35 / 73
6.洞窟(5)
しおりを挟む
「ふ…ぅ」
ジノを下がらせ、そのままずっとベランダで花苑を見つめていたリディノは、ようやく深く重い溜め息を吐き出した。
(自分が、わからない)
風が舞う。
風にブーコが巻かれて舞い飛んで行く。
金の花粉が渦を描いて空間に鮮やかな紋様を作り上げる。
その風は、ベランダのリディノの髪を梳き、ドレスを靡かせ、心の奥まで吹き込んで来て、彼女が見たくないものまで、沈殿していた細かな粒子を湧き上がらせるように、舞い上がらせていく。
(アシャ兄さま……アシャ…アシャ・ラズーン……)
想い人は今窮地のただ中に居る。案じないと言えば嘘になる。だがしかし、それよりもなお強く、リディノの心を揺さぶり続けている一つの想いがある。
(ユーノ……ユーナ・セレディス……セレドの第二皇女……アシャ兄さまの……想い人…)
胸の中で呟いた途端、傷から血が滲むようにじわりじわりと広がっていく想い、どす黒く濁って腐臭を放つかのような想いを、リディノは正視できなかった、今の今までは。
何がきっかけだったのだろう。通り過ぎ、行き過ぎ、無視し、振り返ることもなく突き放してきたその想いは、今や次第に避けようもなく、闇の悪夢から立ち上がってくる魔鬼の姿のように、リディノの前に迫りつつあった。
(ユーノ・セレディス……ユーノは今、兄さまとともに居る…)
私の、アシャ兄さまと。
(共に同じ夜を過ごし、共に同じ食卓につき……そして、共に同じものを見て、お互いに顔を見合わせ、笑う)
そして、二人は何を育てていくのか。
(……敵地に二人……兄さまの命とユーノの命……)
風がふいに荒々しく、耳元を吹き抜け髪を乱す。そこから響く微かな声が、リディノの胸でぽとりと真っ黒の染みを落とす。
(一人しか助からないのなら……アシャ兄さまが助かるなら……)
、の命を代償にすればいいのに。
(きっと望むはず)
、が戻るより、アシャ兄さまが戻る方がいいと。
(どちらか一人というならば)
ユーノ、など帰ってこなくてもいい。
「っ」
耳元で言い切ったその声に、リディノはどきりとして慌てて首を振った。
「違うわ、そうじゃない、そうじゃないのよ」
誰にするともない弁解を口にする。
「そんな意味じゃない……だって、アシャは……アシャは……正当後継者だもの…」
ラズーンにとって、世界にとって、どちらが貴重かと言うならば、誰が考えても同じだろう。ラズーンを負う正当後継者と、世界の片隅の辺境の皇女、しかも継承権を持つ訳でもない、『二番目』にしか価値のない姫君。
「セレドには、レアナが居るわ……セアラという第三皇女も居るのでしょう…?」
リディノは見えない相手と交渉を続けている。それはここ数日、ずっと続けている終わりのない、心身の疲れる、苦しくて虚しい闘いだった。
「たとえ、が死んでも、大丈夫だわ、セレドは続くわ。たとえセレドの君主が変わっても、大丈夫だわ、ラズーンは被害を受けない、だって小国ですもの、ラズーンの運命を握る国ではないもの」
リディノ。
遠く遥かな高みから、優しく厳しい声がする。
「アシャの方が大事よ、命としてはずっと重いわ、そうでしょう?」
リディノ。
近づいてくる、静かで穏やかで、なのにきららかな姿のものが。
「それに、ユーノのあの傷……そうよ、本当はもっと前に死んでいてもおかしくないほどの傷だった。これまで生きて来れたのは、きっとアシャ兄さまが庇ったからよ。アシャ兄さまが助けてきたから。だから、その代償は必ず払うべきものなのよ」
あなたは何を言おうとしているの、リディノ。
内側から響くのか、外側から投げかけられるのか、その存在の問いかけはリディノの肌を粟立たせた。
「第一、あの傷、そうよ、あの傷をアシャ兄さまはご存知なのかしら。いえきっと、ご存知じゃないわよね、もし知っておられたら、あんなに優しくできないわ、だって、何をやってあんな傷を受けるって言うの、女なのに、一国の姫なのに……いえ……ほんとに……姫なのかしら……アシャ兄さまは騙されているのではない…?」
リディ。
「っ」
聞こえたのはユーノの声だった。
「、黙って…っ!」
悲鳴に近い自分の声が響き渡る。耳を押さえて目を閉じる。
疲れていた。ずっとずっと戦い続けて、リディノは芯から疲れていた。
こんな闘いをしたことはなかった。ミダス公に愛され、ジノに守られ、人を愛すること、いとしむことにかけて、自分ほど優れた者はいないと思っていた。どれほど酷い境遇の者でも目を背けず憐れむことができたし、病んだ老人や怪我をした子どもに近寄ることも佇むこともできる彼女を、人は『春の女神』と呼んで讃えてくれた。
リディノは優しい。リディノは愛深い。
誰もがそう口にする。リディノはまさにその賛辞に相応しいと確信していた、疑ったことさえなかった。
愛情溢れる麗しい娘には、美しく端麗な騎士が寄り添うものだろう?
心優しく思いやり豊かな女は、その宝を護り抜く力強く才気に満ちた男が包むものだろう?
確かに今はまだ、リディノはいろいろとアシャに及ばないところがあるのだろう。そこまで自惚れているつもりはない。
しかし、ラズーンの姫だ。ミダス公領地を受け継ぐ娘だ。ましてや、夜会に出れば吐息を浴びる存在なのに、跪く者一人一人に笑顔を向けられるほど、礼を尽くせる謙虚さを持つのだ、いずれはより成長し、アシャの隣にこそ相応しいと認められるだろう。
ホントウニ?
「当たり前よ!」
ああ、確かに傲慢が過ぎた。それは認めよう。けれど、アシャは幸せになるべきだし、それを満たすのはユーノではない。そう、ひょっとしたらリディノではないかも知れないが、きっと、絶対、ユーノとではない。
(だって)
だって、あんな。
(汚い、肌を、アシャが、抱く、なんて)
ああ、とどこかで深く嘆く声が漏れた。大気の中に溶け込んだ、荘厳な気配が面を伏せて立ち上がる。そうしてみると、その気配は人の辿り着かぬ高みから降りてきて、リディノの側に守るようにしゃがみ込んで寄り添っていてくれたのだろう。だが、今。
「…あ」
リディノは微かに体を震わせた。
「何…かしら…」
ふいに寒くなった。風が強くなったのか、日が陰ってしまったのか。
体を抱えて唇を噛む。立ち去った気配を無意識に追うようにくるくると周囲を見渡すが、寒さは続く、まるでリディノを諌めるように。
けれど、リディノは激しく首を振った。唇を噛み締めたまま、体を抱いた手を解き、合わせて強く握りしめる。
(アシャ兄さま)
すがりつく、ただ一つの拠り所たる、その名前に。
(アシャ兄さま……どうかご無事でいらして)
寄り添う姿を考えない、胸の中で塗り潰す、真っ黒に、無意識に、存在しないものとして。
(一刻も早く、戻っていらして……私の、アシャ)
「怖い顔をなさっておいでだ」
「っ!!」
突然響いた声にリディノはぎょっとした。
ベランダの白い手すりを隔てて、花苑の中に一人の男が立っていた。
金の髪を首の中ほどまでで切り、前髪は垂らして眉辺りで揃えている。深緑のどこか皮肉をたたえた瞳は、微かな笑みを浮かべてリディノを見つめている。
(来い、無防備で愚かな姫君よ)
自分の容貌はリディノの好みを満たすと知っている。
「あなたは…」
誰何しかけたリディノは、こちらの腰に光る飾り用の短剣としか見えぬ黄金の剣に気づいて、名を思い出したようだ。
「ジュナ・グラティアス様…」
訝りながら、リディノはそれでもジュナから目を離さない。警戒の色を強める様子もない。
「覚えておいでか、それは結構」
ジュナは薄い笑みを唇に広げ、大胆な足取りでリディノに歩み寄った。
「察するところ、恋の病……違いますか?」
遠慮のない物言いは、姫君育ちのリディノにとってむしろ新鮮だろう。同時に投げた熱の籠った眼差しは、リディノにしてみれば見知ったものなのだろう、当然のように笑み返してくるのに、ことばを重ねる。
「しかし、あなたほどの方に悩ませるとは、幸せな男もいたものだ。届かぬ想いならば、私が代わりを務めたいぐらいだが……お呼びではないでしょうな」
ちらり、と光を跳ねる前髪の隙から、上目遣いに見つめてみせた。
「ま…」
リディノの頬が見る見る薄紅に染まる。
「からかわれては困ります、ジュナ様」
視察官(オペ)は確かにラズーンの臣下に過ぎないが、『太皇(スーグ)』直属であり、ラズーンにとっては四大公に劣らず重要な役職とリディノは知っている。アシャ不在の今、心細い想いをしている彼女にしてみれば、自分を恋い慕う男の視線は誘惑的だろう。
軽く膨れてみせながら、リディノの表情が見る見る晴れやかになる。
「からかいなどしていない」
ジュナはゆっくりとリディノとの距離を詰めた。ベランダを挟んで僅かに見上げ、うやうやしく言い募る。
「ただ、私のようなものでも、あなたの役に立てることがあるかも知れない、そう思ったに過ぎません」
小さく吐息をついて、気持ちを切り替えたようににっこりと笑った。
「医術師としての、この腕を」
「医術師……?」
リディノはゆっくりと瞬きした。思わぬ方向に転がり始めた会話を、訝しみながらも興味をそそられている様子だ。
「ええ」
ジュナは微笑んだまま黙った。
穏やかな陽射し、静かで明るい光、甘く柔らかい花の薫り、目を見張る無邪気な少女。全てが平和で優しく……生ぬるい。
「…どういうことですの…?」
我慢できなくなったのはリディノの方だった。
「……」
ジュナは無言のまま、懐から小瓶を取り出した。水晶を細工した、掌に握り込めるほどの薄紫の瓶、割れないように古びた茶色の縄をほぐして編まれた網に包まれている。その動きの一つ一つをリディノが見つめているのを十分に意識しつつ、笑みを深めた。
「視察官(オペ)はご存知の通り、ラズーン支配下(ロダ)を旅から旅をして歩きます。その間に、諸国のいろいろな秘薬にも巡り逢うものです。これは、その中の一つ……無味無臭の、恋の薬」
「恋の……?」
「俗に媚薬、とも呼ばれます」
「…」
こくり、とリディノが唾を呑み込んだ。
なるほど年頃の娘らしく、大公の姫君とは言え、媚薬が何を意味するものかは察するらしい。
「これを一滴、恋しい人の食べ物の中に混ぜるのです。その前に、最低一晩は、小瓶に向かって特別な祈りを唱えなくてはなりませんが」
その祈りの文句もここにありますよ、と、これもまた古びた布切れに書き付けられたものを取り出した。
リディノは小瓶を見、布を見、もう一度ジュナを見て唇を開いた。
「でも……」
問われるのは、人の心を薬で操っていいのかという疑問か、それとも、呑ませた相手の命に別状はないのかということか。もちろん、それについても答えはちゃんと準備してある。
身構えたジュナに、リディノは不安そうな顔で続けた。
「そんなことが……できるのでしょうか」
(おやおや)
ジュナは胸の内でほくそ笑む。どうやら今のリディノには信義や良心というものは、守るべきものではなくなりつつあるらしい。
「ありえないとおっしゃるのですか?」
ジュナは驚いた顔を拵えた。
「ラズーン支配下(ロダ)には未開の土地もあります。リディノ姫のご存知ないことも山ほどあります」
そうそう、とジュナは思い出したように旅の話を始めた。風が荒れ狂う極寒の地を群れ飛ぶエフィンガという鼠のこと。大きな湖に浮いたり潜ったりして一生を終えるごぶごぶ魚。乾いた砂漠の上をダフダフと声を発しながら転がっていく草のような昆虫、バグット。
「それに山岳地帯には、道に沿って細長く体を伸ばして生きている蛇の…」
「…ジュナ様」
「またそいつと来たら、尖った角を持っていまして」
苛立ったように声をかけてくるリディノに気づかぬように、楽しくことばを継ぐ。
「この角を密かに集めてすり潰し乾かしたものが」
「ジュナ様!」
リディノのきらきら光る瞳を見返しながらぽつりと告げる。
「至上の媚薬となるのですよ」
「…っ」
リディノがようやく自分がベランダを越えるほどに身を乗り出して、ジュナの話を遮ろうとしていたのに気づき、慌てて体を引いた。それを追うことなく、いや逆に僅かにこちらも身を引いて、ジュナは口を開く。
「身持ちの固い男がおりましたよ、妻一人しか愛さぬと言い切って、二十年確かにそれを守った男が。しかし、ある夜に出逢った一人の娘に、そっと酒を勧められて、翌日娘と二人、新たな人生に旅立ってしまいました。そしてまた、ずっと幼い頃から言い交わした幼なじみと明日は祝言というその夜に、雫が垂らされたスープを飲み干したために、村を離れて一度会っただけの少女を追いかけた男もいましたな」
「………」
リディノがジュナのことばを食い入るように聞いているのを確かめて、ジュナはまた小さく溜め息をついて目を伏せ、首を振った。
「……まあ、あなたに信じて頂けないのなら仕方ありません。恥ずかしながら、私は実はあなたに焦がれていた」
