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・山小屋の夜
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俺は身体を限界まで縮こまらせてその場に座り込んでいた。それが今俺に出来る唯一の行動だった。
疲労で重くなった体を壁に預け、体育座りの体勢になる。
山小屋の中、木の板一枚を隔てた向こう側は猛吹雪だ。
灯りのない、真っ暗な小屋の中で、今までに感じた事のない恐怖を味わっていた。しかし、それは他のみんなも同じだろう。
今は見えないが、この部屋の四隅には、俺を含む四人がそれぞれ座っている。
俺たちは大学の登山サークルに所属する仲間だ。
昨日から雪山登山に臨んでおり、難易度の高い山を無事踏破、喜びと共に下山していた最中だった。突然天候が激変し視界を真っ白に覆うまでは……。
視覚を遮断された俺たちは、正規のルートから外れてしまい、なんとか一つ前の休憩用の小屋に戻ってきたのだ。
しかし、小屋といっても常備されているものは何もなく、灯りや暖房器具の類も見当たらなかった。
絶体絶命。まさにそんな状況だ。
俺は絶望感に打ちひしがれながらも迫りくる睡魔に負けそうになっていた。
「おいっ、寝るな! 死ぬぞ!」
白川が俺の肩を叩いた。
「はっ! すまない。もうローテーションの時間か」
俺たちは朝まで起きておく為に、部屋の四隅にそれぞれ座り、一時毎に右隣の奴を起こしに周るというルールを定めた。こうすることでお互いに覚醒を促し、移動で体を動かすことで睡魔を払うというわけだ。
「ありがとうな白川」
「気にするな」
そう言う白川も、暗くて顔は見えないが、声に疲労の色が感じられた。
俺が居た場所には白川が座り、今度は俺が右隣の奴を起こしに行く。そうやってグルグルとローテーションを組んでいるのだ。
俺は這いずるようにして、何とか右隣の角にやって来た。俺と同様、体育座りのような体制で人影が蹲っている。
確か、俺の右に座ってたのは山田だったな。
「山田! おいっ、時間だぞ!」
俺は山田の肩をバシバシと叩いた。
すると、山田は無言でモソモソと右端へ向かって這っていった。
きっとあいつも相当疲れているんだろうな。無理もない。
そういえば、これでローテーションが一周したことになる。つまりかれこれ四時間が経過したということか。
夜明けまでもうすぐだ。もう少しの辛抱なんだ。俺は自分に言い聞かせた。
こうして、長い長い夜が明けた。
幸いにも翌朝には天候が回復し、俺たちが小屋を出る頃には近くまで救助隊が来てくれていた。
俺たちは助かったのだ。四人とも抱き合って涙を流し、自らの命がある事に感謝した。
俺は家に帰り、山小屋での出来事を冷静に思い返していた。
何かモヤモヤするのだ。何か忘れているような、見落としているような気がしてならない。
俺は考えた。そして、それに気付いた時俺は戦慄した。
「何故俺たちは生きているんだ……」
【解説】
四人ではこのローテーションは成立しない。
三番目に起こされた人の右隣は最初に移動しているので無人のはずである。
主人公はいったい誰の肩を叩いたのか……
疲労で重くなった体を壁に預け、体育座りの体勢になる。
山小屋の中、木の板一枚を隔てた向こう側は猛吹雪だ。
灯りのない、真っ暗な小屋の中で、今までに感じた事のない恐怖を味わっていた。しかし、それは他のみんなも同じだろう。
今は見えないが、この部屋の四隅には、俺を含む四人がそれぞれ座っている。
俺たちは大学の登山サークルに所属する仲間だ。
昨日から雪山登山に臨んでおり、難易度の高い山を無事踏破、喜びと共に下山していた最中だった。突然天候が激変し視界を真っ白に覆うまでは……。
視覚を遮断された俺たちは、正規のルートから外れてしまい、なんとか一つ前の休憩用の小屋に戻ってきたのだ。
しかし、小屋といっても常備されているものは何もなく、灯りや暖房器具の類も見当たらなかった。
絶体絶命。まさにそんな状況だ。
俺は絶望感に打ちひしがれながらも迫りくる睡魔に負けそうになっていた。
「おいっ、寝るな! 死ぬぞ!」
白川が俺の肩を叩いた。
「はっ! すまない。もうローテーションの時間か」
俺たちは朝まで起きておく為に、部屋の四隅にそれぞれ座り、一時毎に右隣の奴を起こしに周るというルールを定めた。こうすることでお互いに覚醒を促し、移動で体を動かすことで睡魔を払うというわけだ。
「ありがとうな白川」
「気にするな」
そう言う白川も、暗くて顔は見えないが、声に疲労の色が感じられた。
俺が居た場所には白川が座り、今度は俺が右隣の奴を起こしに行く。そうやってグルグルとローテーションを組んでいるのだ。
俺は這いずるようにして、何とか右隣の角にやって来た。俺と同様、体育座りのような体制で人影が蹲っている。
確か、俺の右に座ってたのは山田だったな。
「山田! おいっ、時間だぞ!」
俺は山田の肩をバシバシと叩いた。
すると、山田は無言でモソモソと右端へ向かって這っていった。
きっとあいつも相当疲れているんだろうな。無理もない。
そういえば、これでローテーションが一周したことになる。つまりかれこれ四時間が経過したということか。
夜明けまでもうすぐだ。もう少しの辛抱なんだ。俺は自分に言い聞かせた。
こうして、長い長い夜が明けた。
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俺たちは助かったのだ。四人とも抱き合って涙を流し、自らの命がある事に感謝した。
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何かモヤモヤするのだ。何か忘れているような、見落としているような気がしてならない。
俺は考えた。そして、それに気付いた時俺は戦慄した。
「何故俺たちは生きているんだ……」
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四人ではこのローテーションは成立しない。
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