アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ

夜霞

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※爪の間・4

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両手の爪の間を丹念にブラシで擦られると、先程よりもほぼ砂が取れていた。  

「取れてる……」

そうなると、今度はマニキュアを塗った足の爪の間も気になってくる。
マニキュアが剥がれかかった足の爪の間にも、まだ砂が残っていたからだった。
先程、シャワーを浴びた際に爪用ブラシで擦ったところ、足の爪の間の砂はあまり取れず、その代わりブラシで擦ってしまったことで、足の爪に塗っていたマニキュアが剥がれてしまった。
足の爪の間に入ってしまった砂に関しては、その内取れればいいと思っていたが、今なら取れるだろうか。

アリーシャは視線をオルキデアに向ける。
オルキデアは自分の身体と髪を手早く石鹸で洗うと、次いで自分で爪の間をブラシで擦っていた。
しばらくの間、アリーシャは椅子に座ったまま、その様子をじっと見つめていたが、やがてアリーシャの視線に気づいたオルキデアが顔を上げたのだった。

「どうした?」
「いえ、何となく……」
「もしかして、見惚れていたのか?」

オルキデアは意地悪く笑うと、自身の身体を自慢するように見せつけてくる。
何も身に纏っておらず、ほどよく筋肉のついた男性らしい身体。
そんなオルキデアを妙に意識してしまい、自然と目を逸らしてしまう。

「そうではないんです……ただ、足の爪の間も気になってしまって」
「足の爪の間……。わかった。そっちも取ってやる」

ーーどことなく、肩を落としたように見えなくもないが、気のせいだろうか。

気のせいだと思うことにして、アリーシャは足の爪の間もお願いしたのだった。

「あの、くすぐった……」
「我慢しろ。足の爪の間も、結構奥まで入っているからな」

足首を掴まれ、踵をオルキデアの太腿に乗せると、足の爪の間にブラシを当てられる。
力加減が絶妙なのか、自分でやった時よりも妙にくすぐったくて、オルキデアがブラシで擦り始めてすぐ、アリーシャは身動ぎながら笑ってしまいそうになる。
オルキデアもそんなアリーシャに気づいるのかいないのか、力を緩めることなく擦っていた。

「でも、くすぐったくて、笑いそうになってしまって……」
「笑うのはいいが、動いた方がもっとむず痒くなるぞ」
「そんな……」

そう言って、一際くすぐったくなった時にアリーシャが身動いだからだろうか。
オルキデアが足首を掴む手が強くなった。

「こら、動くな」
「でも……」

くすぐったいと言おうとしたアリーシャだったが、オルキデアの唇に塞がれてしまう。
足首を掴んでいた手が離されたかと思うと、代わりに後頭部を押さえられて、力強く口づけられたのだった。
すぐに唇は離れたが、オルキデアの力強い濃い紫色の瞳は、アリーシャから離れなかった。

「……落ち着いたか?」
「はい……」

その後、またアリーシャの足の爪の間にブラシを当てると、オルキデアは擦り出したのだった。
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