悪役令嬢な眠り姫は王子のキスで目を覚ます

永江寧々

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全ては自分の人生のために

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「大丈夫、上手くいきますわ。ここまでやってきたのに今更バカのせいで台無しにされてたまるものですか」

 ティファニーは鏡の中にいる自分に向かって何度も言葉を投げかけていた。
 今日はいつもより濃いめにキメたメイクは目の下のクマを隠すため。まだ十代でありながらこんなメイクをしなければならない事に最近ゲンナリしてきているが、全ては将来のため。マリエットさえ婚約してしまえば悪役令嬢から解放されるのだからそれまで全てを我慢して悪役令嬢に徹する。それがティファニーの使命であり約束であり命令である。

「バレていませんように!」

 それだけを願っていた。
 バレたら最後、父親からお叱りを受けるだけでは済まず勘当が妥当だと容易に想像がつく。
 この歳で家から放り出されてどうやって生きていけというのか。父親はそんな事も考えずに感情のままに怒鳴り散らし怒り狂いそして放り出す。止める妻の言葉も聞かずに。

「でも王子と接近するのは悪役令嬢の務めですわよね?」

 ふと思い出したようにポンッと手を叩きバレても大丈夫だと顔を明るくする。

「でもさすがにキスはしませんわね……」

 かと思えばズンッと暗くなって鏡に額を当てる。

「いえ、でもヒロインを傷つけるためならキスぐらいしますわ!」

 パアッと明るくなり

「でも王子からされてしまったのでは言い訳はどうすれば……?」

 ズーンと落ちる。

 それを馬車の中でも繰り返し、御者はティファニーが狂ったのではないかと心配していた。

「ティファニー様」
「んがっ……ああ、着きましたのね。あー気が重いですわ……」
「いかがなさいました?」
「……いいえ、何でもありませんのよ。行ってきます」
「い、いってらっしゃいませ……」

 涎を拭いながら馬車を降りたティファニーは人生で最も最悪の顔で学校の門をくぐっていった。



「おはよう、ティファニー」
「ッ⁉ な、なんですの⁉」
「なにって……挨拶しただけだけど……どうしたの?」

 思わず大袈裟な反応をしてしまったティファニーに驚いたマリエットの反応は普通のことで、自分が狙ってしたわけではないにしてもマリエットに隠れて婚約寸前の相手とキスをしてしまった事が後ろめたいせいで余裕が持てなかった。

「は? な、なんでもありませんことよ? 馴れ馴れしく話しかけないでくださる? 友達じゃありませんのに気安く話しかけるなんて無礼ですわ」

 自慢の縦ロールを後ろに払いながらいつも通りの悪役令嬢を演じるが笑みが硬い自覚があった。

「伯爵令嬢が公爵令嬢に無礼ですって⁉」
「立場考えて物言いなさいよ!」

 マリエットの取り巻きがいつも通り吠えるのをティファニーは鼻で笑って肩を竦めた。

「何かあれば伯爵、公爵ってそればっかり。あなた達はそれ以外の言葉を知らないようですわね。そんな似合わないキュートな髪飾りを買うより辞書を買った方がよろしいんじゃなくて?」
「何ですって⁉」
「聞き直したのはどうして? 頭が悪いから? それとも耳が遠いから?」
「あなたって人は今日という今日は許さない!」

 取巻きにはいくらだって暴言を吐ける。
 ティファニーは一見すればマリエットと対立しているが、その裏ではマリエットの後ろ盾があるのだから取巻きの地位がなんであろうと怖がる必要はないのだ。
 片手を上げる取巻きの前で仁王立ちをぶたれるのを待つ。一発でもくらえば後は正当防衛で好きにやり返せるからと痛みはあるが鬱憤を晴らすにはイイものだった。
 しかし、こういう時はいつもマリエットが聖女ぶって止めるため怖がらないというのも堂々と仁王立ちしていられる一つの理由。

