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第一部
★介添え【11】
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「ありがとうございます」
バスローブを纏ったマキウスは急に振り向いたかと思うと、礼代わりなのか頬に軽く口づけてくれる。
「い、いえ……。どういたしまして……」
「部屋に戻りましょう。まずは髪を乾かさないと」
「風邪を引いたら、ニコラにうつすかもしれないからですか?」
「それもありますが……一番は家族や使用人たちが悲しむからです。リュド殿や姉上、アマンテやペルラを始めとする使用人たち……」
「マキウス様は?」
「……無論です」
モニカから預かったバスタオルを空いていた籠に入れると、そっとモニカの身体を抱き上げてくれる。
「自分で歩けます……!」
「介添えの仕事はこれで終いです。ここからは夫の仕事です。まずは寝所にお連れしましょう」
「でも、重いので……」
「重くありません。見て下さい」
マキウスは子供を腕に乗せて抱き上げる様に、片腕でモニカを抱いたが、明らかにモニカを乗せている片腕が小刻みに震えており、我慢しているようにも見えた。
それに気づかれたくないのか、マキウスは「行きますよ」と声を掛けると、廊下に出たのだった。
「あの、マキウス様……」
マキウスの片腕から落ちないように、マキウスの両肩を掴みながら、モニカはそっと声を掛ける。
「マキウス様が風邪を引いたら私も悲しいです。お姉様やお兄ちゃん、屋敷の使用人たちもそう思いますが……」
「ありがとうございます。ですが、私は風邪を引いてもいいんじゃないかと思っています。愛しの『天使』が看病してくれるのなら、風邪を引くのも悪くないかと……」
「それって……。使用人の皆さんの仕事を奪っていませんか?」
「言われてみれば……」
マキウスと顔を見合わせると、小さく声を上げて笑い合う。
すると、二人の笑い声を聞きつけたのか、どこからか使用人の一人がやって来たのだった。
「旦那様」
使用人はこの世界で目覚めたばかりの頃、馬車の事故の対応で帰宅が遅くなったマキウスと会話していた執事だった。
後に、マキウスからあの時の執事はマキウス専属の執事だと教えられたのだった。
「丁度いいところに。沐浴を終えました。私とモニカはもう就寝しますが、引き続き人払いをお願いします。こちらが良いと言うまで、誰も寝室に近づけさせないで下さい」
「承知しました。それから手配されていた物を運び終えました。ご確認下さい」
「ありがとうございます。それと、メイド長のペルラにも伝えて下さい。明日の朝は、誰も起こしに来なくていいと。こちらも私が良いと言うまで、誰も寝室に近づけさせないで下さい」
「承知しました」と軽く頭を下げながらも、マキウスの片腕に抱かれているモニカが気になるのか、チラチラと目線だけ動かしていた。
「やっぱり、私、歩きます。恥ずかしいので……」
「離しません。……離したら逃げ出すでしょう」
「逃げません。ちゃんとついて行きます!」
「それはどうでしょう……貴女は照れ屋なので」
そう甘く呟くと、マキウスはモニカの抱き方を変えた。
膝の下に腕を入れて、先程までモニカを抱いていた腕を背中に回したのだった。
(こ、これって……!?)
さすがにこれまで男と付き合ったことのないモニカでもこの抱き方を知っていた。モニカは女性の憧れであるお姫様抱っこをされていたのだった。
「やはり、この抱き方が一番安定しますね」
目の前には端正な顔立ちのマキウスがいた。腕の中からじっとマキウスを見つめていると、モニカの視線に気付いたマキウスが頬を赤らめた。
(マキウス様も恥ずかしいのかな……)
周囲に目を移すと、廊下の端や物陰からメイドたちが覗いているのが見えた。メイドたちはモニカと目が合うと、慌てて顔を引っ込めたのだった。
メイドたちに見られていたことにモニカもマキウスと同じ様に顔を赤くすると、両手で頬を押さえながら目を逸らしたのだった。
マキウスの言う通り、この抱き方は先程までの片腕で抱かれていた時より揺れもなく、安定していたのだった。
バスローブを纏ったマキウスは急に振り向いたかと思うと、礼代わりなのか頬に軽く口づけてくれる。
「い、いえ……。どういたしまして……」
「部屋に戻りましょう。まずは髪を乾かさないと」
「風邪を引いたら、ニコラにうつすかもしれないからですか?」
「それもありますが……一番は家族や使用人たちが悲しむからです。リュド殿や姉上、アマンテやペルラを始めとする使用人たち……」
「マキウス様は?」
「……無論です」
モニカから預かったバスタオルを空いていた籠に入れると、そっとモニカの身体を抱き上げてくれる。
「自分で歩けます……!」
「介添えの仕事はこれで終いです。ここからは夫の仕事です。まずは寝所にお連れしましょう」
「でも、重いので……」
「重くありません。見て下さい」
マキウスは子供を腕に乗せて抱き上げる様に、片腕でモニカを抱いたが、明らかにモニカを乗せている片腕が小刻みに震えており、我慢しているようにも見えた。
それに気づかれたくないのか、マキウスは「行きますよ」と声を掛けると、廊下に出たのだった。
「あの、マキウス様……」
マキウスの片腕から落ちないように、マキウスの両肩を掴みながら、モニカはそっと声を掛ける。
「マキウス様が風邪を引いたら私も悲しいです。お姉様やお兄ちゃん、屋敷の使用人たちもそう思いますが……」
「ありがとうございます。ですが、私は風邪を引いてもいいんじゃないかと思っています。愛しの『天使』が看病してくれるのなら、風邪を引くのも悪くないかと……」
「それって……。使用人の皆さんの仕事を奪っていませんか?」
「言われてみれば……」
マキウスと顔を見合わせると、小さく声を上げて笑い合う。
すると、二人の笑い声を聞きつけたのか、どこからか使用人の一人がやって来たのだった。
「旦那様」
使用人はこの世界で目覚めたばかりの頃、馬車の事故の対応で帰宅が遅くなったマキウスと会話していた執事だった。
後に、マキウスからあの時の執事はマキウス専属の執事だと教えられたのだった。
「丁度いいところに。沐浴を終えました。私とモニカはもう就寝しますが、引き続き人払いをお願いします。こちらが良いと言うまで、誰も寝室に近づけさせないで下さい」
「承知しました。それから手配されていた物を運び終えました。ご確認下さい」
「ありがとうございます。それと、メイド長のペルラにも伝えて下さい。明日の朝は、誰も起こしに来なくていいと。こちらも私が良いと言うまで、誰も寝室に近づけさせないで下さい」
「承知しました」と軽く頭を下げながらも、マキウスの片腕に抱かれているモニカが気になるのか、チラチラと目線だけ動かしていた。
「やっぱり、私、歩きます。恥ずかしいので……」
「離しません。……離したら逃げ出すでしょう」
「逃げません。ちゃんとついて行きます!」
「それはどうでしょう……貴女は照れ屋なので」
そう甘く呟くと、マキウスはモニカの抱き方を変えた。
膝の下に腕を入れて、先程までモニカを抱いていた腕を背中に回したのだった。
(こ、これって……!?)
さすがにこれまで男と付き合ったことのないモニカでもこの抱き方を知っていた。モニカは女性の憧れであるお姫様抱っこをされていたのだった。
「やはり、この抱き方が一番安定しますね」
目の前には端正な顔立ちのマキウスがいた。腕の中からじっとマキウスを見つめていると、モニカの視線に気付いたマキウスが頬を赤らめた。
(マキウス様も恥ずかしいのかな……)
周囲に目を移すと、廊下の端や物陰からメイドたちが覗いているのが見えた。メイドたちはモニカと目が合うと、慌てて顔を引っ込めたのだった。
メイドたちに見られていたことにモニカもマキウスと同じ様に顔を赤くすると、両手で頬を押さえながら目を逸らしたのだった。
マキウスの言う通り、この抱き方は先程までの片腕で抱かれていた時より揺れもなく、安定していたのだった。
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