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どうして・3
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「ま、待って下さい! ラカイユさん、待って……!」
ラカイユに引っ張られるようにして、アリーシャは軍部の外に連れ出された。何を急いているのか、ラカイユはアリーシャの様子を気に掛けることもなく、アリーシャは足を縺れさせながらもラカイユについて歩くので精一杯であった。
ようやく軍部が見えなくなると、建物の陰に入ったところでラカイユは手を放してくれたのであった。
肩で息を繰り返すアリーシャに、ラカイユは小声で「すみません」と謝っただけであった。
「早く貴女を軍部から遠ざけないと思い、気が急いてしまいました」
「い、いえ。大丈夫です……」
そうは言いつつも、先日の風邪の名残なのか、どこか気持ちが悪い。アリーシャは近くの建物に背をつけて寄りかかると荒い息を繰り返す。
「オルキデア様に何があったのか教えてくれませんか? もう三日も連絡が取れないんです。今までこんなことがなかったから心配で……」
「そうですね……。もう三日も経ってしまいました……」
ラカイユの悲痛そうな様子にアリーシャは息も止めて見つめてしまう。嫌な想像が頭の中で過ぎってしまう。オルキデアが軍人だ。まさかーー。
「オルキデア様の身に、何かあったんですか……? 命に関わる様な何かが……」
死を連想したアリーシャに、ラカイユは「違いますよ」と即座に首を振ってくれたので、アリーシャは少しだけ肩の力を抜いた。
「ラナンキュラス少将は無事です」
「それならどうして会えないんですか? 連絡も取れないって、おかしいです……」
「少将は現在難しい立場にいます。いずれはアリーシャ嬢の元に戻りますので、今は我々を信じて待っていただけませんか?」
「難しい立場って?」
「……それは言えません。少将から貴女に話すなと言われていますので」
屋敷まで送ると申し出てくれたラカイユを断り、アリーシャは一人で帰路に着く。具合が悪いので、時折道端で休みながら屋敷に戻ると、屋敷の前に人影が見えた。
(誰だろう……)
姿からして男のようだった。オルキデアと同じ軍服を着ているところから、ペルフェクト軍の兵士だろうか。それでもアリーシャは見たことが無い人物であった。もしかしたら、オルキデアに用事があって来たのかもしれない。
「あの……」
アリーシャが男に近づきながら声を掛けると、男はアリーシャの方を一度も振り返ることもなく、反対方向に走り去ってしまった。
(何だったんだろう……?)
そんな事を考えながら、アリーシャは屋敷の鍵を開けると中に入る。とにかく身体が重かった。足や腰などの関節も痛く、軽く吐き気がして気分もあまり良くない。熱があるのか身体は温かいが、寒気が止まらない。いくら寝ても眠気が収まらず、心なしかお腹が張っているような気さえしていた。
(もしかして、風邪をぶり返したのかも)
腹部に手を当てながら、アリーシャは考える。
病み上がりなのに無理して動いたのが原因かもしれない。ここ最近の中ではまだ調子が良い方だったから、何とか起きて軍部に行ったのにーー。
階段を上って二階の自室まで行く気力がなかったので、アリーシャは一階の応接間に入ると、靴を脱いでソファーに横になる。脱いだコートを毛布代わりにして、身体に掛けるとわずかに寒気が収まった気がした。
(オルキデア様に何があったんだろう。どうして連絡してくれないんだろう。会ってくれないんだろう……)
仕事が忙しいというのは聞いている。だから一日目は我慢した。でも、二日目の夜から恋しくなって、三日目にはとうとう会いに行ってしまった。
本当は昨日の内にでも会いに行きたかった。でも、昨日は起き上がるのもやっとというくらい辛かった。風邪を引いてからずっと身体がだるかったが、昨日は特に酷かった。
(家の事だってやらなければならないのに。ここで寝ているわけにはいかないのに……)
昨日出来なかった分まで今日は家の事をしてしまいたかった。そうしなければ、オルキデア様が帰宅した時に留守の間、何もしていなかったと思われてしまいかねない。
嫌われたくなかった。呆れられたくも。オルキデアの前ではしっかりした自分で居たかった。
(オルキデア様に会いたい。会ってお話ししたい。声を聞いたら安心出来る。顔を見たらこの体調不良も治るだろうから……)
そう思いつつも、もう一度軍部に行くには身体が辛い。それならせめて電話でも掛けてみようか。昨日までは電話にも出てくれなかったが、もしかしたら今日は出てくれるかもしれない。今日はきっとーー。