「キャー!」
「え?」

 急に聞こえた黄色い悲鳴に何事かと驚いてマリエットを見ると両手はがら空きで取巻きの手を掴んでもいない。
 なら誰が———

「……コンラッド……王子……?」
「何の騒ぎだ?」

 顔も見たくなかった男の登場にティファニーの表情が歪む。
 カッとなって振り下ろそうとした手はコンラッドに掴まれ、当の本人は赤面していた。

———遊び人と名高い男に触れられて赤面とは男を知らないにもほどがありますわね。

「マリエット様はティファニー・コンラッド伯爵令嬢に朝の挨拶をしただけですのに彼女は挨拶も返さず、話しかけた事を無礼だと言ったんです!」
「それで?」
「無礼なのはどちらかと言った事に対してまた減らず口を叩くので言い合いになっていました」

———言い合い? 殴り合いの間違いでしょうにさすがマリエットの取巻きですわね。恐ろしい。

「それで?」
「え?」

 コンラッドの言葉に首を傾げたのは取巻きだけではなくマリエットも同じだった。

「それで何故お前は手を上げているんだ? 発言は挙手制か?」
「こ、これは———!」
「侮辱を受けた本人が手を上げるのはわかるが、関係のないお前が手を上げている事には疑問を覚える」

 正論にティファニーはその場でうんうんと首を縦に振った。
 キッと睨み付けてくる取巻きに舌を出して無言の反論をすれば顔は余計に赤くなった。

「お待ちくださいコンラッド様。彼女は私の代わりに怒ってくれたのです」

———出たー! マリエットの聖女演劇!

「だから何故お前が侮辱を受けたにもかかわらずお前が怒らずコイツが怒るんだ? お前の代わりに怒る意味がわからん」
「彼女はとても優しい子で愛情深いのです。ですから友である私が侮辱されたために怒って———」
「ならお前は怒りに任せて手を上げる人間だというんだな?」
「何故そうなるのですか」
「お前の代わりに怒った事を容認するということは手を上げる事もお前の代わりにやった事になる」
「彼女は本気で叩くつもりなど———」
「真似事でも同じだ」
「コンラッド様お聞きください!」

 これは予想もしていなかった展開でティファニー自身どこに身を置けばいいかわからなくなっていた。
 王子側につく気はないが、混乱中のマリエットをフォローする気もない。余計な事をしてマリエットの機嫌を損ねても困る。
 いつも遠くから見ていたはずの王子が何故今日に限って割って入ってきたのかわからないマリエットの焦り具合は見ていて愉快だった。

「ティファニー・ヘザリントン」
「へ?」
「君に話がある」

 たった一言で場のザワつきを静め、そして全注目を浴びさせる男はすごいとのんきに想っている場合ではなくなったティファニーが自分の顔を指差すとコンラッドが頷く。

「……お断りですわ」

 静まり返ったはずの場が一気にザワつく。

「俺の誘いを断ると?」

 意外にもその声に怒気はなく、むしろ面白いと感じているような風に聞こえた。だがそれこそが一番の不安材料だった。
 人のファーストキスを奪っておきながら悪びれることなく軽い口調で「責任でも取るか?」と言った根っからの遊び人。しかし遊び人なら責任を取るというだろうか?と頭を悩ませた昨日の事があるため出来れば一緒に居たくなかった。
 何よりマリエットの視線が気になって仕方ない。

「何様のつもりか知りませんけど、親しい仲でもありませんのに何故わたくしがあなたについて行かなければなりませんの? そこにいる顔の赤いおバカさんとわたくしを同類と思われては困りますわ」

 王子と仲良くなるのは必須事項だが、こんな展開ではない。あくまでも自分主導で仲良くなり、離れ、そしてヒロイン達の婚約に悔しがって自分の役目は終了。
 何を考えているのかわからない王子の誘いに乗って今までの苦労を泡になどしないと強い意志があった。

「キスした仲…んぐっ」

 その意志もそれほど強くはなかった。

「オーッホッホッホッホ! 思い出しましたわ! 先日、リボンを拾っていただきましたわね! あれは大事なリボンですの。返していただきますわ!」

 大勢の生徒達が見ているというのに簡単に暴露しようとした男を引きずりながら大急ぎでその場から立ち去った。

「なによあれ……」

 コンラッドがティファニーに何用かと眉を寄せるマリエット。

「王子に触られちゃった!」
「ズルい! 私が叩けばよかった!」

 横で騒ぐ取巻きの言葉も耳に入らないほど気になっていたマリエットは思わず小さく舌打ちをした。ビクッと肩を跳ねさせた二人は自分達にされたと勘違いして慌ててマリエットの後ろにつき、歩き出す。

———あの二人に接点なんてないはずなのに……。







「おい、どこまで行く気だ」

 コンラッドの言葉でようやく足を止めたティファニーはその場で手を離し振り向くと同時に仁王立ちになって睨みつけた。

「何を考えてますの?」
「話があると言っただろう」
「あなた自分の立場が理解出来てないようですわね」
「グレンフェル家の次男だ。王位継承権を持たない役立たずだ」

 そういう意味で言ったわけではないと頭が痛くなるもののいちいちツッコミを入れていては時間ばかり取ってしまうと咳払いをして仁王立ちの足で地面を二度蹴って音を鳴らした。

「マリエットはあなたの婚約者でしょう。婚約者が目の前で他の女に話があるなどと言えば気に障りますわ」
「婚約者じゃない」
「言い直すのも面倒ですけど婚約寸前なのでしょう? 婚約しているも同然ですわ」

 細かい性格の相手はどうにも好きになれないと表情にはあからさまに面倒くさがっている様子を見せて肩を竦めた。

「誰がそんな事を?」
「この学校にいる者なら誰でも知ってますわ。有名な噂ですもの」

 誰が流したのかはわからないが、おおよそマリエットだろうという推測はついている。用意周到のマリエットのことだ。周りから固めていけば断らないと考えての行動のはず。
 実際二人は仲が良く、一緒にいるのを見かけるから周りも噂は本当だったんだと事実としてとらえている。

「噂は所詮噂に過ぎない」
「婚約はないと?」
「ああ」

———言いきった……?

 聞いてはいけない事だったかもしれないと何度も目を瞬かせながらどう対応すべきか必死に頭を働かせる。

1.「どうでもいいですわ」と言って鼻で笑う。
2.「どうでもいいし話とは?」と先を促す。
3、「何でそんな話を今わたくしに聞かせたんですの⁉」とブチギレる。
4、「それはイイ事を聞きましたわ」と悪役令嬢らしく話を深く聞き出す。

「……話って何ですの?」

———ああっ、根性ナシのティファニー! さっさと悪役令嬢なんてやめておしまい!

 心の中でもう一人のティファニーが怒るも深く聞いてしまえばマリエットに黙っている自信がないため用件だけ聞き出してさっさと別れる事にした。
マリエットが追いかけてこないとも限らない。

「いや、ファーストキスと言っていたのが気になってな」
「……は?」
「君のファーストキスを奪ってしまったんだろう?」
「ええ、身勝手な理由でわたくしが大事に守ってきたファーストキスはどこぞの第二王子に奪われてしまったんですの。謝罪と慰謝料を請求したいぐらいですわ」
「だから責任を取ると言っている」
「ふざけんなでございますわ!」
「どういう……」

 あのまま止めなければ大勢の生徒の前で同じ言葉を言っていたのかもしれないと思うとゾッとした。
 見るからに誠実そうではない王子に何かを期待した事もなければマリエットを羨んだ事もない。それどころか何故わざわざ〝遊び人〟と名高い王子を選んだのかが謎なぐらいだった。

