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おまけ
ブーゲンビリア侯爵と姉弟ー過去ー【5】
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それから少しして、母付きの侍女の手でコルセットをきつく結ばれ、オレンジ色のドレスに着替えさせられたヴィオーラが、母の目を盗んでマキウスを探しに行くと、既に柱の影にマキウスの姿はなかった。
屋敷中を探したヴィオーラは、ようやく屋敷の裏側ーーマキウスの部屋近くの軒下、の階段に座ってずっと泣いている小柄な弟を見つけたのだった。
「ううっ……ぐすっ…」
「マキウス」
マキウスが顔を上げると、ヴィオーラ微笑んだ。
「お姉ちゃん……」
「こんなところに居たのね。探したわ」
一瞬、マキウスは泣き止んだものの、ヴィオーラの右頬が真っ赤に腫れていたのを見て、また泣き出したのだった。
「もう! どうしてまた泣き出すのよ……!」
「だ、だって……! ぼくのせいで……お姉ちゃんがお母様にたたかれたから……」
「マキウスは悪くないのよ! 私がお洋服を汚してしまったのが悪いの……」
ヴィオーラはなんでもない様にマキウスの隣に座りながら話すが、マキウスは何度も首を振ったのだった。
「ぼく……がしっかりしないと、お姉ちゃんが叩かれちゃう。でも、お姉ちゃんのお母様….怖い……」
「マキウス……」
「お姉ちゃんのお母様は、ぼくのお母様が嫌いで、ぼくも嫌っている。いつも怖い目をしてるから目が合っただけで、泣いちゃうんだ……でも、それじゃあお姉ちゃんが、いつも叩かれちゃうから……」
「だからってずっと泣いていたの? 仕方がない子ね。全く……」
ヴィオーラは絹のハンカチを取り出すと、マキウスの顔を拭いた。
「着替えにも戻らなかったのね。手が傷だらけじゃない。顔にも砂がついて……」
ヴィオーラはハンカチに付いたマキウスの涙と砂に苦笑したのだった。
「お姉ちゃんが、お姉ちゃんのお母様に連れて行かれてから、ぼく、ずっとここで泣いていたから……」
「どうしてペルラのところに行って着替えなかったの? 手の傷だって、このままじゃ悪化しちゃうじゃない……」
「でも、ぼくが鳥の巣を見に行こうと言われなければ、お姉ちゃんはお母様に叩かれなかった……ごめんなさい。お姉ちゃん。ぼくのせいで……」
姉と同じ色の瞳に再び大粒の涙を溜めて、泣き出そうとした弟を、ヴィオーラは「マキウス」と止めたのだった。
「マキウスは悪くないの。あの時は、お母様の具合が良くなかったの」
ヴィオーラの母親には、「具合」に左右されるところがあった。
「具合が良い時」はヴィオーラをうんと可愛がってくれた。けれども、「具合が悪い時」は、先程の様にヴィオーラを叩くのだ。
いつもなら、服の下など外から見えないところを叩くが、今日は特に「具合が悪かった」のだろう。
そんな日は、こうして場所を気にせずに叩き、場合によっては殴ってくる。
マキウスが生まれるまでは、ここまで「具合が悪くなる」ことは無かったらしいがーー。
屋敷中を探したヴィオーラは、ようやく屋敷の裏側ーーマキウスの部屋近くの軒下、の階段に座ってずっと泣いている小柄な弟を見つけたのだった。
「ううっ……ぐすっ…」
「マキウス」
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「お姉ちゃん……」
「こんなところに居たのね。探したわ」
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「もう! どうしてまた泣き出すのよ……!」
「だ、だって……! ぼくのせいで……お姉ちゃんがお母様にたたかれたから……」
「マキウスは悪くないのよ! 私がお洋服を汚してしまったのが悪いの……」
ヴィオーラはなんでもない様にマキウスの隣に座りながら話すが、マキウスは何度も首を振ったのだった。
「ぼく……がしっかりしないと、お姉ちゃんが叩かれちゃう。でも、お姉ちゃんのお母様….怖い……」
「マキウス……」
「お姉ちゃんのお母様は、ぼくのお母様が嫌いで、ぼくも嫌っている。いつも怖い目をしてるから目が合っただけで、泣いちゃうんだ……でも、それじゃあお姉ちゃんが、いつも叩かれちゃうから……」
「だからってずっと泣いていたの? 仕方がない子ね。全く……」
ヴィオーラは絹のハンカチを取り出すと、マキウスの顔を拭いた。
「着替えにも戻らなかったのね。手が傷だらけじゃない。顔にも砂がついて……」
ヴィオーラはハンカチに付いたマキウスの涙と砂に苦笑したのだった。
「お姉ちゃんが、お姉ちゃんのお母様に連れて行かれてから、ぼく、ずっとここで泣いていたから……」
「どうしてペルラのところに行って着替えなかったの? 手の傷だって、このままじゃ悪化しちゃうじゃない……」
「でも、ぼくが鳥の巣を見に行こうと言われなければ、お姉ちゃんはお母様に叩かれなかった……ごめんなさい。お姉ちゃん。ぼくのせいで……」
姉と同じ色の瞳に再び大粒の涙を溜めて、泣き出そうとした弟を、ヴィオーラは「マキウス」と止めたのだった。
「マキウスは悪くないの。あの時は、お母様の具合が良くなかったの」
ヴィオーラの母親には、「具合」に左右されるところがあった。
「具合が良い時」はヴィオーラをうんと可愛がってくれた。けれども、「具合が悪い時」は、先程の様にヴィオーラを叩くのだ。
いつもなら、服の下など外から見えないところを叩くが、今日は特に「具合が悪かった」のだろう。
そんな日は、こうして場所を気にせずに叩き、場合によっては殴ってくる。
マキウスが生まれるまでは、ここまで「具合が悪くなる」ことは無かったらしいがーー。
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