか私も知りたいけど、わからないよなあ、死んでるし。どっちにしてもお通夜だし、お葬式だし。ほんとはそんなものいらない。お経もいらない。死んじゃったねえと火葬してもらって、骨も別にどうでもいいな、お墓もいらない。面倒見切れないのわかってるし。できたら献体したいけど、反対してるしなあ、納得してくれないだろうしなあ、ドナーカードにサインしてくれないって前も言ってたし。それより何より、何もしたくないのが故人の意志だって言っても、両親とかともめるだろうなあ。どうして死んだ者の気持ちを尊重してくれないのかな。
 やっぱり生きてることの方が大事だからかもなあ。葬式とかお通夜とか、霊能力がない私には必要性がよくわからないけど、生きてる人のケアのために必要なことなんだっていうことなら納得できる。でも、できたら、そういうのやめてほしいなあ。その分のお金、残った家族が何か楽になるように使ってくれればいいのに。
 その後。どうやって暮らしてくのかなあ。母親がいなくなった家に小学生の息子と夫。それなりに何とかやってくだろうか、それとも、さっさと早めに再婚しようと思うだろうか。今こうなってみると、意外とそれはご自由にという気もする。二人でやっていくにしても、再婚して新しい家族を作るにしても、何というかそれはもう、私の関わらぬ時間の問題、息子と夫の人生の問題。
 私は灰になってるし、つまりはバクテリアなんかのお食事風景に入ってるわけだし、でもって、意識だの魂だのはおそらくは現世に固執したとしても影響は与えられないだろうし。いや、怨霊とかがいるなら、影響力あるものかもしれないけど、そこまでして自分の住んでない世界をどうこうしたいなんて気持ちは私の中にないなあ。死体だと手とか踏まれたらやだなと思うくせに、火葬された後はどうでもいいと思うなんて、ああ、私ってひょっとしてとんでもなく物質的な存在なのかもしれないな。
 あ、待って、ドアチェーンかかってるなら、夫でも入れない。うわあ、そんなとき、ちゃんと対処してくれるんだろうか、あの人は。警察呼ばずに救急車呼んだり、親戚連中に電話してしまったり、わけのわからぬことをしてしまうんじゃないんだろうか。
 というあたりを考えているころには、もう腹痛も頭痛も吐き気も呼吸困難もすっかりおさまっていて、冷えきったトイレに長時間座っていたものだから、がたがた震えながら体をひきずるように居間に戻ってきた。それでも、ああ、死に損なったのかもと思ったのは、帰ってきた子どもが「トイレくさーい!」と騒いだ後で、それまでは今一つ、気持ちがこの世に戻っていないような、今もまだ微妙な境に漂っていて、死ぬときのことや死んだ後のことなどをいろいろと考え続けていたような。

「点検終わりました。いやあ、かなり傷んでますね。ここがこう腐食してサビが来てますし、こちらの配管のこの部分も問題です。今のところは大丈夫ですが、交換工事とかも考えたおかれた方がいいかもしれません」と、立ち上がる工事の人にお礼を言って、パンフレットをもらい、また後で検討しようと机に置いて、またふと考える。
 もし明日死ぬとするでしょう。すると、もし、今日この工事をしたとしたら、それってむだになるのかな、それとも残った家族への思いやりになるのかな。もちろん、私が死んだ後も、この家で暮らしてくれるのなら、それはそれでいいことだけど、もうここはあんまりだってことで引き払って別の家に移ろうってことになったら、真新しい温水器とそれにかけた私の気持ちなんかは置いてきぼりにされるわけ。
 それって何か、私が家を出て行った後の母親の布団干しの光景に似てるよね。それは私が使ってた布団だけど、もう私は結婚して家を出て行くのだから、その布団はおそらくしばらくずっと使われない。押し入れの奥に片付けられて、次もし使うとしても、そのときにもう一度布団を干すことが必要になるはず。なのに、何で母親はそんなに気合をいれて布団を干しているのだろう。
 その気持ちは父親の買ったマンションにもつながっている。もう私はそこに住まなくて、新しい場所に住んでいくのに、何年もローンを組んで買ったのが自分達のためなのかと思っていたら、いつかお前が住むだろうからなどと言い放ったときの驚きを覚えている。それはどういうことなのかな、私は新しい場所で新しい家族と暮らしていくことを考えているのに、父親は娘だからと永遠に自分ととも暮らしていくと考えているのかしらん。そう思うとマンションが、何だか一回りでっかいお墓みたいで、ぞおぞおしてきて安心していられなかった。
 たぶん、私の世界は私が死ぬときに終わってしまう。他の誰かの生きている世界は、本質的には私の生きている世界と同じじゃなくて、それはその人の世界で、ほんのわずかしか関わっていない。もし、それぞれの世界が互いに関わるとしたら、それはきっと、生きている間に関わった深さによるのだろうなあ。生きている間にどれだけ深くどれだけきちんとつながりを結べたかで、私の死の形は変わる。もっと変わるのは、死んでからの私の形、在り方、つながりかただ。
 そのとき、私はもう、それを自分で規定できない。こういうふうにあろうとしても、それはもう私の世界ではないのだから手を出せない。そう悟ることが、きっと死ぬことを認識することなのだ。
 自分の世界が終わっているのに、他の誰かの世界に入り込んで代用して、それで生きていってはいけない。それを実行したら最後、人は怨霊になる。生きていても人から疎まれ憎まれ恨まれる存在になってしまう。あの電話の彼女の父親のように。
 自分の人生を十分に使い切って生きてれば、あの曾祖母のように、あの曾祖母に似た、地獄に住む白い手の持ち主のように、生者を巻き込まなくてもすむ、恨み恨まれずにすむ。
 ふいふいと曾祖母のことを思い出してしまうのは、今の私がそう生きていないせいなんだろうか。それを警告してるんだろうか。
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