「たとえマリエットと婚約間近という噂が嘘だったとしてもあなたのような人はお断りですわ」
「王位継承権を持っていない男は嫌か?」
「そんなものはどうだっていいですわ! わたくしがお断りだと言っているのはあなた自身の問題」
「だから王位継承権を持っていない事だろ?」
「そんなものが人を惹きつける魅力になると思ってますの⁉ あなた自身の問題と言えばグレンフェル家の次男という肩書にあるものではなく、コンラッド・グレンフェル自身の事を言っているんですの! 顔、身体、声、物言い、考え方、行動! 王位継承権が何ですの! そんなものあってもなくても人間性に関係ありませんのよ!」

 王位継承権という言葉は王族と縁遠いティファニーにとってはどうでもいい事だった。コンラッドが次男であろうと三男であろうとそれこそどうでもよく、長男だと言っても惹かれる事はないと絶対の自信があった。
 許せないのは性格と考え方。それに気付いていない時点でバカだと道に唾でも吐き捨てたくなる。

「自分で言うのもなんだが顔は良い方だ。剣術の稽古で無駄のない身体に出来上がっているし、声も悪くない。囁くだけで女は頬を染める。成績も悪くない。家庭教師がついているしな」

 ティファニーの視線は自分の爪に向けられ、完璧に仕上げられた理想のネイルが自分の指にある事が嬉しく近くで見ては遠くから眺めるを繰り返していた。

「聞いているのか?」
「ええ、俺は自分が大好き~!って話ですわよね?」
「全然違う」

 ようやく終わったかと爪から視線をコンラッドに移すと眉を寄せる顔に肩を竦めた。

「常識知らず、自惚れ屋、自分勝手、自己中心的言動、コンプレックスの塊」
「俺の事を言っているのか?」
「わたくしが独り言でも言っていない限りはそうでしょうね」
「随分な言われようだな」
「事実ですわ」

 相手は王子だが媚びるつもりは一切ない。気に入られでもすれば面倒じゃ済まない。間違いなくマリエットは父親に報告し、ティファニーは追放。家は没落の危機に瀕するかもしれないのだ。自分の行動一つで家の全てが決まる。
 という建前のもと、単純にティファニーはコンラッドが嫌いなだけだった。

「寝ている女の顔がタイプだろうとキスをするなど破廉恥ですわ」
「だから責任を取ると言っただろ」
「言えばいいってもんじゃないのですわ! わたくしの純潔を奪っておきながらその態度は何ですの⁉ 反省が足りませんわよ!」
「純潔は奪っていないが君が奪われたつもりなら今から奪ってもかまわないということだな?」
「指一本でも触れたら最後、マリエットに言いつけますわよ」

 婚約間近が嘘だったとしても仲が良いのは間違いない。少なくともマリエットはコンラッドに好意を抱いている。生徒への影響力を持つマリエットがコンラッドの悪口を言いふらせば王子とて無傷ではいられない。

———脅しにも使えるなんてマリエットは便利ですわね。

「好きにすればいい」
「え……?」
「アイツ嫌いなんだ」
「は……え……?」

 聞きたくなかった言葉にティファニーは膝から崩れ落ちそうになった。

「大丈夫か?」

 腕を支えられても立ち上がる気力は湧いてこない。
 マリエットはコンラッドと婚約し、そうなれば自分はお役御免となるはずだった。それなのにコンラッドとマリエットは仲が良いどころかコンラッドがマリエットを嫌っているとなれば婚約など夢のまた夢。ありえない話でしかない。

———わ、わたくしの人生は……どうなるんですの……?