「……」
「けれど、あなたが悩まれているのに耐えられず、愚かな口出しをしたまでのこと……それでは」
ジュナは未練たっぷりに小瓶を懐へ片付けかけた、その途端。
「待って、待って下さいな」
リディノが思い詰めた声で引き止めた。
「試させて……試させてはもらえませんか、ジュナ様」
「……そうでしょうな」
如何にもがっかりした顔で頷いてみせる。
「恋する方には、他の者の気持ちなぞ、知らぬことだと言う訳だ」
「……ごめん、なさい…」
リディノは小さな声で謝った。困惑している、けれど、満更困ってばかりでもない、密かに自分に捧げられた忠誠に満足したような顔だ。
胸元で握りしめられた小さな手に向けて、ジュナは静かに小瓶を差し出した。はっとしたようにリディノが手を開き、おそるおそるベランダを越えて手を伸ばす。
「では、リディノ姫、これをあなたに差し上げましょう。その代わり、どうか、哀れと思って、私が渡したなどと口外されぬようにお願いいたします」
何せ、私の恋心は多少周囲にも知れていること、その恋を貫くこともなく、あなたの恋を満たしたなどと嘲笑われるのも辛いので、と付け加える。
「わかっています」
リディノは厳しい顔で頷いて、ジュナの手から小瓶を受け取った。両手に囲い、握りしめる。まるで炎の欠片を包んだように、苦しげな顔が一瞬リディノの面を過ったが、続いたジュナのことばにあっさりと流れ去った。
「もう一つ、私に御手をお許し下さい」
それが、私があなたに望む唯一の報償ですので。
「……はい」
リディノは小瓶を握った手を引きつけ、もう片方の手を差し伸べた。押し頂くように受け取り、汗ばんだ手の甲に唇をつける。ぴくりと震えたリディノの手は冷たく、今にも死にかけている小動物のように儚げだった。
「では…お気をつけて」
「……ありがとう、ジュナ」
呟くように名前を呼び捨てて走り去るリディノは、もうジュナを振り返らない。確信しているのだ、崇拝者が自分を裏切ることなどないと。思い込んでいるのだ、ジュナが彼女の前にひれ伏していると。
もし、ほんの一瞬、リディノの中に正気が目覚めて、たったもう一度だけジュナを振り返ったのなら、見えただろう、ジュナの顔に浮かんだ奇妙な笑みが。とても彼女を敬愛しているとは思えない、その侮蔑の気配が。
そうして、手にしている小瓶を急いで棄てただろう、中身がジュナの約束したような甘やかな未来をもたらすことはないと気づいて。いや、リディノが本来のリディノであったのなら、そもそもジュナのことばになど耳を貸さなかっただろう。小瓶も受け取らなかっただろう。
けれど、リディノは振り返らない。
小瓶を固く握りしめ、いつどのようにアシャの食べ物の中に混ぜればよいか、どうすればアシャに気づかれずに雫を加えることができるか、それだけを必死に考えながら足を速めている。
「可愛らしい姫君」
ジュナは呟いた。
「愛らしく、幼く……醜い姫君」
唇を吊り上げる。
彼女はいつか知るのだろうか、その道なりに寝そべる蛇の名を。
ジノを下がらせ、そのままずっとベランダで花苑を見つめていたリディノは、ようやく深く重い溜め息を吐き出した。
(自分が、わからない)
風が舞う。
風にブーコが巻かれて舞い飛んで行く。
金の花粉が渦を描いて空間に鮮やかな紋様を作り上げる。
その風は、ベランダのリディノの髪を梳き、ドレスを靡かせ、心の奥まで吹き込んで来て、彼女が見たくないものまで、沈殿していた細かな粒子を湧き上がらせるように、舞い上がらせていく。
(アシャ兄さま……アシャ…アシャ・ラズーン……)
想い人は今窮地のただ中に居る。案じないと言えば嘘になる。だがしかし、それよりもなお強く、リディノの心を揺さぶり続けている一つの想いがある。
(ユーノ……ユーナ・セレディス……セレドの第二皇女……アシャ兄さまの……想い人…)
