【完結】捨てられた令嬢は、国一の美女で精霊の姫でした。

丸顔ちゃん。

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第15話

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翌朝――
王城は、異様な静けさに包まれていた。

普段なら、
侍従たちの足音や書類を運ぶ音が響き、
朝の光とともに活気が満ちるはずの時間。

だが今日は違った。

廊下には人影が少なく、
侍従たちは顔を見合わせて困惑している。

「……エリシア様は?」
「まだお見えになっていません」
「そんな……今日の公務は……?」

ざわざわと不安が広がる。



公務室では、
机の上に書類が山のように積み上がっていた。

「これ……昨日のうちに処理されているはずでは……?」
「エリシア様が……いらっしゃらないから……」
「殿下は……?」
「第二王子殿下は……まだお部屋から出ておられません」

侍従たちは青ざめていた。

エリシアが毎日こなしていた仕事は、
想像以上に膨大だった。

魔道具の調整、
魔力供給量の計算、
各国との書簡整理、
王族の予定管理、
公務の優先順位付け――

すべて、
“無能力”と呼ばれた少女が
一人で支えていた。
その事実を、
今になって誰もが痛感していた。

ミリアは、
レオンに連れられて公務室へ入った。

侍従たちは一斉に頭を下げる。

「ミリア様……
 本日の公務のご確認を……」

ミリアは、
書類を一枚手に取った。

だが――
昨日と同じ。

文字は読める。
でも意味がわからない。

(……なにこれ……
 魔力供給量の再計算……?
 魔道具の調整……?
 こんなの、どうすれば……)

ミリアの手が震えた。

「ミリア様……?」
「ご気分が……?」

ミリアは、
無理に笑顔を作った。

「え、ええ……もちろん……
 わたくしに任せて……」

だが、
その笑顔は引きつっていた。

(……できない……
 本当に……できない……!)




レオンは、
ミリアが書類の前で固まっているのを見て
苛立ちを隠せなかった。

「どうした?
 昨日も言ったが、簡単な書類だろう?」

ミリアは、
必死に笑顔を保つ。

「ええ……もちろん……
 ただ……少し……」

レオンは舌打ちした。

「エリシアなら、
 こんなの一瞬で終わらせていたぞ」

その言葉に、
ミリアの胸がざくりと痛んだ。

(……エリシア様……
 やっぱり……わたくしじゃ……)

レオンはさらに苛立つ。

「なんでこんなに書類が溜まっているんだ!
 昨日のうちに処理されているはずだろう!」

侍従が震える声で答える。

「そ、それが……
 エリシア様が……昨日から……
 お姿を見せておられず……」

レオンの眉が跳ね上がった。

「……は?」

侍従は続けた。

「エリシア様がいらっしゃらないため、
 公務が……まったく進んでおりません……」

レオンは、
初めて“現実”を理解した。

(……まさか……
 エリシアが……
 ここまで重要だった……?)

だが、
その事実を認めたくない。

「馬鹿な!
 あいつは無能力だ!
 地味で、何の取り柄もない女だ!」

侍従たちは、
誰も目を合わせなかった。

(……殿下……
 それは違います……)

(……エリシア様がいなければ……
 王城は回らないのです……)

誰も言えない。
だが、全員が理解していた。

エリシアがいないだけで、
王城は崩れ始めている。






その頃――
アルベルトの部屋では、
柔らかな光が満ちていた。

エリシアの手を握りながら、
アルベルトは穏やかな呼吸をしている。

精霊たちが、
祝福するように舞っていた。

――エリシア。

――あなたは、ここにいるべき。

――あなたは、この人の光。

王城の混乱とは対照的に、
この部屋だけは静かで、温かく、穏やかだった。

そして――
運命の天秤は、
ゆっくりと、しかし確実に
エリシアとアルベルトの側へ傾いていく。
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