食堂のおばあちゃん物語

みどり

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家族の絆/絆創膏

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幽霊の出るホテルを平次は買い取った。


町の人たちは「モノ好きもいたもんだ」と噂した。


家族でよく話し合った後

改装工事に取りかかることになった。


小さなシティホテルには小さなスイートルームがふたつあった。




カエデ 「スイートルームは私たちが住むようになるのかしら?」


トミ  「幽霊が出る部屋には誰も住みたがらないと思うわ。
     そこを取るしかないんじゃないうちで。」


みちよ 「幽霊は別として、私は上の階まで上がったり降りたりするより
     下の階がいいです。」


 杏  「みちよの好きにすればいいよ。」


ユウキ 「オレも下の階がいいです。」


みちよ 「平次さんがよければ、社長ですから
     スイートルームにお住まいになれば?」


トミ  「寝に帰るだけの部屋は広くなくてもいいんだけど。」


平次  「ゆいがおじいちゃん家に泊まりに来るから
     仕切り付けてくれたら上の階でもいいぞ。」


みちよ 「ゆいちゃんが来た時は別室がありますよ。
     一応、常時幾つかは空けておきますから。」


カエデ 「ほら、おじいちゃん悲しそうな顔しないの!
     誰もおじいちゃんのこと否定してないでしょう。」


みちよ 「いや、そういうつもりで言ったんじゃないんですよ。ごめんなさい。」

 

カエデ 「ユウキの部屋を広くしておけば?ゆいちゃんがいつか来るかもよ?」


ユウキ  咳払いする。



1ヶ月後


改装工事に取りかかった。


平次が住む予定の部屋がレイアウトを変える工事をしている。


隣室で平次とトミ、マツ・ナミ・はなの3人のおばあちゃんたちが話し合っていた。


トミ  「工事の音がちょっとうるさいわね。さて、ここが幽霊の出る部屋ね?」


マツ  「幽霊なんて、ただの噂だと思うけど。」


平次  「お祓いしてもらった方がいいような気がする。」


マツ  「平次、幽霊怖いの?」


ナミ  「あら、平次さんが怖いのはトミよ。」


マツ  「なるほどね。トミか。」


平次  「コラ、呼び捨てするな!トミちゃんと呼べ。」


ナミ  「やだぁ、平次さんたら!いつまでもラブラブなのね。」


マツ  「ラブラブじゃなくて、上下関係だよ。ナミ。」


はな  「あんまり平次さんを刺激したら、私たちクビになりますよ。
     私たちはおばあちゃんだから、3人でひとり分くらいしか
     仕事出来ないんだから。」


ナミ  「働く前からクビかしら?」


マツ  「平次は私たちをクビにはできないね。
     私たちをクビにしたら、ゆいは来させないからね。」


平次  「ゆいはオレの孫だぞ!家族の絆は絶対だ。お前たちの入る隙間は無い!」


はな  「そういえば、絆創膏も絆って字を書きますねぇ。」


ナミ  「隙間がないように私たちもピッタリ押さえておきますね。
     家族の絆創膏として。」


平次  「お断りします。」


トミの心の声

私、これから毎日のようにこのヒトたちに会うことになるのよね?
大丈夫かしら?今まで長いこと生きてきたけど、会ったことない人種だわ。



数日後


幽霊の出る部屋は皆気味悪がって誰も住みたがらなかった。


マツ  「あいに毎日送迎してもらうのも悪いし、私たち引越してもいいかな?」


レン  「いいですよ。送り迎えを気にすることはないですけど。
     なにより、マツさんたち3人がストレスの無い暮らしをするのが
     一番ですよ。」


ナミ  「あいももう大人なんだし、ひとりでも大丈夫よね?
     子育て終えても大丈夫よね?」


あい  「私、何歳だと思ってるの?ひとりでも大丈夫よ。とっくの昔に。」


はな  「ホントのひとり暮らしになっちゃうわよ。」


あい  「だから、大丈夫だってば!」


レン  「あいはオレがいるから大丈夫ですよ。楽しんでください。」


ナミ  「残り少ない人生を?」


レン  「いや、そんなこと言ってないでしょう!」



みんなで笑った。


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