胸の中で呟いた途端、傷から血が滲むようにじわりじわりと広がっていく想い、どす黒く濁って腐臭を放つかのような想いを、リディノは正視できなかった、今の今までは。
何がきっかけだったのだろう。通り過ぎ、行き過ぎ、無視し、振り返ることもなく突き放してきたその想いは、今や次第に避けようもなく、闇の悪夢から立ち上がってくる魔鬼の姿のように、リディノの前に迫りつつあった。
(ユーノ・セレディス……ユーノは今、兄さまとともに居る…)
私の、アシャ兄さまと。
(共に同じ夜を過ごし、共に同じ食卓につき……そして、共に同じものを見て、お互いに顔を見合わせ、笑う)
そして、二人は何を育てていくのか。
(……敵地に二人……兄さまの命とユーノの命……)
風がふいに荒々しく、耳元を吹き抜け髪を乱す。そこから響く微かな声が、リディノの胸でぽとりと真っ黒の染みを落とす。
(一人しか助からないのなら……アシャ兄さまが助かるなら……)
、の命を代償にすればいいのに。
(きっと望むはず)
、が戻るより、アシャ兄さまが戻る方がいいと。
(どちらか一人というならば)
ユーノ、など帰ってこなくてもいい。
「っ」
耳元で言い切ったその声に、リディノはどきりとして慌てて首を振った。
「違うわ、そうじゃない、そうじゃないのよ」
誰にするともない弁解を口にする。
「そんな意味じゃない……だって、アシャは……アシャは……正当後継者だもの…」
ラズーンにとって、世界にとって、どちらが貴重かと言うならば、誰が考えても同じだろう。ラズーンを負う正当後継者と、世界の片隅の辺境の皇女、しかも継承権を持つ訳でもない、『二番目』にしか価値のない姫君。
「セレドには、レアナが居るわ……セアラという第三皇女も居るのでしょう…?」
リディノは見えない相手と交渉を続けている。それはここ数日、ずっと続けている終わりのない、心身の疲れる、苦しくて虚しい闘いだった。
「たとえ、が死んでも、大丈夫だわ、セレドは続くわ。たとえセレドの君主が変わっても、大丈夫だわ、ラズーンは被害を受けない、だって小国ですもの、ラズーンの運命を握る国ではないもの」
リディノ。
遠く遥かな高みから、優しく厳しい声がする。
「アシャの方が大事よ、命としてはずっと重いわ、そうでしょう?」
リディノ。
近づいてくる、静かで穏やかで、なのにきららかな姿のものが。
「それに、ユーノのあの傷……そうよ、本当はもっと前に死んでいてもおかしくないほどの傷だった。これまで生きて来れたのは、きっとアシャ兄さまが庇ったからよ。アシャ兄さまが助けてきたから。だから、その代償は必ず払うべきものなのよ」
あなたは何を言おうとしているの、リディノ。
内側から響くのか、外側から投げかけられるのか、その存在の問いかけはリディノの肌を粟立たせた。
「第一、あの傷、そうよ、あの傷をアシャ兄さまはご存知なのかしら。いえきっと、ご存知じゃないわよね、もし知っておられたら、あんなに優しくできないわ、だって、何をやってあんな傷を受けるって言うの、女なのに、一国の姫なのに……いえ……ほんとに……姫なのかしら……アシャ兄さまは騙されているのではない…?」
リディ。
「っ」
聞こえたのはユーノの声だった。
「、黙って…っ!」
悲鳴に近い自分の声が響き渡る。耳を押さえて目を閉じる。
疲れていた。ずっとずっと戦い続けて、リディノは芯から疲れていた。
こんな闘いをしたことはなかった。ミダス公に愛され、ジノに守られ、人を愛すること、いとしむことにかけて、自分ほど優れた者はいないと思っていた。どれほど酷い境遇の者でも目を背けず憐れむことができたし、病んだ老人や怪我をした子どもに近寄ることも佇むこともできる彼女を、人は『春の女神』と呼んで讃えてくれた。
リディノは優しい。リディノは愛深い。
誰もがそう口にする。リディノはまさにその賛辞に相応しいと確信していた、疑ったことさえなかった。
愛情溢れる麗しい娘には、美しく端麗な騎士が寄り添うものだろう?
