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夫婦らしく【中】・3
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「わあ……!」
給仕されたパフェにアリーシャが感嘆の声を上げる。
バニラアイスの上に盛られた色とりどりのフルーツだけでも豪華だが、アイスの下にはコーンフレークとコーヒーゼリーらしき黄色と黒色が見えていた。
パフェグラスの中にぎっしりと詰め込まれているとは思わず、オルキデアも圧倒されてしまったのだった。
「いただきます」
きちんと両手を合わせてから、アリーシャはパフェ用のスプーンでフルーツとバニラアイスを掬うと口に入れる。
「んっ……! 美味しいです!」
「それは良かった」
これまでになく、目を輝かせて興奮気味なアリーシャが愛おしく思えてくる。
三角形に切られたサンドイッチを手に取るとオルキデアも一口齧る。
ほどよく焼かれた食パンの内側にはバターと練り辛子が塗られており、みずみずしい野菜やハム、焼きすぎない程度に火が通された柔らかな卵が挟まれていた。
それが芳醇な香りのコーヒーとの相性が良く、舌鼓を打ったのだった。
店内を流れるヴァイオリンとピアノの優雅な曲と、他の客が交わす賑やかな談笑を聴きながら二人が黙々と食べていると、不意にアリーシャのスプーンが止まる。
「……昔、まだ母と暮らしていた時に、パフェほどじゃありませんが、こうしてバニラアイスに好きなフルーツを乗せて食べたことがあります」
「そうなのか?」
アリーシャの話によると、娼婦街に住んでいたとある夏の日に、アリーシャの母の娼婦仲間からフルーツを貰ったことがあったらしい。
馴染みの客が差し入れとして持ってきたが、娼館では食べきれないからと、分けてもらったとのことだった。
「母はどこからかバニラアイスを買って来ると、フルーツを切って、バニラアイスに乗せて食べるように勧めてきたんです」
パフェ用のスプーンで、バニラアイスと一緒にチェリーと思しき赤いフルーツを掬いながら、アリーシャは続ける。
「母と一緒にどのフルーツがいいとか、どこに載せるといいとか。二人で話しながら、二人だけのパフェを作る時間が楽しかったです。私もまだ子供で加減が分からなかったから、ついついフルーツを乗せすぎてしまって……。お皿から落としそうになりました」
きっとアリーシャにとっては、母親との大切な思い出なのだろう。
いつになく柔らかな表情をしているのが、その証だった。
「そうか」
「新鮮なフルーツって、シュタルクヘルトではなかなか食べられなかったんです。
下町や娼婦街でフルーツといえば、乾燥させたものや傷んだものが主なもので、新鮮なフルーツは高級な娼館でしか見られない、高級品のイメージでした。
シュタルクヘルト家でも兄弟や弟妹たちが食べてしまうので、私にはよくても兄弟や姉妹たちが残したものか、切れ端しか貰えなくて……」
アリーシャから話を聞いたオルキデアは、次いで自分の皿を見る。
皿の上にはまだサンドイッチが残っていた。ーーデザート系のサンドイッチが。
オルキデアは小さく笑うと、アリーシャに向けて自分の皿を差し出す。
「これも食べるといい」
「いいんですか? でもこれって……?」
「フルーツサンドだ。パンの間に生クリームとフルーツが入ってる。甘い物が苦手な俺はどのみち食べられないから、君が食べてくれ」
元々アリーシャにあげるつもりではあったが、今の思い出話を聞いてますますあげたくなった。
「フルーツを挟んだサンドイッチがあるんですね」
「あまり珍しくはないが……。そうか、君から見ると珍しいんだな」
子供の頃ーーまだ今ほど甘味が苦手じゃなかった頃、通いで屋敷に来ていたマルテや当時屋敷に住んでいた専属のシェフが、よくおやつ代わりにフルーツサンドを作ってくれた。
ペルフェクトの郊外ではフルーツの栽培が盛んであり、時季によっては下町でも安価な値段で新鮮なフルーツが手に入った。
また季節の変わり目には、父の知り合いやメイソンが差し入れてくれることもあった。
オルキデアにとって、フルーツはいつでも食べられるものであった。
(同じものでも、住む場所や立場が違えば、また違うものになるんだな)
