『ラズーン』第五部

segakiyui

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2.暗雲(3)

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「そりゃきっと、かけがえないほど大事なものだよ、けどさ」
(けどさ)
「私が欲しいのは、そういうもんじゃ、なくて!」
 ぶつぶつぼやきながら、回廊を歩く。
「要するに、性格が悪くなったんだ!」
「誰が性格が悪くなったって?」
「だから、アシャ…」
 言いかけてユーノは立ち止まった。背後から追いかけて来た声の主を振り返る。
「アシャが? そりゃ怖いな」
 あれ以上ってことだろ、と視線を天井に向ける顔、やれやれと言った苦笑を広げる顔。
「ユカル! シートス!」
「やあ、『星の剣士』(ニスフェル)」
 相変わらずの茶色の長衣、緑の鎧を身に着けた野戦部隊(シーガリオン)の二人、物見(ユカル)とシートスを見つけて駆け寄る。
「いつ来たんだい?! 遠征はどうだった?」
「俺はちょっとアシャに話がある。ユカル、『星の剣士』(ニスフェル)の相手を頼む」
「はい、隊長」
 唇の端に苦笑を残したシートスが、ちらりとユーノを見やって笑みを深め、そのまま身を翻して歩いていく。鎧のせいばかりではない、相変わらず隙のない身のこなし、野天を住処とする部隊の長としては、こんな風に着飾った邸内は息苦しいだろうに、そんなそぶり一つもなく回廊の端へ消えていく。
 それを見送ってから、ユーノはユカルに向き直った。
「支配下(ロダ)の方はどう?」
「それなんだ」
 ユカルは一つ頷き、ユーノに肩を並べた。
「ちょっと気になることがあって、急ぎアシャ・ラズーンに報告しようと思って戻ってきたんだが…」
 そこで、世にも妙な表情になって、
「アシャ・ラズーンが『もっと』性格が悪くなったって?」
「…それはもういいんだ」
 ユーノは顔が熱くなるのを感じた。
「ボクも悪かったんだし……それより、気になることって何? 聞かせてくれないか?」
「ああ」
 ユカルは招き入れられるままにユーノの私室に入ってきた。促されて、かなりの強行軍だったのだろう、どさりと重たそうに、床に敷いた毛皮とクッションの上に腰を落とす。ユカルの動作に伴って、木を燻したような、湿気を帯びて吹き過ぎる沼地を行く風のような、荒野を思わせる薫りがした。鎧を外す気配はない。額帯(ネクト)に乱れた前髪を掻きあげながら、
「話す前に、一つ確認しときたいんだが」
 以前よりも随分と大人びた口調だった。
「『銅羽根』から、最近何か報告はあったか?」
「『銅羽根』……っていうと、確か…」
 ユーノは頭の中で地図を見渡す。
「アギャン公配下だったっけ?」
 アギャン公は未だ顔を合わせたことのない、引きこもり気味の君主、ではなかったか。アシャ・ラズーンの帰還にも挨拶に来たのかどうか。
「ああ」
「いや、何も」
「そうか…あ、すまん」
 ユカルはユーノが差し出した水晶細工のグラスを面映げな顔で受け取った。無造作に掴んで中身を含む。冷えた水にほっとしたのだろう、一気に飲み干して、なのに、苦い表情になった。
 確かに弱冠十七歳、野戦部隊(シーガリオン)の中ではひよっこでしかないが、その物見(ユカル)としての並々ならぬ才能はずっと高く評価されている。ユーノが野戦部隊(シーガリオン)を離れてから、さらにその才能に磨きがかかったのか、表情には少年と思えぬ厳しさが漂っている。
「ユカル?」
「…うん」
 ユーノの促しに小さく頷いた。
「……実は、ラズーンのアギャン公とミダス公の分領地の境に、三角州があるんだ。知っているとは思うが、ラズーンの高峰、『狩人の山』(オムニド)からの流れは、アギャン公分領地にはほとんどない。荒れた土地ばかりの中で、三角州は、唯一、都から離れて野営をしやすい所だ。特に、ラズーンを辺境から狙おうとする大部隊を休ませるにはちょうどいい」
 ユカルの話に伴って、ユーノの脳裏に原野が広がる。果てしない空と見渡す限りの赤茶けた平原。荒々しく戦いに乗り込む野戦部隊(シーガリオン)の煌めく槍、翻る茶色の衣、豪快に響き渡る笑い声と閧の声。
 一息ついて、ユカルはユーノを見据える、こちらの内側に何が育ちつつあるのかを見極めようとでもするように。
「だから、俺達も遠征の合間に、その辺りも巡視しておくのが常になっている。これはアギャン公の『銅羽根』だって同じはずだ」
 外側から野戦部隊(シーガリオン)が見守り、内側からは各分領地の『羽根』達が警戒する。それがラズーンの防御網だ。
 ユカルは非常に言いにくいことを口にしなくてはならないと言いたげに、もう一杯もらえるか、とグラスを差し出した。だが、注いだ中身をたゆたゆと揺らせながら、なかなか話そうとしない。