心優しく思いやり豊かな女は、その宝を護り抜く力強く才気に満ちた男が包むものだろう?
確かに今はまだ、リディノはいろいろとアシャに及ばないところがあるのだろう。そこまで自惚れているつもりはない。
しかし、ラズーンの姫だ。ミダス公領地を受け継ぐ娘だ。ましてや、夜会に出れば吐息を浴びる存在なのに、跪く者一人一人に笑顔を向けられるほど、礼を尽くせる謙虚さを持つのだ、いずれはより成長し、アシャの隣にこそ相応しいと認められるだろう。
ホントウニ?
「当たり前よ!」
ああ、確かに傲慢が過ぎた。それは認めよう。けれど、アシャは幸せになるべきだし、それを満たすのはユーノではない。そう、ひょっとしたらリディノではないかも知れないが、きっと、絶対、ユーノとではない。
(だって)
だって、あんな。
(汚い、肌を、アシャが、抱く、なんて)
ああ、とどこかで深く嘆く声が漏れた。大気の中に溶け込んだ、荘厳な気配が面を伏せて立ち上がる。そうしてみると、その気配は人の辿り着かぬ高みから降りてきて、リディノの側に守るようにしゃがみ込んで寄り添っていてくれたのだろう。だが、今。
「…あ」
リディノは微かに体を震わせた。
「何…かしら…」
ふいに寒くなった。風が強くなったのか、日が陰ってしまったのか。
体を抱えて唇を噛む。立ち去った気配を無意識に追うようにくるくると周囲を見渡すが、寒さは続く、まるでリディノを諌めるように。
けれど、リディノは激しく首を振った。唇を噛み締めたまま、体を抱いた手を解き、合わせて強く握りしめる。
(アシャ兄さま)
すがりつく、ただ一つの拠り所たる、その名前に。
(アシャ兄さま……どうかご無事でいらして)
寄り添う姿を考えない、胸の中で塗り潰す、真っ黒に、無意識に、存在しないものとして。
(一刻も早く、戻っていらして……私の、アシャ)
「怖い顔をなさっておいでだ」
「っ!!」
突然響いた声にリディノはぎょっとした。
ベランダの白い手すりを隔てて、花苑の中に一人の男が立っていた。
金の髪を首の中ほどまでで切り、前髪は垂らして眉辺りで揃えている。深緑のどこか皮肉をたたえた瞳は、微かな笑みを浮かべてリディノを見つめている。
(来い、無防備で愚かな姫君よ)
自分の容貌はリディノの好みを満たすと知っている。
「あなたは…」
誰何しかけたリディノは、こちらの腰に光る飾り用の短剣としか見えぬ黄金の剣に気づいて、名を思い出したようだ。
「ジュナ・グラティアス様…」
訝りながら、リディノはそれでもジュナから目を離さない。警戒の色を強める様子もない。
「覚えておいでか、それは結構」
ジュナは薄い笑みを唇に広げ、大胆な足取りでリディノに歩み寄った。
「察するところ、恋の病……違いますか?」
遠慮のない物言いは、姫君育ちのリディノにとってむしろ新鮮だろう。同時に投げた熱の籠った眼差しは、リディノにしてみれば見知ったものなのだろう、当然のように笑み返してくるのに、ことばを重ねる。
「しかし、あなたほどの方に悩ませるとは、幸せな男もいたものだ。届かぬ想いならば、私が代わりを務めたいぐらいだが……お呼びではないでしょうな」
ちらり、と光を跳ねる前髪の隙から、上目遣いに見つめてみせた。
「ま…」
リディノの頬が見る見る薄紅に染まる。
「からかわれては困ります、ジュナ様」
視察官(オペ)は確かにラズーンの臣下に過ぎないが、『太皇(スーグ)』直属であり、ラズーンにとっては四大公に劣らず重要な役職とリディノは知っている。アシャ不在の今、心細い想いをしている彼女にしてみれば、自分を恋い慕う男の視線は誘惑的だろう。
軽く膨れてみせながら、リディノの表情が見る見る晴れやかになる。
「からかいなどしていない」
ジュナはゆっくりとリディノとの距離を詰めた。ベランダを挟んで僅かに見上げ、うやうやしく言い募る。
「ただ、私のようなものでも、あなたの役に立てることがあるかも知れない、そう思ったに過ぎません」