そんな事を考えている内に眠気が限界に達したのか、いつの間にかアリーシャは眠ってしまったのであった。
ラカイユに引っ張られるようにして、アリーシャは軍部の外に連れ出された。何を急いているのか、ラカイユはアリーシャの様子を気に掛けることもなく、アリーシャは足を縺れさせながらもラカイユについて歩くので精一杯であった。
ようやく軍部が見えなくなると、建物の陰に入ったところでラカイユは手を放してくれたのであった。
肩で息を繰り返すアリーシャに、ラカイユは小声で「すみません」と謝っただけであった。
「早く貴女を軍部から遠ざけないと思い、気が急いてしまいました」
「い、いえ。大丈夫です……」
そうは言いつつも、先日の風邪の名残なのか、どこか気持ちが悪い。アリーシャは近くの建物に背をつけて寄りかかると荒い息を繰り返す。
「オルキデア様に何があったのか教えてくれませんか? もう三日も連絡が取れないんです。今までこんなことがなかったから心配で……」
「そうですね……。もう三日も経ってしまいました……」
ラカイユの悲痛そうな様子にアリーシャは息も止めて見つめてしまう。嫌な想像が頭の中で過ぎってしまう。オルキデアが軍人だ。まさかーー。
「オルキデア様の身に、何かあったんですか……? 命に関わる様な何かが……」
死を連想したアリーシャに、ラカイユは「違いますよ」と即座に首を振ってくれたので、アリーシャは少しだけ肩の力を抜いた。
「ラナンキュラス少将は無事です」
「それならどうして会えないんですか? 連絡も取れないって、おかしいです……」
「少将は現在難しい立場にいます。いずれはアリーシャ嬢の元に戻りますので、今は我々を信じて待っていただけませんか?」
「難しい立場って?」
「……それは言えません。少将から貴女に話すなと言われていますので」
屋敷まで送ると申し出てくれたラカイユを断り、アリーシャは一人で帰路に着く。具合が悪いので、時折道端で休みながら屋敷に戻ると、屋敷の前に人影が見えた。
(誰だろう……)
姿からして男のようだった。オルキデアと同じ軍服を着ているところから、ペルフェクト軍の兵士だろうか。それでもアリーシャは見たことが無い人物であった。もしかしたら、オルキデアに用事があって来たのかもしれない。
「あの……」
アリーシャが男に近づきながら声を掛けると、男はアリーシャの方を一度も振り返ることもなく、反対方向に走り去ってしまった。
(何だったんだろう……?)
そんな事を考えながら、アリーシャは屋敷の鍵を開けると中に入る。とにかく身体が重かった。足や腰などの関節も痛く、軽く吐き気がして気分もあまり良くない。熱があるのか身体は温かいが、寒気が止まらない。いくら寝ても眠気が収まらず、心なしかお腹が張っているような気さえしていた。
(もしかして、風邪をぶり返したのかも)
腹部に手を当てながら、アリーシャは考える。
病み上がりなのに無理して動いたのが原因かもしれない。ここ最近の中ではまだ調子が良い方だったから、何とか起きて軍部に行ったのにーー。
階段を上って二階の自室まで行く気力がなかったので、アリーシャは一階の応接間に入ると、靴を脱いでソファーに横になる。脱いだコートを毛布代わりにして、身体に掛けるとわずかに寒気が収まった気がした。
(オルキデア様に何があったんだろう。どうして連絡してくれないんだろう。会ってくれないんだろう……)
仕事が忙しいというのは聞いている。だから一日目は我慢した。でも、二日目の夜から恋しくなって、三日目にはとうとう会いに行ってしまった。
本当は昨日の内にでも会いに行きたかった。でも、昨日は起き上がるのもやっとというくらい辛かった。風邪を引いてからずっと身体がだるかったが、昨日は特に酷かった。
(家の事だってやらなければならないのに。ここで寝ているわけにはいかないのに……)
昨日出来なかった分まで今日は家の事をしてしまいたかった。そうしなければ、オルキデア様が帰宅した時に留守の間、何もしていなかったと思われてしまいかねない。
嫌われたくなかった。呆れられたくも。オルキデアの前ではしっかりした自分で居たかった。
(オルキデア様に会いたい。会ってお話ししたい。声を聞いたら安心出来る。顔を見たらこの体調不良も治るだろうから……)
そう思いつつも、もう一度軍部に行くには身体が辛い。それならせめて電話でも掛けてみようか。昨日までは電話にも出てくれなかったが、もしかしたら今日は出てくれるかもしれない。今日はきっとーー。
そんな事を考えている内に眠気が限界に達したのか、いつの間にかアリーシャは眠ってしまったのであった。
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