アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ

夜霞

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※貴方色に染められて・3

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そんな力無くベッドに倒れたアリーシャの元にオルキデアがやって来る。
愛液がついていない手でアリーシャの頬に掛かる髪を払ってくれたが、その顔がいつもより曇っているような気がした。
アリーシャはゆるゆると顔を上げたのだった。

「どうして、まだ暗い顔しているんですか? 私、もう気にしてないのに……」
「暗い顔しているか?」
「眉間に皺が寄っていますよ」

オルキデアの眉間に向かって手を伸ばす。けれども、アリーシャに短い手では届くことなく、オルキデアの肩に触れるのが精一杯だった。
そんなアリーシャを代わりに、オルキデアは自分で眉間を揉んだのだった。

「もし暗い顔をしてるとしたら、それはお前と関係ないところかもしれん」
「関係ない、ところですか……?」

ようやく落ち着いたアリーシャが身を起こすと、オルキデアは別の方向を向いたまま、ポツリと呟いたのだった。

「例えば、海で会った親子……とか」
「海で会った親子……。ああ、私たちに話しかけてきた男の子と、その母親ですね」

先程、二人で海に行った時、アリーシャたちに声を掛けてきた藤色の髪の親子がいた。
アリーシャは自分と母以外で、藤色の髪をした人を見たことがなかったので、髪ばかり見てしまったが、オルキデアは違うところを見ていたのだろうか。

「あの親子がどうかしましたか。何か不審な点でも……?」
「最初こそは自分に重ねたさ。次第に、今度はお前に重ねた。お前と……俺たちの子供に」
「私たちの子供ですか?」

オルキデアとオルキデアの母親との関係はアリーシャも知っているが、そこにどうして自分たちの名前が出てくるのだろうか。
身体を起こしてベッドに座ると、じっとオルキデアを見つめたのだった。

「いつか、俺たちの間に子供が産まれたら、
今日会った親子の様に、仲良く砂浜を歩くのだろうかと思ってな。
散策だけじゃない。海で遊び、砂の城を作り、海の生き物に触れることになるだろうと考えたんだ。
それが楽しみでもあり、そんな日が来るだろうかと不安にもなった」
「子供ってまだまだ先の話ですよ。でも不安なんですか?」
「平和な王都にずっと居ると忘れがちだが、今、この国はシュタルクヘルトと戦争の最中だ。戦局は刻一刻と変わっている。そして、恐らくだが……」

オルキデアに手招きされて近づいて行くと、抱かれるようにして耳元で囁かれる。

「戦争はもうすぐ大きな決戦を迎える。軍はそれに向けて準備を始めているんだ」

オルキデアの顔が離れると、アリーシャは瞬きを繰り返す。

「そうなんですか……?」
「ああ。休暇明けに回ってきた書類を読んでいたら気づいた。まだ軍も大々的には公表してないし、俺もまだ誰にも話していない。お前も誰にも言うなよ。セシリアやクシャースラにも」
「それは分かりましたが……。でも、それがどうオルキデア様と関係しているんですか?」
「決戦となれば、両軍共に全戦力を投入するだろう。当然、将官である俺も行かなければならない。部隊を指揮しなければならないからな……生きて帰って来られるかは戦局次第だ。俺にも分からない」

アリーシャは大きく目を見開く。オルキデアの自信無さそうな顔に、どこか焦燥を駆られる。
 
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