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夫婦らしく【中】・2
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「決まったか?」
向かいであちこちメニュー表を捲っているアリーシャに声を掛ける。
「迷ってしまいますね……。パフェも美味しそうですが、ケーキも良さそうで」
「う~ん」と唸りながら真剣な顔で悩むアリーシャに、小さく相好を崩すと提案する。
「気になるなら、どっちも頼めばいい」
「でも、そんなに頼むのも……」
「ケーキは俺が頼もう。コーヒーとセットにすると、得らしいしな」
メニュー表には、単品でケーキを頼むよりも、コーヒーとセットで注文した方がお得だと書かれていた。
「好きなケーキを選ぶといい」
「オルキデア様はいいんですか?」
「甘いものはあまり得意じゃなくてな」
安心させるように頷くと、アリーシャはメニュー表を見せながら指差したのだった。
「じゃあ、これ……」
アリーシャの白く細い指先が示したのは、白いレアチーズケーキだった。
「決まりだな」
オルキデアが店員を呼ぶと、レアチーズケーキのコーヒーセットと、ポスターにも載っていたパフェとアリーシャが選んだ季節の紅茶ーーこの時期は、スイートポテトとマロンとパンプキンの紅茶らしい。と単品でサンドイッチを頼んだのだった。
少しして、飲み物と一緒に届いたのはレアチーズケーキだった。
運んでくれた店員が下がると、自分の前に置かれたケーキをアリーシャに差し出す。
「先に食べていいんですか?」
「先にどころか、全部食べていいぞ。甘い物は苦手なんだ」
「それで気にせず選べって言ったんですね」
合点がいったと言いたげなアリーシャからコーヒーに目線を移すと、オルキデアは口を付ける。程よい苦味と酸味が口の中に広がり、心地良い気持ちになる。
やはり、上質な豆を使っているらしい。
「でも、全部食べてしまうのも気が引けてしまいます。一口くらい、食べてみませんか?」
「一口でも、君が食べる分が減ってしまうがいいのか」
「私は大丈夫です。パフェもありますし」
三角形に切られたケーキの先をフォークで小さく切り分けると、アリーシャは差し出してくる。
「これくらいなら、どうですか?」
「まあ、それくらいなら」
アリーシャが差し出したフォークを受け取ろうと手を伸ばしかけたところで、ふと思い留まる。
(夫婦らしくか)
こういう時、新婚の夫婦ならどうするだろうと考える。
近くのテーブルを見ると、オルキデアたちと同年代くらいの若いカップルが互いのケーキを交換し合っていた。
(そうか、ああやるのか)
カップルがどう交換し合っているのか観察していると、アリーシャが心配そうに声を掛けてくる。
「どうしましたか? やはり、嫌でしたか……?」
「いや、なんでもない」
オルキデアはダークブラウン色の髪が邪魔にならないように耳にかけると、フォークを持つアリーシャの手首を掴んで、自分の顔に近づける。
「あっ……」
小さく声を漏らしたアリーシャの前で、オルキデアは直接フォークに口を付けたのだった。
濃厚な酸味のクリームチーズと、その下の甘すぎず固すぎないクッキー生地が非常にマッチしていた。
オルキデアが頼んだコーヒーとの相性も悪くなく、甘味が苦手でも美味しく食べられたのだった。
「レアチーズケーキだったか? なかなか、美味いな。これなら俺でも食べられそうだ」
アリーシャの華奢な手首を離しながら、ケーキの感想を話していると、「そうですか……」とアリーシャは小声で返す。
「まさか、オルキデア様が恋人みたいなことをするとは思いませんでした」
「恋人どころか、夫婦だからな。……仮だが」
その言葉に耳まで真っ赤になると、アリーシャは残っていたレアチーズケーキを食べ始める。
小声で「美味しいです……」と話すアリーシャを微笑ましく眺めていると、ようやくパフェとサンドイッチが届けられたのだった。
向かいであちこちメニュー表を捲っているアリーシャに声を掛ける。
「迷ってしまいますね……。パフェも美味しそうですが、ケーキも良さそうで」
「う~ん」と唸りながら真剣な顔で悩むアリーシャに、小さく相好を崩すと提案する。
「気になるなら、どっちも頼めばいい」
「でも、そんなに頼むのも……」
「ケーキは俺が頼もう。コーヒーとセットにすると、得らしいしな」
メニュー表には、単品でケーキを頼むよりも、コーヒーとセットで注文した方がお得だと書かれていた。
「好きなケーキを選ぶといい」
「オルキデア様はいいんですか?」
「甘いものはあまり得意じゃなくてな」
安心させるように頷くと、アリーシャはメニュー表を見せながら指差したのだった。
「じゃあ、これ……」
アリーシャの白く細い指先が示したのは、白いレアチーズケーキだった。
「決まりだな」
オルキデアが店員を呼ぶと、レアチーズケーキのコーヒーセットと、ポスターにも載っていたパフェとアリーシャが選んだ季節の紅茶ーーこの時期は、スイートポテトとマロンとパンプキンの紅茶らしい。と単品でサンドイッチを頼んだのだった。
少しして、飲み物と一緒に届いたのはレアチーズケーキだった。
運んでくれた店員が下がると、自分の前に置かれたケーキをアリーシャに差し出す。
「先に食べていいんですか?」
「先にどころか、全部食べていいぞ。甘い物は苦手なんだ」
「それで気にせず選べって言ったんですね」
合点がいったと言いたげなアリーシャからコーヒーに目線を移すと、オルキデアは口を付ける。程よい苦味と酸味が口の中に広がり、心地良い気持ちになる。
やはり、上質な豆を使っているらしい。
「でも、全部食べてしまうのも気が引けてしまいます。一口くらい、食べてみませんか?」
「一口でも、君が食べる分が減ってしまうがいいのか」
「私は大丈夫です。パフェもありますし」
三角形に切られたケーキの先をフォークで小さく切り分けると、アリーシャは差し出してくる。
「これくらいなら、どうですか?」
「まあ、それくらいなら」
アリーシャが差し出したフォークを受け取ろうと手を伸ばしかけたところで、ふと思い留まる。
(夫婦らしくか)
こういう時、新婚の夫婦ならどうするだろうと考える。
近くのテーブルを見ると、オルキデアたちと同年代くらいの若いカップルが互いのケーキを交換し合っていた。
(そうか、ああやるのか)
カップルがどう交換し合っているのか観察していると、アリーシャが心配そうに声を掛けてくる。
「どうしましたか? やはり、嫌でしたか……?」
「いや、なんでもない」
オルキデアはダークブラウン色の髪が邪魔にならないように耳にかけると、フォークを持つアリーシャの手首を掴んで、自分の顔に近づける。
「あっ……」
小さく声を漏らしたアリーシャの前で、オルキデアは直接フォークに口を付けたのだった。
濃厚な酸味のクリームチーズと、その下の甘すぎず固すぎないクッキー生地が非常にマッチしていた。
オルキデアが頼んだコーヒーとの相性も悪くなく、甘味が苦手でも美味しく食べられたのだった。
「レアチーズケーキだったか? なかなか、美味いな。これなら俺でも食べられそうだ」
アリーシャの華奢な手首を離しながら、ケーキの感想を話していると、「そうですか……」とアリーシャは小声で返す。
「まさか、オルキデア様が恋人みたいなことをするとは思いませんでした」
「恋人どころか、夫婦だからな。……仮だが」
その言葉に耳まで真っ赤になると、アリーシャは残っていたレアチーズケーキを食べ始める。
小声で「美味しいです……」と話すアリーシャを微笑ましく眺めていると、ようやくパフェとサンドイッチが届けられたのだった。
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