171 / 247
第一部
※流星群と明かされた過去・中【5】
しおりを挟む
「仕事を始めてからは、男性と話す機会も増えました。けれども、仕事と割り切って我慢をしてきました。それでも、今でも同年代の男性と話すのは苦手です」
大学を卒業して就職すると、さすがに男性とも話さざるを得なかったが、そこは仕事と割り切って我慢し続けた。
ある程度、良い雰囲気になりそうになる前に、自分から身を引くことで、自分を守り続けた。
そうしなければ、モニカの心は壊れてしまいそうだった。
例えるなら、モニカの心は、今にも溢れそうな水の入ったコップの状態であった。
「仕事以外でも男性と……特に同年代の男性と、話すのは苦手です。
外出する際は、不用意に声を掛けられないように、耳にイヤフォンをして、音楽再生プレーヤーで音楽を聴きながら、目立たないようにしていました。それでも、声を掛けられる時は、掛けられますが……。
イヤフォンと音楽再生プレーヤーは以前、夢の中でお見せしたかと思いますが、覚えていますか?」
マキウスが頷くと、モニカは流星群の空ではなく、目の前の暗い草原をじっと見つめた。
「おかしいですよね。結婚したいと思っている反面、男性が怖いなんて……。男性が怖いなら、いつまでも結婚は出来ないですし、子供なんてまだまだ先の話で……」
いつだって、モニカの心には母が放った「安易に男について行って、隙を見せるからこうなった」という言葉があった。
もっとしっかりしなければならなかった。周囲に隙を見せず、安易に男について行かないような人間にならなければならなかった。
そう考えている内に異性との距離が計れなくなり、どうすればいいのか分からなくなった。
やがて両親はモニカが中学生の時に起こったことを忘れたのか、結婚を勧めてくるようになった。「早く孫の顔が見たい」とも言われた。
子供は好きだったので、モニカも少しずつ恋人や結婚に憧れるようになった。
でも、どうすればいいのか分からなかった。
どう異性と知り合って、どう親しくなって、どう恋仲になればいいのか分からなかった。
中学生のあの時までは、知っていたはずなのにーー。
どうすることも出来ないまま、ただ悪戯に時間だけが過ぎていった。その間にもモニカの同級生や職場の後輩たちは、恋人を作って結婚した。寿退社をした人もいれば、早い人だと子供も産まれていた。
それなのにモニカだけは、何も前に進めないまま、何も「成長」出来ないままでいた。
まるで、中学生の時の強姦未遂に遭った秋暮れの公園に取り残されているかのようにーー。
「そんな私が、マキウス様に相応しい訳が無いんです。ニコラの母親だって、本当は相応しく無いんです……」
モニカの目に自然と涙が浮かんできた。これは悔し涙なのか、それとも愚かな自分に対する涙なのか。モニカにも分からなかった。
「そのようなことはありません。以前も言いましたが、貴女は充分過ぎるくらい、私とニコラに相応しい」
「でも……! 私は最低な人間なんです! 汚い人間なんです! モニカになると決めた時だって……!」
膝に顔を埋めて肩を震わせながら、モニカは叫ぶ。
「打算的な考えが全くなかった訳じゃないんです……! 最初はマキウス様の元でモニカとして生きていけば楽できるって。苦労しなくていいって……! マキウス様がニコラを抱えて生きていくのは大変だから、助けてあげようって……同情心もあったんです……!」
そうして、モニカは声を上げて泣き出したのだった。
大学を卒業して就職すると、さすがに男性とも話さざるを得なかったが、そこは仕事と割り切って我慢し続けた。
ある程度、良い雰囲気になりそうになる前に、自分から身を引くことで、自分を守り続けた。
そうしなければ、モニカの心は壊れてしまいそうだった。
例えるなら、モニカの心は、今にも溢れそうな水の入ったコップの状態であった。
「仕事以外でも男性と……特に同年代の男性と、話すのは苦手です。
外出する際は、不用意に声を掛けられないように、耳にイヤフォンをして、音楽再生プレーヤーで音楽を聴きながら、目立たないようにしていました。それでも、声を掛けられる時は、掛けられますが……。
イヤフォンと音楽再生プレーヤーは以前、夢の中でお見せしたかと思いますが、覚えていますか?」
マキウスが頷くと、モニカは流星群の空ではなく、目の前の暗い草原をじっと見つめた。
「おかしいですよね。結婚したいと思っている反面、男性が怖いなんて……。男性が怖いなら、いつまでも結婚は出来ないですし、子供なんてまだまだ先の話で……」
いつだって、モニカの心には母が放った「安易に男について行って、隙を見せるからこうなった」という言葉があった。
もっとしっかりしなければならなかった。周囲に隙を見せず、安易に男について行かないような人間にならなければならなかった。
そう考えている内に異性との距離が計れなくなり、どうすればいいのか分からなくなった。
やがて両親はモニカが中学生の時に起こったことを忘れたのか、結婚を勧めてくるようになった。「早く孫の顔が見たい」とも言われた。
子供は好きだったので、モニカも少しずつ恋人や結婚に憧れるようになった。
でも、どうすればいいのか分からなかった。
どう異性と知り合って、どう親しくなって、どう恋仲になればいいのか分からなかった。
中学生のあの時までは、知っていたはずなのにーー。
どうすることも出来ないまま、ただ悪戯に時間だけが過ぎていった。その間にもモニカの同級生や職場の後輩たちは、恋人を作って結婚した。寿退社をした人もいれば、早い人だと子供も産まれていた。
それなのにモニカだけは、何も前に進めないまま、何も「成長」出来ないままでいた。
まるで、中学生の時の強姦未遂に遭った秋暮れの公園に取り残されているかのようにーー。
「そんな私が、マキウス様に相応しい訳が無いんです。ニコラの母親だって、本当は相応しく無いんです……」
モニカの目に自然と涙が浮かんできた。これは悔し涙なのか、それとも愚かな自分に対する涙なのか。モニカにも分からなかった。
「そのようなことはありません。以前も言いましたが、貴女は充分過ぎるくらい、私とニコラに相応しい」
「でも……! 私は最低な人間なんです! 汚い人間なんです! モニカになると決めた時だって……!」
膝に顔を埋めて肩を震わせながら、モニカは叫ぶ。
「打算的な考えが全くなかった訳じゃないんです……! 最初はマキウス様の元でモニカとして生きていけば楽できるって。苦労しなくていいって……! マキウス様がニコラを抱えて生きていくのは大変だから、助けてあげようって……同情心もあったんです……!」
そうして、モニカは声を上げて泣き出したのだった。
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました
春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。
名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。
誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。
ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、
あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。
「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」
「……もう限界だ」
私は知らなかった。
宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて――
ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる