陰キャに恋は早すぎる

ツワブキ

文字の大きさ
11 / 35

精神安定剤

しおりを挟む

 セックスは精神安定剤だ。

 出すもの出せばすっきりするし、生まれたままの姿で相手を受け入れ、相手に受け入れられるという経験は自己肯定感を高めることにも繋がると思う。セックスという行為は、歩にとって不安や孤独感を紛らわせてくれる最も手っ取り早く、最も効果的なメンタルケアの一つだった。

 



 歩は裸のまま仰向けに寝そべって天井を仰ぎ見た。かつて毎日使っていたこのベッドはあの日のままで、懐かしさすら覚える。

 自分と洋の汗やらなんやらの体液で汚れた体は、洋によって綺麗に清められている。一方洋は、こちらに背を向けベットの端に腰掛けていた。歩は気怠い体を動かす気にはなれなくて、目線だけを洋の方へ向ける。

「よう、」

 出した声が僅かに掠れていて、自分でも少し驚く。

「ん?喉渇いた?今水持ってくるよ」

 肩越しに振り向いた洋は、気遣わしげに歩を見て蜂蜜のように甘い声で言う。それに対して、歩は静かに首を横に振って洋の腰に後ろから抱き着く。やっぱり動くと少し体がしんどい。女の子を抱く時はこんなことにはならないから、やはり男の身で男に抱かれるのはそれだけ無茶な事で、身体に大きな負担をかけているのかもしれない。

(洋、意外とがっつくしなあ)

 歩は洋の腰にしがみついたまま目を閉じる。すると、洋の大きな手が歩の髪を優しく撫でる。時折耳を擽られるように撫でられ、歩はまるで猫にでもなったような心地だ。

(滉も、セックスしたあとはこうやって女に優しくするのかな)

 ふとそんなことを思うが、あの陰キャ・非モテの滉のセックスやセックスのあとのピロートークなんて、とてもじゃないが想像出来ない。

(でも、してるんだよなあ。きっと)

 歩は頭の中で不毛な自問自答をして、そしてひっそりと深く落ち込む。長年好きだった相手が、自分が手を拱いているうちに他の女に掠め盗れてしまった。しかし、ノンケの滉に告白して玉砕するのを恐れ、甘んじて親友ポジションに収まっていたのは他でもない歩だ。他の女に盗られても、いや、滉が他の女を選んでも、歩は文句一つ言う権利だって持ち合わせていない。

(なんでだよ。クソ。女と話したことなんて殆どないくせに)

 歩が内心で、怒ったり悲しんだり悔しがっている間ずっと、洋は穏やかな目で歩を見下ろし髪を撫で続けていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

俺の指をちゅぱちゅぱする癖が治っていない幼馴染

海野
BL
 唯(ゆい)には幼いころから治らない癖がある。それは寝ている間無意識に幼馴染である相馬の指をくわえるというものだ。相馬(そうま)はいつしかそんな唯に自分から指を差し出し、興奮するようになってしまうようになり、起きる直前に慌ててトイレに向かい欲を吐き出していた。  ある日、いつもの様に指を唯の唇に当てると、彼は何故か狸寝入りをしていて…?

双葉の恋 -crossroads of fate-

真田晃
BL
バイト先である、小さな喫茶店。 いつもの席でいつもの珈琲を注文する営業マンの彼に、僕は淡い想いを寄せていた。 しかし、恋人に酷い捨てられ方をされた過去があり、その傷が未だ癒えずにいる。 営業マンの彼、誠のと距離が縮まる中、僕を捨てた元彼、悠と突然の再会。 僕を捨てた筈なのに。変わらぬ態度と初めて見る殆さに、無下に突き放す事が出来ずにいた。 誠との関係が進展していく中、悠と過ごす内に次第に明らかになっていくあの日の『真実』。 それは余りに残酷な運命で、僕の想像を遥かに越えるものだった── ※これは、フィクションです。 想像で描かれたものであり、現実とは異なります。 ** 旧概要 バイト先の喫茶店にいつも来る スーツ姿の気になる彼。 僕をこの道に引き込んでおきながら 結婚してしまった元彼。 その間で悪戯に揺れ動く、僕の運命のお話。 僕たちの行く末は、なんと、お題次第!? (お題次第で話が進みますので、詳細に書けなかったり、飛んだり、やきもきする所があるかと思います…ご了承を) *ブログにて、キャライメージ画を載せております。(メーカーで作成) もしご興味がありましたら、見てやって下さい。 あるアプリでお題小説チャレンジをしています 毎日チームリーダーが3つのお題を出し、それを全て使ってSSを作ります その中で生まれたお話 何だか勿体ないので上げる事にしました 見切り発車で始まった為、どうなるか作者もわかりません… 毎日更新出来るように頑張ります! 注:タイトルにあるのがお題です

人並みに嫉妬くらいします

米奏よぞら
BL
流されやすい攻め×激重受け 高校時代に学校一のモテ男から告白されて付き合ったはいいものの、交際四年目に彼の束縛の強さに我慢の限界がきてしまった主人公のお話です。

消えることのない残像

万里
BL
最愛の兄・大貴の結婚式。高校生の志貴は、兄への想いが「家族愛」ではなく「恋」であったと、失恋と同時に自覚する。血の繋がりという境界線、そして「弟」という役割に縛られ、志貴は想いを封印して祝福の仮面を被る。 しかし数年後、大貴の息子が成長し、かつての兄と瓜二つの姿となったとき、止まっていた志貴の時間は歪な形で動き出す。 志貴(しき):兄・大貴に長年片思いしているが、告げることなく距離を置いていた。 大貴(だいき):志貴の兄。10歳年上。既婚者で律樹の父。無自覚に人を惹きつける性格。志貴の想いには気づいていない。 律樹(りつき):大貴の息子。明るく素直だが、志貴に対して複雑な感情を抱く。

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...