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夢【下】
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(また、アズールスさんの夢……)
書斎で話した後、あれからアズールスとは顔を合わせていなかった。
アズールスは自室にこもったまま出てこなかったからだった。
そうして、その日の夜、柚子はまたアズールスの夢を見ていたのだった。
兄と呼ばれていた子供の頃のアズールスは、広い部屋の大きな部屋のベッドの上で、両足を抱えて泣いていた。
「う、うっ……。ぐずっ」
そこに、静かに部屋の扉を開けてマルゲリタが入って来た。
マルゲリタはアズールスが泣いているベッドまでやってくると、アズールスに目線を合わせるようにしゃがんだのだった。
「坊ちゃん……」
「マルゲリタ。僕はどうしたらいいんだ?」
「坊ちゃんは、これからも立派な人間になって下さい。旦那様の様に」
「けれども、お父様も、お母様も、弟妹達も、みんなみんな死んでしまった。僕には何も無いんだ」
マルゲリタは優しくアズールスの肩を抱いた。
どうやら、アズールスの家族はアズールスを残して死んでしまったらしい。
柚子の中にも、アズールスの悲しい気持ちで胸がいっぱいになった。
「坊ちゃん。坊ちゃんには、このマルゲリタがおります」
「でも! マルゲリタにはファミリアがいるじゃないか!? 僕には誰もいない。家族さえも……!」
「坊ちゃん……」
「みんな、お父様が死んで僕が屋敷の主人になると知ったら、僕が主人じゃ不安だと言って辞めていった。昨日は十二人、今日は十四人。明日は何人辞めるんだろう……」
そうして、アズールスは声を上げて泣き出した。
「僕は何も無いんだ! お金や身分があっても、僕は一人なんだ! 僕の家族は誰もいないんだ!」
その時、使用人の女性が扉から顔を出して、マルゲリタを手招いた。
マルゲリタはアズールスに断ると、女性の元にやってきた。柚子もアズールスからマルゲリタに意識を集中させたのだった。
「マルゲリタ。ファミリアちゃんが泣き出したわ。言ってあげて」
「さっき寝たと思ったのに……」
マルゲリタは困ったように、頬に片手を当てた。
「仕方がないわよ。ファミリアちゃんもお父さんを亡くして不安になっているのよ。旦那様達が乗っていた馬車の御者台に乗っていたんでしょう?」
「ええ。私が見送った時はそうだったわ」
ファミリアの父親は、アズールスの家族が乗っていた馬車の御者台に乗っており、アズールスの家族と一緒に亡くなったらしい。
そんな話を以前、マルゲリタから聞いた事を柚子は思い出した。
「それから、旦那様のご親族から、近々こちらに来たいって連絡があったそうよ。旦那様の遺産の分配について」
「もう? まだ葬儀だって終わっていないのに」
マルゲリタはため息を吐くと、ファミリアの様子を見に部屋を出て行った。
女性はしばらくアズールスを見ていたが、やがて困ったように「坊ちゃん。何かお水でも持ってきますね」と声を掛けると部屋を出て行ったのだった。
女性が去ってしばらくすると、アズールスは部屋から出て行った。
アズールスに続いて柚子が入ると、そこには二人用のベッドやソファーがあった。
大人ぽい高級感漂う家具から、アズールスの両親の部屋だろうと思った。
アズールスは壁に掛けられていたいくつかの家族の姿絵の内、先程、柚子が書斎で見つけた姿絵の前で立ち止まった。
それを壁から外すと、思いっきり床に叩きつけた。
額縁とガラスが割れる音が部屋に響いた。
アズールスはガラスで手を切る事も構わずに、姿絵を額縁から外すと両腕で胸の中にしっかりと抱きしめたのだった。
「僕も、みんなと一緒にいきたかった……」
気づくと、柚子の両目からは絶え間なく涙が溢れ落ちてきた。