小さく吐息をついて、気持ちを切り替えたようににっこりと笑った。
「医術師としての、この腕を」
「医術師……?」
リディノはゆっくりと瞬きした。思わぬ方向に転がり始めた会話を、訝しみながらも興味をそそられている様子だ。
「ええ」
ジュナは微笑んだまま黙った。
穏やかな陽射し、静かで明るい光、甘く柔らかい花の薫り、目を見張る無邪気な少女。全てが平和で優しく……生ぬるい。
「…どういうことですの…?」
我慢できなくなったのはリディノの方だった。
「……」
ジュナは無言のまま、懐から小瓶を取り出した。水晶を細工した、掌に握り込めるほどの薄紫の瓶、割れないように古びた茶色の縄をほぐして編まれた網に包まれている。その動きの一つ一つをリディノが見つめているのを十分に意識しつつ、笑みを深めた。
「視察官(オペ)はご存知の通り、ラズーン支配下(ロダ)を旅から旅をして歩きます。その間に、諸国のいろいろな秘薬にも巡り逢うものです。これは、その中の一つ……無味無臭の、恋の薬」
「恋の……?」
「俗に媚薬、とも呼ばれます」
「…」
こくり、とリディノが唾を呑み込んだ。
なるほど年頃の娘らしく、大公の姫君とは言え、媚薬が何を意味するものかは察するらしい。
「これを一滴、恋しい人の食べ物の中に混ぜるのです。その前に、最低一晩は、小瓶に向かって特別な祈りを唱えなくてはなりませんが」
その祈りの文句もここにありますよ、と、これもまた古びた布切れに書き付けられたものを取り出した。
リディノは小瓶を見、布を見、もう一度ジュナを見て唇を開いた。
「でも……」
問われるのは、人の心を薬で操っていいのかという疑問か、それとも、呑ませた相手の命に別状はないのかということか。もちろん、それについても答えはちゃんと準備してある。
身構えたジュナに、リディノは不安そうな顔で続けた。
「そんなことが……できるのでしょうか」
(おやおや)
ジュナは胸の内でほくそ笑む。どうやら今のリディノには信義や良心というものは、守るべきものではなくなりつつあるらしい。
「ありえないとおっしゃるのですか?」
ジュナは驚いた顔を拵えた。
「ラズーン支配下(ロダ)には未開の土地もあります。リディノ姫のご存知ないことも山ほどあります」
そうそう、とジュナは思い出したように旅の話を始めた。風が荒れ狂う極寒の地を群れ飛ぶエフィンガという鼠のこと。大きな湖に浮いたり潜ったりして一生を終えるごぶごぶ魚。乾いた砂漠の上をダフダフと声を発しながら転がっていく草のような昆虫、バグット。
「それに山岳地帯には、道に沿って細長く体を伸ばして生きている蛇の…」
「…ジュナ様」
「またそいつと来たら、尖った角を持っていまして」
苛立ったように声をかけてくるリディノに気づかぬように、楽しくことばを継ぐ。
「この角を密かに集めてすり潰し乾かしたものが」
「ジュナ様!」
リディノのきらきら光る瞳を見返しながらぽつりと告げる。
「至上の媚薬となるのですよ」
「…っ」
リディノがようやく自分がベランダを越えるほどに身を乗り出して、ジュナの話を遮ろうとしていたのに気づき、慌てて体を引いた。それを追うことなく、いや逆に僅かにこちらも身を引いて、ジュナは口を開く。
「身持ちの固い男がおりましたよ、妻一人しか愛さぬと言い切って、二十年確かにそれを守った男が。しかし、ある夜に出逢った一人の娘に、そっと酒を勧められて、翌日娘と二人、新たな人生に旅立ってしまいました。そしてまた、ずっと幼い頃から言い交わした幼なじみと明日は祝言というその夜に、雫が垂らされたスープを飲み干したために、村を離れて一度会っただけの少女を追いかけた男もいましたな」
「………」
リディノがジュナのことばを食い入るように聞いているのを確かめて、ジュナはまた小さく溜め息をついて目を伏せ、首を振った。
「……まあ、あなたに信じて頂けないのなら仕方ありません。恥ずかしながら、私は実はあなたに焦がれていた」
