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おまけ
ブーゲンビリア侯爵と姉弟ー過去ー【4】
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マキウスが屋敷の中に駆け込むと、先に入っていたヴィオーラは扉を閉めた。
外で鳴いていた親鳥だったが、しばらくして巣に戻って行ったようだった。
外が静かになると、マキウスが声を上げて泣き出したのだった。
「こわかったよ~。お姉ちゃん」
「わたしもよ。マキウス」
二人がその場に座っていると、カツカツとヒールの高い音が聞こえてきた。
(この靴音は……!)
その音にヴィオーラはハッと気づくと、慌ててその場で立ち上がったのだった。
「そこで何をしているのです?」
「お母様!」
ヴィオーラの母親は、取り巻きのメイドを従えながら、まるで汚いものを見るように姉弟を見てきた。
ヴィオーラの母親が近づいて来ると、マキウスは近くの柱の影に隠れてしまった。
マキウスはヴィオーラの母親が嫌いだった。自分の母親に嫌がらせをしているのを知っており、ヴィオーラと一緒にいると、マキウスが嫌がらせの標的になると知っているからだった。
そんな母親の脅威から弟を守るのも、姉であるヴィオーラの役目であった。
マキウスが柱の影に隠れたのを確認すると、母親と向き合う。
そんな腹違いの弟を守る娘を、ヴィオーラの母親はまるでゴミを見るかのように眉を顰める。
ヴィオーラが洋服を見ると、親鳥から逃げる際にドレスが乱れてしまったようで、裾は砂埃で汚れてしまっていた。
視線を移すと、それは柱に隠れたマキウスも同じ様で、マキウスも服が乱れ、親鳥に突かれた手は傷だらけであった。
「お母様、これは……」
「あれの仕業ですね」
ヴィオーラの母親は、柱の影に隠れているマキウスを睨みつけた。
睨みつけられたマキウスは、ますます柱の影に隠れてしまったのだった。
「ち、ちがうの! わたしが悪いの、お母様……!」
ヴィオーラが母親に縋ろうとすると、右頰に衝撃が走った。
床に倒れたヴィオーラが起き上がると、右頰は赤色に染まり、ジワジワと痛み出したのだった。
「その様な卑しい言葉遣いをしてはなりません! あの妾の子供の所為ですね!」
「ち、ちがうのです! お母様!」
それでも、ヴィオーラの母親は、ヴィオーラの両頬を平手で叩き続けた。
「ごめんなさい。お母様……! ごめんなさい……!」
「その様な卑しい言葉を使う者は、私の子供ではありません!」
「ごめんなさい! ごめんなさい……!」
ヴィオーラは泣きながら母親に謝り続けた。
そうして、母親は泣き崩れたヴィオーラの手を引っ張ったのだった。
柱の影からは、真っ青な顔をしたマキウスが泣きながらヴィオーラを見ていた。
「ごめんなさい。お母様……。ごめんなさい……」
母親に引っ張られていくヴィオーラの声が、屋敷の廊下に響いた。
けれども、これはいつもの光景であり、止める者はいなかった。
ヴィオーラの母親に逆らう者は、容赦なく仕事がクビになるからであった。
(マキウス……)
母親に引きずられながら、ヴィオーラは弟に視線を向ける。
柱の影から顔を出したマキウスは、声を上げないように両手で口を押さえながらずっと涙を溢していたのだった。
外で鳴いていた親鳥だったが、しばらくして巣に戻って行ったようだった。
外が静かになると、マキウスが声を上げて泣き出したのだった。
「こわかったよ~。お姉ちゃん」
「わたしもよ。マキウス」
二人がその場に座っていると、カツカツとヒールの高い音が聞こえてきた。
(この靴音は……!)
その音にヴィオーラはハッと気づくと、慌ててその場で立ち上がったのだった。
「そこで何をしているのです?」
「お母様!」
ヴィオーラの母親は、取り巻きのメイドを従えながら、まるで汚いものを見るように姉弟を見てきた。
ヴィオーラの母親が近づいて来ると、マキウスは近くの柱の影に隠れてしまった。
マキウスはヴィオーラの母親が嫌いだった。自分の母親に嫌がらせをしているのを知っており、ヴィオーラと一緒にいると、マキウスが嫌がらせの標的になると知っているからだった。
そんな母親の脅威から弟を守るのも、姉であるヴィオーラの役目であった。
マキウスが柱の影に隠れたのを確認すると、母親と向き合う。
そんな腹違いの弟を守る娘を、ヴィオーラの母親はまるでゴミを見るかのように眉を顰める。
ヴィオーラが洋服を見ると、親鳥から逃げる際にドレスが乱れてしまったようで、裾は砂埃で汚れてしまっていた。
視線を移すと、それは柱に隠れたマキウスも同じ様で、マキウスも服が乱れ、親鳥に突かれた手は傷だらけであった。
「お母様、これは……」
「あれの仕業ですね」
ヴィオーラの母親は、柱の影に隠れているマキウスを睨みつけた。
睨みつけられたマキウスは、ますます柱の影に隠れてしまったのだった。
「ち、ちがうの! わたしが悪いの、お母様……!」
ヴィオーラが母親に縋ろうとすると、右頰に衝撃が走った。
床に倒れたヴィオーラが起き上がると、右頰は赤色に染まり、ジワジワと痛み出したのだった。
「その様な卑しい言葉遣いをしてはなりません! あの妾の子供の所為ですね!」
「ち、ちがうのです! お母様!」
それでも、ヴィオーラの母親は、ヴィオーラの両頬を平手で叩き続けた。
「ごめんなさい。お母様……! ごめんなさい……!」
「その様な卑しい言葉を使う者は、私の子供ではありません!」
「ごめんなさい! ごめんなさい……!」
ヴィオーラは泣きながら母親に謝り続けた。
そうして、母親は泣き崩れたヴィオーラの手を引っ張ったのだった。
柱の影からは、真っ青な顔をしたマキウスが泣きながらヴィオーラを見ていた。
「ごめんなさい。お母様……。ごめんなさい……」
母親に引っ張られていくヴィオーラの声が、屋敷の廊下に響いた。
けれども、これはいつもの光景であり、止める者はいなかった。
ヴィオーラの母親に逆らう者は、容赦なく仕事がクビになるからであった。
(マキウス……)
母親に引きずられながら、ヴィオーラは弟に視線を向ける。
柱の影から顔を出したマキウスは、声を上げないように両手で口を押さえながらずっと涙を溢していたのだった。
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