やがて、割れた音で使用人がやって来るまで、アズールスはそのままでいたのだった。
書斎で話した後、あれからアズールスとは顔を合わせていなかった。
アズールスは自室にこもったまま出てこなかったからだった。
そうして、その日の夜、柚子はまたアズールスの夢を見ていたのだった。
兄と呼ばれていた子供の頃のアズールスは、広い部屋の大きな部屋のベッドの上で、両足を抱えて泣いていた。
「う、うっ……。ぐずっ」
そこに、静かに部屋の扉を開けてマルゲリタが入って来た。
マルゲリタはアズールスが泣いているベッドまでやってくると、アズールスに目線を合わせるようにしゃがんだのだった。
「坊ちゃん……」
「マルゲリタ。僕はどうしたらいいんだ?」
「坊ちゃんは、これからも立派な人間になって下さい。旦那様の様に」
「けれども、お父様も、お母様も、弟妹達も、みんなみんな死んでしまった。僕には何も無いんだ」
マルゲリタは優しくアズールスの肩を抱いた。
どうやら、アズールスの家族はアズールスを残して死んでしまったらしい。
柚子の中にも、アズールスの悲しい気持ちで胸がいっぱいになった。
「坊ちゃん。坊ちゃんには、このマルゲリタがおります」
「でも! マルゲリタにはファミリアがいるじゃないか!? 僕には誰もいない。家族さえも……!」
「坊ちゃん……」
「みんな、お父様が死んで僕が屋敷の主人になると知ったら、僕が主人じゃ不安だと言って辞めていった。昨日は十二人、今日は十四人。明日は何人辞めるんだろう……」
そうして、アズールスは声を上げて泣き出した。
「僕は何も無いんだ! お金や身分があっても、僕は一人なんだ! 僕の家族は誰もいないんだ!」
その時、使用人の女性が扉から顔を出して、マルゲリタを手招いた。
マルゲリタはアズールスに断ると、女性の元にやってきた。柚子もアズールスからマルゲリタに意識を集中させたのだった。
「マルゲリタ。ファミリアちゃんが泣き出したわ。言ってあげて」
「さっき寝たと思ったのに……」
マルゲリタは困ったように、頬に片手を当てた。
「仕方がないわよ。ファミリアちゃんもお父さんを亡くして不安になっているのよ。旦那様達が乗っていた馬車の御者台に乗っていたんでしょう?」
「ええ。私が見送った時はそうだったわ」
ファミリアの父親は、アズールスの家族が乗っていた馬車の御者台に乗っており、アズールスの家族と一緒に亡くなったらしい。
そんな話を以前、マルゲリタから聞いた事を柚子は思い出した。
「それから、旦那様のご親族から、近々こちらに来たいって連絡があったそうよ。旦那様の遺産の分配について」
「もう? まだ葬儀だって終わっていないのに」
マルゲリタはため息を吐くと、ファミリアの様子を見に部屋を出て行った。
女性はしばらくアズールスを見ていたが、やがて困ったように「坊ちゃん。何かお水でも持ってきますね」と声を掛けると部屋を出て行ったのだった。
女性が去ってしばらくすると、アズールスは部屋から出て行った。
アズールスに続いて柚子が入ると、そこには二人用のベッドやソファーがあった。
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アズールスは壁に掛けられていたいくつかの家族の姿絵の内、先程、柚子が書斎で見つけた姿絵の前で立ち止まった。
それを壁から外すと、思いっきり床に叩きつけた。
額縁とガラスが割れる音が部屋に響いた。
アズールスはガラスで手を切る事も構わずに、姿絵を額縁から外すと両腕で胸の中にしっかりと抱きしめたのだった。
「僕も、みんなと一緒にいきたかった……」
気づくと、柚子の両目からは絶え間なく涙が溢れ落ちてきた。
やがて、割れた音で使用人がやって来るまで、アズールスはそのままでいたのだった。
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