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第13話
しおりを挟むミリアは、
レオンに連れられて公務室へ入った。
侍従たちは一斉に頭を下げる。
「ミリア様……
こちらの書類にご署名を……」
ミリアは、
書類を一枚手に取った。
だが――
文字が読めない。
いや、読める。
読めるのに、意味がわからない。
(……なにこれ……?
魔道具の調整……?
魔力供給量の計算……?
こんなの、エリシア様がやっていたの……?)
ミリアの手が震えた。
「ミ、ミリア様……?」
「ご気分が……?」
ミリアは、
笑顔を作って言った。
「ええ……もちろん。
わたくしに任せてくださいませ」
だが、
その笑顔は引きつっていた。
(……できない……
こんなの、できるわけない……!)
レオンは、
ミリアが書類を前に固まっているのを見て
眉をひそめた。
「どうした?
簡単な書類だろう?」
ミリアは、
必死に笑顔を保つ。
「ええ……もちろん……
ただ……少し……」
レオンは舌打ちした。
「エリシアなら、
こんなの一瞬で終わらせていたぞ」
その言葉に、
ミリアの胸がざくりと痛んだ。
(……エリシア様……
やっぱり……わたくしじゃ……)
精霊たちがいない空間は、
冷たく、重い。
ミリアは、
初めて“自分が選ばれた理由”に疑問を抱いた。
(……わたくしは……
殿下にとって……
ただの飾り……?)
王城の空気は、
ゆっくりと、しかし確実に変わり始めていた。
エリシアがいないだけで、
仕事は滞り、
魔道具は不安定になり、
侍従たちは混乱し、
レオンは苛立ち、
ミリアは不安に飲まれていく。
誰も気づいていない。
この混乱の中心にいたのは、
“無能力”と呼ばれた少女だったということに。
そして――
その少女は今、
第一王子の隣で光に包まれている。
崩壊は、
静かに、確実に始まっていた。
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