口元に生クリームをつけて、目の前で美味しそうにパフェとフルーツサンドを頬張るアリーシャを見ていると、ますますそう思えてくる。
給仕されたパフェにアリーシャが感嘆の声を上げる。
バニラアイスの上に盛られた色とりどりのフルーツだけでも豪華だが、アイスの下にはコーンフレークとコーヒーゼリーらしき黄色と黒色が見えていた。
パフェグラスの中にぎっしりと詰め込まれているとは思わず、オルキデアも圧倒されてしまったのだった。
「いただきます」
きちんと両手を合わせてから、アリーシャはパフェ用のスプーンでフルーツとバニラアイスを掬うと口に入れる。
「んっ……! 美味しいです!」
「それは良かった」
これまでになく、目を輝かせて興奮気味なアリーシャが愛おしく思えてくる。
三角形に切られたサンドイッチを手に取るとオルキデアも一口齧る。
ほどよく焼かれた食パンの内側にはバターと練り辛子が塗られており、みずみずしい野菜やハム、焼きすぎない程度に火が通された柔らかな卵が挟まれていた。
それが芳醇な香りのコーヒーとの相性が良く、舌鼓を打ったのだった。
店内を流れるヴァイオリンとピアノの優雅な曲と、他の客が交わす賑やかな談笑を聴きながら二人が黙々と食べていると、不意にアリーシャのスプーンが止まる。
「……昔、まだ母と暮らしていた時に、パフェほどじゃありませんが、こうしてバニラアイスに好きなフルーツを乗せて食べたことがあります」
「そうなのか?」
アリーシャの話によると、娼婦街に住んでいたとある夏の日に、アリーシャの母の娼婦仲間からフルーツを貰ったことがあったらしい。
馴染みの客が差し入れとして持ってきたが、娼館では食べきれないからと、分けてもらったとのことだった。
「母はどこからかバニラアイスを買って来ると、フルーツを切って、バニラアイスに乗せて食べるように勧めてきたんです」
パフェ用のスプーンで、バニラアイスと一緒にチェリーと思しき赤いフルーツを掬いながら、アリーシャは続ける。
「母と一緒にどのフルーツがいいとか、どこに載せるといいとか。二人で話しながら、二人だけのパフェを作る時間が楽しかったです。私もまだ子供で加減が分からなかったから、ついついフルーツを乗せすぎてしまって……。お皿から落としそうになりました」
きっとアリーシャにとっては、母親との大切な思い出なのだろう。
いつになく柔らかな表情をしているのが、その証だった。
「そうか」
「新鮮なフルーツって、シュタルクヘルトではなかなか食べられなかったんです。
下町や娼婦街でフルーツといえば、乾燥させたものや傷んだものが主なもので、新鮮なフルーツは高級な娼館でしか見られない、高級品のイメージでした。
シュタルクヘルト家でも兄弟や弟妹たちが食べてしまうので、私にはよくても兄弟や姉妹たちが残したものか、切れ端しか貰えなくて……」
アリーシャから話を聞いたオルキデアは、次いで自分の皿を見る。
皿の上にはまだサンドイッチが残っていた。ーーデザート系のサンドイッチが。
オルキデアは小さく笑うと、アリーシャに向けて自分の皿を差し出す。
「これも食べるといい」
「いいんですか? でもこれって……?」
「フルーツサンドだ。パンの間に生クリームとフルーツが入ってる。甘い物が苦手な俺はどのみち食べられないから、君が食べてくれ」
元々アリーシャにあげるつもりではあったが、今の思い出話を聞いてますますあげたくなった。
「フルーツを挟んだサンドイッチがあるんですね」
「あまり珍しくはないが……。そうか、君から見ると珍しいんだな」
子供の頃ーーまだ今ほど甘味が苦手じゃなかった頃、通いで屋敷に来ていたマルテや当時屋敷に住んでいた専属のシェフが、よくおやつ代わりにフルーツサンドを作ってくれた。
ペルフェクトの郊外ではフルーツの栽培が盛んであり、時季によっては下町でも安価な値段で新鮮なフルーツが手に入った。
また季節の変わり目には、父の知り合いやメイソンが差し入れてくれることもあった。
オルキデアにとって、フルーツはいつでも食べられるものであった。
(同じものでも、住む場所や立場が違えば、また違うものになるんだな)
口元に生クリームをつけて、目の前で美味しそうにパフェとフルーツサンドを頬張るアリーシャを見ていると、ますますそう思えてくる。
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