「酒がいるかい?」
「…いや」
 ユーノの声に微かに苦く笑って首を振った。やがて、思い切ったように口を開く。
「ほんの数日前のことだ。俺達はいつものように、その三角州に巡視を送った。普段なら、その辺り一帯を回ってくるはずの仲間は、すぐ戻ってきて隊長にこう報告した、『三角州に大規模な野営の跡がある』と」
 同じようにグラスに水を注ぎ、窓にもたれて唇まで運んでいたユーノは、ぎくりとして手を止めた。
「二十や三十の数じゃない。少なく見積もっても百人前後の兵士、それも、最近のばかりでない、ここ数週間、たて続けの野営の跡だ、と。野営の仕方から見て、モスかグルセトの部隊……おそらく、延べ、千人以上」
「……」
 視線をぶつけた二人の脳裏に去来したのは同じことだっただろう。
「どういうことだと思う?」
 ユカルは皮肉な目をユーノに向けた。
「それだけの大隊の移動の報告が、全く来てないってのは?」
「……アギャン公なのか?」
「わからない」
 ユカルは重く溜め息をついた。
「ただ……千人以上、もっとも少なくて、五百人前後の兵士が、こともあろうにのうのうと、ラズーンの鼻先で野営をしてたってことだ。そして、それを報告するべき『銅羽根』の動きがない」
 セシ公の端麗な横顔が思い浮かんだ。アシャの疑念も。
 裏切りがあるかも知れない。それも、下級兵士ではなく、視察官(オペ)級、まずくすれば、大公級の裏切りの気配がある。
 アギャン公については、いい噂は聞いていなかった。ジーフォ公が武力で、セシ公が知力で、ミダス公が外交力で、それぞれの分領地を巧みに治めているのに比して、アギャン公はいつの頃からか政治に疲れ、分領地の統治から身を引いているという。また、彼はラズーンに対して、少なからぬ皮肉的な見解を持つ老人でもある、と。率いる『銅羽根』の長はグードス、アギャン公の一人息子だ。ラズーンに反旗を翻そうとしたならば、仲間割れがある組み合わせではないだろう。
 ユーノはゆっくりと水を口に含んだ。
 セレドのものとも、旅で飲んだものとも違う、独特の清冽感のある澄んだ舌触り。
 それは『泉の狩人』(オーミノ)の棲む『狩人の山(オムニド)』から溶け出した氷の水だ。水は二つの運命を選び、片方は塩辛い闇に我が身を投げ捨てて世界を巡る海となり、片方は岩瀬を奔り樹々を育て、獣や人を活かす。
 同じ水が闇と光の両方を含む。
(警告)
 喉を滑り落ちていく水の遥か底、体の奥で何かが鳴り響く。
 物事は二つの側面を持つものだ、時には全く違う顔を。ラズーンはその最たるもの、永遠の繁栄を見せかけて、滅亡へ静かに歩み続ける。
(何だ? ユカルのことばだけじゃない、もっと何か、もう一つ引っ掛かる要素がある)
「……もっとも」
 ユカルはふ、と肩の力を抜いた。手にしたグラスの水を、今度は味わうように旨そうに飲み干す。
「俺達が駆けつけた時には、もう槍跡さえなかった。周囲にそれらしい気配もない。で、とりあえず、アシャ・ラズーンに出馬願って、俺達には気づけなかったものを見定めてもらおうと…」
「ユカル!」
 唐突に胸を強く押さえつけられたような気がした。
「うん?」
「何て、言った?」
「で、とりあえず、アシャ・ラズーンに」
「その前!」
「周囲にそれらしい気配もない…」
「ユカル…」
 気づかないのか、こんな恐ろしい符号に。
 ちりちりと逆立っていく皮膚の感触、総毛立つとはこのことか。
 ユーノは凍てつく声を絞り出す。
「気がつかないの?」
「気がつかない? 何が? だって、俺達が駆けつけた時には槍跡さえ…あ」
 以前のようにどこか子どもっぽく、不満げに唇を尖らせたユカルが息を呑んだ。見る見る青ざめてグラスを置く。そのまま、額帯(ネクト)に手をあてて呻いた。
「…畜生…俺はどうしてこんなことに…」
「そうだよ、ユカル。一体、それだけの大人数は、『どこに』消えたんだ?」
 わざわざラズーンの端で野営をするという芸当をした連中が、単にはったりやこけおどしのために、そんな賭けをしたとは思えない。そこには何か意図があり、確かな保証があったはずだ、そこで野営をすることに対する大きな見返り、という奴が。
「ユカル」
 ユーノもグラスを置いた。剣帯を締め直し、服装を整える。
「その場所に誰か置いてるよね?」
「ああ、見張り二人を」
「野営があったのが数日前としたら、今日あたり、そろそろ次の隊が来るんじゃない?」
「見張りが危ないってことだよな」
 ユカルも立ち上がる。
「シートスがアシャに話してるなら、アシャならすぐに気づくよ。けど、軍を作るなら時間がかかる。まずくすれば見殺しだ」