「……」
「けれど、あなたが悩まれているのに耐えられず、愚かな口出しをしたまでのこと……それでは」
ジュナは未練たっぷりに小瓶を懐へ片付けかけた、その途端。
「待って、待って下さいな」
リディノが思い詰めた声で引き止めた。
「試させて……試させてはもらえませんか、ジュナ様」
「……そうでしょうな」
如何にもがっかりした顔で頷いてみせる。
「恋する方には、他の者の気持ちなぞ、知らぬことだと言う訳だ」
「……ごめん、なさい…」
リディノは小さな声で謝った。困惑している、けれど、満更困ってばかりでもない、密かに自分に捧げられた忠誠に満足したような顔だ。
胸元で握りしめられた小さな手に向けて、ジュナは静かに小瓶を差し出した。はっとしたようにリディノが手を開き、おそるおそるベランダを越えて手を伸ばす。
「では、リディノ姫、これをあなたに差し上げましょう。その代わり、どうか、哀れと思って、私が渡したなどと口外されぬようにお願いいたします」
何せ、私の恋心は多少周囲にも知れていること、その恋を貫くこともなく、あなたの恋を満たしたなどと嘲笑われるのも辛いので、と付け加える。
「わかっています」
リディノは厳しい顔で頷いて、ジュナの手から小瓶を受け取った。両手に囲い、握りしめる。まるで炎の欠片を包んだように、苦しげな顔が一瞬リディノの面を過ったが、続いたジュナのことばにあっさりと流れ去った。
「もう一つ、私に御手をお許し下さい」
それが、私があなたに望む唯一の報償ですので。
「……はい」
リディノは小瓶を握った手を引きつけ、もう片方の手を差し伸べた。押し頂くように受け取り、汗ばんだ手の甲に唇をつける。ぴくりと震えたリディノの手は冷たく、今にも死にかけている小動物のように儚げだった。
「では…お気をつけて」
「……ありがとう、ジュナ」
呟くように名前を呼び捨てて走り去るリディノは、もうジュナを振り返らない。確信しているのだ、崇拝者が自分を裏切ることなどないと。思い込んでいるのだ、ジュナが彼女の前にひれ伏していると。
もし、ほんの一瞬、リディノの中に正気が目覚めて、たったもう一度だけジュナを振り返ったのなら、見えただろう、ジュナの顔に浮かんだ奇妙な笑みが。とても彼女を敬愛しているとは思えない、その侮蔑の気配が。
そうして、手にしている小瓶を急いで棄てただろう、中身がジュナの約束したような甘やかな未来をもたらすことはないと気づいて。いや、リディノが本来のリディノであったのなら、そもそもジュナのことばになど耳を貸さなかっただろう。小瓶も受け取らなかっただろう。
けれど、リディノは振り返らない。
小瓶を固く握りしめ、いつどのようにアシャの食べ物の中に混ぜればよいか、どうすればアシャに気づかれずに雫を加えることができるか、それだけを必死に考えながら足を速めている。
「可愛らしい姫君」
ジュナは呟いた。
「愛らしく、幼く……醜い姫君」
唇を吊り上げる。
彼女はいつか知るのだろうか、その道なりに寝そべる蛇の名を。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
あなたの片想いを聞いてしまった夜
柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」
公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。
政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。
しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。
「好きな人がいる。……片想いなんだ」
名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる