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※貴方色に染められて・4
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「そ、そんな。だって、オルキデア様は強い人です。知識もあって、勇敢で、絶対負けないって、信じて……」
「お前の気持ちは嬉しいが、こればかりはどうとも分からないんだ。どんなに兵たちが優秀でも、その上に立つ指揮官が無能なら、それはただの無能な集団なんだ」
オルキデアは「湯冷めするぞ」と言うと、アリーシャの肩に掛布を掛けてくれる。
そうして、アリーシャの頭を軽く叩いたのだった。
頭を叩く大きい掌が、まるで、落ち着けと言っているようで、アリーシャはぐっと唇を結んだ。
「指揮官に関係なく、戦局次第では、俺たちが不利になって、負ける可能性もある。敵軍の砲火に遭う可能性も、敗走中に命を落とすこともあるだろうさ。……そう考えたら、急に不安に襲われた。自分の命が惜しくなって……死ぬのが怖くなった。
王都で待つお前を残し、今後産まれてくるかもしれない、俺たちの子供に出会えないまま、この世から消えてしまうことが」
「そんなこと言わないで下さい……。オルキデア様は勝てます! 強い人で、優秀な軍人だから……」
「今はまだ自分の生死がどうなるか分からない。そもそも、いつ決戦があるのかさえ分からない。
だが、戦争が落ち着いて、俺たちの間に子供が産まれれば、三人で海で遊んで、砂で城を作って、海岸を歩いて、笑い合える日だって来るだろう。……そんな日が来るように、軍人として戦場で戦うのも、俺の務めだ」
オルキデアが掛けてくれた掛布を握って俯いていると、そっと掛布ごと抱きしめられる。
「不思議だな。前は自分の命なんて、どうなっても良かった。戦場で散るなら、軍人として本望でもあったさ。だが、今はそれが惜しい、とても惜しいんだ。これもお前のおかげだな」
「私の、おかげ……」
「毎日がとても充実している。明日の不安よりも、明日ヘの期待が大きい。明日はどこへ行こうか、何をしようか、と考えるんだ。お前と未来の話をするのが楽しくてしょうがない」
「未来の話……。私もしたいです。楽しい未来の話をたくさんしたい!」
「そうだろう。どんな些細な話でもいい。今日の夕食の話や明日の予定だっていい。もっと未来の……それこそ子供の話だっていいさ。子供は何人欲しいか、子供が産まれたら一緒に何がしたいのか話すのも楽しいだろう。今は不安な明日よりも、明るい未来を話そう」
ようやく、いつもの調子が戻って来たのか、オルキデアの声が力強くなった。
結婚してから気付いたが、アリーシャの夫は強いだけの人間ではなかった。
アリーシャの様に、時には弱気になることや不安になることもある。ただ、それを表に出さないだけで、本当は内側にずっと貯め続けているような人間だった。
その貯め続けた反動が、出会った頃の大量の酒瓶と、片付けられない本や書類の山だったのだろう。
その証拠に、契約結婚をして、一緒に暮らし始めてからのオルキデアは、酒は殆ど飲んでおらず、屋敷の自室もアリーシャが多少片付けや掃除こそするが、きちんと整頓されていた。
そんな夫の弱さや不安を、アリーシャが受け止められているのなら嬉しかった。
取り分けて、秀でたところも、取り柄もない妻ではあるが、夫の役に立っていると、自負と安心が出来るからであった。
「お前の気持ちは嬉しいが、こればかりはどうとも分からないんだ。どんなに兵たちが優秀でも、その上に立つ指揮官が無能なら、それはただの無能な集団なんだ」
オルキデアは「湯冷めするぞ」と言うと、アリーシャの肩に掛布を掛けてくれる。
そうして、アリーシャの頭を軽く叩いたのだった。
頭を叩く大きい掌が、まるで、落ち着けと言っているようで、アリーシャはぐっと唇を結んだ。
「指揮官に関係なく、戦局次第では、俺たちが不利になって、負ける可能性もある。敵軍の砲火に遭う可能性も、敗走中に命を落とすこともあるだろうさ。……そう考えたら、急に不安に襲われた。自分の命が惜しくなって……死ぬのが怖くなった。
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「そんなこと言わないで下さい……。オルキデア様は勝てます! 強い人で、優秀な軍人だから……」
「今はまだ自分の生死がどうなるか分からない。そもそも、いつ決戦があるのかさえ分からない。
だが、戦争が落ち着いて、俺たちの間に子供が産まれれば、三人で海で遊んで、砂で城を作って、海岸を歩いて、笑い合える日だって来るだろう。……そんな日が来るように、軍人として戦場で戦うのも、俺の務めだ」
オルキデアが掛けてくれた掛布を握って俯いていると、そっと掛布ごと抱きしめられる。
「不思議だな。前は自分の命なんて、どうなっても良かった。戦場で散るなら、軍人として本望でもあったさ。だが、今はそれが惜しい、とても惜しいんだ。これもお前のおかげだな」
「私の、おかげ……」
「毎日がとても充実している。明日の不安よりも、明日ヘの期待が大きい。明日はどこへ行こうか、何をしようか、と考えるんだ。お前と未来の話をするのが楽しくてしょうがない」
「未来の話……。私もしたいです。楽しい未来の話をたくさんしたい!」
「そうだろう。どんな些細な話でもいい。今日の夕食の話や明日の予定だっていい。もっと未来の……それこそ子供の話だっていいさ。子供は何人欲しいか、子供が産まれたら一緒に何がしたいのか話すのも楽しいだろう。今は不安な明日よりも、明るい未来を話そう」
ようやく、いつもの調子が戻って来たのか、オルキデアの声が力強くなった。
結婚してから気付いたが、アリーシャの夫は強いだけの人間ではなかった。
アリーシャの様に、時には弱気になることや不安になることもある。ただ、それを表に出さないだけで、本当は内側にずっと貯め続けているような人間だった。
その貯め続けた反動が、出会った頃の大量の酒瓶と、片付けられない本や書類の山だったのだろう。
その証拠に、契約結婚をして、一緒に暮らし始めてからのオルキデアは、酒は殆ど飲んでおらず、屋敷の自室もアリーシャが多少片付けや掃除こそするが、きちんと整頓されていた。
そんな夫の弱さや不安を、アリーシャが受け止められているのなら嬉しかった。
取り分けて、秀でたところも、取り柄もない妻ではあるが、夫の役に立っていると、自負と安心が出来るからであった。
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