「あなたのせいで……」
「おおっ?」
「全部あなたのせいですわよ!」
「俺がなんだ?」
「二度とわたくしに関わらないで! このブ男!」

 ワナワナと震えだしたティファニーは思いきり腕を振り払ってその場から走り去った。

 もうすぐだと思ったから割りきれていたのに、もしこの噂が嘘だとコンラッドが言ってしまったらどうなる? 
 マリエットは泣きじゃくり絶望し、新しい婚約者を探すのにまた時間がかかる。その間ずっと悪役令嬢を続けなければならないのかとティファニーの方が絶望しそうだった。
 普通の人生では満足できないマリエットに巻き込まれた主役になれない自分の人生に何の意味があるのか———。

「面白いな」

 クククッと喉奥を鳴らして笑うコンラッドを陰から見ていた存在に二人は気付いていなかった。



———その日の夜———

「マリエット? どうしたんですの?」

 マリエットが部屋を訪ねてきた。
 真実を知ってしまっただけにティファニーはいつもならありえない緊張を感じながら出来る限りいつも通りの声と笑顔を作った。

「何を話してたの?」
「あーっと……」
「嘘ついたらどうなるかわかってるわよね?」

———嘘しかつけない場合はどうしたらいいんですの?

「マリエットがどういう人間かを話していたんですの」
「……それで?」

 自分でついた嘘で自分の首を絞める事になるとは思ってもおらず、どういう説明をしたのか聞かれるのは容易に想像がつくことなのにティファニーは何度も目を瞬かせて錆びたブリキのおもちゃのようにガクガクとぎこちなく首を動かした。

「早く言いなさいよ!」

 急な怒鳴り声に肩を跳ねさせたティファニーが慌てて口を開いた。

「わたくし達は仲は良くありませんけど幼馴染として育ってきましたの。わたくしにとってマリエットは気に入らない存在ですけど周りからは慕われていますわ。美人で、誰にでも優しくて、頭もスタイルも良い。慈善事業にも興味を持っているし、将来を見据えた社会勉強に熱心ですの。何でも持ってる彼女が大嫌いですわって答えましたわ」
「ふーん」
「出来る限り良く答えたつもりですわよ」

 どこか疑心を向けられているような眼差しにティファニーは握った手が汗でぐっしょり濡れているのを感じていた。
 嘘をつくのは得意ではないが苦手でもない。悪役令嬢に嘘は必須だ。とっさに考えたにしては上手く言えた方だと自分を褒めてやりたかった。

「じゃあどうして王子から逃げたの?」
「ッ⁉ 見てましたの⁉」
「当然でしょ。アンタが王子に何かしないとも限らないし」
「興味ありませんわ」
「わからないじゃない。今は興味なくても後で興味が出るかもしれない。ほら、人のものって良く見えちゃうから」

 許されるのならここでビンタの一発でもくらわせてやりたかった。どこまで人を見下せば気が済むのか———
 付き合いたくもない茶番劇に付き合い続け、なりたくもない悪役令嬢を演じ続けてきたのにまだ足りないのかと唇を噛みしめそうになった。
 ここで朝に聞いたことをぶちまけてやればどんな顔をするか見てやりたくなったが、それこそ自分の首を絞めるだけだと我慢した。

「コンラッド様と婚約するのは私であってアンタじゃない。色目使ったら許さないからね。ま、使う色も持ってないでしょうけど」

———手を出すつもりも色目を使うつもりもありませんわ! 人に怒る前にさっさと脱ぐなり襲うなりして婚約しやがれですわ!

 去り際にまで人をバカにしなければ気が済まないマリエットと話すのは心底疲れる。公爵令嬢は何を言っても許されるのかと頭の中ではマリエットに言い返すシーンを何度も想像するが現実になった事は一度もない。いつも心の中で反論するだけ。

「こういう事になるから嫌なんですわ」

 出来る限り高貴な立場の者とは接触しないようにしてきた。
 皆に聞こえるように嫌味を言って高笑いを響かせて自分より下の人間には横柄な態度を取り続けた。嫌な女だと思わせ、悪役令嬢に徹せるように心がけてきた。それがこんな所にきてまさかヒロインの相手である王子から『アイツ嫌いだ』と聞かされるとは思ってもなかった。
 何があろうと絶対にやり遂げなければならない。計画延期など絶対にあってはならないのだ。

 自分の人生のために———!

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