 ユカルを見やる。浮かび上がった幾つもの顔、行き場のないユーノを受け止めてくれた仲間達が今、命の瀬戸際に無造作に晒されている。見返したユカルの目を受け止めて頷く。
「少しでもいい、先に動こう」
「わかった、『星の剣士』(ニスフェル)!」
 微かに声を弾ませて続くユカルを背中に、部屋から駆け出す。

「性格が『なお』悪くなったそうですね」
「何だ、入ってくるなり」
 シートスを迎えたアシャは、相手のことばに苦笑いする。
「いえね、今そこで『星の剣士』(ニスフェル)に会ったんですが、あなたが『もっと』性格が悪くなったってぼやいてました。一体何をやったんです?」
「別に。あいつが阿呆なことを言うからだ」
 シートスに椅子を勧め、アシャも長椅子に座り直す。
「まあ、『かなり』いい性格はしてるよな」
 ベッドに寝転がりながらラクシュの実を摘んでいたイルファが、手元の木の椀に中身がなくなったのを指先で探り、のったりと体を起こす。
「ユーノがやられた時だっけな、あの裏切り者にしたことを考えりゃ、とてもとても王子って育ちには思えねえよな……なくなっちまった。もらってくる」
 木椀を手に下げ、ぶらぶらと部屋を出て行く後ろ姿を見送りながら、シートスが苦笑まじりにアシャを振り返る。
「ユーノがやられた時…ね。良きにつけ悪しきにつけ、『氷のアシャ』が『炎』になるのは、『星の剣士』(ニスフェル)に何かあった時しかない、と言うわけだ」
「その『炎』も」
 たじろぎもせず、アシャは言い返す。
「あいつの前じゃ、消えかけた燠火程度の熱だ。ったく、どうしてああも無茶ばかり」
 つい愚痴になった口調に気づいて、眉を潜めて口を閉ざす。シートスがまじまじとアシャの顔を眺め、苦笑を深めた。
「構いませんが、あんまりそういう表情を女子供に見せんことですな。男でも迷う奴が出てくるかも知れない」
「やめてくれ。イルファだけで十分だ」
 うんざりして唸り、一転口調を変えて促した。
「それより一体何だ? 野戦部隊(シーガリオン)を放ってくるとは?」
「それだけの価値があると思いましたので」
 シートスはまた微かに苦笑し、ユカルだけではいささか荷が勝ち過ぎるかと、と付け加え、手早く三角洲の大量の野営の跡と『銅羽根』への懸念を語った。
「…まずい」
 アシャはすぐさま、その意味を覚る。
「まずいぞ、シートス。その見張り、今生きているかどうか」
「え」
「そいつらが、なぜあえて見つかりやすい三角洲に、しかも何度も野営を続けたのかを考えると」
「む」
 シートスは目を見開いた。猛々しく輝く黄玉、殺気を満たしてぎらりと光る。
「数日前の野営の軍が最後だとは思えん。そこまで出て来た軍が、こけおどしに自国へ戻るとも思わん。ラズーン近くに野営する特別な意図を果たした、と見たほうがいい」
 そして、それはおそらくはラズーンへの潜入だろう。
 外壁がいかに強固にラズーンを守ろうとも、四大公の裏切りという情報がある以上、外壁は既に外壁としての役目を果たさない。それは単なる土地の区切りでしかない。敵は自分達に開かれた門を潜って、易々とラズーンに侵入できるのだ。
「シートス、先に出る」
「はっ」
「すぐさま野戦部隊(シーガリオン)を率いて追って来い」
 立ち上がるアシャの手には剣がある。滑らかな動作で身に着ける。今までの憂い溢れる穏やかな王子の仮面を脱ぎ捨てた自分が、解き放たれて高揚する。
(旅よ、旅よ)
 唐突に頭の奥で古い詩が鳴り響いた。
 旅よ、旅よ。
 我が身を開く未知への扉よ。
 進め、真なる命を得るため。
 残したものは抜け殻に過ぎぬ。
「…アシャ?」
 歩み寄った戸口から、回廊の向こうを振り返り振り返りしながら、イルファが入ってきて首を傾げた。
「何かユーノに急用でも言いつけたか?」
 木椀の中身をむしゃむしゃやりながら、もう一度半身、廊下を振り返る。
「何?」
 訝しく瞬きしながら、アシャの胸に嫌な予感が広がる。
(ユカルはどこだ?)
 ユカルはユーノの仲間だった。ここにはシートスしかいないなら、当然ユカルはユーノの所なのだろう。同じ情報を、きっとユーノにも語って聞かせているだろう。
「じゃ、何だろうな?」
(まさか)
 のんびりしたイルファの横顔を凝視した。
 左肩の痛みにしかめた顔が脳裏を過り、ひんやりとした怖気が背中を這い降りる。普通の者なら、あんな状態で何かをしようなんて考えない、だが。
(あいつは)
 ユーノ、なのだ。
 首を振り振り、イルファが不思議そうに続ける。
「いや、今さっき、若い野戦部隊(シーガリオン)の奴と一緒に、妙に急いでヒストですっ飛ばして行ったぜ、殺気立った面して」
「あ…の、ばかっっ!!」
 罵倒を続けるのももどかしく、アシャは部屋を飛び出した。
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