【第一部完結・改稿版】ハージェント家の天使

夜霞

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第一部

※流星群と明かされた過去・中【4】

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「人伝てに伝わっていく内に、話に尾ひれがついたのかもしれませんし、男子学生がわざと違う形で話を広めたのかもしれません。
 それからは、ずっと虐めを受けていました。男子学生との話が収まっても、男子学生とクラスが離れても、中学校を卒業するまで、ずっと……」
「無実を訴えなかったんですか? 誰かに相談することも」
「誰も信じてくれなかったんです……。先生や親に相談しても何も変わらなかった……。それどころか、虐めはますます悪化して、私は孤立しました」

 男子学生との話が広まってから、仲の良かった友人たちは距離を置くようになった。女子たちからの虐めが始まってからは、ますます誰も近寄らなくなった。

「悪口は当たり前、持ち物が無くなるのも、壊されているのも当たり前。体育の授業中は石や砂をぶつけられて、雪が降った日には雪玉をぶつけられました。先生に相談すれば、『被害者ぶるな』、『大して可愛くないのに誘惑するな』、『ブス』、『キモい』、『死ね』などと書かれた紙を、机や鞄、下駄箱に入れられました」
「そんな凄惨な過去を経験されていたんですね……」

 言葉を失っているマキウスを安心させる様に微笑みかけると、これ以上、不安にさせない様にわざと明るい調子で続ける。

「今となっては、そんなことは別に大したことじゃないんです。あっ! でも、たくさん書かれた中でも、『死にたいなら、いつでも手首を切っていいよ』と書かれた時が一番傷つきました。
 あの頃、虐めが辛くて、私が死にたがっていたこと、見抜かれていたんだって……。でも、一番傷ついたのは、母の言葉です」
「何を言われたのですか……?」
「『お前が安易に男について行って、隙を見せるからこうなったんだ』って。その頃には、母も学校から私が虐めを受けている話を聞いて、頭を悩ませていました。
 物を壊したり、無くしたりしているので、それを買い直すのに負担をかけてしまったんです。うちは普通の家庭で、お金とかあまりなかったので、それなのに無駄にお金を使わせてしまったので……。仕方がないですよね。きっと、本音が出てしまったんだと思います。そして、それは本当のことだと思っています。全ては私の相手に付け込まれる隙の多さが原因だって」

 今でも癇癪を起こした母に言われた言葉を一字一句思い出せる。
 母の言う通りだった。モニカがもっとしっかりしていれば、こんなことにはならなかった。
 モニカが母に負担をかけてしまった。だから、全てはモニカが悪い。虐められる理由を作ったのも、無意識に男子学生を誘惑していたモニカが悪いのだと。

 モニカの心には、あの男子学生に強姦未遂されたのが恐怖として刻まれた。
 更にその後の虐めが原因となって、モニカは異性恐怖症になったのだった。

「これ以上、母に負担をかけさせたくなかったので、学校は毎日通いました。本当は行きたくなかったんですが、自分に嘘をついて、心配してくれる先生たちにも平気だと言って、卒業まで我慢して通いました」

 中学校を卒業すると、モニカは地元から遠い女子高校に入学して、そのまま付属の女子大学に入学した。
  学生の間はなるべく異性とは関わらないようにしていた。大学生になると、同級生は合コンやコンパに行っていたが、モニカは目立たず、大人しくして、たとえ合コンやコンパに誘われても、何かしら理由をつけて断るようにした。そうして、静かな学生生活を送ったのだった。
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