乙女ゲームのモブキャラから離脱してみせます。

沖城沙音

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10話 魔物

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今日はいよいよ聖女お披露目の日。
王都はお祭り騒ぎで朝から賑やかだ。

昨日は色々考えているうちにそのまま眠ってしまった。結局どこまで考えたんだっけ?

あ、ゲームの設定、多分一般人にはできないようなことをしてみようって思ったんだった。
なにがいいかな?

今日は聖女のお披露目もあって、王都は朝から賑やかだから、それに便乗して何かできたらいいな。

うーん。何かないかな?思いっきり暴れてみてもいいんだけど、モブでもそういう設定の人は居そうだしな……。

あ、大きい花火を打ち上げるとかは一般人には出来ないんじゃないかな?
おめでたい日だし、花火で盛り上げるのはどうだろう。

そういえばそもそも花火ってこの世界にあるのかな?
もしなければ、それこそ僕にしかできないってことだよね?

僕もできるかわからないけど、魔法が使える今なら花火を上げられる気がする!

とりあえず聞かないと!でも、もしなかったらなんで知ってるんだってなるよな……。
夢で見たことにすればいいか。

「お父さん。今日夢でさ、空に大きい花みたいなやつが咲いてたんだけど、あれは何だと思う?」
「大きい花?なんだろうな。お父さんはフランツの夢を見た訳ではないからな。」

「まぁそうだよね。なんか、ひゅーーどん!って鳴ったらキラキラしてたんだよなー。あ、待って。ちっちゃいのなら魔法で出来るかも!見てて!」

小さいけど指から花火成功!

「おぉ!すごい。きれいだね。こういう魔法は見たことないな。」
お父さんの反応からも、この世界には花火は無さそうかな?

「え!お兄ちゃん今の何?もう一回やって!」
あ、横から見てたのか。

「いいよ。これお兄ちゃんの夢に出てきたんだ。ジュリアンはこういうの見たことある?」
「ううん。ない!お兄ちゃんすごい!ねぇお母さん!見てみて!お兄ちゃんすごいよ!」

「ん?何やってたの?」
「指からぱーんってやるの!お兄ちゃんお母さんにも見せてあげて!」
「うん。こんな感じ。これよりもっと大きいんだけど、夢に出てきたんだ。こういうの知ってる?」

「あら、きれい。見たことはないわね。フランツ、新しい魔法作ったんじゃない?」
「えー!新しい魔法?お兄ちゃんすごい!」
「ありがとう。」

ジュリアンが自分のことのように喜んでいるのを横目に、ふとお父さんの方を見ると真剣な表情で何か考えているみたいだった。いや、気のせいかな?

よし!善は急げってことで、聖女お披露目の時が一番盛り上がりのピークだろうから、その時に一か八か特大の花火を上げてみよう!

もしこれが成功すれば、僕はゲームの設定から一歩離れられたってことになるよね?



聖女を一目見るため王宮の方まで向かったはいいが、人が多すぎてそこまで近づけなかった。
見えたとしても米粒程度だろうな。

お父さんは仕事なので、お母さんと僕とジュリアンで見に来たのだが、ジュリアンは人の多さに酔ったのか、僕の背中にしがみついて顔を伏せている。

「大丈夫か?ジュリアン。お兄ちゃん肩車しようか。」
「うん。」
少しでも高いところに顔が出れば気分も良くなるだろう。

色々式の挨拶が終わって、とうとう聖女お披露目の時がやってきた。
群衆は大盛り上がりで歓声をあげている。
そしてやっと聖女らしき人は出てきたはいいけど、やっぱり遠すぎてよく見えない。

ただよく見えなくてもみんな喜んでいて、それほど聖女は必要な存在なのだと実感する。
僕もこの盛り上がりに乗じて花火を打ち上げよう。

行けー!

空高く飛び立った花火は王宮の頂上を越えるくらいの高さまで上がって爆発した。

「うわー!今のってお兄ちゃんがやったの?すごい!朝のやつよりすごく大きいね!」

自分でやっておきながら、きれいだと思ってしまった。
ただ、空が明るかったのでそこまで輝いて見えなかったのは残念だ。

これが出来たって事は、僕は一般人という設定から一歩踏み出せたって事だよね?
そもそもそんな設定なのかは分からないけど、でも一般人はこんな事やらないもんね、普通。

僕には出来たんだと思うと、心にあったもやもやが少し晴れた気がする。

そう思ったのもつかの間、群衆の反応は違ったみたい。

「逃げろーー!!」

ドン!という音にびっくりしたのか、攻撃されていると勘違いしたらしく、パニックになっている。
みんながみんないろんな方向に押し合って逃げ惑っている。

そんなつもりはなかったのに、僕のせいで……どうしよう。
とりあえずお母さんとジュリアンと安全なところに移動しなきゃ。

「お母さん。大丈夫?」
「ええ。大丈夫。」
「とりあえず上に逃げよう。お母さんは飛べる?」
「飛んだことないわ。」

「分かった。じゃぁ僕に捕まって。ジュリアンも、おんぶにしよう。僕にぎゅっと捕まってて。」

お母さんの腰を引き寄せ、一気に上にジャンプする。
風の力を借りて、みんなが離れないようにコントロールをしながら。

上から群衆を見ると、群衆の中に何か居るようだった。

「あれは何?」

見た目はオオカミのようで銀色の毛で覆われている。みんな花火に驚いたのではなくあれに驚いていたのか。

え?目が合った。こちらを見ている?そんなことないよね……?
心なしかこちらに向かってきているようにも感じる。

「どうして……?」
お母さんは何か知っているのか?でも今はとにかく逃げないと。

飛んだまま人気のないところを見つけ地上に降りる。
「お母さんもジュリアンも大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ!僕空飛べて面白かった!」
「そっか。それは良かった。お母さんも大丈夫そう?」
「えぇ。ありがとう。」

「さっきの生き物は一体何だったんだろう。誰かのペットが暴れたのかな?」
いや、ゲームで見たことある。あれは魔物だ。
魔物の中では弱めでレベル上げの初期に散々倒した記憶がある。
でもあそこに居たって事は誰かと従者契約していたわけで、襲うようなことはない気がするけど……。

「フランツ。あれはシルバーウルフっていう魔物だと思うわ。」
やっぱりそうか。
「でもどうしてあんなことに。」

「おそらく騎士団の方が倒してくれると思うからそれまでは――」
「お母さん。あれって……」

何でこっちの方向に走ってくるんだ?僕らの周りに人はいない。っていうことは僕らが狙いって事?
何で?いや、そんなことどうでもいい。

お母さんとジュリアンは僕が守る。
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