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・抜き打ちテスト

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 「皆さん、今日は金曜日です。明日から二日間学校はお休みですね?」
 先生の言葉に生徒達は嫌な予感がした。
 土日が休みなのは当たり前なことで、そんなことをわざわざ冒頭に話すのには何かワケがあるのだと、子供ながらに推測したのだ。
 「来週の月曜日から金曜日の間に抜き打ちテストをします!」
 クラス中からブーイングの嵐が巻き起こった。

 「先生! 何曜日にテストをするんですか?」クラスの真面目な女子が質問する。
 「それは秘密です。言ったら抜き打ちテストにならないでしょ?」
 それはそうだと生徒達は口をつぐむ。しかし、皆んなは困ってしまう。
 放課後、この由々しき事態に対処すべく、クラスメイト全員での話し合いが始まった。

 「おい! みんなどうする?」
 「やっぱり勉強するしかないのかなぁ」
 「そんなぁ、土日はいっぱい遊びたいよ」
 「ワタシだって! 家族で旅行に行く予定なのに!」
 「土日はとにかく遊んで、月曜日に勉強するのはどうだ?」
 「それだと月曜日がテスト日だった場合に対応出来ないだろ」

 生徒達は教室で額を突き合わせて議論するが、なかなか答えはでない。時間だけが無為に過ぎていく。
 
 「まずいぞ、もう直ぐ下校時間になっちゃう」
 「そうだ! アッくんはどう思う?」
 誰かが言った。
 「そうだよ! 我がクラスのブレインであるアッくんの意見を聞きたい」

 皆の注目がアッくんの元に集まった。
 アッくんは眉間に手を当て何かを思案しているようだった。

 程なくして、アッくんは口を開いた。

 「僕の理論が正しければ、先生はそもそも抜き打ちテストをすることが出来ない」
 「なんだって!? そんなことがあり得るのか!?」
 「あぁ……今から説明しよう」
 アッくんは皆んなに自らの考えを話し始める。その大胆かつ合理的な理論に、クラス全員が拍手喝采した。

 「なるほど! 確かに先生が抜き打ちテストをすることは不可能だ!」
 「これで遊べるぞ!」
 「流石アッくん!」
 「目から鱗だわ!」
 「よっ! 麒麟児!!」

 クラスの皆んなは安心して土日を満喫することができたのだった。

 そして抜き打ちテストは月曜日に行われ、全員赤点を取った。

 なぜアッくんは抜き打ちテストが不可能だと考えたのだろう。
 ↓解説は次ページで











【解説】
 アッくんはこう考えた。
 まず、金曜に抜き打ちテストは出来ない。何故なら、木曜が終わった時点で明日がテスト日だとバレてしまうから
 同じく、木曜にも抜き打ちテストは出来ない。金曜にテストはあり得ないのだから水曜日が終わった時点で木曜がテスト日だとバレてしまう。
 同じ理由でやはり水曜にもテストは出来ない……。
 これを月曜まで繰り返していくと、結局抜き打ちテストが出来る曜日は存在しないことになる。

 

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